今日の出来事

一生懸命に毎日を生きる子どもの姿。そして、そんな子ども達に寄り添う、先生たちの思いを綴ります。

せかいのしくみ

2024年07月02日 | 今日の出来事
「ねぇせんせ」
子どもに頼まれて読んでいた絵本から目を離し、顔を上げると、そこには5歳児クラスの〇〇くん。
「ん?」

「あのさ、せかいはなにでできてるの?」


普段からそれほど話す事はなく、遊ぼうと言ってくることもあまりない。
落ち着いていることの方が少なく、おしゃべりをするより動き回って遊ぶタイプ。
そんな彼が、せんせい、あのさと言うものだから。
急に言われてもその声色で、真面目な質問なんだと理解しました。

「せかい?せかいか…」
いい質問だけど難しい。
5歳に伝わる世界のしくみって何だ?

「世界はね、BB弾で出来てる…かな?」
「え?BB弾は鉄砲の弾でしょ?」
BB弾の正式な使い方を知ってるのか…

「あー、うん、えーとね、BB弾て小さいでしょ?」
「うん」
「そう。で、BB弾をずーっとずーっと小さくしていくわけ。〇〇くんが見えないくらい」
「うん」
「で、その小さい玉を、いーっぱい集めてぎゅーってすると」
「このシャツになるし、〇〇くんになるし、先生のメガネになるんだよ」
「え?じゃぁこのカーテンも?」
「そう」
「じゃぁちきゅうは?」
「地球っていうか、地面ね、〇〇くんが遊ぶ地面は大きいね」
「うん」
「大きいってことはさ、小さい玉がいーっぱい必要なんだよ」
「へーっ!」

科学や物理の面白さは、想像力によって膨らんでいきます。
だからド派手な実験をテレビでやったりする。
「へーっ!」は、知ろうとする者にとって唯一の原動力です。

大きくなって、原子モデルを見たら、思い出してくれるかな?
あー、これをBB弾って言ってたやつが昔いたような気がするな…って。

身近なヒーローが間近に

2024年06月12日 | 今日の出来事
お昼寝が終わるのは午後2時半。
トイレに行ってパジャマを着替えて、3時にはおやつが始まります。
今日の気温は30℃を超えるとか超えないとか。

2時過ぎに1階の保育室を覗いたら、大半の子が起きていました。
暑さのせいでしょうか。
起きてしまった子ども達は絵本を読んだりブロックで遊んだりしながら、部屋の灯りが点くまで過ごしていました。

見知らぬ二人が保育室に入ってきたのは、部屋が明るくなる少し前。
ん?誰か来たね?
知らない人だね…
そんな中、男の子は突然の来客が消防士であることに気付きました。

大好きなはしご車。はしご車と言えない頃に呼んでいたのは「ウーカンカン」
保育園の帰りにだって、ママと見に行く消防署。
そこで働いている人たちが目の前にいる。

嬉しくて仕方がないけれど、どうしたらよいか分からないから、手をひらひらさせながら小躍り。
室内を点検する消防士さんのまわりをウロウロしています。

一通り見て回って、消防士さん達は2階へ。
あぁ行っちゃう!
見送っていたら、消防士さん、手を出してくれました。
消防士さんの大きな手にタッチ!

良かったね。
タッチできたね。
話しかけても上の空。
消えていった方をチラチラ見やり、その余韻に浸っていました。

日本中が注目するアスリートではなく。
テレビで見ない日は無いアイドルでもない。

清掃車に乗って手早く仕事をする人。
緊急車両に乗って街を颯爽と駆け抜ける人。
何人ものお客さんを乗せて大きな車両を操る人。

子ども達にとってのヒーローは、結構身近にいるのです。

はじめの一歩

2024年06月12日 | 今日の出来事
男の子が手を上げました。
まわりの子も手を上げています。
指されたのは別の子、男の子は私の方に人懐っこい笑顔を向けています。


夕方、おやつを食べた幼児クラスは、帰りの会をしています。
テーブルに座った子ども達の視線を集めるように、お当番の子が3人、並んで立っています。

お当番の子が順番に発言を始めました。
今日の出来事について思ったことを発表しているのです。
「今日は外に遊びに行けなかったのが悲しかったです」
そう言う年長クラスの子。
うれしかったこと、かなしかったことなど、気持ちを伝える練習です。

そうした発表に対して、質問をしたい子は手を上げる。
男の子が手を上げていたのは、同じクラスの女の子が発言をした時でした。

決して主張が強い子ではないから、興味がわきました。
当てられたらちゃんと質問できるのかしら?

