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Activated Sludge ブログ ~日々読学~

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●《内閣官房は文化審議会とは別の有識者会議を設けて「明治日本の産業革命遺産を推薦する」と…。最後は官邸主導の政治決断となり…》

2021年10月11日 00時00分15秒 | Weblog

[※ 「こんな人たち 報道特集(2017年7月8日)↑]

――――――《内閣官房は文化審議会とは別の有識者会議を設けて「明治日本の産業革命遺産を推薦する」と言ってきた。最後は官邸主導の政治決断となり、「長崎教会群」ではなく「明治産業革命遺産」が選ばれたんです。初めから結論は決まってたんですよね》(前川喜平さん)

―――――― 上野英信さん『追われゆく坑夫たち』には、《Yさん…「…」と鉄棒をさすりながら勤労係が言いました。こうして私は海のなかの恐ろしい監獄島――三菱端島炭鉱で働くことになりました》



(2021年09月15日[水])
デモクラシータイムスの記事【軍艦島展示を改めよ!~約束守らぬ日本にユネスコ決議~ 植松青児さん【The Burning Issues vol.17】】(https://www.youtube.com/watch?v=KyZPIQpKPqM)。

 《デモクラシータイムス 長崎の軍艦島を始めとする「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に指定されたのが、2015年。しかしこの時の日本側のユネスコでの「約束」を巡って、今年7月、ユネスコが、守られていないと批判する決議を採択しました。いったい何があり、どこが問題なのか、その裏側について解説します。
 ゲスト:植松青児さん (「週刊金曜日」編集者)
 司会:高瀬毅》



【軍艦島展示を改めよ!~約束守らぬ日本にユネスコ決議~ 植松 青児さん
 【The Burning Issues vol.17】】
 (https://www.youtube.com/watch?v=KyZPIQpKPqM


 加藤康子氏らの〝活躍〟により、《長崎の軍艦島を始めとする「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に指定》された背景。

―――――――――――――――――――――――
●大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない
   《病的な嘘つき》アベ様…全てのアベ様の「政」のデタラメさ

http://lite-ra.com/2017/09/post-3473.html

室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第7回ゲスト 前川喜平(後編)
前川喜平・前文科次官が安倍政権の愛国教育、親学を痛烈批判! 室井佑月に立候補を薦められた前川氏の答えは…
2017.09.24

………。

室井 政府の審議委員とか第三者委員とかは、思想チェックがあるとは思ってましたが、やっぱりね。政府や政策に批判的だと入れないんだ。怖い。思想や政策とは関係ない、文化系の専門家なんですよね。政治に関してモノが言えなくなるってことですから、本当に怖い。
前川 もうひとつは、2015年に世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」です。世界遺産への推薦案件は通常、文科省の外局である文化庁の文化審議会で審議するのですが、2013年は審議会で「長崎の教会群とキリスト教関連遺産を推薦」という結論となったこれを押しのけて軍艦島などの「明治産業革命遺産」が出てきたんです。しかし、安倍首相の地元・山口県の松下村塾は八幡製鉄所(福岡県)や軍艦島との関連性はないし、軍艦島は保全措置さえ取られていない。ところが、これを加藤康子さんという女性が中心になって、官邸と一体になって強力に進めたんです。

室井 加藤さんって、亡くなった加藤六月議員の娘で安倍さんの幼馴なじみなんでしょ。それで安倍ちゃんが「俺が(世界遺産登録を)やらせてあげる」と約束しちゃったという。


安倍政権の道徳教育は、戦前の国体思想、教育勅語につながるもの

前川
 そのようですね。内閣官房は文化審議会とは別の有識者会議を設けて「明治日本の産業革命遺産を推薦する」と言ってきた。最後は官邸主導の政治決断となり、「長崎教会群」ではなく「明治産業革命遺産」が選ばれたんです。初めから結論は決まってたんですよね。そのときに官邸で中心になって進めた人物が、和泉さん(洋人・首相補佐官)。そして一緒になって進めた内閣官房参与が木曽(功)さん、文科省で私の先輩なんですけどね。これは官邸が強力に推し進め、あらゆる政治力・外交力を駆使して勝ち取った行政が歪められた、かなり怪しい案件です。

室井 それに抵抗した西村さん(幸夫・日本イコモス委員長)が辞めさせられたんでしょ。それも和泉首相補佐官が「外せ」と圧力をかけて。
前川 詳しいですね(笑)。和泉さんの横やりで、西村さんは文化審議会の委員から外されたんです。「産業革命遺産」を推進したのは、当時の内閣官房の地域活性化統合事務局で、その局長が和泉さんです。世界遺産は、ユネスコの諮問機関であるイコモスが審査するんですが、その審査はかなり厳しいことで知られているんです。富士山を指定するときも、難儀したくらい。明治産業革命遺産は普通に考えるとまだ登録できる状態じゃなかった。それでもかなり強引に推し進めた。和泉さんにとっては、日本イコモスはただの邪魔者だったんでしょう。

室井 理由はお友だち優遇ともうひとつ。“明治”をクローズアップさせ、美化、正当化したい安倍さんの趣味もあったのかな。大日本帝国はよかった、みたいな
前川 そう思います。戦前日本の植民地主義的な膨張主義の根っこは松下村塾にあると言ってもいいし、日本の膨張主義政策を支えたのが産業遺産。それで韓国が大反対した。軍艦島は徴用工が強制労働させられた場所で、それを無視して世界遺産登録するなんて、批判があるのは当然でしょう。

室井 「産業遺産」にしても根っこでは全部つながっていると思います。安倍さんの思想と一致するもの。日本会議が「明治の日」をつくろうとしたり、明治をテーマにした映画なんかを支援すると言ったり、福井国体に「明治150年」と付けようとしたり。それと前川さんの専門だと思うんですけど、安倍政権は道徳教育愛国教育教育勅語の問題など、すごい力を入れてきてるじゃないですか。
前川 教育基本法改正道徳の教科化ですね。もうひとつ大きな問題があります。それが家庭教育の重視です。国民はまだはっきりと問題として認知していないと思いますが、家庭での教育こそが大事なんだという考え。

………。
―――――――――――――――――――――――

   『●取巻きに堕さず《官邸と距離を置》くような官僚を左遷するアベ様や
       スガ様…《人事でも異常なことが続いています》(前川喜平さん)
    《前川:和泉さんは、2015年7月に世界遺産に登録された
     「明治日本の産業革命遺産」でも、この案件だけ文化庁の審議会から
     外し、内閣官房で特別に“審査”しました。この世界遺産は、
     産業革命遺産なのになぜか松下村塾まで入っている。これを熱心に
     推進していたのが、安倍さんの幼なじみの加藤康子さん(加藤六月
     元農林水産相の長女)。加藤康子さんの妹婿は加藤勝信官房長官です》


 上野英信さん『追われゆく坑夫たち』にも触れられている。

   『●「「慰安婦」問題と言論弾圧」
     『週刊金曜日』(2014年11月14日、1016号)について
    「三木健氏【本 推理小説さながら心の闇に挑んだ労作/
     『上野英信・萬人一人坑 筑豊のかたほとりから』河内美穂=著
     現代書館】…《「筑豊の炭住長屋を改造して施設の「筑豊文庫」を設立
     …「英信は過去を忘れた訳ではない。…葬り去ったわけでもない。
     …過去を背負ったまま、天皇制のゴウカキ(業担き)として生きる。
     …その罪業を担い続けていく覚悟だったのだ」と》。上野英信さんは
     「「侵略する側」にいた過去に戦後、どう向き合った」のか?」

   『●『キジバトの記』読了(1/3)
   『●『追われゆく坑夫たち』読了(1/3)
   『●『追われゆく坑夫たち』読了(2/3)
   『●『追われゆく坑夫たち』読了(3/3)
   『●上野英信さんは「「侵略する側」に
       いた過去に戦後、どう向き合った」のか?

   『●《エネルギーのルツボ》《火床》の《暗い地の底》にて…
     【セレクション (3)「地の底の声筑豊・炭鉱に生きた女たち」】
    「上野英信さんと筑豊文庫。《筑豊よ 日本を根底から変革する
     エネルギーの ルツボであれ 火床であれ 上野英信》…
     「暗い地の底」で。…そして、やはり、山本作兵衛さん。」

   『●県内初の記録文学碑『眉屋私記』、上野朱さん「屋部の人の誇りや
     民衆史を後世に残すためのもの。英信も心から感謝し、喜んでいるだろう」


 また、山本作兵衛さんについても触れられています。

   『●山本作兵衛翁の作品がユネスコ世界記憶遺産に!!
   『●記憶遺産その後 ~山本作兵衛翁のスケッチブック見つかる~
   『●「筑豊よ 日本を根底から
      変革するエネルギーの ルツボであれ 火床であれ 上野英信」

   『●筑豊の炭鉱記録画家山本作兵衛翁の記憶遺産、ユネスコが展示打診
   『●上野英信さんは「「侵略する側」に
       いた過去に戦後、どう向き合った」のか?

   『●山本作兵衛翁のヤマの「記憶の記録」と
        アベ様の「アメリカのために戦争できる国」へ

   『●『坑道の記憶~炭坑絵師・山本作兵衛~』:
        「歴史はあらゆる側面から語られる必要がある」

    「「一国の首相が歴史修正主義者なんて恥ずかしいし、…
     …羞恥心の無さと自覚の無さという救いの無さ」なニッポン国。
     教科書に載っている歴史さえも矮小化させようといつも画策。ましてや、
     歴史をあらゆる側面から考える頭も無しなアベ様達。
     歴史から教訓を得ることもない」

   『●熊谷博子監督《当時の炭鉱の姿ではあるが、私には、そのまま
         現代に思えた…労働、貧困、差別…戦争…今と同じだ》
   『●《エネルギーのルツボ》《火床》の《暗い地の底》にて…
     【セレクション (3)「地の底の声筑豊・炭鉱に生きた女たち」】


 冒頭のデモクラシータイムスの映像記事から。
 《〈労働史〉抜きでは、石炭産業は語れない》《日本の石炭採掘は容易ではない》《労働者への負荷が大きい》➙《労働力の調達が困難》《囚人労働》《暴力的に労働者〈坑夫〉をつなぎとめる》…逃亡すれば、納屋頭が《労働者をリンチする場合も》あった。
 《センター展示には、このような説明はない》。

 《三池での暴力的労務支配も知らんぷり》《港湾に荷役に従事した、与論島からの移住者への差別》、さらに《朝鮮人労働者の強制連行》《中国人の強制連行》。
 《高島での暴力的労務支配も知らんぷり》《田川市の「山本作兵衛コレクション」》…図録番号576 タイトル: リンチ4 (ミセシメ)》。

―――――――――――――――――――――――
https://www.joho.tagawa.fukuoka.jp/y_sakubei/default.html

福岡県 田川市
ユネスコ世界の記憶 (世界記憶遺産)
山本作兵衛コレクション

……

図録番号571~580

2017年4月13日更新 図録番号576 タイトル:リンチ4(ミセシメ)
https://www.joho.tagawa.fukuoka.jp/y_sakubei/kiji0034594/index.html

(解説文要約)
この作品は、肥前の高島の炭坑で行われたという「リンチ」を描いたものです。
高島から、泳いで逃げ出そうとして捕まった炭鉱労働者に納屋頭領が制裁を加えています。
その前で食事をする同僚たちも描かれています。
この様に、リンチはミセシメの要素も強かったようです。

This shown method of torture was said to be used at the pit in Takashima Island in Hizen, or Nagasaki Prefecture.
The Nayadoryo, orminer group boss is applying sanctions against a miner who were captured on the run after trying to escape from the island by swimming across the sea.
The victim’s coworkers are eating breakfast beside him.
In this way, torture was mainly used as exemplary punishment to miners.
―――――――――――――――――――――――

