新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

献血の感染チェック:シャーガス病は想定外

2013-08-18 08:58:08 | 医療

おはようございます

 

今日も一日暑くなりそうですね。

 

今週末はお盆ということもあって、大きな研究会はなくのんびり過ごしております。夏休みは後輩の夏休みが終わってからとる予定ですので、まだまだ先です。

 

さて、先日の輸血製剤の中でシャーガス病に感染した(少なくとも経験がある)輸血製剤が出回ったという話がありました。

 

「シャーガス病」初確認 一部は血液製剤などに加工、医療機関へ

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20130816-00000985-fnn-soci

フジテレビ系(FNN) 8月16日(金)18時39分配信

厚生労働省は14日、採取された血液から、中南米におよそ1,000万人の感染者がいるという、「シャーガス病」の抗体が確認されたと発表した。日本国内では初めてのこととなる。
献血を通じて日本で初めて確認された「シャーガス病」。
東京の有楽町献血ルームには、1日およそ平均200人の人が献血をしているという。
耳慣れないこのシャーガス病とは、いったいどんな病気なのか。
順天堂大学の熱帯医学・寄生虫病学の奈良武司准教授は「治療が難しいということがあり、HIV(エイズウイルス)のように恐れられている病気です。感染して、風邪のような症状を自覚すると言われているけど、なかなか自覚症状は出ません。寄生虫がついて、手で目をこすったり、結膜から侵入して、目の周りが腫れるっていうような症状が起きることがあります」と話した。
厄介なのは、潜伏期間が長い場合で、20年ともいわれ、感染に気がつくことなく、突然、死に至るケースがあること。
感染源は、南米に多く生息するカメムシの一種「サシガメ」。
このサシガメが、人間の血を吸う際に、寄生虫が体の中に入り込むなどして感染する。
順天堂大学の奈良武司准教授は「この寄生虫は、主に心臓に寄生しまして、心臓が肥大して、心不全を起こしたりということで、突然死の1つの原因になっていると考えらています」と話した。
今回、このシャーガス病の抗体や、病原体の遺伝子が確認された血液は、2013年6月、中南米出身の40代の男性から採取されたものだった
どのような形で、感染が明らかになったのか。
日本赤十字社の血液センターでは、献血で提供された血液について、HIVやC型肝炎などの検査を行っている。
シャーガス病についても検査が行われるが、全国的にそうした安全対策が行われるようになったのは、2013年4月からのことだった。
厚労省・血液対策課の野村 由美子氏は「中南米から日本にお越しになって住まわれる方も多いということで、日本でも対応をとり始めた」と話した。
日本赤十字社・血液事業本部の中野顕彦広報係長は「献血の受付の所で、同意を取りまして、『検査をしてもいいですよ』とおっしゃった方の血液を別途検査しているという状況」と話した。
現在、献血の際には、中南米の出身かどうか、4週間以上の渡航歴があるかどうかなどの確認が行われているが、血液の検査は、あくまでも任意で行われるもの
今回、シャーガス病の抗体などが確認された中南米出身の男性の血液は、対策がとられ始めたあとの6月に採取されたものだったため、検査の対象となった。
しかし男性は、それ以前に少なくとも9回、献血をしていたため、さかのぼって検査したところ、すべての血液が陽性と判明した。
その一部は、すでに2種類の血液製剤などに加工され、医療機関へ。
しかし、厚生労働省によると、その製剤からシャーガス病に感染したという例は、これまでに報告されていないという。
厚労省の野村 由美子氏は「作られた血液製剤については、海外では、シャーガス病の感染の報告のないものではありますけど、念のため、日本赤十字社の方に医療機関に連絡を取っていただいて、詳細な調査を実施しております」と話した。

