『ジェーン・エア』をTOHOシネマズシャンテで見てきました。
(1)エミリー・ブロンテの原作の方は、なんだか少女趣味的な感じがしてとうとう手つかずのママ現在に至ってしまったところ、本作が公開されると耳にし、手っ取り早く名作の粗筋でも知っておこうというくらいの感じで見に行きました。
ですが、ジェーン・エアを演じる主演のミア・ワシコウスカがなかなか素晴らしく(『永遠の僕たち』のアナベル役でも随分と印象的な演技を披露していました)、また19世紀のイギリスの雰囲気も良く出ているのでマズマズでした。
物語は、19世紀の前半のスコットランド。
主人公のジェーン・エア(ミア・ワシコウスカ)は、両親に早くに死なれ、身を寄せた義理の叔母との折り合いも悪く、寄宿学校に入れられますが、そこでも教師に酷い扱いを受けます。
やっとの思いでそこを出た後、教師を経て、今度は立派な屋敷に住む少女アデールの家庭教師となります。
ジェーンは、それまでマッタク男性とつきあったことがなかったところ、その屋敷の主人のロチェスター(アデールの後見人:マイケル・ファスベンダー)の男らしさに魅力を感じ、彼の方も若く清楚なジェーンに惹かれます。
遂に二人は結婚という運びになるのですが、結婚式の場に男が飛び込んできて、「その結婚は無効だ、ロチェスターには妻がいる!」と叫びます。
どういうことなのでしょうか、ジェーンはいったいどうなってしまうのでしょうか、……?
ジェーンが家庭教師をするために住み込むロチェスターの屋敷のなんともいえず不気味な雰囲気、ジェーンが真実を知ってその屋敷を飛び出して彷徨う荒野の荒涼とした有様、そして若いながらも実に毅然とあり得ない出来事に対峙するジェーンの姿といったものが凄く印象に残る作品でした。
また、ミア・ワシコウスカの相手役のマイケル・ファスベンダーは、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でお目にかかりましたが、なかなか難しい役柄をそつなくこなしていました。
モウ一人忘れてならないのは、家政婦のフェアファックス夫人を演じたジュディ・デンチでしょう。
既に77歳ながら、このところ『マリリン』とか『J・エドガー』などで重要な役柄を演じているところ、本作においても、彼女が画面に存在することでその時代の雰囲気が漂ってくるような感じとなります。
なお、監督のキャリー・ジョージ・フクナガが、『闇の列車、光の旅』の監督でもあることを見終わってから知りました。
(2)エミリー・ブロンテの原作を映画化した作品は数多くあるようですが、1943年制作のものがたまたま家にありましたので見てみました。
両者を比べて目立つ違いと言えば、例えば次のようなところでしょう。
イ)前作においてはロチェスターの存在感が物凄く大きいのです。これはなにもマイケル・ファスベンダーの演技に問題があるというわけではなく、前作においてロチェスターに扮したのがオーソン・ウエルズだからでしょう。屋敷を離れて生活していることが多かったり、いきなり猟銃を撃ったりしながらも、ジェーンを愛してしまうというのも、オーソン・ウエルズだと妙に説得力があります。
ロ)逆に、ジェーン・エアとしては、前作のジョーン・フォンテインよりも本作のミア・ワシコウスカの方がずっと魅力的です。出演時の年齢が4歳くらいしか違わないにもかかわらず、ジョーン・フォンテインはずっと大人びて見え、世の中のこと(特に男性のこと)がよくわからないといった感じというよりも、荒馬のようなロチェスターをむしろ手なずけようとしている風情に見えました。
ですから、秘密がわかって屋敷を立ち退くことについても、本作の方が説得力があるように思えてきます〔本作の場合、「尊厳を守りたい」とだけ言って急いで館を飛び出すところ、前作においてジェーンは、ロチェスターが大変な状況に置かれていることを十分承知し、あまつさえロチェスターを愛していると口にするにもかかわらず、彼を放り出して立ち去ってしまうのですから、どうしてなのと思わずにはいられません〕。
ハ)前作では、エミリー・ブロンテの原作本がまず画面に映し出され、それが朗読されることから映画が始まり、全体として出来事の順序どおりに描かれていきますが、本作では、ジェーンがリヴァース牧師(ジェイミー・ベル)の家に逃げ込むところから映画が始まりますから、以前の出来事は回想という形を取ることになります。
