【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「人が人を愛することのどうしようもなさ」:千駄ヶ谷小学校前バス停付近の会話

2007-10-03 | ★池86系統(東池袋四丁目~渋谷駅)

いまどき、桜が満開とは珍しいこともあるもんだ。
狂い咲きっていうのかしら。
狂い咲きっていやあ、喜多嶋舞だよな。
石井隆監督の最新作「人が人を愛することのどうしようもなさ」の主演女優のことでしょ。
主演も主演、ひとり芝居のような映画だ。
喜多嶋舞の、喜多嶋舞による、喜多嶋舞のための映画。最初から最後まで、スクリーンの中を桜のように舞っては踊り、舞っては堕ちる。
昔アイドルだった女優が堕ちて、堕ちて、どん底まで堕ちていく、なんとも救いのない物語だ。
喜多嶋舞自身、最初はアイドルで売り出されたんだもんね。まるで本人の地をいくような話、って言っちゃあ失礼かしら。
どこまで演技でどこからが演技じゃないのか、わからないくらいの迫力に圧倒されっぱなしだ。
アイドルだっただけあって、可憐な顔立ちをしているんだけど、それとはうらはらに精神的、肉体的に崩れていく姿が、見ていてあられもなく、凄まじい。化粧の崩れ方なんて尋常じゃないわよ。
あんまり、テレビにも映画にも出ていないし、正直いまひとつの感じがあった女優なんだけど、それだけに、いきなり花開いちゃったな。
満開を通り越して、狂い咲きだもんね。
ここまで、なりふりかまわずというか、すべてをさらけ出しちゃうと、他の女優の立つ瀬がないんじゃないか。
いくら「スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ」で木村佳乃が捨て身でがんばりましたって言っても、これを観ちゃうと、まだまだ全然覚悟が違うと言いたくなっちゃうわよね。
その女優の姿を写し撮る石井隆監督の映像がまた、妥協を許さないというか緊張感を絶やさないというか、一瞬の隙も逃さない覚悟にあふれているから、鳥肌が立つ。
あの闇を切り裂くナイフのような照明の使い方。自然光なんてひとつもない。いかにも石井監督らしいと言ってしまえばそれまでだけど、他の人の追随を許さないわね。
内容が内容だけに、あーんなシーンやこーんなシーンの連続で、R-18になっちゃうのはしょうがないし、本当に素晴らしい部分を具体的に喋るわけにはいかないのももどかしいけど、この手の映画がもしきちんと評価されないとしたら残念としか言いようがないな。
でも、映画館には女の人もチラホラと観にきてたわよ。
うん、お前と一緒で覚悟がある。
覚悟がいるわよ、女性が観るには。
それにしても、ここまで来ちゃって、喜多嶋舞はこれからどこ行っちゃうのかな。楽しみといえば楽しみだし、恐ろしいといえば恐ろしい。
ほんと。一瞬の狂い咲きで散らないで、これをきっかけに大女優になっていってほしいわよね。
とはいえ、ほんとにいまの季節、満開の桜が咲いてるのか。
あら、やだ。いま咲いてるわけないじゃない。
なんだ、やっぱり、そういうことか・・・。
すべての話には裏があるのよ。この映画のラストみたいにね。
おっと、それは言わぬが花ってもんだ。


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千駄ヶ谷小学校前バス停



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