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輸血の感染症のチェックにはかなりよい機械が入っていて、例えばHIVに感染して2週間以内に献血(こういうのは検査目的で行ったんじゃないかと思いたくなりますが、ウイルスの数が少なければ検出できない可能性はあります。一般にwindow periodといいます:http://www.tokyo.bc.jrc.or.jp/tmpfile/yougo/detail51.html。ちなみに抗体法では6週間以上かかります。)しなければひっかけられますが、調べていないものはわからないわけです。

 

日本でシャーガス病になっている可能性のある人はほとんどいませんので(有病率が限りなく0に近い)、検査をしても無駄になってしまうかもしれませんから一部の「可能性の高い人」に実施したというのは正しいのだと思います。それ故、完全に想定外の状況だろうと思います。感染している方が出たということで、おそらく次の輸血・細胞治療学会の総会などにはその話が出るのだろうと思っています。

 

シャーガス病に関して細かいことはわかりませんし、血液感染の確率(どの程度の確率で生じるのか)ということは不明ですので、今後情報が入ってきたらアップしていきたいと思います

献血を受けた方が感染していないことを祈念しております。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

http://blog.with2.net/link.php?602868

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12 コメント

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ありがとうございます (りえ)
2013-08-18 19:28:28
お返事ありがとうございます!今はマイザー軟膏と白色ワセリンの塗り薬をもらっています。痒みが軽減できるといいなと思っています。まだまだわからないことだらけで、不安ですが、また質問させてくださいm(_ _)m忙しい中、親切に回答して頂きありがとうございます。
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Unknown (自滅)
2013-08-20 02:52:55
アンフェタミンさん、福知山花火大会事故被害者の病院搬送の事が、以前ご紹介した松岡茂長舞鶴市議会議員のブログに載ってます。やはり、舞鶴の医療体制問題ありです。
返信する
Unknown (アンフェタミン)
2013-08-20 22:44:54
>りえさん
こんばんは、コメントありがとうございます

マイザーである程度皮疹などが改善することを祈念しています。また何かあればいつでもご質問ください。
わかる範囲であればお答えいたします。

ただ、直接診療しているわけではございませんので、質問できることは主治医の先生にお聴きください。

また、コメントいただければと存じます

>自滅さん
こんばんは、コメントありがとうございます。

こちらの記事でしょうか?
http://matsuoka-shigenaga.at.webry.info/201308/article_8.html

確かに舞鶴に搬送した患者さんはおらず、また受けることもできなかったのだろうと思います。
軽症の患者であれば搬送の必要に乏しく、重症患者であれば受け入れ期間に一定以上のレベルが必要になるので。

舞鶴の医療体制に問題が無いとは思っておりません。ただ、舞鶴だけというよりは・・・ある程度日本の医療体制をどうするのか。いろいろ考えるべきことは多いのだろうと思います。

また、コメントいただければと存じます
返信する
Unknown (自滅)
2013-08-21 20:59:00
アンフェタミンさん、松岡茂長舞鶴市議会議員のは、その通りです。未確認ですが、舞鶴市民で今回の花火大会で火傷を負ったかたがおり、福知山市民で応急処置して舞鶴市内の病院搬送され治療されるのがベストかと。今回の事故で福知山花火大会は五年位は開催中止が濃厚みたいで、そうなると、舞鶴ちゃった祭り花火大会の観客が増えるのが予想され、福知山みたいな事故が、もし発生すれば応急処置が出来ず混乱するのが目に見えます(福知山は福知山市民の総合診察科がしっかりしており応急処置を迅速におこない他の病院搬送が迅速におこなえた)舞鶴には、海上自衛隊、第八管区(海上保安庁)MUJ造船、日本板硝子、関西電力舞鶴火力発電所などあり、いさとなれば備えなければ大混乱なります。ちなみに、田村優樹舞鶴市議会議員のブログにも医療問題の指摘があります。
返信する
Unknown (アンフェタミン)
2013-08-21 21:57:18
>自滅さん
こんばんは、コメントありがとうございます