これは、前作が、様々な出来事が手際よく説明されていることもあって、甚だ理解しやすいように作られているのに対し、本作は、むしろサスペンス的な要素を強める結果となっていることにつながっているのでは、と思いました。
となると、本作を見てから前作を見た方が、興味をそがれませんし、またなるほどそうなのかと腑に落ちる点もいくつも見出せて(注1)、好ましいのかもしれません。
ニ)本作では、ロチェスターとの結婚の前に、ジェーンをいじめた叔母からの使いが来て、ジェーンは、心臓麻痺で会いたがっているという叔母のところに出向きますが、前作では、結婚式の後ロチェスターの館から飛び出したものの行くあてがないところから、叔母のところに出向きます。
これは、本作の方がつじつまが合っているように思われます(いくら行くあてがないとしても、あれほど嫌っていた叔母のところに、ジェーンが自発的に戻るということは考えられません)。
それに、ロチェスターの屋敷を飛び出した後に辿りついた牧師の家で世話を受けるというのも説得力があるように思われます(注2)。
(3)渡まち子氏は、「物語は知り尽くされ、鮮度は低いのだが、フレッシュなのはキャストだ。ジェーンは、決して容姿には恵まれていないが意志が強く知的な女性。過酷な人生を凛として生きるヒロインを演じるミア・ワシコウスカが実にいい。小説の実年齢に近いせいか、違和感なくフィットしている」などとして65点をつけています。
(注1)例えば、本作では、寄宿学校で知り合った友達ヘレンがいきなり肺炎で死んでしまいますが、前作によれば、元々体調が悪かったヘレン(何と、少女時代のエリザベス・テーラーが扮しています)が、ジェーンと一緒に校長によって、雨の中を走らされるという罰を受け、病気が亢進して死んでしまいます。
また、ジェーンは、寄宿学校の後、教師を経てからアデールの家庭教師になりますが、そこら辺りは本作ではっきりと説明されていません。
前作によれば、寄宿学校の成績がいいのに目をつけた校長が、ジェーンを同校の教師に据えるのです。というのも、支払う給与の半分を寄宿寮として予め徴収できるため人件費を抑えられるからだとされます。
(注2)ただ、ジェーンがロチェスターの館に戻るように仕向けるためでしょうか、リヴァース牧師が、ジェーンと結婚してインドに行きたいというと、結婚しないならばいっしょにインドに行ってもいいなどとジェーンは答えます。牧師は「まだあの男が忘れられないのか、不実な愛は捨てろ」とまで言いますが、「無理に結婚すれば、争いが生じ、死ぬことになる」などと言ってジェーンは拒絶します。ここら辺りは、親戚筋の死によって大金が転がり込んだジェーンを我が物にしようとしたいだけなのだ、とリヴァース牧師の本心を読んだのかもしれませんが、ちょっとジェーンの方が頑ななのではと思えてきます。
★★★☆☆
象のロケット:ジェーン・エア
(1)エミリー・ブロンテの原作の方は、なんだか少女趣味的な感じがしてとうとう手つかずのママ現在に至ってしまったところ、本作が公開されると耳にし、手っ取り早く名作の粗筋でも知っておこうというくらいの感じで見に行きました。
ですが、ジェーン・エアを演じる主演のミア・ワシコウスカがなかなか素晴らしく(『永遠の僕たち』のアナベル役でも随分と印象的な演技を披露していました)、また19世紀のイギリスの雰囲気も良く出ているのでマズマズでした。
物語は、19世紀の前半のスコットランド。
主人公のジェーン・エア(ミア・ワシコウスカ)は、両親に早くに死なれ、身を寄せた義理の叔母との折り合いも悪く、寄宿学校に入れられますが、そこでも教師に酷い扱いを受けます。
やっとの思いでそこを出た後、教師を経て、今度は立派な屋敷に住む少女アデールの家庭教師となります。
ジェーンは、それまでマッタク男性とつきあったことがなかったところ、その屋敷の主人のロチェスター(アデールの後見人:マイケル・ファスベンダー)の男らしさに魅力を感じ、彼の方も若く清楚なジェーンに惹かれます。
遂に二人は結婚という運びになるのですが、結婚式の場に男が飛び込んできて、「その結婚は無効だ、ロチェスターには妻がいる!」と叫びます。
どういうことなのでしょうか、ジェーンはいったいどうなってしまうのでしょうか、……?
