酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

自由の気風醸成へ、小金井選挙区を蟻の一穴に

2017-06-25 12:21:15 | 社会、政治
 レディオヘッドのイスラエル公演を巡って論争が拡大した。この件に重なるのが09年、イスラエル賞授賞式における村上春樹のスピーチだ。制止を振り切って現地に赴いた村上は、パレスチナに対する暴力に抗議した。象徴的な言葉は<高くて固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるなら、私は卵の側に立つ>である。

 レディオヘッドが支持するアムネスティは、イスラエルを告発してきた。この経緯を踏まえ、「アーティスト・フォー・パレスチナ UK」の要請を受け入れ公演キャンセル、あるいは村上に倣ってイスラエル糾弾……。いずれかを選択すると確信していたが、トム・ヨークは反論し、〝魂の映像作家〟ケン・ローチ監督に厳しい言葉を浴びせられた。

 「アーティスト――」賛同者に<現在のイスラエルは南アフリカのアパルトヘイトと何も変わらない>と公言するツツ大司教(ノーベル平和賞受賞者)の名もある。ミュージシャン間の意見の相違で済まない事態に至ったが、<政治とロック>の距離を考える上で格好のテキストになった。

 この国の政治の劣化に愕然とするしかない。豊田真由子議員が階段を上りながら人格を歪めてきたことは明白だが、安倍首相の国家私物化に手を貸す官僚たちにも彼女同様、腐臭を漂う。前稿のキーワード<信念と勇気>を持たない者にとって、学歴や経歴も虚飾の衣だ。

 都知事選が告示された。別稿(6月6日)に記した通り、俺は小金井選挙区から立候補した漢人明子さんを応援している。漢人さん以外にも自民党、都民ファースト、共産党が候補を立てており、4人で1議席を争う構図だ。第一声には宇都宮健児氏、昨日には菅直人氏が応援に立つなど盛り上がりを見せている。

 <永田町の地図>で物事を測るメディアの予測は<自民と都ファの一騎打ち>だが、この間の票の出方を分析すれば、漢人さん当選の可能性もある。市民運動が定着している同市で市議を4期務めた漢人さんは、介護、福祉、保育、環境保護、護憲、反原発など様々な課題でネットワークを築いてきた。支持を表明した市議の数では他陣営を上回っている。

 先日、漢人事務所で行われた「第6回都政カフェ」に参加した。ゲストの宇都宮氏は詳細なデータを基に、豊洲移転と小池都政にメスを入れていた。同氏の言葉をベースに、自分の考えを併せて記したい。

 そもそも都民ファーストとは何か。重なる点が多いのが維新である。発足当時は橋下徹氏の専制で、現在は自公政権を脇から支えている。都ファも小池絶対主義で、都議選候補には独自インタビューを禁止しているという。宇都宮氏は共産党を念頭に<自由のない組織に民主主義を語る資格はない>と語っていたが、都ファなど独裁の最たる例だろう。

 小池都政を監視する宇都宮氏は弱者への厳しさを批判している。格差と貧困は東京でも拡大し、非正規労働者が増加している。原発事故による避難者の住宅支援を打ち切り、嘆願を拒み定時制高校を廃止した。ヘイトスピーチ規制にも動かない。漢人さんが掲げる「はけ」保護にも消極的で、宇都宮氏は小金井の文化的自然遺産を守るためにも漢人さんが必要と強調していた。

 小池知事が表明した<豊洲・築地併用案>に、市場の多数を占める移転慎重派(7割以上)、トップを占める推進派はともに疑義を抱いている。自民党と利権を牛耳る公明党の圧力を受け入れた〝選挙前の折衷案〟で、都議選後、知事は「安全宣言」を出して移転に邁進すると一部メディアは伝えている。<食の安全>に知事が拘泥していないのは明らかだ。ちなみに3・11後、〝体内被曝は心配ない〟と喧伝した御用学者の人脈がそのままシフトし、〝豊洲の汚染は気にしなくていい〟と移転を後押ししている。

 「宇都宮健児&中澤誠フリートーク」(5月6日、高円寺グレイン)で、参加者から目からウロコの指摘があった。<資本主義の良質な部分を体現する卸売市場を敵視する大資本の意向を受け、政府は卸売市場法廃止を画策している。前触れになったのが国会を通過した主要農作物種子法廃止>(趣旨)という内容だ。

 先日の「報道ステーション」で豊洲・築地併用の未来図を示していた。豊洲は大資本が主導する流通方式を導入し、築地は仲卸を残して食文化の伝統を守るという内容だったが、築地を仲卸業者ともども葬るというのが小池知事、いや政府の長期的な方針なのだろう。遺伝子組み換え解禁、TPP、グローバル経済の流れは市場問題とリンクしている。

 タイムアップ寸前、参加者が質問した供託金問題に、宇都宮氏が止まらなくなった。原告団代表を務める宇都宮氏は裁判の現状、世界の実情を延々と語り始めた。OECD加盟35カ国中、22カ国は供託金ゼロで、残る12カ国も韓国を除き常識の範囲内だ。日本の供託金(選挙区300万円、比例区600万円)は「貧困層は議員になるな」と同義で憲法の精神に反している。「供託金を廃止したら有象無象が立候補して収拾がつかなくなる」と主張する保守派にとって、自由は蔓延させてはならない毒素なのだ。

 3・11を教訓に文韓国大統領は脱原発を表明した。彼を支える20代の投票率はこの間、13%もアップしたという。漢人陣営も若年層への浸透に腐心している。小金井選挙区が自由の気風醸成に向けた蟻の一穴なることを願っている。
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