新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

腫瘍の多様性に関して(近藤医師の話の続き)

2013-04-06 11:00:55 | 医療

こんにちは

 

当直明けで先ほど帰ってきました。単科当直(まぁ、総合内科として複数診療科ですけど)のわりにいつも患者が来るので「何か持っているでしょう」と言われております。

まぁ、断らないというのも患者が増える要因ですが今回は1人救急部に振りました(というか、3次救急に…と言ったら、当然うちの救急部に話が来たみたいです)。流石に1人でやると患者さんの予後に影響しそうだったのと、同時にもう一つ救急車受けていたので対応不能だったというのがあります。

研修医もいない、看護師さんと2人で対応するには厳しい。まぁ、2人くらい研修医が来ていれば別ですが・・・。

 

さて、本日は先日書いた「近藤誠医師」の話の続きみたいなものです。

「がん」と「がんもどき」を分けるデータがないことが根拠かな?

「がん」と「がんもどき」を区別する方法がなく、抗癌剤が効きにくい腫瘍がある。しかし、がんもどきは大きくなるにつれて悪性度を増さないのか…ということです。

最新の知見というほど最新でもなくて…かなり前な気がしますが、がん幹細胞というものがあって、それらは増えていくに従い新しい遺伝子の異常を積みかさねて多様性を持つといいます。

○はがん幹細胞でゆっくり増えます。基本的にがん幹細胞はゆっくり増えるものです。例え白血病幹細胞であっても

① ○→

② ○○○◎→

③ ○○○○○○◎◎▽→

④ ○○○○○○○○○◎◎◎◎▽▽×→

⑤ ○○○○○○○○○◎◎◎◎▽▽×××××××××

とかですね。×という状態の遺伝子異常が加わった場合(想定はがん遺伝子といわれる増殖促進させるもの)は一気に加速します

 

まず、がんが発生するというのは「がん抑制遺伝子」など「増殖を制御する」「遺伝子に異常が発生したら自殺する」などの機能に障害が生じ、さらに免疫から逃れる性質まで持ったということになります。

がんは毎日発生していますが、通常免疫なりなんなりでつぶされていて認識されていないだけです。

 

これだけであれば、近藤医師が言うようにゆっくりしか増えません。ここでゆっくりですが増えている間に次の異常が入ります。だって、異常を改善する機能を失った細胞が増え続けているんですから、そこからよくなるなんてことはありません。昨日かいた「免疫抑制剤などで一時的に腫瘍をつぶす能力が低下した」ためにおこるタイプは別ですが。

 

これを繰り返していくうちに「増殖スイッチ」の異常をきたしたりします。そこで性質が変わり増殖速度が上がります。

 

さらに増える速度が速まると異常が急速に蓄積し、さらに多様性が増していきます。そうこうしているうちに癌が転移能をを持って転移するということになります。

 

ちなみに有名な話ですが「メラノーマ(悪性黒色腫)」は転移しやすい癌の一つですし、基底細胞癌は基本的に転移しないがんと言われています。元の細胞でそういう性質はある程度推測できるのです(ちなみに乳癌なども高率に転移します。あとは早期発見しにくい癌は気が付いたら転移していた…というタイプですね)。

しかし、何事も100%はない話です。一般的に絶対ないと言われている状況下で骨髄にがんが転移している人も経験しました。

 

そのため、「がんもどき」・・・が「がんもどき」であり続ける根拠というのが乏しいというのが実感です。

 

まぁ、ただの参考意見です。ただ、たぶん一般の腫瘍を対象にしている医師(外国含む)はこのような考え方で動いているはずです。NatureやScienceなどでも調べたらこの辺の話は山のように出てきます。

 

僕は唯一の真理を言えるほど自信家ではありませんので、近藤先生の理論が間違っていると言い切るつもりはないです。「がん」と「がんもどき」があるのかもしれません。しかし、現在生じている「がん」は遺伝子の異常が蓄積されていっていることもわかっていますし、それが「がんもどき」と言っている状況から進行しているともいえないです。

そのうえで自分で選択するというのが大事だと思います。

 

ただ、治療をしないで待つというのは結構勇気がいります。患者さんもですが、医師も勇気がいります。

 

今では治療介入することも多くなった「濾胞性リンパ腫」という「低悪性度」のがんがあります。これの基本スタンスは昔は「様子を見ながら進行してくるのを待ち、リンパ腫のために症状が出てきたら治療をする」というものです。今でも一部の患者さんではそういう選択をします。

待っているわけですが、急速に大きくなって来たり、中等度悪性度のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の形質に変化していたりします。

ちなみにこの濾胞性リンパ腫は「自殺させないよ」という遺伝子だけがおかしくなっているので、増殖速度は変わらずにゆっくり増えてくるのですが、そこに増殖促進の遺伝子異常が入ったら一気に増えてくるという感じです。

 

リンパ腫はまだ抗癌剤による治療効果が期待でき、あとからでも取り返しが効くのがわかっているのでこういう選択もできますが、一般的な抗癌剤が効かない腫瘍の場合、僕は自分自身「待つ」という選択肢はできません

家族でも同じですね。

 

参考意見として書きましたが、そんなところです。

後で検診に関しても書いてみようと思います

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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