ジェーンが家庭教師をするために住み込むロチェスターの屋敷のなんともいえず不気味な雰囲気、ジェーンが真実を知ってその屋敷を飛び出して彷徨う荒野の荒涼とした有様、そして若いながらも実に毅然とあり得ない出来事に対峙するジェーンの姿といったものが凄く印象に残る作品でした。
また、ミア・ワシコウスカの相手役のマイケル・ファスベンダーは、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』でお目にかかりましたが、なかなか難しい役柄をそつなくこなしていました。
モウ一人忘れてならないのは、家政婦のフェアファックス夫人を演じたジュディ・デンチでしょう。
既に77歳ながら、このところ『マリリン』とか『J・エドガー』などで重要な役柄を演じているところ、本作においても、彼女が画面に存在することでその時代の雰囲気が漂ってくるような感じとなります。
なお、監督のキャリー・ジョージ・フクナガが、『闇の列車、光の旅』の監督でもあることを見終わってから知りました。
(2)エミリー・ブロンテの原作を映画化した作品は数多くあるようですが、1943年制作のものがたまたま家にありましたので見てみました。
両者を比べて目立つ違いと言えば、例えば次のようなところでしょう。
イ)前作においてはロチェスターの存在感が物凄く大きいのです。これはなにもマイケル・ファスベンダーの演技に問題があるというわけではなく、前作においてロチェスターに扮したのがオーソン・ウエルズだからでしょう。屋敷を離れて生活していることが多かったり、いきなり猟銃を撃ったりしながらも、ジェーンを愛してしまうというのも、オーソン・ウエルズだと妙に説得力があります。
ロ)逆に、ジェーン・エアとしては、前作のジョーン・フォンテインよりも本作のミア・ワシコウスカの方がずっと魅力的です。出演時の年齢が4歳くらいしか違わないにもかかわらず、ジョーン・フォンテインはずっと大人びて見え、世の中のこと(特に男性のこと)がよくわからないといった感じというよりも、荒馬のようなロチェスターをむしろ手なずけようとしている風情に見えました。
ですから、秘密がわかって屋敷を立ち退くことについても、本作の方が説得力があるように思えてきます〔本作の場合、「尊厳を守りたい」とだけ言って急いで館を飛び出すところ、前作においてジェーンは、ロチェスターが大変な状況に置かれていることを十分承知し、あまつさえロチェスターを愛していると口にするにもかかわらず、彼を放り出して立ち去ってしまうのですから、どうしてなのと思わずにはいられません〕。
ハ)前作では、エミリー・ブロンテの原作本がまず画面に映し出され、それが朗読されることから映画が始まり、全体として出来事の順序どおりに描かれていきますが、本作では、ジェーンがリヴァース牧師(ジェイミー・ベル)の家に逃げ込むところから映画が始まりますから、以前の出来事は回想という形を取ることになります。
これは、前作が、様々な出来事が手際よく説明されていることもあって、甚だ理解しやすいように作られているのに対し、本作は、むしろサスペンス的な要素を強める結果となっていることにつながっているのでは、と思いました。
となると、本作を見てから前作を見た方が、興味をそがれませんし、またなるほどそうなのかと腑に落ちる点もいくつも見出せて(注1)、好ましいのかもしれません。