 前述の上野英信さん『追われゆく坑夫たち』には、《Yさん…「…」と鉄棒をさすりながら勤労係が言いました。こうして私は海のなかの恐ろしい監獄島――三菱端島炭鉱で働くことになりました》と、あるそうだ。
 このようなことは一切紹介されていない…。

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●醜悪な、《なぜ安倍首相に心酔する》ファナティックな女性記者(広報屋)や政治屋が…? 一方、〝忖度〟しない者には…

2019年08月22日 00時00分34秒 | Weblog

『「安倍晋三」大研究』望月衣塑子&特別取材班著)…《「なぜ安倍さんは〈噓〉をつくのか」という…疑問…》↑]



室井佑月さんによる、リテラの連載対談「アベを倒したい!」シリーズ、第14回。
【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第14回ゲスト 望月衣塑子(前編)/室井佑月と東京新聞・望月衣塑子、闘う2人の女が語った安倍政権の圧力、ネトウヨの攻撃、忖度メディア】(https://lite-ra.com/2019/08/post-4889.html)。
【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第14回ゲスト 望月衣塑子(後編)/室井佑月も恐怖 望月衣塑子記者が語った菅官房長官の裏の顔! 圧力を批判されても「俺はあいつが嫌いなんだ」】(https://lite-ra.com/2019/08/post-4890.html)。

 《今回のゲストは、安倍政権に飼いならされた新聞・テレビのなかで、孤軍奮闘を続ける東京新聞・望月衣塑子記者。…官邸から信じがたい圧力や嫌がらせが加えられ、ネトウヨたちも連日、口汚い言葉でバッシングを繰り広げている。…彼女の著書を原案とした映画『新聞記者』も公開され、異例の大ヒットに》。
 《菅官房長官の嫌がらせやメディア支配のやり口、オフレコ懇談会のシステム、マスコミのなかにもある男女差別の問題、そして忖度が生まれる構造の分析まで……。いまのメディアでジャーナリズムの責務を真っ当に果たそうとしている女性がどんな状況に置かれているのか…》。

 リテラの連載対談「アベを倒したい!」シリーズに、望月衣塑子さんが登場。

   『●「平成の治安維持法」で、室井佑月さんや
     斎藤貴男さん「なんて、最初から一般人扱いされないだろうしな」
   『●今が「辞任」させる秋であり…市民に「忖度」する
      政治家や政党はどちらか?、いま、理解するべき
    「連載対談記事の後編【室井佑月連載対談「アベを倒したい!」 
     第4回ゲスト 山本太郎(後編)/室井佑月が「太郎ちゃん、
     安倍さんを倒して」と陳情! 山本太郎が本気で語った安倍政治を
     乗り越える政策論とは?】」

   『●立憲主義も理解できず…「行政の長である総理大臣が
      具体的な改憲日程を口にするのは完全に憲法違反」
    「「裸の王様」の天敵・小池晃さんとの対談【室井佑月の連載対談
     「アベを倒したい!」第5回ゲスト 小池晃(前編)/安倍首相は
     どういうときにキレるのか? 室井佑月と共産党・小池晃が安倍の
     デタラメ国会答弁を徹底分析】」

   『●大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない
       《病的な嘘つき》アベ様…前川喜平氏の人間性と彼我の差

   『●大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない
      《病的な嘘つき》アベ様…全てのアベ様の「政」のデタラメさ
    《室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第7回ゲスト 前川喜平

   『●松尾貴史さん×室井佑月さん対談、「安倍首相は、
      嘘も権力の私物化も恥ずかしいとすら思っていない」
   『●室井佑月さん×金平茂紀さん対談: 《安倍政権の
     言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮》①
   『●室井佑月さん×金平茂紀さん対談: 《安倍政権の
     言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮》②

 アベ様の政で唯一〝上手く行っている〟メディアコントロールの下で…奮闘する数少ない記者。しかし、それにしても、アベ様や最低の官房長官らの《メディアコントロール》がさらに酷いことになっている。

   『●暴言連発「あなたに答える必要はありません」
     「ここは質問に答える場所ではない」「その発言だったら、指しません」
   『●現独裁政権批判な映画『新聞記者』…
     東京新聞【政権批判で? テレビ番組PRゼロ…「忖度」ニモマケズヒット!】

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https://lite-ra.com/2019/08/post-4889.html

室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第14回ゲスト 望月衣塑子(前編)
室井佑月と東京新聞・望月衣塑子、闘う2人の女が語った安倍政権の圧力、ネトウヨの攻撃、忖度メディア
2019.08.08 11:31

     (熱弁する望月衣塑子氏(左)と室井佑月氏(右)(編集部撮影))

 室井佑月連載対談「アベを倒したい!」、今回のゲストは、安倍政権に飼いならされた新聞・テレビのなかで、孤軍奮闘を続ける東京新聞・望月衣塑子記者。菅義偉官房長官の記者会見で厳しい質問を投げかけ続けることですっかり有名になった望月記者だが、官邸から信じがたい圧力や嫌がらせが加えられ、ネトウヨたちも連日、口汚い言葉でバッシングを繰り広げている。しかし一方で、その圧力に怯まない姿勢、権力のチェックを続ける記者魂に称賛と応援の声がどんどん大きくなり、6月には、彼女の著書を原案とした映画『新聞記者』も公開され、異例の大ヒットになっている。

 かたや、ワイドショーで空気を読まず政権批判を続けている室井佑月も『新聞記者』を観て大感動!「望月さんにエールを送りたい」と、今回の対談が実現した。

 権力と闘い続ける2人の女が、安倍政権からの圧力やネトウヨの攻撃、そしてメディアの実態を語り合い、意気投合した最強対談。まずは前編をお読みいただきたい。きっと勇気が湧いてくるはずだ。

(編集部)


●テレビも映画『新聞記者』プロモーション拒否の裏にある噂が

室井 初めまして! 早速だけど映画『新聞記者』観たよ! 森友・加計問題や、伊藤詩織さんの事件とか、安倍さんが政権を握ってからの数々の悪事がてんこ盛りになっていた。内閣情報調査室の内幕も描かれていて。すごい面白かった。

望月 ありがとうございます。公開から1カ月ほどですが、配給会社によると動員33万人で、興行通信社の週末観客動員ランキングも3週連続トップ10入りしたそうです。

室井 知り合いの映画関係者も言ってた。政権を批判した社会派作品がここまで健闘するのは異例だって。でも、テレビとかあんまり取り上げてくれなかったんでしょ。プロモーションを拒否されたってリテラでも書いてあった。公開直後には公式サイトがサーバー攻撃にあったり。やっぱり、真っ向から安倍政権批判をして、官邸から睨まれている望月さんの原作だから、テレビとか完全に腰が引けたんだろうね。

望月 今回の映画宣伝はテレビではすごく難しかったと宣伝部の人も言ってました。それに加えて、参院選前に私が選挙に出るという噂が出回って。

室井 あっ、やっぱり。私も聞いた。望月さんが選挙に出馬するんじゃないかって話。そんな噂を聞いたから最初に絶対確認しておこうと思ってたんだ。そういう話、あったの?

望月 あるわけないじゃないですか。でも、宣伝部は、テレビ局から「望月さんが選挙に出るかもしれないから、取り上げるのはちょっと……」と難色を示されたと聞きました。

室井 映画の宣伝で露出してないなって不思議に思ってたけど、そんな事情があったのか。でも、それって宣伝を断る口実でしょ。安倍政権を批判する作品だから忖度マスコミ、特にテレビは取り上げたくなかったんだね。ただ、出馬に関しては望月さんは知名度も高くて、菅さん(菅義偉官房長官)と闘う女っていうイメージだから、野党系から結構声がかかっても不思議じゃないとは思う。もし声がかかっても、いまの立場を変えずに記者としてガンガン記事を書いて、声をあげ続けて欲しい。私も誘われたことあるけど「私、不倫するのとかなんとも思ってないんで無理です」って言って断った。逆に「出馬なんてことより先生のガールフレンドのひとりにしてください」って(笑)。

望月 ……(爆笑)。


■安倍首相と会食を繰り返すマスコミ幹部の異常、菅官房長官とも

室井 でもさ、ちょっと有名になるとすぐに出馬の噂が出るのは心外だよね。私も仕事として表現者として、物を書くことを一生懸命やっているし、案外評価もされている。なのに、なぜ「議員になったらいいじゃん」とか言われなきゃいけないんだろうって。

望月 同感です。いまの立場から発信し、発言するそれが私たちの仕事ですからね。発信といえば室井さん、最近ツイッターをやり始めたんですよね。リアルタイムで安倍政権の批判もしていて、ツイート回数も多くてがんばっているなと思いながら見ています。でも私もそうですが、かなりネガティブな反応も多いでしょう

室井 すっごく多いです。最初はやり方から何から全然わからなくて「くだらないことを送ってこないで」っていちいち返事していたら、みんなに「ブロックとかミュートとかすればいいだけだ」って言われて。初心者なのでそんなことも知らなかった。それで炎上騒ぎもあって。あっ、望月さんは炎上の先輩だ!

望月 (笑)。私も一時期はあまりにひどいものはブロックしていたんですけど、そうするとまた炎上している感じになるから、いまはもう放置しています。

室井 でも、ツイッターにしても映画にしても、政治的なことがアウト、タブーになるなんて本当に恐ろしい世の中だよ。本当に怖い。そんななか、望月さん、そして東京新聞はうんとがんばってるよ。

望月 ありがとうございます。中日新聞が母体だから、社長と会長が名古屋市にいるというのにも助けられているかもしれません。安倍さんはあまり地方紙とは会食をしていないですからね。全国紙や大手マスコミは、軒並み安倍さんとの会食を繰り返していますが、こうしたトップ同士の関係は現場に必ず影響していると思います。東京新聞では、たしか長谷川幸洋さんがいた頃の2013年5月、彼が間に入って中日新聞の当時の社長が一度安倍首相と会食しているんです。でも、それ以降はしていないと思う。もし会食するような関係が続いていたら、現場としては、やりづらくなりますね

室井 そうだよね。首相とマスコミのトップがベタベタの付き合いなんて先進国では考えられないし、報道機関、ジャーナリストとしてのプライドがないんじゃないかと思っちゃう。トップがそうなら現場も萎縮する。もうマスコミはすっかり安倍さんにやられて、忖度、自粛のオンパレードだもの。

望月 今年6月に国連人権理事会でデービッド・ケイ特別報告者から日本の報道の自主性に対し危惧する報告書がまた出ました。そのなかには「日本政府当局者が彼らに批判的な質問をする記者に圧力を加えている」という文言もあって。

室井 それって望月さんのことだよね。デービットさんは2017年5月にも安倍政権による報道圧力とメディアの萎縮について是正を勧告していたけど、その後もメディア圧力は是正されないどころか、どんどんひどくなっているからね。

望月 政権幹部とマスコミ幹部との会食がこれほど繰り返されるという状況は異常です。それだけでなく「桜を見る会」には芸能人をどんどん呼んで、メディア幹部だけでなく情報番組司会者、コメンテーターなど影響力のある人たちにも手を伸ばしはじめています。安倍政権になってからメディアの取り込みが露骨になっています。ただ、こうした会食への批判が大きくなったことも影響してか、一部テレビ局のトップが安倍首相との会食は断っていると聞きました。でも、その代わり菅官房長官と会食をしているそうです(苦笑)。何を話しているのかと言えば、民放連(日本民間放送連盟)の人事の話とか。菅氏は他のメディア幹部と会ったときも、官僚の人事話をしていたと聞きます。“官僚や政治家、メディア含め、俺があらゆる人間の人事を握っている”ということを内外に示すことが、自分の権力の源泉になるという意識があるのでしょう。

