劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

「進化するミュージカル」

2017-09-22 13:32:54 | 読書
「ミュージカル史」を読んだついでに、同じ小山内伸の書いた「進化するミュージカル」も読んでみた。こちらの方は約10年前の2007年に論創社から出た本。著者が1980年代後半にロンドンで観たミュージカルや、2000年代にブロードウェイで観たミュージカルの記録となっている。著者自身としては、単なる鑑賞記録にとどまらずに、作品論を述べたとしている。

全体は240ページほどで、19章に分けて、それぞれ1作品づつ紹介しているが、終わりの方になると、複数作品を紹介しているので、全体としては25作品程度が紹介されている。書名は「進化する」となっていて、著者もいろいろと進化している様子を語ろうとしているが、読んでいると本当に「進化」なのかなあと、疑問に思えてくる。

まあ、こうした作品などは、殆んどは好き嫌いの世界なので、その人がそう思えばよいということであろうが、こうしたミュージカル作品でも、映画でも、音楽でも、社会や時代の変化に対応して、「変容」はするが、それが果たして「進化」といえるのかどうかは疑問だ。

実際、ミュージカルの世界でも、ブロードウェイでは空前のブームのようになっていて、超ロングランの作品が増えてはいるが、作品としては1950年代や1960年代の作品の面白さにはかなわないような気がする。

超ロングランが続くのは、昔とは観客層が変化して、観客の2/3ぐらいが観光客となったからだろう。ブロードウェイの住人が同じ作品を何回も見ているわけではなく、入れ替わり立ち代わり観光客がやってきてミュージカルを見るように変化したのだ。そのため、観光客向けに受けるような作品が多く作られるようになった。

これを「進化」といえるのかというのが問題だ。確かに変化はしているので、「変容」とはいえるのだが、「進化」なのかなあ、と改めて考えた。