ニ)本作では、ロチェスターとの結婚の前に、ジェーンをいじめた叔母からの使いが来て、ジェーンは、心臓麻痺で会いたがっているという叔母のところに出向きますが、前作では、結婚式の後ロチェスターの館から飛び出したものの行くあてがないところから、叔母のところに出向きます。
これは、本作の方がつじつまが合っているように思われます(いくら行くあてがないとしても、あれほど嫌っていた叔母のところに、ジェーンが自発的に戻るということは考えられません)。
それに、ロチェスターの屋敷を飛び出した後に辿りついた牧師の家で世話を受けるというのも説得力があるように思われます(注2)。
(3)渡まち子氏は、「物語は知り尽くされ、鮮度は低いのだが、フレッシュなのはキャストだ。ジェーンは、決して容姿には恵まれていないが意志が強く知的な女性。過酷な人生を凛として生きるヒロインを演じるミア・ワシコウスカが実にいい。小説の実年齢に近いせいか、違和感なくフィットしている」などとして65点をつけています。
(注1)例えば、本作では、寄宿学校で知り合った友達ヘレンがいきなり肺炎で死んでしまいますが、前作によれば、元々体調が悪かったヘレン(何と、少女時代のエリザベス・テーラーが扮しています)が、ジェーンと一緒に校長によって、雨の中を走らされるという罰を受け、病気が亢進して死んでしまいます。
また、ジェーンは、寄宿学校の後、教師を経てからアデールの家庭教師になりますが、そこら辺りは本作ではっきりと説明されていません。
前作によれば、寄宿学校の成績がいいのに目をつけた校長が、ジェーンを同校の教師に据えるのです。というのも、支払う給与の半分を寄宿寮として予め徴収できるため人件費を抑えられるからだとされます。
(注2)ただ、ジェーンがロチェスターの館に戻るように仕向けるためでしょうか、リヴァース牧師が、ジェーンと結婚してインドに行きたいというと、結婚しないならばいっしょにインドに行ってもいいなどとジェーンは答えます。牧師は「まだあの男が忘れられないのか、不実な愛は捨てろ」とまで言いますが、「無理に結婚すれば、争いが生じ、死ぬことになる」などと言ってジェーンは拒絶します。ここら辺りは、親戚筋の死によって大金が転がり込んだジェーンを我が物にしようとしたいだけなのだ、とリヴァース牧師の本心を読んだのかもしれませんが、ちょっとジェーンの方が頑ななのではと思えてきます。
★★★☆☆
象のロケット:ジェーン・エア
この映画 楽しみです。ここでは10月放映とは・・
待ち遠し。。
特にロチェスター役のファンです。
彼のシーン多いですか?
馬鹿な質問ですいません。
内容と彼のシーン度によっては
DVDを買おうかと思ってます。
すいません!!!!
公式サイトの「劇場情報」を見ますと、10月公開の地域は、岩手から沖縄まで随分とあるようですが、マリコさんはどちらにお住まいでしょうか?
「ロチェスター役のファン」とのことですが、マイケル・ファスベンダーは、『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』や『SHAME -シェイム-』など、随分と幅広い役をこなしているようですね(近作の『危険なメソッド』では、歴史上の人物までも)。
「内容と彼のシーン度」に関しては、見る人によって映画の受け取り方は実に様々ですからとても確たることは申し上げられませんが、DVDを購入されても損はされないのではと個人的には思っています。
これ以上は申し上げられません笑!
クマネズミさんの話を聞いていたら
DVDを買いたくなってきました。
ありがとう。
たぶんここでは、映画の前に
DVDが先に来そうな予感がします。