室井 菅さんなら新聞の動静に出ないものね。


■ギャラクシー賞を受賞した『報ステ』元CPを報道から追放したテレビ朝日

室井 望月さんの菅さんとのやりとり見ていてもそうだし、望月さんの著書『新聞記者』(角川新書)を読んでも、映画を観てもそうだけど、望月さんって新聞記者であることへのプロ意識がすごく高いんだなと思いました。男の人って、“記者”としてではなく、会社の“役職”がつくことにこだわりがちだけど、望月さんはそうじゃない。私はジャーナリストでも新聞記者でもないから、そんなプロの記事を読んで「私はこの記事を読んでこう思った」ということを、賛否両論になってもいいから広げる。それが役目なのかなと思ってます。

望月 室井さん、新聞から雑誌から書籍まで、ものすごい量を読んでますものね。テレビでの発言や週刊誌コラムなどを拝読していますが、相当読み込んでやってるなって。

室井 私、オタクだから(笑)。

望月 熱量のすごさを感じます。特にテレビは権力批判もできなくなり、危ないと思っているけど、室井さんやジャーナリストの青木理さんが発言しているのを見ると、「でもまだ希望があるな」と思います。ただ、最近でもすごくひどい人事がテレビ朝日であった。それがジャーナリズムの要として『報道ステーション』のチーフ・プロデューサーなどをやっていた松原文枝前経済部長が、報道局から総合ビジネス局のイベント事業戦略担当部長に異動したことです。彼女は現役の記者のなかでも、ずっとブレずに仕事を続けて。それで安倍政権になってから嫌がらせが続いても「それでもやらなきゃいけない」と発信し続けてきた。昨年4月の財務省・福田淳一事務次官(当時)のテレビ朝日社員へのセクハラ問題のとき、告発した社員の上司でもありました。それを逆手に取られ、「飛ばされるのではないか」という空気がありましたが、当時は伊藤詩織さんの#MeTooの流れがあって、この問題を『報ステ』でも小川彩佳アナ(当時)が取り上げ、反響を呼んでいました。女性記者たちが集まってできた団体「メディアで働く女性ネットワーク」(WiMN)でも、「声をあげた人たちを守ろう」と掲げていたんです。そうしたまっとうな方だったからこそ、相当前から政権に目をつけられていた。しかもいま、テレ朝は早河洋会長の体制下で、安倍首相や菅さんの応援団を自認する、幻冬舎社長の見城徹さんが放送番組審議会の委員長に入っている。(松原さんが)番組を外れる可能性は高いんじゃないかと危惧していたのですが、現実になってしまって。

室井 彼女は古賀茂明さんが『報ステ』を降板させられたときも、最後までかばった人でもあるよね。

望月 そうです。予兆もありました。2016年6月、『報ステ』で松原さんが経済部長時代に手がけた特集「独ワイマール憲法の“教訓”」がギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞した。「ドイツの民主的なワイマール憲法下でなぜ独裁者ヒットラーが生まれたか」という日本の憲法改正の動きとの比較で深く考察されたものでした。そんな栄誉ある賞なのに、政権に批判的に取れる内容なのでテレ朝内では喜ぶどころか“なかったこと”のようだったと聞きます。しかも「贈賞式に出るな」「コメントするな」って松原さんに対して圧力もあったらしくて。異動との関連ははっきりしませんが、松原さんは、憲法改正の国民投票でのテレビのCM規制についての民放連の動きも問題視していました。これまで民放連は「CM規制をかけることも含めた議論をすべきだ」としていたのに、民放連会長や専務理事が日テレに変わった途端、「表現の自由がある」として、「CM規制をかけない」と一変させた。松原さんはそれに対し、過去の国会の議事録などを調べ上げて分析、民放連の会見でも追及していたと聞きます。誰も聞かないから聞きに行かなければという意識だったそうです。政治部デスクにことわって聞きに行っていたそうですが、これをテレ朝の幹部が、問題視していたと聞きました。


■権力の肩を持ち、望月記者の足を引っ張る記者クラブに、室井が激怒

室井 憲法改正をしたい安倍さんへの忖度と金儲けってやつか。テレ朝は小川アナを追い出したり、逆にネトウヨアナの小松靖を『ワイド!スクランブル』に起用したり。テレビも安倍さんへの忖度と、広告収入や視聴率が下がっていくなかで、どんどん変な方向へ行っている気がする。そんななかで、望月さんにして松原さんにしても、権力と対峙してる。官邸に立ち向かっている。誇りを持って仕事してるんだなってわかる。でも、いろいろ大変なんでしょ。菅さんにガンガン質問してる姿は私たちからしたら拍手喝采だけど、記者クラブで足を引っ張られてるって聞いてる。質問する望月さんの悪口言う記者までいるっていうじゃない。昨年も、辺野古の赤土について質問したら菅さんが逆上して、望月さんの質問を制限しようとしたんでしょ。しかも、そんなひどいことに対して、一部の記者が「望月さんが質問をすればするほどクラブの知る権利が阻害される」なんていうコメントを共同通信にしてさ。その上、菅さんの主張はフェイクだったじゃない。

望月 そうなんです。日本新聞労働組合連合(新聞労連)や日本ジャーナリスト会議から抗議声明も出て、東京新聞でも社説や特集記事を掲載し、官邸前でのデモなどもあったのですが、でも記者クラブに関しては室井さんの言う通りかもしれません。実際、ある大手紙記者が「なんだよあいつ、いつまで来させるんだよ」と私についてあからさまに批判していたとも聞きました。それと最近、新聞労連の新聞研究部が、ここ2年以内で官邸にいた記者を対象に官邸会見について匿名アンケートをとり、幹事業務を担う19社、33人が回答を寄せたようですが、そのなかに私の批判もあった(笑)。「パフォーマンス」「自己アピールだ」だとか「質問が長い」とか。同時に、なかには「内部で官邸と繫がっている社がある限り、記者クラブとして身動きが取れない。苦しい」というような生々しい声もありました。彼らはわかっているけど、ジレンマに陥っている。

室井 どこかの独裁国家のメディアとほとんど変わんないね。現場の人から実態を聞くと、どんどん怖くなってくる。

後編に続く

……
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https://lite-ra.com/2019/08/post-4890.html

室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第14回ゲスト 望月衣塑子(後編)
室井佑月も恐怖 望月衣塑子記者が語った菅官房長官の裏の顔! 圧力を批判されても「俺はあいつが嫌いなんだ」
2019.08.09 11:42

     (2人が語る”民主主義を守る覚悟”とは(左・望月氏 右・室井氏 撮影・編集部))

 室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」、今回のゲストは、菅義偉官房長官の会見で孤軍奮闘を続ける東京新聞・望月衣塑子記者。前編では、そのも望月記者から、メディアや記者クラブの予想以上の政権忖度の実態を聞いて、激怒した室井だったが、後半はさらに踏み込み、話はどんどん具体的になっていく。

 菅官房長官の嫌がらせやメディア支配のやり口、オフレコ懇談会のシステム、マスコミのなかにもある男女差別の問題、そして忖度が生まれる構造の分析まで……。いまのメディアでジャーナリズムの責務を真っ当に果たそうとしている女性がどんな状況に置かれているのか、最後まで読んで、その現実をぜひリアルに知ってほしい。(編集部)


前編はこちら

●望月衣塑子が菅官房長官の会見に出て、質問を続けている理由

室井
 望月さんの話を聞いてると、つくづく恐ろしくなるけど、でもそんな状況なのに記者クラブの人って、質問をしないでパソコンに向かってひたすらカタカタやっているんでしょ。質問しないのって記者としての誇り、能力がないじゃない。記者は質問して、納得できるまで食い下がるのが仕事でしょ。質問しないで菅さんの話を垂れ流すだけだったら子どもにでもできる。しかも同業なわけじゃん? 誇りがあるなら味方しろ! 記者クラブって本来、国民の知る権利を代弁する制度だし、もし同業他社でも権力から知る権利を奪われそうになったら、タッグ組んで「妨害はやめろ」「きちんと質問に答えろ」ってやるのが役目なんじゃないの? でも、日本はそうじゃない。逆にバッシングをするって本当におかしい。しかも、権力の批判や監視をするのが新聞やジャーナリズムの役割なんだから、権力者とお友だちになってどうする! 緊張関係が必要なのに、そうじゃない。いまの記者クラブはスクープがあったとき、1社に抜かれるのが怖いからというだけのために存在してるのかと思っちゃう。それに菅さんって、記者やテレビコメンテーター、芸能人なんかと、けっこう頻繁にご飯食べてるらしいし、人たらしなんでしょ。そんな菅さんに記者はひれ伏している。安倍政権がこんな長く続いているのも、逆に言えばそのキーパーソンは菅さんってことじゃないかと思うんです。

望月 そうですね。政権存続のため、裏で彼がメディアや官僚、政治家、企業の人たちと何をやっているのかを見ることは大切なことだと思います。一連の公文書改ざん問題や森友加計問題の発言のひとつひとつを見ていると、その背後に必ず菅さんの存在がある。今回の私に対する質問妨害もそう。最初は、内閣府の長谷川榮一氏(総理補佐官兼内閣広報官)から抗議文が来たけど、もちろん菅さんなんですよね。しかも、妨害行為が国会で問題視されて、周囲から「さすがにやめたほうがいい」と言っても、菅さんは「俺はあいつが嫌いなんだ!」って全然聞く耳を持たなかったと聞いています。そういう意味で、良くも悪くも裸の王様というか、自分の思ったことは何がなんでもやる。そうした菅さんら官邸の姿勢が公文書改ざんの問題の根底にある。その危うさを感じるからこそ、会見に出て質問しているのですが。

室井 さすが“影の総理大臣”と言われるだけある。でも、裏を返せば、そんな権力の中枢に望月さんは恐れられているってことでしょ。

望月 まあ、目障りなんでしょう(笑)。それまで菅さんは突っ込んだ質問をさせない土壌をつくり、記者もそれなりに従っているふうを装ってきた。そこに私が来て。


■菅官房長官がオフ懇の前に行う“儀式”を聞いて室井が「ひゃぁー怖っ」

望月 菅さんの会見では事前通告が現在、慣例化しているとも聞きます。匿名のアンケートにも「事前通告せずに質問したら官邸側から怒られた」とありました。菅さん側から「事前に質問は全部投げてほしい」と言われると、現在のパワーバランスのなかでは、記者もそれに従わざるを得ないのでしょう。先進国や外国人特派員協会のなかではあり得ない状況です。さらに会見が終わると、裏で番記者とオフレコ懇をやります。

室井 公の会見では記者は質問しない、菅さんは言いたいことだけ言う。なのにその裏でオフ懇をするってどういう了見なの。望月さんが菅会見に出るようになってから、オフ懇を拒否するようなこともあったんでしょ? やっても望月さんの悪口を吹き込むって聞いたことある。他の記者に望月さんを批判して、“おまえらどうにかしろ!”って。なんて姑息なんだ。自分たちに都合の悪い質問をする望月さんを排除するって。でも、それが安倍政権の本質でもあると思う。

望月 政府見解が必要なところは、それなりに毎回、記者は聞いています。でも、官邸がクラブに貼り出した私についての抗議文について質問した記者にある官邸の記者が、こう言ったそうです。「これは、国民の知る権利を守るのか、それとも我々記者クラブの知る権利を守るのか、この闘いだ。バランスもっと考えてね」って。

室井 それって菅さんからの“伝言警告”ってことでしょ。番記者はジャーナリストじゃなくて伝書鳩だったのか!