「ほら背中しゃんとして、たかーく手を上げたら当ててくれるかもよ」
男の子はニヤニヤ。可愛いけどホントに分かっていて手を上げているのかは疑問です(笑)
そして…

「じゃあ〇〇くん!」
当てられてしまいました。

白羽の矢が立った瞬間、男の子から笑顔が消えました。
何か聞きたいことだって?
何かない?
男の子は困っています。

そうしていると、質問をするはずだった同じクラスの女の子が近づいてきました。
言うのが恥ずかしいと思ってやってきてくれたんだって。
目の前まで来てくれたから、小さい声でも届くね。

でも男の子、さらに小さくなって下を向いてしまいました。
明日も一緒に遊んでくれますか?って聞いたら?
ちょっと助け舟を出したところ…

「あしたいっしょにあそんでくれますか?」
代わりに言ってくれたのは、お当番の女の子。
目の前まで来てくれた女の子でした。

「うん…」
うなずいた男の子と、それを見て満足そうに立ち位置まで帰っていく女の子。
不器用だけれど、気持ちが通った瞬間でした。

遊んでくれるってさ。
注目され終わった男の子に投げかけたら。
またいつもの人懐っこい笑顔が返ってきました。

やっとのことで、はじめまして

2024年04月25日 | 今日の出来事
新年度が始まってひと月が経とうとしています。
子ども達は新しい生活に慣れ始め、保育室の雰囲気もだいぶ穏やかになりました。


一か月も一緒に生活していれば、たいていの子は保育者に慣れます。
ですが、私はちょと例外です。

保育園というところは、大人の大半を女性が占めています。
大半とまでいかなくても過半数は女性。
そういう保育園がほとんどだと思います。

新入園の、月齢が低い女の子にとって、男性である私はなかなか受け入れられない。
そういうことが割とよくあります。

お母さんと真逆の見た目だからでしょう。
あらゆる点でお母さんの見た目の反対を言っていけば私になる。
それくらい違います。
0歳児クラスの女の子もその一人でした。

保育室に入って行けば顔をしかめ、近寄ろうものなら顔を真っ赤にして泣いてしまいます。
お話ができたら、たぶん「たすけてー!」って言っているでしょう。

そうしたことを毎日毎日繰り返しながらも、私は足しげく0歳児室に通いました。
慣れてくれないといざという時に困りますから。すると…

2メートルくらいの距離を開けて私が部屋の隅に座っていた時のこと。
おや?近づいてくるね…
お!触った!
その子はずりばいで間近まできて、小さな手を伸ばし私の膝をポンッ。


知らなかっただけなんだよね。
少しずつ周りが見えてきたんだよね。
保育園が、保育室が、自分の居場所になってきたんだよね。

雨の一日が明けて迎えた晴天は、ちょっとした記念日になりました。

正解は子どものみぞ知る

2024年04月19日 | 今日の出来事
今日は遠足でした。
電車に二駅乗って、ちょっと遠くの公園まで。
長いローラー滑り台でいっぱい遊んできました。

帰り道。
足取りの重い疲れ顔の列。
最後尾の男の子ふたりが言い合いを始めました。
どっちがヒーローとか、そんな話が聞こえてきます。

「ねぇ、ヒーローはケンカしないんじゃないの?」
「え…」
二人ともばつが悪そう。

「ヒーローがケンカしそうになったら何を言おうか?」
そんな問いを投げかけてみましたが、しっくりこない。
二人とも押し黙ったまま。すると…


「おなかすいたって言ったら?」
後ろから二列目を歩いていた別の子がボソッと呟くと…

ウヒヒヒヒ!
一瞬のうちに全員爆笑。

それが正解か…
大人には分かりません(笑)