杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

カラオケ行こ!

2024年01月17日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年1月12日公開 107分 G

中学校で合唱部の部長を務める岡聡実(齋藤潤)は、ある日突然、見知らぬヤクザの成田狂児(綾野剛)からカラオケに誘われる。戸惑う聡実に、狂児は歌のレッスンをしてほしいと依頼。組長(北村一輝)が主催するカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける恐怖の罰ゲームを免れるため、どうしても歌がうまくならなければならないのだという。狂児の勝負曲は、X JAPANの「紅」。嫌々ながらも歌唱指導を引き受ける羽目になった聡実は、カラオケを通じて少しずつ狂児と親しくなっていくが……。(映画.comより)


変声期に悩む合唱部の男子中学生と歌がうまくなりたいヤクザの交流をコミカルに描いた和山やまのコミックの実写映画化です。
ヤクザが中学生に歌を教わるという設定がまずぶっとんでますね。😁 

観賞特典に原作コミックのポストカード(裏はカレンダー)を貰いました。

冒頭、雨の中ずぶぬれになった男の白いワイシャツから透けて見える背中から腕にかけて「もんもん」が浮かび上がります。明らかにヤクザのその男、祭林組若頭補佐 の成田狂児がふと足を止めたのは岡たち中学生の合唱コンクールが行われているホールの前でした。
組のカラオケ大会で最下位になると罰ゲームで組長から下手くそな刺青を入れられてしまのですが、これまで歌下手王だったハイエナの兄貴(橋本じゅん)がとうとう歌の教室に通い始めたことを知り絶望した狂児の耳に入ってきたのが岡たちの美しい歌声だったのです。

ももちゃん先生(芳根京子)が置き忘れたトロフィーを取りに戻った聡実の前に現れた狂児は「カラオケ行こ!」と誘います。
カラオケ店の個室で、聡実に名刺を差し出した狂児は“ブラック企業”に勤めていると言いながら(組長を社長と誤魔化すけれど誤魔化しきれないのが笑えます。しまいに開き直るし)事情を説明した彼は歌を教えて欲しいと頼みます。
一曲だけでいいから聴いてくれとX JAPANの「紅」を歌い始めた狂児に、聡実は「裏声が気持ち悪い」とダメ出しをして(真面目だけど毒舌なキャラなのね)逃げるように帰ってしまいます。

ところが翌日、聡実が忘れて行った傘(見ようによってはハワイのブランド品にも見えますが何とも奇抜な亀の柄です。)をさした狂児が学校に現れます。
(聡実の両親(宮崎吐夢、坂井真紀)はごく普通の関西人って感じで、「新しい傘を買って」という聡実に同じブランドの「鶴」柄の傘を買ってきて笑えます。😁

渋々狂児のカラオケに付き合うようになった聡実は、狂児の優しい人柄にふれ、彼とのカラオケが楽しみになっていきます。
狂児はX JAPANの「紅」が十八番ですが、音域が合っておらず上手とは言えません。
「好きな歌と得意な歌は違う」とアドバイスする聡実は、彼の音域に合った曲をリストアップします(寺尾聡の「ルビーの指輪」とか)が、狂児は決めかねている様子。
狂児役の綾野さんの「紅」を始めとする歌(絶妙に下手なのはもちろん芝居だよね😥 )の熱唱が見所の一つです。

聡実が部長を務める合唱部は前年優勝したコンクールで今回は3位でしたが、その原因の一つにソプラノパートを務める彼が変声期に入ったことがあるように見えます。天然キャラの顧問(代理?)のもも先生はわかっていなかったみたいだけど。😅 優勝を逃した原因を追究しようとする後輩の和田(後聖人)の空回りする熱意のお守り役は副部長の中川(八木美樹)です。
次の大会でソロパートを任されている聡実でしたが、声が変わっていくことに動揺する彼は練習をさぼって幽霊部員として所属している「映画を見る部」で栗山(井澤徹)に狂児のことを相談しながら昔の名画を観て過ごします。

