対談


アマゾンから本が続々と届く。
中古で購入したものは、それぞれのお店からクロネコメール便で送られてくるのだが、どこかで一度プールされるのか、何冊かがまとめて届いた。

吉村昭氏の対談集「歴史を記録する」を読んだ。
氏と様々な分野の専門家との対談を収録した本であるが、これがまた面白い。
吉村氏は、歴史小説の執筆に当たり、徹底的に調査を行うことで有名であった。
ここまでとことん調査して書く作家はもう出ないだろうと言われているそうで、それだけに驚くような話が次々に出てきて非常に興味深い。

ひとつあげると、対談で次のような話が出ている。
ペリー来航の頃の幕府は「たった四杯で夜も眠れず」と言われ、無能であったことが強調されているが、それは勝者の作り上げた嘘の歴史で、大きな間違いであったという。
実際には当時の幕臣には極めて頭のいい者が揃っており、ペリー来航に関する情報も、前年にアメリカ議会で日本派遣が決定したことを、オランダの報告書を日本語訳してとっくに掴んでいたという。

明治維新後もトップは薩長組がおさえたが、その配下の実務クラスには、ずらりと旧幕臣たちが抜擢された。
優秀で実力が高いのがわかっていたからで、彼らがいなければ明治政府は何も出来なかったろうという。

当時来航した外国勢には、基本的に日本を植民地にするという思惑があった。
実際アジアの他の国々に対しては、脅しをかけることでそれに成功していた。
ところが日本の場合、そうはいかなかった。
予想外に文化レベルも教育水準も高く、しかも外国の情報をよく知っているため、交渉の相手として非常に手強く、直接接した外国人は、日本のことを脅威に感じ、恐れてさえいたという。
「文化度の高いところは植民地になんかできません」と吉村氏は話している。

それにしても日本でそれだけ文化が進んだことの背景に、鎖国が関係しているというのは非常に面白い話だ。
平和で安定した時代が250年も続き、その間文化レベルの向上に力が注がれたため、他に例を見ない特殊な発展をした国家となっていたのだ。
世界中が注目するのは当然のことであるし、また一方で厄介な民族と思われてもいたのだろうと思う。

D3 + AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8G ED
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