杏子の映画生活

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ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人

2024年02月04日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年2月2日公開 フランス 116分 G

貧しいお針子の私生児として生まれたジャンヌ(マイウェン)は、類まれな美貌と知性で貴族の男たちを虜にし、社交界で注目を集めるように。ついにベルサイユ宮殿に足を踏み入れた彼女は、国王ルイ15世(ジョニー・デップ)とまたたく間に恋に落ちる。生きる活力を失っていた国王の希望の光となり、彼の公妾の座に就いたジャンヌ。しかし労働者階級の庶民が国王の愛人となるのはタブーであり、さらに堅苦しいマナーやルールを平然と無視するジャンヌは宮廷内で嫌われ者となってしまう。王太子妃マリー・アントワネットも、そんな彼女を疎ましく思っていた。(映画.comより)


18世紀フランスで59年間にわたり在位した国王ルイ15世の最後の公妾ジャンヌ・デュ・バリーの波乱に満ちた生涯の映画化です。
マイウェンが監督・脚本・主演を務め、ジョニー・デップがルイ15世をフランス語で演じていることも話題となりました。シャネルの衣装提供やベルサイユ宮殿での大規模撮影で豪華絢爛なフランス宮廷が再現されているのも見所です。

ベルばら(ベルサイユのばら)世代にはジャンヌは悪女として認識されていると思います。男装の麗人オスカルとフランス王妃マリー・アントワネットの視点から描かれているのだから当然ではあります。
しかし本作ではジャンヌが主人公で、これまでとは異なる視点で彼女を見つめ直すことになりました。

ジャンヌは修道士の父と料理女の母 の間に生まれた私生児。その美しさを危惧した母の勤め先の主に修道院に送られますが、成長した彼女は性的な書物を読んで追い出されてしまいます。母と共に使用人として働きますが主人の妻の嫉妬を買い母親ともども追い出されパリに出、そこで娼婦として頭角を現した彼女はデュ・バリー伯爵(メルヴィル・プポー )と出会ったことから宮廷デビューをすることになるのです。
ジャンヌの美しさに利用価値を感じた伯爵は、彼女をルイ15世のもとに送り込み金と名誉を得ようとします。国王の公妾は既婚者でなくてはならないため、形だけの結婚をし、”ジャンヌ・デュ・バリー”となった彼女は見事に王の心を掴みます。知識と教養を身につけ、時に王とも対等に会話をする彼女に王は他の女性にはない魅力を感じ寵愛したのでしょう。とかく堅苦しく仰々しい宮廷作法には失笑を禁じ得ませんでした。

女という武器を生かして宮廷内で地位を確立していくジャンヌには敵も多かった。特に同性である女性からは嫉妬と憎悪が向けられていました。王の娘たちの中で唯一末娘のルイーズだけは公正な目を持っていましたが、宮廷の醜い人間模様に堪えかねて修道女の道を選び宮廷を去ります。彼女は父王から娘たちの中で一番愛されていました。

ジャンヌは自分の感情に忠実で、時に宮廷の作法を無視します。
男装して現れたり、奇抜なデザインのドレスを着たりして貴族たちの非難の目に曝されても平気。貴婦人たちは彼女を嫌悪しながらもそのファッションを真似ます。

しかし、王太子(ディエゴ・ルファー )の花嫁としてマリー・アントワネットが嫁いでくると、その立場に影が差してきます。王の3人の娘たちからジャンヌの悪口を吹き込まれたマリーは、ジャンヌを無視するという嫌がらせに出ます。それを知った王がマリーに無言の圧力をかけるシーンでは視線だけで王の怒りが伝わってきました。(さすが、表情や動きで感情を見事に表現するジョニーの演技力!)
これに屈したマリーはジャンヌに一言だけ言葉をかけます。喜びのあまり階段を駆け上がって王に報告するジャンヌに、王だけでなく廷臣たちも微笑ましく思うのでした。女性には嫌われまくりですが、男性には受けがいいのよね。😁 

王の寵愛を一身に受けながらも、ジャンヌはいつか王の愛が他の女性に移って捨てられるのではないかと怯えてもいます。幸いなことに王の愛は最期まで変わることはなかったのですが。

天然痘に倒れた王に、ジャンヌは最後まで寄り添おうとしますが、懺悔を求める王に聖職者たちはこれまでの行いを悔い改めるよう迫ります。すなわち公妾を遠ざけよというわけです。死後の許しが欲しい王はその要求を受け入れます。宮廷を去る寸前どうしても最後の別れがしたいと部屋に戻ったジャンヌは周囲が拒絶する中で王太子だけがそれを許します。彼はジャンヌに対しても礼儀正しく時に好意的に接してくれていました。(ベルばらではずんぐり小太りの冴えない青年でしたが、映画の彼は無口だけれど背の高いイケメンです。なんと演じているのはマイウェンの息子 でした)

ジャンヌは王に頬寄せて別れを告げます。(これで感染しなかったのが不思議なくらい)国王に背を向けるのは宮廷のルール違反のため、王太子以外は小刻みに後ずさらなければならないのですが、ジャンヌはそれを許されていました。しかしこの最期の時、彼女はその仕草をして部屋を出て行きます。それは彼女なりの王への敬意の表し方だったように見えました。

王の崩御はバルコニーに設置された蝋燭の火が消されることで示されます。祈りを捧げていた王太子夫妻の前に駆け付けた廷臣が彼らに忠誠を誓うシーンは宮廷の勢力図が書き換えられたことを端的に示していました。(このシーン、漫画でも見覚えがあります。)

宮廷を追われたジャンヌは修道院に送られますが、やがて解放されます。しかしその後に起きた革命により断頭台に送られたとのこと。後年、マリー・アントワネットとも親交があったとのことです。😲 

映画では王を愛した一人の女性としてのジャンヌに焦点が当てられていました。

特筆すべきは王の信頼する廷臣のラ・ボルト(バンジャマン・ラヴェルネ )の存在です。リシュリュー公爵 (ピエール・リシャール )がジャンヌを見染め王の公妾に推薦したあと、宮廷でのジャンヌの世話を親身にする姿は好感が持てます。彼は最期まで王のために心を尽くした人でもありました。😀 
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