望月 オフ懇に関しては、新聞労連の新聞研究部がここ2年以内で官邸にいた記者を対象におこなった匿名アンケートでこんな指摘もありました。菅さんへのオフ懇や夜回りに来る記者が携帯電話やICレコーダーを事前に回収袋に入れると。これはオフ懇の内容が週刊誌で報じられたことがあって、菅さんが激怒したため、その予防策として、つまり記者が菅さんに忠誠を誓う“儀式”として行われていたということのようです。その後、雑誌やネットでこの事が公にされてから、その儀式は止めたようですが。

室井 ひゃぁー怖っ。菅さんも怖いけど、それに忠誠を誓う記者も恐ろしい。

望月 会見では質問以外にもいろいろなことがわかるんです。たとえば私の質問中、菅さんがある記者によく目配せしてるんです。その記者は野党時代から菅番をやっていて、安心できるから彼に毎度、相槌を求めているのでしょう。菅さんの会見での精神安定剤なんだなと。彼がいないと気持ちが安心できないのか、目が泳いでいるように見えます。そんな一面も垣間見れる。テレビ朝日の松原(文枝・前経済部長)さんに関しても(編集部註:詳しくは前編参照)『報ステ』で安倍政権批判をしていた時代、菅さんは「あいつ(松原さん)と食事できないかな」って周りに聞いていたらしい。でも、彼女の性格を知っている周りから、「食事しても変わらないですよ」と言われて止めたとか。そうやってまめな会食を重ね、常に現場の記者やメディア幹部を取り込んで来たのでしょう。親しくなり、自分を好いてくれれば、今後の報道も含めて、将来、心強いですからね。


■望月衣塑子や室井佑月に向けられる批判の裏に「女のくせに」という差別

室井 でも、話を聞いていて思ったのが、菅さんや同業の記者が望月さんを批判するのは、女性だからという面もあるんじゃない? やっぱ男社会だし、出る杭は打たれる国だから、女性で目立つと嫉妬やバッシングが起きやすいと思う。Twitterで、私や望月さんを攻撃している人がいっぱいいて、ちょっと興味があるから調べたら、他にもすごく女の人を狙って罵詈雑言を繰り返している人だったりする。「ババアが」とかね。仕事をしていると、「女が意見を言うな」って感じの悪口もすごく多いし、そういうのってすごく感じる。女性差別もあるんじゃないかって主張すると、今度は「おまえ、自分が女だと思ってたのか」なんてことまで言われたことも。望月さんを叩いている人たちって、「女のくせに」って意識があるのは否めなくない?

望月 そうですね。それは私だけではなく政治家にも当てはまるかもしれません。稲田朋美さん、辻元清美さん、そして蓮舫さんなんかもそうだけど、与野党や政治的信念に関係なく、女性の政治家へのバッシングは男性の政治家のそれとは明らかに違う。セクシュアリティへの言及、ツッコミをしますよね。マスコミでもやはり男尊女卑の風潮も感じます。女性記者は、政治家の会見に出ている記者がそもそも少ないし、あまり積極的に質問しているように見えない。とくに#MeToo、#WeToo運動があったとき、女性記者がもっともっと政府や麻生太郎財務大臣に突っ込んで聞いてもいいと思いました。がんばって聞いている女性記者もいましたが、全体としておとなしく見えました。アメリカだったら、麻生大臣は総攻撃にあうし、「はめられたんじゃないのか」と同じ発言をしていたら辞任に追い込まれていたのではとも思います。

室井 たとえば片山さつきさんを批判するとき、主張について意見を言うのは当然だけど、そこに「ブサイクが」とか「変な髪型しやがって」とかって言うのはおかしいよね。でも悲しいかな、権力を持っている男にひれ伏し出世しようとする女性がいることも確かなんだけどね。「恥知らず!」なんて恐ろしい言葉で安倍さんを擁護する三原じゅん子さんとか、大臣就任の挨拶で「私はみなさんの妹」ですと自己紹介しちゃう丸川珠代さんとかもいる。難しいね。女性は団結しないといけないと思うんだけど。


■三原じゅん子、NHK岩田明子はなぜ安倍首相に心酔するのか

室井 三原さんはすっかり安倍さんに洗脳されているけど、昔からずるい人じゃないのよ。タレントのときから。だってハッピハッピー(元アニマル梯団のコアラ)と離婚したとき、番組で一緒になって。わたしが「こんな男いいじゃん、いらないじゃん」って言ったら、すぐに泣いちゃって。だからいますごく信じているのが安倍さんってことなんじゃないかな。純粋だから。でもそれが一番怖いと思っちゃう。信じ込んじゃうことが。

望月 三原さんは、かつては石破茂議員支持だったと聞きますが、彼女も菅さんとの会食後、安倍さんに寝返ったとか。「菅氏に副大臣とか政務官のポストをぶら下げられたのではないか」と聞きました。NHKの岩田明子記者は、安倍さんに心底心酔しているとも聞きます。そうでもないと、あそこまであからさまに安倍さんを持ち上げられないかなとは思いますが。

室井 安倍さんがイランを訪問したときも、安倍さんの成果を盛んに強調していたけど、なんだかクラクラしたけど、最近は逆の意味で岩田解説が楽しみになって(笑)。でも岩田さんって、安倍さんと近しい関係ということでNHK内ですごい力を持っちゃって。こういうやり方見てると、やはり女性同士ってだけで団結って難しいのかなって思っちゃう。


■室井佑月が望月衣塑子の民主主義を守る覚悟に感動、共闘を宣言!

室井 もっと女同士が味方すればいいのに、なかなかそうはならない。新聞社とかテレビ局って大企業でもあるけど、男女差別はあるし、女性はそれを絶対、感じてたりするのに。そんななかで望月さんが問題意識を持ち続けられるのはなぜ? 原動力ってどんなこと?

望月 たとえば社会部の私が菅さんの会見に出ても、政治部から文句を言われることはないです。彼らには、菅さんの秘書官や他社の記者からはいろいろ言われて、迷惑をかけているはずなのに、本当に有り難いなと思っています。それに、会社にFAXや電話の投書で応援メッセージが来るんです。いまの政権はおかしいと思っている人たち、安倍さんのやり方に怒ったり疑問に思っている人がたくさんいる。そういう声を知れば、記者として疑問に思ったことを会見に出て質問するしかない。国民の知る権利に応えなくちゃならないと思うんです。そして社としてもバックアップしてくれる土壌がある。アベノミクスも公文書改ざんも、沖縄の問題も、いまの日本はおかしなことばかりです。そんななか、私たちメディアが声をあげ、報道ができなくなったら、情報がシャットアウトされて伝わらなくなる。そうなったときに何が起こるのか。民主主義は明らかに後退していく。そんな危機感があります。そして、東京新聞の読者の方々もその問題意識を共有してくれている。だから続けられるのかな。

室井 でも、本当は望月さんの言っていることって、そういう記者の当然の問題意識を安倍政権によって崩壊させられた。その罪は重いと思う。

望月 官邸クラブにいる記者はじめ、他のさまざまな現場にいる記者でも苦しんでいる人は多いと思います。そのなかでもそれぞれが、皆できる範囲のなかでがんばっている。権力に向かってものを言おうと、立ち上がろうとしてる人たちもいる。そんな同じ思いでやっている人がいて、読者が支えてくれる。それが原動力かな。

室井 立派だと思う。これからも応援する。すぐにバッシングされる同士、女性同士、今後も仲良く闘おうね!

(了)

前編はこちら

プロフィール
望月衣塑子 1975年生まれ、中日新聞入社後、東京本社に配属され千葉、埼玉など各県警担当、東京地検特捜部担当を歴任。2017年に森友学園、加計学園の取材チームに参加し、菅官房長官会見に出席、また前川喜平文部科学省前事務次官や女性ジャーナリスト伊藤詩織へのインタビューなどを手がける。『武器輸出と日本企業』『新聞記者』『権力と新聞の大問題』など著者多数。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビュー、その後テレビコメンテーターとしても活躍。「週刊朝日」「日刊ケンダイ」「女性自身」など連載コラムも多数持つ。また『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『大竹まこと ゴールデンラジオ』(文化放送 金曜日)などに出演中。
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コメント
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●室井佑月さん×金平茂紀さん対談: 《安倍政権の言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮》①

2019年05月16日 00時00分10秒 | Weblog

[『権力と新聞の大問題』(望月衣塑子×マーティン・ファクラー著)…《政権をチェックしようという意識が…》↑]



リテラのシリーズ対談【室井佑月連載対談「アベを倒したい!」第13回ゲスト 金平茂紀(前編)/金平茂紀と室井佑月、萎縮するテレビで孤軍奮闘を続ける二人が語る実態! メディアはなぜ安倍政権に飼いならされたのか】(https://lite-ra.com/2019/04/post-4677.html)と、
室井佑月連載対談「アベを倒したい!」第13回ゲスト 金平茂紀(後編)/『報道特集』金平茂紀と室井佑月が激論! なぜメディアは沖縄を無視し、韓国ヘイトに覆われてしまったのか】(https://lite-ra.com/2019/04/post-4679.html)。

 《安倍政権の言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮。なかでも、ひどいのがテレビだ。第二次安倍政権発足以降、政権に批判的なキャスターやコメンテーターが次々と降板に追い込まれ、上層部から現場までが政権の顔色を窺い、批判的な報道はほとんどできなくなっている》。
 《無視される沖縄基地問題と嫌韓報道の増殖、リベラルの退潮と排外主義の蔓延がなぜ起きたのか、にも踏み込む》。

 斎藤美奈子さんは、《メディアの役目は「中立公正、不偏不党な報道」ではなく「権力の監視」なんです。それ、常識。》…と。阿部岳記者も、《民主主義社会における報道はプロパガンダとは違う権力から独立し、監視するのが役割評価するのは権力ではなく、読者や視聴者だけだ》と言います。また、《▼新聞を含むマスコミは逆に客観中立で、常に事実と正論を語るという自画像を描き、自ら縛られてきた…》とも。
 アベ様独裁政権下、メディアは飼いならされ、「1/4と2/4」の市民は躾けられ
 沖縄では何度民意を示しても、自公お維の皆さんは「辺野古が唯一…」という念仏しか唱えられず、彼・彼女らのあまりの無能・無為無策ぶり…しかも、辺野古は破壊「損」全く無視する「本土」の「1/4と2/4」の皆さん

   『●『学校が教えないほんとうの政治の話』(斎藤美奈子著)読了
                …《あなたの政治的ポジションを見つけて…》
    《だいたいみんな、このごろ、まちがえてんのよね。
     「偏らないことがいいことだ」「メディアは中立公正、不偏不党であるべきだ」
     「両論を併記しないのは不公平だ」。そういう寝言をいっているから、
     政治音痴になるのよ、みんな。》
    《あのね、政治を考えるのに「中立」はないの。メディアの役目は
     「中立公正、不偏不党な報道」ではなく「権力の監視」なんです。
     それ、常識。》

   『●『国民のしつけ方』(斎藤貴男著)読了…
      《それは調査報道…「番犬(ウォッチ・ドッグ)」としての役割》

    《ジャーナリズムの最大の存在意義は「権力のチェック機能」である。
     …専門的には「番犬ウォッチ・ドッグジャーナリズム」理論という》

   『●『追及力 権力の暴走を食い止める』(望月衣塑子×森ゆうこ著)読了
                    …《今、ジャーナリズムと野党の…》
    《今、ジャーナリズムと野党の存在意義を問い直す

   『●沖縄県知事選で「ファクトチェック(事実検証)」報道…
           「ネット上にはびこるデマやうそ、偽情報を検証」
   『●下野時の発言がブーメラン…「最低の官房長官」スガ殿は、
               「国民への背信行為」を自分自身で行っている
   『●《官邸の意に沿わない記者を排除…
     明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を狭める…》
    「阿部岳記者は、《民主主義社会における報道はプロパガンダとは違う
     権力から独立し、監視するのが役割
     評価するのは権力ではなく、読者や視聴者だけだ》と言います。
     最低の官房長官は、市民の《評価》を妨害しようとしています。
     「事実誤認」「度重なる問題行為」かどうかは《読者や視聴者》が
     判断することで、最低の官房長官がやるべき事じゃない」
    《新聞労連南彰委員長)…首相官邸が昨年末の菅義偉官房長官の
     記者会見での本紙記者の質問を「事実誤認」「度重なる問題行為」とし、
     「問題意識の共有」を内閣記者会に申し入れたことについて
     「官邸の意に沿わない記者を排除するような申し入れは、
     明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を
     狭めるもので、決して容認できない」とする抗議声明》


