今日の出来事

一生懸命に毎日を生きる子どもの姿。そして、そんな子ども達に寄り添う、先生たちの思いを綴ります。

清廉さを学ぶ

2022年07月28日 | 今日の出来事
「いち!」「えい!」
「にぃ!」「えい!」
「さん!」「えい!」
掛け声に合わせて、小さなこぶしが空を切ります。

見本に呼ばれた子は、前に立つ時こそ気恥ずかしそうな顔をするけれど、
腹の底から十を数え切った後は、やり切った誇らしさからいい顔をしています。

力み過ぎて、数字を一つ抜かしてしまっても、誰も笑わない。
号令に、神速で反応することに、みんなが集中している証拠です。

「いい号令だ!」

黒い帯を締めた先生から、太い声で励まされる。
皆に聞こえるように、大きな声で褒めてくれることの、なんと誇らしいことか。

一生懸命のすばらしさを、空手道を錬磨し続けるお二人は教えてくれています。


水遊びでお勉強

2022年07月19日 | 今日の出来事
4歳児クラスの男の子が、マヨネーズの容器に水を入れ始めました。

やわらかいマットの上にカラの容器を立てる。
5センチくらい上からバケツの水を注ぐ。
水の勢いに負けて容器が倒れる。
容器を立てる。
また倒れる。

バケツの傾きを調整して再挑戦。
チョロチョロだから今度は成功。

別の子は、お猪口のようなままごとの器で水を入れようとします。
タライの外に置いて入れ始めたけれど、けっこう漏れちゃう。
マヨネーズの容器をタライの中に移して水を入れ始めました。
こうしたら漏れても水減らないね。

3歳児クラスの男の子。
水でパンパンのマヨネーズの容器をもって、どこかへ行きたそう。
ギューッて持つとピューッと出てきちゃうから、手のひら全体を使って優しく持ちます。
受け取った子は、入口の硬いところと容器の底に手を添える。
これなら出てこない。

クセのあるおもちゃで遊んでいると、結構頭を使っているのが分かります。
環境に合わせる努力をしてる。
だからとっても集中しています。
でないと上手くいかないからね。

マヨネーズの容器はただの廃材。
だけど、水鉄砲よりも、ジョーロよりもいい仕事をしています。
そしてこういう試行錯誤が、子どもの地頭を良くするんです。

色とりどりの可能性

2022年07月01日 | 今日の出来事
うつむいたまま差し出された紙切れ。
そこには…


紙を切って、色を塗って、貼る。
こんな遊びをしています。

「ねぇ、先生?お寿司屋さんごっこしよう?」
そうして始まりましたが、開店直後、店内はお客さんで満員。
お寿司が足りません。

それなら、と。
自分が食べたいお寿司は自分で作ることになりました。
切って塗って貼る作業は、お寿司づくりです。

「ねぇ先生、タマゴとイクラとホタテ作って!」
通りがかりの食いしん坊が、好き勝手に発注します。
色鉛筆をとっかえひっかえしながら寿司を握る。
忙しい。

隣で同じ作業をしていた子の手が、たまに止まり始めました。
観察しているようです。

あれ?お金も払わずにお寿司をテイクアウトしていった子は…?
ロッカーの隙間にギュウギュウ詰めてる…。


遊びの時間も終わり、片付けてお昼ごはんです。
誰かが「今日はハヤシライス!」と跳びはねながら喜んでいます。
それに同調してイエーイと言っている子も。

使っていたハサミを片付けて、戻ってきて…
私に向かって差し出したのは、さっきまで使っていた白い紙。
それの余りを四つに折ったもの。
開いてはじめて、メッセージだと気づきました。
手を止めて観察していた子です。

「〇〇ちゃんはえがへたくそ」
自分の事をそう評価していました。

私と先生とはどこか違う。
なんとなく先生は上手。
わたしなんか下手くそ。

自分は下手だって、そう思って作ったわけではないけれど、
でも、気付いてしまった。
先生が作ったお寿司の方が、本物みたい。
先生が作ったお寿司の方が、美味しそう。
私もあれがいいな。
私のより、先生のが…


当然、本人は気付いていません。
いいな、と羨む気持ちは前へ進む力になることを。
違いに気付くことは、もうすでに前へ進み始めていることに。

心がまだ弾力性で守られている間は、
何度でも何度でも、すり傷を作りましょう。

それらしい言葉で励ましても、まだ幼い心には届きません。
だから、今日も描いて明日も描いて、
そうしたら、すり傷なんか、ペロッと舐めて済ませるくらいになる。

真っ白な心が羨ましい、ハヤシライスの日の出来事。