今日の出来事

一生懸命に毎日を生きる子どもの姿。そして、そんな子ども達に寄り添う、先生たちの思いを綴ります。

未来を想う

2022年06月20日 | 今日の出来事
明日は夏至なんですって。
まだ明るい空を見やり、そろそろ延長保育の時間かな…ひととき保育室を思って帰宅。
寝ていた飼い犬が、慌てて玄関に出迎えにきました。

おもむろにテレビをつけると、夕方のニュース番組。
意識の少し外側で聞いていると、懐かしいワードが。
ん?カルガモ・・・?

通勤ラッシュの時間帯に、京成線にカルガモの親子が迷い込んだニュースを報じていました。
乗客が撮影した映像が流れていました。
母親の後ろを必死についていく子ども達。

10分ほど運転を見合わせ、職員がモップで線路外に誘導した。
視聴者をホッとさせたところで、ニュースは次の話題に移っていました。

すかさず皇居のカルガモを調べてみると…34年も前のことだと判明。
あの時も道路を封鎖して、カルガモ一家がお掘に渡っていく様子を、多くの国民が固唾を飲んで見守りました。


『笑顔があふれる未来へ』
いずみ保育園の卒園式、その式次第にはこう記してあります。

情報が簡単に手に入るようになって、
他人の悪口が簡単に言えるようになって、
人の仕事がシステムにとって変わって、
気持ちの通わない人間関係が当たり前になって。

便利さと引き換えに、人は生きずらさを受け入れるしかなくて。
そんな現代にあって、目の前で笑う子ども達の幸せを願う保育士。
未来を憂うからこそ、待ち受ける未来が心配でなりません。
保育室で見せる姿と同じように、いきいきと生きられるだろうか。

通勤ラッシュの時間帯に、10分も電車を止めた、その英断には頭が下がります。
まだまだこの社会の未来は、子ども達の未来は明るい。

この子達が生きる未来にはまだまだ優しさが、笑顔が溢れているのかも、
いや、きっとあふれているはず。

カルガモ親子が、仕事と結びついてしまうのは、単なる職業病です(笑)

ぼくの大好きなもの

2022年06月19日 | 今日の出来事
いつ止むの?とため息交じりに厚い雲を見上げる、
照りつける日差しの強さに不安を感じることも。

ジメッとしているから、子ども達の体調が心配です。
室温にも、湿度にも、寝汗にも水分補給のタイミングにも気を遣わないと、
小さな体はすぐに音を上げてしまいます。
実際、ここ最近はとてもお休みの子が多い。

でも夕方は、比較的過ごしやすいです。
建ち並ぶ住宅は西日を避け、たまに北寄りの風が吹くと心地良い。
そんなある夕方のお話。

おやつを食べ終わって少し落ち着いて、お散歩に出ました。
行先は近所の踏切。
車は通れない、小さな踏切。

園を出発して5分くらいで、点滅するランプが見えます。
歩きながら「あ!電車来た!」と楽しめる場所。
踏切はとても小さいけれど、すぐ近くを走り抜ける電車はすごい迫力です。
慣れていないと泣いてしまう子もいるほど。

やってくる電車を、みんな首を長くして待ちます。
私はそんな子ども達を後ろから見守ります。
ですが、一人だけ。
一人だけこっちを見てる。

1歳児クラスの男の子が、しゃがんで体を少し傾けています。
両手はグーにして胸の前。

「何が見えた?」
「ブーブー!」
しゃがんだまま指した先にいたのは、ごみ収集車。

ごみ収集車特有のモーター音に気付いたようです。
ちょうど脇道から出てきたところで、私達が通ってきた道でゴミを集めるために停車。
その様子を、姿勢を崩さずに、男の子は見ていました。


電車を見て、来た道を戻り、園に着きました。

「あ!ブーブー!」
車道の向こう側に止まっていた運送会社の軽トラックを見つけました。
「ブーブー!」
そして、運転手が乗っているのに気付くと、
「バイバーイ!」
小さな手をブンブン振って声援を送ります。
運転手の方もこれをされちゃぁ笑顔にならざるを得ません。
手を振り返してくれました。
「バイバーイ!」
男の子はずっと手を振っています。


ジメジメして寒暖差が激しくて、からだを壊しそうな天候が続きますが、
「バイバーイ!」は、お仕事をする人への声援。
多くの方が、大抵いつも手を振り返してくれます。
働く人の温かさが、子ども達に”はたらくくるま”をカッコいいものにするのだと思います。

とても特別な、ある日のお話

2022年06月12日 | 今日の出来事
火曜日の夕方。
2階、幼児クラスの保育室。
一歩入るなり、一人の女の子が近付いてきました。

いつもなら大声で迎えてくれるのですが、今日はちょっと違う。
そろそろと近づいてきます。
何か言いたそう。

「ねぇ先生?」
「ん?」
「あといくつ寝たら金曜日?」
「えーっと今日が火曜日でしょ?、水、木、金」
「3回だね。どうしたの?」
「あのね、金曜日は2時半お迎えなの!」
「パパ?」
「うん!」
ちょっとだけヒソヒソ。

あけっぴろげに自慢しないのは、周りが見えているからでしょうか。
先生が来たことを他のお友達に気付かれる前に、聞いてもらわなくちゃ!
そう思ったのかな?

