今日の出来事

一生懸命に毎日を生きる子どもの姿。そして、そんな子ども達に寄り添う、先生たちの思いを綴ります。

生きて続きを語る

2023年05月07日 | 今日の出来事
3年3か月。
感染拡大によって世界中の注目を集めたWHO。
いわば防疫の象徴ともいうべき機関の「緊急事態宣言の終了」という発表。

それは、「共存して生きる」ことに慣れて目を逸らしかけた意識を引き戻しました。
7万5000人にも迫る死者を日本で出し、地球上から680万人以上の命を奪った脅威。
その脅威に対する緊張が、終わる。

日本でも明日から感染症法上の扱いが変わります。
感染者数の落ち着きや、3月中旬からのマスクの取り扱いなど、すでに環境は少しずつ変わってきました。
しかし、5類への変更はやはり大きい。
特に、人の意識に訴える部分が、とても大きい気がします。

今もなお日本全国の一日の感染者数は、1万人を超えたり下回ったり。
毎日のように亡くなる人もいます。

他人事だったわけではないけれど、かといって3年前の恐怖が続いているかと言えばそうではない。
共存して生きることは、いつのまにか日々更新される数字を眺めるだけになってはいなかっただろうか。
恐れたのはウイルスそのものではなく、「コロナ禍での正しい振る舞いとは何か」を意識させられる”目”でした。

自分の目であり、他人の目を怖がって過ごした3年間だったと言っても過言ではない。
ここではマスクしなくちゃね。
みんなで食事なんて…ねぇ。
ライブ?スポーツ観戦?それ大丈夫?
あれもダメ、これもダメ、ダメダメダメ。

そういう意味では、一つの歴史が終わる。
今日という日は、そのくらいの意味を持つのかもしれません。


明日から、また普段の営みが始まります。
ゴールデンウィーク明けで、4月入園の子は涙から一日が始まるでしょう。
感情豊かな保育室が息を吹き返します。

新しい世界を、歴史を生きるくらい、大人が元気を出さなければいけないのでしょう、きっと。
いつだって子どもは元気いっぱい、全力だもんね。

何よりも、今こうして生きているのですから。

親と子と

2023年05月02日 | 今日の出来事
一昨日、同僚の結婚式に参列しました。
佐藤先生です。これを読んだ保護者の方は是非おめでとうと言ってあげてください。

スーツとドレスに身を包んだ新郎新婦の姿は、
低く、急ぎ流れる曇天の下にあっても、その華やかさが霞むことはありませんでした。

入籍されてから1年と少しが経っての挙式は、時間のずれを感じるというよりはむしろ、
新婚生活をもっと謳歌したかっただろうけど、保育と後輩の育成によくぞ尽力しましたね。
そんな労いをしみじみと送りたくなる時間となりました。

新郎新婦の決意や覚悟、感謝。
初々しさ瑞々しさに心根を温められつつも、それより気持ちを重ねたのはご両親の姿でした。

様々な思いが去来したことでしょう。
娘に、息子に、どんな未来を願いどれほどの気持ちを寄せてきたか。
親にしかわからない感情が涙となって溢れる姿に、説明不要の感動を覚えました。


保育園生活の新年度が始まって1か月が過ぎました。
多くの不安を抱えて、顔に出さないように努めながら、それでも迎えにきたら我が子が泣いている。
保育園に馴染む日を願いながら、心苦しい4月を過ごされた保護者の方もいたことでしょう。

こうした記憶は、いつまでも大切にしまっておいて欲しいと思います。
どれほど我が子を案じたかを、朝の別れ際がどれほど辛かったかを。
迎えに来た時の笑顔がどれほど愛おしかったかを。

親心に晴れ姿で報いてくれるその日まで。

なくてはならない

2023年04月17日 | 今日の出来事
去る金曜日。
新年度が始まって2周目の、金曜日の午後。
乳児クラスではお誕生日会が行われました。

1階の、乳児クラスの子で4月生まれなのは三人。
一人とか二人の月が多いから三人はちょっと賑やかね。
お誕生カードをもらったりメダルをかけてもらったりしています。

メダルって、金ピカじゃなくてもなんかキラキラで嬉しい。
だから、お誕生月ではない、見ている子の目は言ってます。
いーなぁ…って。

この日もお腹のところでピカピカしているメダルが欲しい子がいました。
めちゃくちゃ欲しい。
3か月先まで待ってなんかいらんない。
今欲しい。

先生が一生懸命なだめます。
お誕生日が来たらちゃんともらえるからね。


お誕生会も終わり、順番に帰りを待つ日常が戻りました。
めいめいおもちゃで遊んでいます。
一人を除いて。

お誕生会が終わっても、首からメダルをかけてもらえなかった。
こんなに欲しいのに…。
一人泣いていました。

そんな彼女のそばでしゃがみ、目線を合わせた先生がいました。
2週間前に入職したばかりの新人保育士。

仕事を覚えている真っ最中ですから、まだ一人で動くことは少ない。
先輩たちから指示をされながら少しずつ、勝手を覚えていきます。
でも違いました、今回は。
気持ちの整理がつかず泣く子に寄り添うのは早かった。