【『●室井佑月さん×金平茂紀さん対談: 《安倍政権の言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮》②』へ】

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https://lite-ra.com/2019/04/post-4677.html

室井佑月連載対談「アベを倒したい!」第13回ゲスト 金平茂紀(前編)
金平茂紀と室井佑月、萎縮するテレビで孤軍奮闘を続ける二人が語る実態! メディアはなぜ安倍政権に飼いならされたのか
2019.04.25 12:50

 安倍政権の言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮。なかでも、ひどいのがテレビだ。第二次安倍政権発足以降、政権に批判的なキャスターやコメンテーターが次々と降板に追い込まれ、上層部から現場までが政権の顔色を窺い、批判的な報道はほとんどできなくなっている
 そんななか、今回は地道に果敢に政権批判を続ける数少ない番組のひとつ『報道特集』(TBS)キャスターを務める金平茂紀氏をゲストに迎えた。金平氏といえば、『筑紫哲也NEWS23』番組編集長、TBS報道局長、アメリカ総局長などを歴任。定年退職後の現在も、『報道特集』キャスターを継続し、政権への厳しい批判も厭わない姿勢を貫いている。
 そんな金平氏に、やはりテレビでコメンテーターを続けている室井佑月が迫る。なぜテレビはここまで萎縮してしまったのか。御用ジャーナリストが跋扈する理由とは何か、そして、安倍政権下でテレビに何が起きたのか。テレビで孤軍奮闘を続ける二人の激論。まずは、前編をお読みいただきたい。

(編集部)

********************

室井 金平さんがこの対談に出てくださってすごいびっくりしました。これまでレギュラー的にテレビに出ている人にはみんな断られていたんです。金平さんは『報道特集』のキャスターをしているのに、こんな対談に出てくださって!

金平 僕はもう2016年にTBSの執行役員の任期も終わっているから、契約ベースでやっている。というか、TBSも扱いかねているんじゃないですか? TBSには定年まで長く勤めていたけど、以前、室井さんと一緒に共謀罪反対の呼びかけ人をしたことあったでしょ? あの記者会見をやった1週間後に呼び出されて上層部に言われたんです。「お引き取り願おうか」と。呼びかけ人と直接の因果関係はないんだろうけど、「もうそろそろ、こういうことをやる人間は扱いかねる」っていう空気があったんじゃないかな。

室井 あると思います(笑)。だって、わたしも同じですから。かれこれ20年情報番組に出ていますが、最近は毎回、会議で名前が挙がってるみたい。「次、降板」って。でも、わたしを降ろしたあとに番組と同じ考えの人を呼んじゃうと、わかりやすすぎるし、ちょっと休んだだけでネットにすごく書かれるから、降ろされそうで降ろされない(笑)。まあ、今後は分かりませんけど、たぶん、五輪前に辞めさせたいんじゃない。

金平 こう言っちゃなんだけど、同じような立場の2人で対談なんかやっていいのかな(笑)。

室井 TBSはかつて“報道のTBS”と呼ばれていて、とくに『筑紫哲也NEWS23』 時代の、家族でやっているような雰囲気は大好きでした。金平さんも筑紫ファミリーだったでしょ。

金平 筑紫時代は全スタッフ、そして番組もが一体となった感じで、うまく回っていた。筑紫ファミリーという疑似家族のような。でも、いまでは良き疑似家族はとっくに壊れています。「老壮青」って言っていたんですけど、いまは誰もファミリーとか思っていない(苦笑)。

室井 でも、TBSと言えば報道だったじゃないですか。

金平 かつてね。

室井 いまでも他局よりは頑張ってると思うけど。

金平 他が酷すぎるんでしょう。論評にも値しないようなところがほとんどになっちゃって。僕はいま65歳だけど、僕らが学生時代のテレビは、NHKは体制を代表する本当のことは絶対言わないメディアで、“お上の代弁者”として捉えられていた。そんななか、民放の報道ではTBSが圧倒的に強かった。かつて『JNNニュースコープ』(1962〜1990年放送)という番組があって、田英夫古谷綱正入江徳郎とかのベテランどもがいて、結構な迫力があったんです。当時、「NHKとTBS、どっちが本当のことを言っているのか」と問われれば、みんながみんなTBSに決まってるじゃん」と言うくらいに力があった時代だった。その頃、他の民放は、テレ朝は、NET=「日本教育放送」時代で報道には力を入れていなかったし、フジテレビは娯楽路線、日本テレビはプロレスと野球。報道をやっていたのがTBSだった。だから本来強いのは当たり前なんです。


■ワイドショーが報道化して報道がワイドショー化、重要な問題が無視

室井 でも今後はどうなんですか? わたし、情報番組に20年出てますけど、どんどん変わってきていると実感していて。たとえば政治的な問題が起きても、ワイドショーで取り上げるのは「細野豪志が二階俊博と会った」とか本質に関係ない話ばかりで、あとは安倍応援団が安倍首相の代弁を主張していて。

金平 かつてワイドショーとストレート報道の関係は、新聞社でいうと週刊誌と本紙みたいな、妙な上下関係があった。「報道は偉いんだ」という意識ですね。ワイドショーや情報番組はいわゆる井戸端会議。でも、現在のようなネット社会になり、ネットで出ている言葉と、印刷されて出るオールドメディアの言葉が受け取る側から見ると等価になっている。そんな時代ですから、報道番組もワイドショーも等価と捉えられる時代になっちゃった。だからテレビの本質からいうと、どっちもどっちなんです。

室井 テレビも視聴率至上主義だから、森友事件や辺野古新基地建設のことより、「貴乃花が離婚した」ということを取り上げる。ある意味仕方ないとは思うけど、カルロス・ゴーン事件では、その本質にはほとんど触れず、ゴーンが釈放されて変装していることを延々とやる。すごく変だし、本質をごまかそうとしている意図を感じるほど。

金平 ワイドショーが報道化して、報道がワイドショー化したということじゃないかな。いま、夕方のニュースを見ていてもほとんどワイドショーじゃないですか。やってるネタも変わらない。「テレビなんだから同じ」と平準化されてしまった。

室井 テレビ局も番組づくりを制作会社に任せている体制だし、制作会社もなんだかネトウヨ路線の会社も多くなっていて。だからそういう政治ネタを延々流されるより、むしろ「スズメバチが民家の軒先に巣をつくっちゃった」という特集を組んでくれたほうがマシって思っちゃいますよ。しかも沖縄の基地問題という日本にとって需(重?)要な問題も、アリバイ的に触れるだけ。

金平 興味ないもん、制作側も視聴者も。実は本土の多数派は沖縄のことに興味ないんですよ悲しいですけれど

室井 あります! わたしは興味ありますよ。だって基地問題は沖縄だけの問題じゃないもん。

金平 本来はその通りなんです。僕も在京メディアのなかでは沖縄問題を取り上げ続けている自負はあるし、通い続けてもいる。でも、普通の報道マンは違う。「沖縄やったって数字ついてかないから、やったって仕方がない」と平気で公言している局員もいます

室井 取り上げ方だと思う。「安倍政権に歯向かってる」みたいなつくり方したら、みんな面白いから絶対見るはず。

金平 いやいや、「安倍政権に歯向かってるというつくり方をしようと思う報道関係者なんて何人いると思ってるんですか? 室井さんも本当はわかってるでしょう。どんなスタッフがどういうことを考えながら原稿を書いているか(笑)。

室井 確かに、すっとぼけて論点をずらしてるとは思います。それは嘘をついているのと同じことだと思う。たとえば、消費税を取り上げるにしても、ポイント還元の話を何時間も延々とやる。それより増税前の約束と違う使われ方をされようとしていること、大企業は減税されて税収入のトータル額はほとんど変わってないということを指摘すべきなのに。


■メディアが生み出した安倍政権の傲慢、統計不正問題でも厚労省が酷い会見

金平 わかりやすいからね。自殺した西部邁さんが言ったようにJAP.COM(アメリカ属国株式会社)になっちゃったんだよ、日本は。西部さんの言う通りで、国全体が株式会社みたいになっちゃって、儲けをいくらにするとか、ポイント還元とかの話ばかり。日本人のなかに数値主義、視聴率主義がすっかり根付いてしまった。でも、日本の1968、69年頃はめちゃくちゃ面白かったんです。たとえば最近、「1968年 激動の時代の芸術展」に行ったけど、赤瀬川原平のニセ千円札事件についての展示があって。ニセ札をアートとして制作したが起訴された事件だったけど、裁判になって、法廷で証拠物として“ニセ札”が陳列された。それを彼らは「展覧会」と称していて。しかも当時、時代の最先端にあった彼らは数値をバカにするんです。何でも数値化して何かやるのって「バカじゃないの?」って。でも、いまは数値、数値、ポイントポイントばかり(笑)。原子力資料情報室の伝説的人物の故・高木仁三郎も、1970年代、すでに「朝日ジャーナル」で数値化への批判をしていた。数字を物神化させ、それが唯一の価値の尺度となっている批判だったけど、実際、いまの世の中そうなってしまっている。もちろん税金の話もね。

室井 消費税増税にしても「ポイント還元で儲かる」って言われても、そもそも自分たちが払った税金でしょ。それを還元するって言われてもなんだか詐欺にあっている気分だもの。詐欺といえば、福島第一原発の事故対応費が民間シンクタンクの資産によると最大81兆円だというのが朝日新聞に出ていたけど、数値化がそんなに好きなら、81兆円ってすごく大きい金額だし、ワイドショーで出したら国民ぶったまげだと思うけど、ぜんぜんやらない。

金平 いまの政権にとって数値は自分たちの主張を通すための後ろ盾として使う道具だって考え方だから。数値は客観的な事実とか、そういうものではないという。道具だから。だから都合のいい数値しかあげられない都合の悪い数値は隠す

室井 最近では厚生労働省の統計不正なんか典型でしたよね。国民を騙すために政権と官僚が好きなように数字を操作できちゃう恐ろしい時代だと実感しました。

金平 ひどい話だよね。あのとき、厚生労働省が報告書を出したときの記者会見に行ったんです。厚生労働省特別監察委員会の樋口美雄委員長が、とにかくひどかった。会見の時間を区切っちゃって、ろくな解説もしないし、記者もあまり突っ込んだ質問しないんだよ。見てて腹立っちゃって。こんなことで記者クラブの連中も納得しているのか?と大いに疑問に思いましたよ。そのなかで僕は一番の年寄りだから「こんなので納得すると思ってるんですか?」というような質問をしたら、会見場が何だかシラっとするわけです

室井 すっかり飼いならされてる感じがします。番記者なんか政治家が外遊するときにも同じ飛行機で同行したりして。

金平 ドキュメンタリーをやっていた先輩にこんなことを言われたことがあるんです。「記者の起源なんて(取材対象者に)同行して飯食わされたり飲まされたりして情報の密使の任務を果たす、そういうやつがおまえらの起源だよ」って。たとえば今野勉とか村木良彦などTBSが輝いていた時代のドキュメンタリストは「報道のストレートニュースをやっている記者は敵だ」なんて言ってたからね。「どうせ御用聞きだろう?」って。そのくらいラディカルだった。そういう人たちと番記者の間には緊張関係があったから、逆に僕なんかは悔しいから「そんなことストレートニュース部門の俺たちは言われたくない」って思って、一生懸命がんばって、スクープをモノにしようとしましたけどね。


