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最低評価の「薔薇の素顔」を観る

2017-09-25 12:29:49 | 映画
衛星放送でやっていたので、ブルース・ウィルス主演の映画「薔薇の素顔」を観る。1994年の作品だが、アカデミー賞に対抗して「最低の映画」を選ぶ「ゴールデン・ラズベリー賞」で「最低作品賞」を見事受賞した作品として有名。

興行的にも振るわずに、散々だったようだが、ビデオの貸し出しでは結構人気があるらしい。僕は見逃していたので、どんな映画だろうと今回初めて観た。

主演のブルース・ウィルスは、ニュー・ヨークの精神分析医で、患者の治療中に、その患者がビルから飛び降り自殺してしまう。傷心のウィルスは、ロスで成功している友人の精神分析医を訪ねて行くが、その友人は何者かに殺害され、ウィルスは行きがかりで、彼の担当していた患者たちを引き受けることになる。

そうして、変な警察の警部や、謎の美女などが現れて、彼は否応なく事件に巻き込まれて、その解明をせざるを得なくなる。

全体の雰囲気は、にやけたハード・ボイルド調というか、物語の展開はレイモンド・チャンドラーの小説のようで、次々と起こる事件や、謎の美女の出現など、探偵小説、ミステリーの道具立てが揃っている。おまけに、いかにもこうした話が似合うロス・アンジェルスが舞台となっている。違うのは、主人公のウィルスが私立探偵ではなく、精神分析医だということだ。

ブルース・ウィルスは「ダイ・ハード」の印象が強いので、マッチョな、アクション映画に似合うが、昔はテレビの「こちらブルームーン探偵社」で、シビル・シェファードと共演していて、ハードボイルドではないが、にやけた探偵役を演じていたから、その流れを汲んでいるのかも知れない。

物語の意外な展開などもあり、映画的には退屈せずに面白く観ることができた。問題があるとすれば、ウィルスのキャラクター設定で、ニヒルなのか、にやけているのか、真面目なのか、不真面目なのかよく分からない描き方だろう。

結構エキセントリックな人物が沢山出てくるので、にやけた部分を除いて真面目に作ればヒッチコックの「サイコ」みたいな恐怖映画にもできるし、もっとふざけた作り方をしてギャグを入れてもよかったのかも知れない。中途半端だったのだろう。

まあ、「最低映画賞」には該当しない作品だと思った。