ある日、狂児から他の組員へのアドバイスも求められ、ハイエナの兄貴や唐田(やべきょうすけ)ら強面の面々を前に辛口の評価をする聡実。組員たちの個性あふれる歌とそれに対する容赦ない聡実の指摘(突っ込み)が笑えます。「リズムに乗れていないのでちゃんと聴いてください」「息が続いていないので体力をつけてください」までは良いけれど、最後は「カスです」だもんな。😓 そりゃ怒るわ!
怯えながらも「録音して自分の声を聴いてください。」とアドバイスをした聡実は、車で送ってもらった帰り道、狂児に「もう付き合いきれない」と言います。狂児は「聡実くんはまだ中学生だもんな」と素直に引き下がります。この時の狂児のちょっと寂し気な表情にキュン😍 

練習の付き合いを断ったものの、寂しさを感じて「狂児さんだけなら」と自分からカラオケに誘う聡実。二人のレッスンが再開します。「紅」の英語の歌詞を関西弁に和訳する場面が最高です!このエピソードがあるからこそ、後に聡実が歌う「紅」に気持ちを持っていかれちゃうのね。

部活に顔を出さなくなった聡実を探して「映画を見る部」にやってきた和田が、デッキを壊してしまいます。代わりを探してミナミ銀座(狂児にあぶない場所と禁じられていました)にやってきた聡実は、ヤクザ風の男(組の御法度に触れて破門された元組員)に絡まれたところを狂児に助けられます。今までの優しい雰囲気から一転、ヤクザの顔になる狂児が恐カッコイイ!!
聡実にデッキを買ってあげた狂児は「二度とこんなところ来るなよ」と言いました。(この展開は、奴の報復を予感させますね。)

カラオケ大会の日と合唱祭の日が重なると知りお互い頑張ろうと言う狂児に、聡実はソプラノが綺麗に出せなくなったことを話します。すると彼は「綺麗なもんしかあかんかったらこの街も俺らも消えてしまう」と言うのね。それを聞いて聡実の心が軽くなるの。うん、良いこと言うな~~惚れてまうやん😍 

両親それぞれからお守りを貰った聡実は狂児にもあげようとLINEを送りますが、学校にやってきた狂児が、聡実が和田や中川と話しているのを見て茶化したことに怒って渡すはずだったお守りを投げつけます。LINEで謝る狂児に「もう練習付き合わない」と返すと狂児はあっさり引き下がり、ちょっと寂しくなる聡実です。(なんか恋人どうしの痴話げんかみたいだぞ😁

合唱祭の会場に向かうバスの中から、カラオケ店の前で車の衝突事故現場を目にした聡実は動揺します。それは狂児の車で、担架で運ばれた人の顔は見えなかったけれど、近くに彼の音叉が落ちていたからです。
会場に着いても気もそぞろな聡実は「ごめんなさい、歌えません」と会場を飛び出し、カラオケ大会が催されているスナックに乗り込むと狂児のことを聞きます。すると組長は「あいつは地獄に行った。」と答えます。平然とカラオケを続けようとする彼らにショックを受け「やっぱりヤクザは最低だ!」と叫ぶ聡実に組長はマイクを突きつけます。「紅」を歌い始める聡実。失った人を想う歌 だということをこの時思い知らされます。サビの高音はうまく出ませんが、思いのこもった熱唱に泣きそうになりました。コメディでまさか泣かされるとは!!ももちゃん先生の口癖の「最後は愛や!」が実感になります。

ところがそこに「ええもん見せてもらったわ」と聞き覚えのある声が!狂児が死んだというのは組長のジョークで、彼はピンピンしていました。担架で運ばれていたのは、聡実に絡んできたアイツで、車で突っ込んできた彼を逆に狂児がボコっていたのでした😁 

カラオケ大会が終わって狂児と会うこともなくなり連絡も取れなくなります。卒業式の日、狂児とのことは「幻だったのかも」と栗山に言われ、思わずミナミ銀座に彼の姿を探す聡実。ふとポケットを探ると、狂児の名刺が出てきて、「ちゃんといたじゃん」と安堵したようにつぶやく聡実なのでした。

数年後、ミナミ銀座の跡地に建つビルを眺める狂児の姿がありました。

観終わっても頭の中に「紅」がリフレイン😀 

何と言っても狂児のキャラが際立っています。本当は「京二」だったのに実父に勝手に書き換えられた出生届が彼の運命を変えたのは悲劇なの?喜劇なの?😥 
それでも家族仲は良いみたいだし、ヤクザなのにとっても優しいし、穏やかだし(切れると怖いけど)で、愛情溢れる人情家を綾野さんが見事に演じていました。
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