望月衣塑子記者問題の官邸前デモに参加した記者はわずか20~30人

室井 番記者との緊張関係といえば、東京新聞の望月衣塑子さんが話題ですよね。それまでほとんどまともな質問をしなかった記者クラブのなかで、菅偉義官房長官に果敢に質問して。それで官邸から排除され恫喝されているのに、他の記者は知らんぷり。逆に「彼女がいると邪魔だ」って言われちゃったりして。会見を見ていても、記者はみんなうつむいてパソコンをカタカタしてるだけ。

金平 3月14日に首相官邸前で新聞記者などメディア関係者らと市民約600人がデモをおこなって、望月記者への嫌がらせに抗議したけど、しかし現役の報道記者は、正直に言うと、20~30人くらいかな。あとはOB、OG、リタイアした人。現役記者としてはデモに参加すると会社に睨まれる可能性もあるからね。でも、それでは大きな力にならない。一線にいるメディア関係者が大挙してやらないと。人ごとじゃなくて自分たちの問題だという意識が希薄なんてすね。しかも望月記者が孤軍奮闘しているなか、江川紹子などが“どっちもどっち論を主張するなどひどい状況です。

室井 自分は関係ない。自分の問題じゃない。番記者なんだから政府幹部センセイの言い分を聞いていればいい。そんな意識なんじゃない。だから望月さんの記者としての当然の問題意識も理解しないし、ひとり怖い思いをしているのも理解できない。わたしも秘密保護法のデモに行ったことありますが、周りを見渡したらメディア関係者や新聞社の人すら本当に少なくて。味方がいないって、本当に怖い

金平 僕らの本来の仕事は、「権力は監視するものだ」ということで、とにかく権力を批判することです。「ウォッチドッグ」とも言うけど、そうした批判精神を失ったらメディアは存在価値がない。あと、これは筑紫さんが言っていたことだけど「マイノリティになることを恐れちゃダメだ。マジョリティなことを言い出したらダメ」だと。ダイバーシティ、多様性が大切で、一色に染まるのは「気持ち悪い」と。それはメディア人にとって基本ですよね。権力監視、少数派を恐れるな、多様性を尊重する。この3つがあれば少々の失敗は仕方ない。でも、いまのメディア状況を見ると、全部逆の方向にいっている。権力監視じゃなくて、ポチ、御用記者に成り下がり、それを恥じるどころか嬉々としている田崎史郎とか岩田明子とか、大昔の山口敬之とかね。権力の真横にすり寄って、人事にまで口を出すようになる

室井 なんでそんな御用記者がうじゃうじゃいて、まかり通っているのか、まったくわからない。

金平 特に最近顕著だと思うけど、テレビの制作側からしたら「政権に近い=便利に使える」という意識もあると思う。一方、御用記者は、政権や総理に近いことを、社内的生き残りの処世術、人事に使うわけです。「わたしは総理と直接話ができますから」と。みんな苦々しく思っているけど、そういう記者は社内的に力を持ってしまう。

室井 安倍政権で置かれた内閣人事局の構造、やり方と一緒じゃない。安倍さんに近い人、お友だち、イエスマンばかりが出世する。

金平 そうです。それがメディアがダメになった原因のひとつですね。御用記者が優遇され社内で出世する。メディア企業で、安倍政権と同じような構造が出来上がっている。ガタガタうるさいことを言う奴はパージされ、吠えないやつのが「かわいい、かわいい」と重宝される。

室井 なんか話を聞いていると、悔しくて絶望的な気持ちになるね。

後編に続く
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【『●室井佑月さん×金平茂紀さん対談: 《安倍政権の言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮》②』へ】

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●室井佑月さん×金平茂紀さん対談: 《安倍政権の言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮》②

2019年05月16日 00時00分05秒 | Weblog

[『権力と新聞の大問題』(望月衣塑子×マーティン・ファクラー著)…《政権をチェックしようという意識が…》↑]



リテラのシリーズ対談【室井佑月連載対談「アベを倒したい!」第13回ゲスト 金平茂紀(前編)/金平茂紀と室井佑月、萎縮するテレビで孤軍奮闘を続ける二人が語る実態! メディアはなぜ安倍政権に飼いならされたのか】(https://lite-ra.com/2019/04/post-4677.html)と、
室井佑月連載対談「アベを倒したい!」第13回ゲスト 金平茂紀(後編)/『報道特集』金平茂紀と室井佑月が激論! なぜメディアは沖縄を無視し、韓国ヘイトに覆われてしまったのか】(https://lite-ra.com/2019/04/post-4679.html)。

   『●《事実誤認》というフェイクで記者を会見から締め出す前に… 
                 アベ様や最低の官房長官こそ《事実誤認》?
   『●事実誤認の常習犯…《聞きたくない質問、
      都合の悪い質問を遮るような、その先に国民がいることを無視…》

   『●《事実誤認》はどちらか? 《権力を監視し、
       政府が隠そうとする事実を明らかにするのは報道機関の使命
   『●《「この会見は一体何のための場だと思っているのか」と質問 
                  菅氏は「あなたに答える必要はない」》!!
   『●記者イジメ…最低の官房長官が《民主主義を守るために努力》
                 《国民へ情報を知らせる義務》を果たしてる?
   『●小林節氏…《職業としての権力監視機関として、
       報道が発達し、憲法の重要な柱のひとつとして確立され》た
   『●三宅勝久さん《報道・言論の自由を標榜しながら
      じつのところ会見参加者を選別している…巧みな情報操作》
   『●最低の《官房長官が「これでいい」と決めれば、
      官僚も秘書官も誰も止められない。それは非常に危険》
   『●映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』《その中で…
      ナイト・リッダー社の記者たちは政権のウソを報じ続ける》
   『●《新聞を含むマスコミは…「客観中立で、常に事実と正論を語る」
                     という自画像を描き、自ら縛られてきた》
   『●竹信三恵子さん《声をあげない限りどんどんやられていく。
                 …ニーメラーの警告を無視してはいけない》
   『●『権力と新聞の大問題』(望月衣塑子×マーティン・ファクラー著)読了
                         …《政権をチェックしようという意識が…》
    「「新聞は安倍政権に屈したのか?」…。《望月 …一部のメディアは
     政権をチェックするという役回りより、政権とともに力を肥大化させて
     いること。…新聞を含む大手マスメディアは、政権をチェックしようという
     意識が弱体化しているばかりでなく、その中から、むしろ政権に
     寄り添うような報道を続けるメディアや記者も出てきました。インターネットや
     SNS…新聞の報道を疑問視するようになり、新聞の社会的信頼性が
     従来より低下していると感じます》。広報機関に堕していてはダメ。
     「番犬ジャーナリズム」「調査報道」を求む」

   『●『新聞記者』(望月衣塑子著)読了…《ひとつずつ真実を
              認めさせて、さらに裏を取っていくこと―――》
   『●アベ様の政で唯一〝上手く行っている〟メディアコントロール
              …「一人でも権力に立ち向かう」とはいうものの…


【『●室井佑月さん×金平茂紀さん対談: 《安倍政権の言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮》①』へ】

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https://lite-ra.com/2019/04/post-4679.html

室井佑月連載対談「アベを倒したい!」第13回ゲスト 金平茂紀(後編)
『報道特集』金平茂紀と室井佑月が激論! なぜメディアは沖縄を無視し、韓国ヘイトに覆われてしまったのか
2019.04.26 11:16

報道特集』(TBS)キャスターの金平茂紀氏をゲストに迎えた室井佑月の連載対談。前編では、安倍政権下で萎縮するジャーナリズムや御用メディア化、テレビの現場で何が起きているかを語ってもらったが、後編ではさらに、無視される沖縄基地問題と嫌韓報道の増殖、リベラルの退潮と排外主義の蔓延がなぜ起きたのか、にも踏み込む。ヒートアップするふたりの対論をぜひ最後まで読んでほしい。

(編集部)

********************

室井 メディアの御用化について話してきたんだけど、私が怖いのは、直接的な圧力とか忖度で黙らされてるうちに、みんなの価値観じたいが変わりつつあるということなんです。昔は社内的にマイノリティでも、カッコいいジジイがいて、頑張っていた。本多勝一とか筑紫哲也とか、リベラル左寄りのカッコいいジャーナリスト、メディア関係者が多かったと思うけど、いまは逆。ヘイト発言をするネトウヨみたいな人や、「高齢者の終末医療費を打ち切れ」なんて新自由主義的な主張する古市憲寿みたいな人、体制寄りの人がもてはやされて支持される百田尚樹や高須クリニッックの高須克弥院長にも熱狂的ファンが付いている。いま、なんでこっち側が「カッコいい」と思ってもらえないんだろう。カッコよければ流れも変わると思うのに。

金平 “カッコいい”。それは大事なキーワードで、今後考えなければならないテーマだね。たとえば沖縄のキャンプシュワブの前で座り込んでいる人たちのスタイルは、確かにカッコよくはない。沖縄平和運動センター議長の山城博治さんとかが「すっわりっこめ〜♪ここへ〜♪」と歌うように促して。これって1950年代の三井三池闘争のときの労働運動歌なんです。それじゃあ若い人はついてこない。安保法制のときのSEALDsの成功を見て、ラップなど新しい試みが必要だね。ところが、いまの若者のなかには、「人と違ったりすることが嫌」という意識も大きい。自分の意見を自分だけで言うのがストレスだと。でも、戦前には自分の主張を貫いた若者もいた。先日『金子文子と朴烈』という韓国映画を観たんです。金子文子は大正天皇の暗殺を計画していたとされ、大逆罪で逮捕有罪(死刑判決、のちに無期に減刑)になった人物だけど、公判で天皇陛下だって人間だろう。クソも小便もするだろうと言い放ったらしい。それを演じる韓国人女優のチェ・ヒソもめちゃくちゃ魅力的で、セリフも自分たちで公判記録に基づいてつくって。“天皇陛下だって人間”のセリフも再現している。

室井 カッコいい人はいるんだもの。でも、それが広がらないしムーブメントにならない。若い人たちにもなかなか受け入れられない。そもそも弱者でもある若い人が、自分たちの首を絞めてる安倍政権を応援しているんだから。そういう人に議論を挑んだりもするけど、「自民党以外にどこがあるの?」「安倍首相以外、適任者いないですよ」なんて言われるだけ。

金平 僕も絶望的な気持ちになることもありますよ。僕からすると「格好いいな」と思う若い人はいるんです。でも、同世代にとってそういう若者は「怖くてついていけない」存在らしいしね。ラディカルだったり、自分で考え主張することを嫌う。お利口で聞き分けがいい。しかも30代、40代のメディア企業でいうと編集長とかデスク、キャップクラスがものすごい勢いで保守化している。韓国の金浦空港で厚生労働省の幹部が酔ってヘイト発言して逮捕されたけど、メディア関係者だって「いまの韓国政権なんか大嫌いだからあんなの叩きゃいいんだよ」って平気で口にする人もいるんだから。


■ポータルサイトに氾濫する産経の記事、無視される沖縄の米軍基地問題

室井 そうした保守化というより国粋主義・排外主義化ってどうしてなの? わたしには本当に理解できない。

金平 はっきり言うとお勉強していないんです。たとえばここ数年、ベネズエラでは深刻な経済危機で略奪が頻発し、強権的な政権の下、危機的状況が続いている。でも、ベネズエラのことを語るとき、南米の国々が、これまでアメリカにどんなことをされてきたかを知らないと、まともな報道はできないはずです。しかしそうした歴史に興味を示さないし、勉強しない

室井 勉強じゃなくても、映画とか小説からとかでもいいのにね。わたしはそうして勉強した。

金平 みんなスマホしか見てないからね(笑)。これってすごい大事なことで、つまり、知識を得るときに、最初の入り口がスマホだと、ここで目にするのはポータルサイト。そしてそこにはライツフリーの産経の記事が氾濫している。僕のようにアナログ世代は、新聞を読み比べることでリテラシーを取得してきたけど、それがない。しかもネットニュースの字数は少ないから、ロジカルに物事を考える機会も少なくなる。しかもコミュニケーションの基本が変わってきているから、考え方も大きく変わる。僕らの仕事も、スマホとPCがないとなりたたなくなっている。

