Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

RRTのコール回数が増えても予後は改善しない?

2018年07月15日 | ICU・システム
もう一つCCMから。そしてもう一つRRT関連。

Santamaria J, Moran J, Reid D.
Increasing the Number of Medical Emergency Calls Does Not Improve Hospital Mortality.
Crit Care Med. 2018 Jul;46(7):1063-1069. PMID: 29601313.


オーストラリアのビクトリア州の病院、RRTのコール回数はどんどん増えるけど、それによって病院死亡率が減るわけではない、というデータ。

ビクトリア州って、MET発祥の地。だから随分前から盛んに行われていて、僕が留学していたオースティン病院では最近は年に2000回コールされるそうだ。そんなビクトリア州のデータを使って、RRT/METのネガティブな結果を示すというのは、ちょっと面白い。authorの名前にも有名人は含まれていないみたいだし、何かあるのかしら。

まあそんな内輪の問題は気にしないことにして。

RRTというのは、多施設RCTによって有効性が証明されていないにも関わらず世界的に広まっている医療のシステムだということは忘れてはいけないし、他のすべての医療と同じで、有益であったとしても過剰に使用されたら有害になりうるということも忘れちゃいけない。例えば、
RRTがたくさん呼ばれる→具合の悪い患者さんがどんどんICUに来る→病棟の医師もナースも重症患者を診療する機会がなくなる→いよいよRRTが呼ばれる→RRTのコール基準、さらにはICU入室の基準がどんどん下がる→以下同文
なんてことは起こりえるし、実際、RRTが盛んな病院では起こりつつあるという話を聞く。

そういう状況に対する一つの反論でしょうか。

日本でそんな心配は、当分不要なのかもしれないけれども。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする