明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



幼い頃から怪だ奇だ妖だとかの文字には敏感な猟奇少年であった私は、そんなTVの映画、ドラマ、番組は逃さず観ていた。たとえば私が鏡花に接した最初は『白夜の妖女』(1957日活)である。これは『高野聖』が原作で、小学生から中学生にかけて、TVで2回観た。未だに記憶に残っているが、その後鏡花本人を作ったわけで、『高野聖』は妖女さえ調達できればすぐにでも描いてみたい作品である。 小学生の頃封切られた『怪談』や『四谷怪談』は恐さゆえか成人指定で、これは観たくて観たくて誰か連れて行ってくれないかと切望したものである。怪談映画といえば、夏休みに父の田舎から親戚の子が遊びに来た。私が小学5年。Hちゃんは中学生になっていたろうか。父が近所の映画館に連れて行ってくれるというので、私が選んだのがタイトルに妖しい香りが漂う『薮の中の黒猫』(1968東宝)であった。今では考えられないが満員で立ち見。父が想定外だったろうことは、強姦シーンやラブシーンが多く、おそらくデビュー間もない太地喜和子は吹き替えだったかもしれないが全裸シーンもあった。初めて目にする巨大な裸体。 数十年後、父の葬式で農協勤めのHちゃんと再会。すでに禿げ上がった彼にビールを注ぎながら「あのとき観た映画覚えてます?」黙ってうなずくHちゃん。「忘れる訳ないよね」。

HP



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