室井 価値観も大きく違っちゃってるしね。でも、ある意味、楽。若い編集者は飲み会もしないし誘ってもこない。原稿をメールで送って終わりだから(笑)。

金平 でも、そうした変化には弊害も感じますよ。ポリティカル・コレクトネス(PC)ってあるじゃない。PCがあらゆるところに行き渡った社会ってどういう社会になるかって話をある哲学者が書いていたけど。ベトナム戦争の時代にアメリカ軍が空爆してナパーム弾で村が焼かれて、裸の女の子が逃げてくるピューリッツァー賞を取った写真があった。戦争の悲惨さを伝える写真の一枚でベトナム戦争終結にも寄与したはずだけど、いまあれはダメなんだって。女の子が真っ裸で局部も写っているから、PC的に言うとNG、ダメだと。その話を聞いてびっくりして。それがまかり通ってる

室井 すごい時代になった。文脈とか一切無視なんだね。効率主義がここまできたのか。

金平 だから右の政治家たちが「文学部とか廃止しよう」なんて言い出す。そしてポスト・ヒューマニティ、つまりAI・人新世・加速主義といった社会の諸問題が絡み合うという新潮流のことだけで。でも、効率主義で言うと、これは実は沖縄問題にも通じると思っています。沖縄の基地や経済について東京のメディアは「面倒臭い、関わりたくない、数字取れない」と。沖縄のことは自分たちに関係ないというスタンスがまかり通る。彼らにとって沖縄のことは実感がない=バーチャルなんでしょうね。それがいまの沖縄と本土、そして政府との関係を二重写しにしている。だから沖縄タイムスや琉球新聞が報道しようが、東京のメディア関係者には関心さえない。これはひどいよね

室井 基地だって、アメリカのまともな学者や軍人は「いらない」って言ってるんでしょ。しかも沖縄では1995年に小学生の少女がアメリカ兵3人に暴行されたというひどい事件があったじゃないですか。それで沖縄だけじゃなく日本全体が反基地・反米感情で盛り上がって。でも、いまは沖縄問題を取り上げない。テレビ関係者は「視聴率が取れない」って言うけど、それは言い訳で嘘だと思う。東京オリンピックだってこれからますます盛り上げる気満々でしょ? テレビで取り上げた商品も爆発的に売れるでしょ? そう考えると、能力はあるくせに、基地問題をやろうとしない。安倍政権になって沖縄と政府の関係が悪くなって。だから忖度している部分もあるんじゃないかと勘ぐってます。


■局内にアンチ筑紫哲也の人たちがたくさんいることに気づかなかった

金平 残念ながら、いま僕が担当している番組だって、「沖縄の基地問題をやろう」って言ってもあまり反応はないと思います。生活密着型と称して、身近な、小さなストーリーを取り上げるのは一定の意味はあるでしょう。けれども一方で、社会的なこと、政治的なこと、世界のホットスポットで起きている論争や対立を取り上げることは、どこかで面倒臭いという意識が強いのではないかと思う。

室井 でも、韓国軍のレーダー照射問題とかは喜んで延々と放送して。みんな拳をあげて「けしからん。韓国許せない」って。政治評論家もコメンテーターも煽ったほうが儲かるからか、煽る煽る。しかもネトウヨ評論家になったほうが、講演の仕事も来るし。わたしは安倍政権前は講演がたくさんあったのに、いまはほとんどこない! 原発事故もそう。放射能はきちんと測るべきと言ったらバッシングされ、メディア関係者も「そういうことを言うのはいじめだ。福島の物を食べて応援しよう」って。食べてもいいけど、まず測れって言っただけなのに。本当に変な世界にいると思っちゃった。

金平 すぐに風評被害を持ち出すのがメディア。子どもの甲状腺がんにしても、すごい数になったら「検査をしちゃいけない」って。室井さんの言うように本当に変な世界に迷い込んだようだ。昨年、文科省の放射線副読本が改定され、そこから「汚染という文字が全部消えた。その代わりに強調されるようになったのが、「復興」と「いじめ」という言葉なんですから。

室井 でも、こうして金平さんと話していると、考え方は似てるけど、ひとつ違うのは年代です。金平さんの時代は筑紫さんとかカッコいいジャーナリストがいたけど、わたしたちの世代にはいない。上の世代から引き継げなかった。

金平 僕らの時代にしても、先行世代の背中は見てた。日本赤軍とか連続企業爆破とか、三島由紀夫とか。それらの現象は、内実が解明されないまま、いまだに突出している、宙づりになっている、と僕は思ってるんです。そして、幸いなことに筑紫哲也というオヤジがいた。一緒に何でも話し合い、好き放題できた。迂闊だったのは、それを快く思っていなかった人が局内にいっぱいいたってこと。気づかなかった(笑)。だから筑紫さんが死んだ瞬間に、「なんだこのやろう」と反発を受けた。本当に迂闊だった。いまのテレビがなぜダメになったかというと、こうした継承がうまくいかなかったというのはあると思う。

室井 それで逆に左翼オヤジでもヒドいのが広河隆一。あれは本当に許せない!

金平 実際、ひどいことをされた被害者がいっぱいいたわけで、僕も申し訳ないけど、知らなくて。昔、「DAYS JAPAN」のDAYS国際フォトジャーナリズム大賞の審査委員を3、4年やったけど、結構勉強になったんです。3日間くらい写真ばかり見るんだけど、報道写真は目に焼きついているものが多い。広河さんが編集部でそんな権勢をふるって、そんなことをやっていたなんて思いもよらなかった。

室井 御用ジャーナリスト山口敬之の事件と重なっちゃう部分もあるしね。自分の立場を利用したっていう。でも、山口事件のような、体制寄りの人が、性暴力ふるってもあちらの陣営は権力を使ってもみ消すけど、広河さんみたいな人がやると致命的になる。わたしが正直に思うのは、右のオヤジと左のオヤジがいて、両方女性差別主義者なんだけど、右のオヤジは「女は自分より下で弱いものだ」と思っているから庇ってくれることもある。でも左のオヤジはそれさえなくて、ただ差別してくる(笑)。「どうせバカなんだから」って。女性差別オヤジで言うと、右も左もひどい。ちなみに左のオヤジは食事しても割り勘にしようとする。でも右のオヤジは「俺が払うよ」って金は払う。

金平 わかりやすすぎる。ただそれでその人の、写真家としての業績も同じように終わっちゃう、全否定されるというのは……難しい問題も残りますね。

室井 ピエール瀧が逮捕されたときに作品をお蔵入りにしたのとも似ている話で、ピエールには被害者がいないけど、広河問題は被害者がいる。単なる愛人問題とかじゃなく、性暴力の問題だから。


■エコー・チェンバー・エフェクトをどう乗り越えるか

室井 それにしても金平さんと話していると、メディア状況は最悪だし、その背後の安倍政権を言葉や言論によって倒せそうにないし、どうしたらいいんですか!

金平 並大抵じゃないんですよ。今回の対談もそうだけど、結局、室井さんと僕の考え、ベースは同じでしょ。それは市民運動をやってる人たちや、“良心的”ジャーナリストなどもそう。“内輪”だけで話をしても、「そうだよね」「そうだよね」となる。それは密室のエコー・チェンバー・エフェクト、こだまになっちゃう。これではやはり、政権は倒れないし、カッコ悪いと思っていて。そこから一歩進んで、安倍政権を支持している人々とも対話する。マイケル・ムーア監督の映画『華氏119』なんかいい例だと思うけど、ムーアはドナルド・トランプの熱狂的支持者と話をすることで、トランプ大統領を誕生させたアメリカ社会に切り込んだ。そして全員が「トランプ! アメリカファースト!」と叫んでいるなかで、講演をする。すごかったのが「お前たちの言っていることはわかるし、だけどお前たちも俺もアメリカ人で、こういう方向を目指してたじゃないか」って言うと、みんなトランプ支持者だった奴らが泣き出して。最後は「マイケル・ムーアが選挙出ろ!」みたいなことになる。日本でもこれは可能なんじゃないか。もちろんネトウヨや在特会なんかはしんどいかもしれないけど、安倍政権を支持している普通の人とは会話ができると思っている。「他に誰がいるの?」くらいに思っている人たちって、結構いっぱいいるはずだからね。

室井 確かに、一方的なテレビの報道で、ここ数年で考える正義の方向性がちょっと歪んでしまった人、いびつになっちゃった人って多いかもね。でも、そういう人たちに対して、上から目線で距離を置いたり、自分が無関係なスタンスを大人だと考えている人はずるいよね。

金平 安倍首相の自民党総裁4選も大っぴらに語られているし、元号が変わって大騒ぎしてるけど、このままでは何も変わらない。変わったのはむしろ若い人たちの考え方、思考様式だと思う。望月衣塑子記者の件でも思ったけど、たとえばスマホの普及で、スマホ的価値、つまり記者会見で「なに面倒臭いこと言ってるんだよ」「もっと簡略にお願いします」「質問は10秒以内」などと邪魔する人間は、すでにそうした価値観に毒されている。ロジカルに長々と質問することだって記者にとっては大切なはずだし、面倒臭いことは大切なんことだと思う。面倒臭い奴は必要だとさえ思う。

室井 わたし、生まれたときからずっと面倒臭い人間だから。あっ、金平さんも同じだね。

(構成・編集部)  前編はこちら


金平茂紀
1953年生まれ。1977年にTBS入社後、モスクワ支局長、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長などを歴任。2016 年執行役員退任後も現在まで『報道特集』のキャスターをつとめる。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『大竹まこと ゴールデンラジオ』(文化放送 金曜日)などに出演中。
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●松尾貴史さん×室井佑月さん対談、「安倍首相は、嘘も権力の私物化も恥ずかしいとすら思っていない」

2018年09月17日 00時00分30秒 | Weblog

[●『国民のしつけ方』(斎藤貴男著)読了…《それは調査報道…「番犬(ウォッチ・ドッグ)」としての役割》↑]



リテラの対談の前編【室井佑月の連載対談アベを倒したい!」第11回ゲスト 松尾貴史(前編)/松尾貴史室井佑月が本音で語る安倍政権の危険な本質!「安倍首相になってからメディアへの圧力が露骨に」】(http://lite-ra.com/2018/08/post-4165.html)と、
後編
室井佑月の連載対談アベを倒したい!」第11回ゲスト 松尾貴史(後編)/松尾貴史室井佑月が体験した安倍政権からの圧力と「反日」バッシング!「日本をいちばん貶め壊しているのは安倍さん」】(http://lite-ra.com/2018/08/post-4167.html)。

 《それから1年半以上経ったいまも安倍政権下の言論状況に改善の気配はない。それどころか気がつけば、テレビには政権に迎合する芸能人や論客ばかりがますます増えている。そんななか今回、果敢にもこの連載「アベを倒したい!」に登場してくれたのが、タレントの松尾貴史氏だ》
 《ふたりの実体験をもとに、安倍応援団やネトウヨによる「反日バッシング」のメカニズム、安倍政治がもたらした社会の分断にも話が及ぶ。なかでも、松尾は国民やメディアをコントロールする安倍政権の巧妙な手法を冷静に分析》


   『●「森友、加計、準強姦事件の3つ…
      諸悪の根源である“主犯”は目の前にいるのだ」=アベ様御夫妻
   『●『学校が教えないほんとうの政治の話』(斎藤美奈子著)読了
                 …《あなたの政治的ポジションを見つけて…》
    《あのね、政治を考えるのに「中立」はないの。メディアの役目は
     「中立公正、不偏不党な報道」ではなく「権力の監視」なんです。
     それ、常識。》《党派性をもたずに政治参加は無理である。》