福知山の花火大会が中止になり、舞鶴に人が来るようになれば何かの際に対応できるようにしておいた方が勿論よいですよね。

医療っ問題がすぐに解決するとは思えませんが、少なくとも搬送能力、提携などいろいろ準備できることはありますよね。

田村議員のブログ拝見いたしました。
http://tamura-myway.blog.so-net.ne.jp/
以前も医療系の記事を書かれていたと思いましたが、多分自滅さんが教えてくださるから、そういう記事を見る機会が多いのでしょうね。

また、コメントいただければと存じます
返信する
Unknown (自滅)
2013-08-25 16:23:30
今日、献血して通算15回目になりますがなんの問題もありません。前回ご紹介した松岡茂長舞鶴市議会議員のブログに、公園での発電機使用禁止する記事があり、これは本末転倒でありいざとなったときの医療体制が問題ならなければならないけどどうも舞鶴市は医療問題に触れられたくないみたいです。
返信する
Unknown (自滅)
2013-08-27 16:08:59
スイマセンが連続投稿させていただきます。福知山市民病院・川島篤史医師のブログに今回の花火大会事故が載ってますが、福知山市民病院のレベルが高い事。とても舞鶴では出来ない。舞鶴市民にも川島篤史医師のブログを読んでもらいたいものです。
返信する
新聞記事にも問題があるかもしれませんが (アンフェタミン)
2013-08-28 21:57:36
>自滅さん
こんばんは、コメントありがとうございます。

議員さんのブログ記事を読ませていただきました。
新聞記事に問題があるかもしれませんが、そういうことを確認しようとする議員さんがいることはよいことではないでしょうか。

医療に関してどの程度本腰を入れて取り組むかは自治体によって違うのだと思いますが、舞鶴が少しでも良くなることを祈念しております。

また、コメントいただければと存じます
返信する
Unknown (Mako)
2013-09-02 16:50:55
初めまして!シャーガス病、サシガメについて検索していたところこちらのブログにたどり着きました。私は現在東北は宮城に住んでおります。先日サシガメのような虫に刺されました。あまりにも見たことのない変な虫だったので写真を撮りました。私もそのシャーガス病のことを知り、不安になり病院へ行って血液検査をして欲しいとドクターに伝えたところ、どういった検査をしていいのか分からない、寄生虫といわれてもいろいろあるので今日は採血はできないと言われてしまいました。日本に生息するサシガメは寄生虫を媒体しないということもどこかで読みましたが、念のため血液検査はしたいのですが、どのように説明をして、またどの機関で検査を受けれるかなどもしお分かりであれば教えて頂きたくコメントいたしました。刺されたのは10日ほど前です。偶然かもしれないのですが、首のリンパがぷっくりと腫れています。
返信する
長崎の熱帯医学研究所くらいしか思いつきません (アンフェタミン)
2013-09-02 23:07:10
>Makoさん
こんばんは、コメントありがとうございます

僕も実際にどうすればよいのかはコメントしにくいですが、熱帯医学関係は長崎大学の熱帯医学研究所は有名です。
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/nekken/

恐らく、連絡を取ってもらえれば検体送付をどうするかなども含めて、話は進むかもしれません。

しかし、おっしゃっている通りで基本的に国内で感染するわけではないという前提で、検査をしても意味がないと断られる可能性もあります。

基本的にはそういった可能性を高めるのが検査ですので、最初が0に近ければ掛け算をしてもほとんど0ということになります。

リンパ節が腫れているのは他のなんらかの感染症の可能性はあります。もし、刺された場所が首に近い場所で(足などであれば無関係だと思います)腫れが引かなかったり、悪化するようであれば近くの感染症科などがある病院へ行かれた方が良いかもしれません。

説明に関しては、刺された状況、場所なども含めてわからないので細かくは言えませんが、不安に感じられている旨も含めて素直に話をされればよいのではないかと思います。

また、コメントいただければと存じます
返信する

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