今日の出来事

一生懸命に毎日を生きる子どもの姿。そして、そんな子ども達に寄り添う、先生たちの思いを綴ります。

やっとのことで、はじめまして

2024年04月25日 | 今日の出来事
新年度が始まってひと月が経とうとしています。
子ども達は新しい生活に慣れ始め、保育室の雰囲気もだいぶ穏やかになりました。


一か月も一緒に生活していれば、たいていの子は保育者に慣れます。
ですが、私はちょと例外です。

保育園というところは、大人の大半を女性が占めています。
大半とまでいかなくても過半数は女性。
そういう保育園がほとんどだと思います。

新入園の、月齢が低い女の子にとって、男性である私はなかなか受け入れられない。
そういうことが割とよくあります。

お母さんと真逆の見た目だからでしょう。
あらゆる点でお母さんの見た目の反対を言っていけば私になる。
それくらい違います。
0歳児クラスの女の子もその一人でした。

保育室に入って行けば顔をしかめ、近寄ろうものなら顔を真っ赤にして泣いてしまいます。
お話ができたら、たぶん「たすけてー!」って言っているでしょう。

そうしたことを毎日毎日繰り返しながらも、私は足しげく0歳児室に通いました。
慣れてくれないといざという時に困りますから。すると…

2メートルくらいの距離を開けて私が部屋の隅に座っていた時のこと。
おや?近づいてくるね…
お!触った!
その子はずりばいで間近まできて、小さな手を伸ばし私の膝をポンッ。


知らなかっただけなんだよね。
少しずつ周りが見えてきたんだよね。
保育園が、保育室が、自分の居場所になってきたんだよね。

雨の一日が明けて迎えた晴天は、ちょっとした記念日になりました。

正解は子どものみぞ知る

2024年04月19日 | 今日の出来事
今日は遠足でした。
電車に二駅乗って、ちょっと遠くの公園まで。
長いローラー滑り台でいっぱい遊んできました。

帰り道。
足取りの重い疲れ顔の列。
最後尾の男の子ふたりが言い合いを始めました。
どっちがヒーローとか、そんな話が聞こえてきます。

「ねぇ、ヒーローはケンカしないんじゃないの?」
「え…」
二人ともばつが悪そう。

「ヒーローがケンカしそうになったら何を言おうか?」
そんな問いを投げかけてみましたが、しっくりこない。
二人とも押し黙ったまま。すると…


「おなかすいたって言ったら?」
後ろから二列目を歩いていた別の子がボソッと呟くと…

ウヒヒヒヒ!
一瞬のうちに全員爆笑。

それが正解か…
大人には分かりません(笑)

味自慢

2024年04月17日 | 今日の出来事
”味自慢”
定食屋の暖簾でよく見かける文句です。
暖簾に書いてあるのはいいけど、本当かな…?
そんなことありません?


散歩の帰り、某ハンバーグレストランチェーンの前を通りかかりました。
チーズフェアを絶賛開催中とのこと。
チーズは美味しい、子ども達とそんな話をしながら園まであと少しの道をもうひと頑張り。

「先生!おとうちゃんのご飯も食べてねー!」
女の子が見上げて訴えます。
女の子のお父さんは飲食業を生業とされているのです。

「そうだね。お父さんご飯作るの上手だもんね」
「うん!」
「お父さんのご飯美味しい?」
「うん!ウフフフ!」

思い出したら笑っちゃうほど愛しいパパとパパのお料理。
星の数よりも遥かに参考になる口コミでした。

朝飯前さ

2024年04月10日 | 今日の出来事
春の嵐から一日明けた今日。
立ち止まった季節が再び動き出しそうなほど、晴天に恵まれました。

階段を下りてくる多くの足音は、どこか楽しげ。
いっぱい遊んでおいで。
みんなさっさと靴を履いて玄関を出ていきます。

男の子は自分の靴を履くと、お友達の足元にしゃがみました。
靴を履かせてあげているのです。

幼児クラスから入った入園当初は、よく泣きました。
皆の前に出て話をする勇気もありませんでした。
ふと気が付くと、なんだか涙が出ちゃう。
ママがいいのよね。


人に靴を履かせるのは結構難しい。
自分で履くのと違って、足首に力が入っていないからです。
時間をかけて何とか頑張って。
やっと履かせてあげられました。

履かせて立ち上がった男の子に表情はありません。
できた!の顔も、良いことをした!の顔も、そこには無い。

さも当然のことをしただけ。
そんな気質を静かに湛える、凛とした面持ち。
いい顔でした。

思うこと、忘れないこと

2024年04月06日 | 今日の出来事
「持っときな」


新年度初日の4月1日。

先週までお兄さんお姉さんの下で生活していた女の子は、年長さんになりました。
まだ空気を読み切れない新しい年少組の無邪気さと対比したからでしょうか、
どこか背筋がしゃんとしている気がします。
入園の会でのおもてなしの歌も役割を果たしてくれました。

散歩から戻った後ろ姿に向かって、話しかけてみようと思ったのは、
もしかしたら私も何か期待したのかもしれません。
いや、試そうとしたのかも。

直前の週末に亡くした私の愛犬のことは、女の子も知っていました。
名前も、白い毛並みも。

死んだら埋めるとか、そういうことは幼児らしい。
骨になるってことは知らないのね…。

色んな葬り方があるって話をしたでしょうか?
覚えていないくらい衝撃を受けた彼女の返し。
それが「持っときな」でした。
さらに「そうしたら忘れないでしょ?」って。

これには参りました。
子どもに間違ったことを教えられませんな、保育士は。