それからも日を追うごとに「あと何日?」と聞いてきます。
なんだかサンタクロースを待ってるみたい。

そうして木曜日。
「明日は2時半お迎え!ウフフフ!」
待ちに待ったといった感じだけれど、来るのはパパ。
いつでも会えるパパだけど、2時半に来るパパは違う。
ぜーんぜん違う。

「あ、でも先生明日休みだわ…」
「えーじゃぁさよならできないじゃん。もぅ!」
「そうだね、残念残念」

前回の早帰りの日、私はテラスにいました。
すると「せんせー!バイバーイ!」と手を振ってくれたのです。
明日もそれができると思ったのにぃ。
可愛いぼやきです。


金曜日どうだった?
明日、そう聞く事もできますが、たぶん聞きません。

女の子は、火曜日から一日一日を楽しみにしてきました。
金曜日を迎えることを、何よりも楽しみに。

ガタッと扉が開いて、笑顔のパパがそこに立っていて。
楽しかったことなど聞いてもらいながら帰ったのでしょうか。
それとも、これからどうする?そんな相談をしたかな。

もう十分に幸せな時間を過ごしたことでしょう。
だから「あの時」の話は、ちょっと寂しさを呼んでしまうかもしれません。

「ねぇ先生?」そうやって話しに来たら聞きましょうか。
楽しかった話を、ちょっとヒソヒソで。

わたしと私

2022年06月04日 | 今日の出来事
あれ?広いお部屋ね。
こっちで遊んでいいの?
お友達も一緒ね。

ここにつかまれば”わたし”一人でもたっちができるわ!
こっちへ行くとお水に触れるのよね!
”わたし”、なんでもできちゃうでしょ?

時折、頭だけ振り返ってはエヘーと笑顔を見せるのは0歳児クラスの女の子。
お友達が、時には先生も先に帰ってしまうから、夕方はちょっと寂しい。
でも普段生活をしているお部屋の外に出て遊んでいるので、今はニコニコなのです。

よいしょっと。
テーブルの端っこまで来たからまたあっちへ行くわ!

女の子がつたい歩きをする一方で、一緒に出てきた男の子の方は、テーブルの下に潜って向こう側を探検。
戻ってきて顔を出すたびにバァと可愛い歯がチラッ。


突然の出会いは、遊び始めて10分ほど経った時でした。

テーブルの下から這い出てきたのは、少し離れたところでジグソーパズルに首っ引きだった、2歳児クラスのお姉さん。
ぬぅっと出てきて目の前に立つものだから、つたい歩きをしていた”わたし”は、立ち止まって見上げます。

自分の事をまっすぐに見上げる女の子の瞳を、お姉さんも探ります。
このあかちゃん、”私”のことを見てるね。

小さな”わたし”と、大きくなった”私”は、互いに見つめ合いながらしばらくそのまま。
こんなに近くで見たのは初めてだから、興味津々です。

すると小さなわたしは、つかまり立ちの支えにしていた手を、お姉さんの体に移し、さらに近くへ。
そのまま手を高く伸ばして、お顔を触ってみます。
興味に任せて顔を触られても、お姉さんは抵抗しません。
むしろ、穏やかな表情でされるがままです。
つかまり立ちの支えになっているから、身体全体がわずかにのけ反っていますが、それでもじっと我慢。

お姉さんの顔がほころんだのは、その直後でした。
小さなわたしが、お姉さんの胸元に顔を押し付けてグリグリ。グリグリ。

この赤ちゃん、私のこと好きなのかしら?
戸惑いながらも、その顔はとても嬉しそう。

普段はアレが嫌!コレが嫌!がとても激しいお姉さん。
だから、こんな懐の深さを見せられると、胸が詰まります。
確かな成長を見て取ることができる、こうした場面はたまりません。


見つめ合っていた二人は、お互いに何を伝えたのでしょうか。

はじめまして、私はお姉さんよ。
はじめまして、わたしのお友達になってくれる?