膝に乗せて、気持ちに寄り添っています。
伝えたい子にだけ伝わる声で、気持ちを乗せて。


気持ちを切り替えてもらった子が、いつもの顔でやってきました。
手首がかゆいんだって。
さっぱりした表情を見れば、じっくり話を聞いてもらったからだと分かります。
よかったね。

せっかくなので、手首に魔法をかけてもらうのもやってもらったら?
先生はワセリンを取りに行って、女の子は扉の前で待っています。

女の子、またやってきました。
「〇〇先生に塗ってもらったの?」
「うん…」
「もうかゆくない?」
「うん…」

少し下を向いて答えるその顔は、どこか恥ずかしそう。
笑顔ではありません。
すこーしも口角上がってない。
でも分かりやすい表情です。
お話を聞いてもらった先生のことを大好きと言っています。

未来が行き交う場所

2023年04月09日 | 今日の出来事
新年度が始まりました。
5歳児クラスを小学校に送り出し、新入園児を受け入れる。
年度という節目は、切り替わる感じがします。

前年度からの連続性をかろうじて保っているのは、進級する子達の日常。
新入園児が泣く保育室においては、貴重な”いつもの景色”です。
はじめましての子達が何人も生活を始めるのですから、しかたありません。

0歳児や1歳児と関わる職員は、そういう慌ただしさの中で4月上旬を終えます。
気が付いた時には、卒園していった5歳児たちが少し遠くなってしまう。
それほどに新入園児と向き合うことに日々全力を注ぐわけです。

泣いて泣いて、少し気分が紛れてまた泣いて。
日々、少しずつ泣く時間が笑顔に変わっていく。
やっと落ち着いたら、一人ひとりの個性がクラスを彩り始める。
前年度を上書きするほどに。
人が生活する場所はたぶんそういうものなのでしょう。


新年度が始まって4日目のことでした。
日を追うごとに保育園でお昼寝ができる子が増えて、落ち着き始めた保育室。
今年の慣らし保育は去年より順調みたい。

そんな時に呼ばれて玄関へ行くと、そこには小学生。
新しいランドセルを背負って、ワンピース姿。
ピシッと決まっていますが、先週は近所の公園で裸足でした。
今立っている場所は、汚れた足を拭くために友達と並んで座った場所。

入学式を終えた卒園児が、ご両親と一緒に顔を見せに来てくれたのでした。
ピッカピカの小学一年生。
保育室で一緒に過ごしてからまだ6日しか経ってないけど。

その日はさらに二人が立ち寄ってくれました。
人懐っこい笑顔はそのままに、だけど在園と卒園をちゃんとわきまえていそうな雰囲気で。
そういうところに巣立ちを感じるのかなあ。
その時は1歳児クラスに進級した男の子が、私の膝に座って小学生のお姉さんをまっすぐ見上げていました。

新年度に入り、多くのことが切り替わりました。
そんなさなかにあって、新入園児と進級児、そして新入学の子。
前に進もうとする多くの未来が保育園に集まった、麗らかな昼下がり。

美味しかったお別れ遠足

2023年03月07日 | 今日の出来事
今日は5歳児クラスのお別れ遠足でした。
お別れと冠していても、しんみりは全く無し。
行先はサンシャイン水族館。

通勤ラッシュを過ぎたとはいえ、わりと混み合う準急に乗って。
足早に行き交う地下通路を抜けて。
動く歩道のベルトにのっけたオレンジ帽子の頭が、サーモンのにぎりに見えて。
はるばる行って参りました。

間近を気持ちよさそうに泳ぐお魚さんに、子ども達は大はしゃぎ。
並んだ水槽一つひとつで、8人が止まって歓声を上げるものだから、
後続はちょっとした渋滞ができていました。

満喫してくれたようです。
事故もなく、無事に帰ってきました。
担任がしっかり企画したからでしょう。


全身に疲労感を感じた5歳児クラスは、帰ってきてすぐのおやつではとても静か。
数名が、眠い…と漏らしていました。

おやつを食べて少し回復した後の帰りの会。
皆の前で一日の思い出を発表します。
サッと手が挙がる。
うんうん、そうでしょう。
楽しかったもんね。

指されて前に出る5歳児。
「今日は水族館に行って…お弁当を食べたのが楽しかったです!」

ん…?

次の子。
「水族館に行って、お弁当がおいしかったです!」

水族館に行ったことは確かに楽しかった。
いっぱいお魚見られて興奮もした。
だけど、何か一つって言われるとやっぱり…お弁当かしら。

情報量が多すぎると、かえって印象は薄くなったりします。
大人の私も「今日何見てきたの?」と聞かれたら、
「………潜水艇みたいなロボット…?的なやつ」
一番最初の展示物です。

前からずーっと楽しみにしていたのはお弁当。
輪郭がはっきりしていた唯一の物でしょうから。
頑張って背負って行ったんだもんね。


保育園に行ってた時、たしか水族館に行ったよね。
大きくなって思い出すでしょう。
ぼんやりと。

お弁当作ってくれたよね。
これは、死ぬまで忘れません。
はっきりと。

そうだ!来年のお別れ遠足は、お弁当の味が最高に楽しめるところへ行こう!
もうちょいクタクタになったら、たぶんお弁当はもっと美味しい。
善福寺川沿いをずーっと歩くのっていいかも!
日和田山の登山とかどうかしら!
なーんて。