   『●『国民のしつけ方』(斎藤貴男著)読了…
      《それは調査報道…「番犬(ウォッチ・ドッグ)」としての役割》
    《ジャーナリズムの最大の存在意義は「権力のチェック機能」である。
     …専門的には「番犬ウォッチ・ドッグジャーナリズム」理論という》
    《「番犬ジャーナリズム」は、純粋培養の環境下にあるよりも、
     一人ひとりのジャーナリストがもがき、苦悩しながら遂行していってこそ
     成長し、民主主義社会に貢献できる
のではないか》

   『●『追及力 権力の暴走を食い止める』(望月衣塑子×森ゆうこ著)読了
                    …《今、ジャーナリズムと野党の…》
    《望月衣塑子さんと森ゆうこ森裕子)さんの対談。お二人の共通した
     問題意識は、森友問題加計問題準強姦事件の3つ》

 アベ様や自公議員らのやっていることは全て、松尾貴史さんのツイートそのもの…〈悪辣、卑怯、狡猾、下品、姑息〉。

   『●松尾貴史さん「政権を擁護する提灯持ちが解説者と称して出演…
                    批評性がないくせに評論家のふりをして…」
    《心根も作法も悪い安倍政権 議論を拒み、「中間報告」という禁じ手で
     「共謀罪」法を成立させた安倍政権に対し、ツイッターで
     〈悪辣、卑怯、狡猾、下品、姑息〉といった激しい言葉を羅列して批判した。
     皮肉を効かせた風刺を身上とするタレントの松尾貴史氏(57)には珍しい
     ストレートな物言いだ。ものを言わない芸能人が多い中、堂々と自らの
     主張を発信するのはなぜか。その思いとは――》

 醜悪なメディアコントロール。アベ様は《盲目的に服従しない者には弾圧で…》。

   『●もはやニッポンに「民主主義の看板を掲げる資格はない」…
              アベ様は「盲目的に服従しない者には弾圧で…」
    《自民党の石破茂氏が2013年にブログで公にした「デモもテロ」を
     思い出す。特定秘密保護法案をめぐる国会周辺のデモが続いた
     時期だった。そしてアベ首相は、盲目的に服従しない者には弾圧で
     応える姿勢において、おそらくは彼の上を行く

 壊れた社会、アベ様の政…《死にそうな子どもたちを助けるための金と、人をたくさん殺す武器の値段が、どう考えても釣り合わないくらいの使われ方をしている》。
 《安倍首相は、嘘も権力の私物化も恥ずかしいとすら思っていない》…、あぁ、絶望的な気分。さらに、それを支えるマスコミ。これまた絶望的か?

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http://lite-ra.com/2018/08/post-4165.html

室井佑月の連載対談アベを倒したい!」第11回ゲスト 松尾貴史(前編)
松尾貴史室井佑月が本音で語る安倍政権の危険な本質!「安倍首相になってからメディアへの圧力が露骨に」
2018.08.03

     (松尾貴史氏と室井佑月対談)

 「どんどん仲間がいなくなる」「右のやつらが羨ましい」……昨年1月の連載スタート時にそう嘆いていた室井佑月だが、それから1年半以上経ったいまも安倍政権下の言論状況に改善の気配はない。それどころか気がつけば、テレビには政権に迎合する芸能人や論客ばかりがますます増えている
 そんななか今回、果敢にもこの連載「アベを倒したい!」に登場してくれたのが、タレントの松尾貴史氏だ。
 松尾は、政治的発言がタブーとされる日本の芸能界に身を置きながら、毎日新聞の連載コラムやSNSで、ときにストレートに、ときにユーモアを交えて、知的で鋭い政権批判を続けている貴重な存在だ
 対談は、直情型の室井がぶつける疑問と怒りに、知的で冷静な松尾氏が問題の本質を解き明かすかたちで進んだ。安倍政権の最大の問題点とは? 安倍政権になってから明らかに増えた圧力や嫌がらせの正体とは? それでも松尾氏が政権批判を続ける理由とは?
(編集部)

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●安倍首相の悪口を言うと圧力や嫌がらせが…しかも安倍応援団は陰湿で粘着質

室井 20代の頃「anan」(マガジンハウス)で対談させていただいていただいたじゃないですか。もう20年以上も前です。その頃から落ち着いていて、達観しているというか、なんか大人っぽいんですよね。イヤミとかも、すっごく深いの(笑)。

松尾 そんなことないと思いますよ(苦笑)。昔から進歩も退化もせずにキープしているだけだと自分では思ってます。

室井 でも、松尾さんは政治的発言も昔から一貫してる。それは安倍政権になって、芸能界において政治的発言がタブーのようになっても変わっていないじゃないですか。でも、安倍政権の悪口言って大丈夫なの?

松尾 本来、時の政権批判権力チェックは誰でも大丈夫なはずなのにね。ただ、安倍政権はマスコミに圧力をかけることをすごく一生懸命やってきた人たちなので。僕は無邪気に自分が思ったことを書いたり話したりしているだけ。たとえば麻生太郎さんの記事をリツイートするときに、「阿呆丸出し」って書いたりしたけど、それが本心だから。でも、あの人たちが一生懸命だから、僕はここ数年、情報番組などにあまり出ていないでしょう? 逆に連載コラムやSNSなどでは自由に発言しているし、精神衛生上はいいんですよ。まあ、これまでも「出してください!」と頼んでテレビに出してもらっていたわけではなく、「呼ばれたら行く」「呼ばれなかったら行かない」というスタンスでしたから。

室井 でも、安倍政権になってからマスコミに対する圧力や、マスコミの忖度も露骨になったと思いませんか。小泉さんのときもたまげたことはいっぱいあったけど、こんなに怖くなかったです。小泉さんの悪口いっぱい書いても……。

松尾 変な圧力とか嫌がらせは来なかったもんね。いまは本当に……。そういう意味では、道筋をつけた小泉純一郎さんも罪深いと思いますけどね。

室井 安倍さんの場合は、応援団もひどいでしょ。

松尾 しかもあの方たちの応援団は、陰湿で粘着質です。ただ、思うんです。安倍政権やその応援団の人たちが、絡んでくるってことは、「自分が言ったことが正しかったんだ」ということの証明だと。僕の言葉が「効いているんだな」「痛いところ突かれたんだな」ということの現象なので。逆に、「我が意を得たり」と思うんです。

室井 そういうところが大人。わたしは気が弱くなってきちゃって。自分のほうが間違いなのかと思ってしまうこともあるんです。だって、安倍政権になってからわたしがおっかないと思ったのが、メディアへの嫌がらせって他の政権もしていたけど、ある程度抑制が効いていたし、メディアもここまで萎縮していなかった。でも、安倍政権ってメディアへの介入にすっごく熱心だし、真剣。しかも、ピンポイントで名前をあげたりするじゃないですか。朝日新聞に敵愾心をむき出しにしたりして。

松尾 それで自分の気に入ったところにはえこひいきして、首相インタビューを喜んで引き受ける。そこが面白いですよね。含羞がないというかね、全体的に。欲望に忠実というか。思ったらストレートに欲望を表現することに抵抗感を感じない、脳内に関所が設けられてない方たち、みたいなね。


■政治家のモノマネをしただけで、テレビ局に苦情の電話が

室井
 芸能人も、あの人に対して腹が立ってる人いっぱいいると思うんです。でも、なぜ声を上げないんですか?

松尾 「俺は言うよ」って人はいるにはいるんですが、それが少数派になってしまって。たとえば海外では、マドンナやレディ・ガガ、ジョージ・クルーニー、ショーン・ペンとか、政治的・社会的な発言を能動的にする。あれはアメリカのアーティストがエージェントを雇うというかたちも関係しているんです。日本の場合、芸能人と所属事務所は対等ではなく自分が雇用してもらっている、つまり昔で言うところの「置屋さんに所属している感覚なんです。「置屋さんと旦那衆とお茶屋さんには迷惑をかけられしまへん」というようなメンタリティをもっているんじゃないのかなと。たまに僕みたいな行儀の悪いのが好き勝手言っているだけで、もともとそういう発言をすることに抵抗があるという構造ではあったと思う。

室井 でも、事務所はマージン取ってるわけでしょ。いっぱい!

松尾 いや、そういう筋論じゃないの。たとえば、自分が発言することで大スポンサー降りるとか。そうすると、同じ所属している先輩たちも業界で肩身が狭くなるとかね。そういう感覚があるから、みんな物言えば唇寒しになっている。

室井 やだぁ。“みたい。長いものには巻かれろってこと? でも、空気感が変わったと思う。松尾さんはブレていないけど、でも周りは変わったんじゃないですか?

松尾 政治家のモノマネをすると、放送局に苦情の電話がかかってくるようなことにはなっています。おそらく安倍さんのファン筋から(笑)。昔はそんなことなかったんですけどね。

室井 政治家って風刺の対象になる人たちでしょ。権力者風刺はもともと庶民の楽しみだし、お笑いには欠かせないものだったはず。それなのに……。

松尾 政治家のモノマネなんて、もちろん本来はまったく問題ないもののはずです。だって相手は権力者だもん。それが許されないというのは、日本は先進国ではないってことですよね。


■政治も官僚も企業も、これから先より腐っていく予兆がいま出ている

室井
 モノマネくらいで批判がくるなんて恐ろしい世の中になったもんです。わたしもテレビに出て政権を批判すると、メディア関係者からはたぶん心配してくれているんだと思うんだけど、「もっと大人になれよ」みたいなことを言われるんです。「まだマスコミとかが正義だと思ってるの?」って。

松尾 マスコミは正義でないと思うけど、マスコミのなかに正義感をもっている人はいる。それは芸能人でも作家でも飲食店の人でも、街で働いている人でもね、もちろん政治家のなかにも、正義感をもっている人もいるということじゃないですか。

室井 でも、すごく不思議です。金持ちや政治家、地位が高い人のほうは、一般の人よりもさらに倫理観をもって世の中に尽くすっていうのが当たり前だと思っていたから。でも、安倍政権になってから、どんどんそうした倫理観がなくなっていると思うんです。官僚や政治家の不祥事、なにより安倍さんのモリカケ問題を見ると嘘ばかり

松尾 以前は政治家も少しは品がありましたよね。でも、いまは政治家もお金持ちもどんどん品がなくなっていって。これから先、政治にしても官僚や企業にしても、さらにゆるゆる腐っていくだろうなっていうムードになっていますよね。強い者だけが得をし、バレなかった者だけが得をする世の中になっている。そして現時点ではいい人でも悪い人でもない人が、この先悪いほうに転がるという予兆がいま、出てるんじゃないのかなって気がします。

室井 勝てばなんでもいい。そんな風潮はおかしいでしょ。でも、安倍さんを見ているとそれがまるで“正義”みたいになっちゃって。

松尾 たとえば選挙でも戦争でもそうだけど、勝ったほうが正義の“フリ”をできるだけなんですね。いまは選挙でも、与党自民党がバカ勝ちをして「自分たちがやっていることが国民から信任された」と胸張って、悪いことをやっても「国民が選んだんだ」と白紙委任されたようなムードです。思いついたことを思いついた人がトップダウンでやれてしまう。これって民主主義ではないですよ。しかも与党は「国民の付託を受けて俺たちはその数にのっとってやっているんだから、国民にも責任がある」という言い訳までたつ。みんな“良く生きよう”とは思っているでしょう。だって家族の前で恥ずかしくて言えないようなことをしたくない人が、大多数なんじゃないんですか?

室井 そうですよね。


■安倍首相は笑顔の裏で、お友だちや軍事産業が得する仕組みづくり

松尾
 性善説か性悪説か、そんな両極端ではないと思うけど、世の中の人は平和で優しく生きていたいって思っているはずです。だから、安倍さんのファンも「安倍総理ってこんなに優しい」という証明として、広島の被爆者の人と抱き合っているような写真とか、子どもをあやしているような写真とかを、ありがたがって見ている。今年の「桜を見る会」での様子が首相官邸のHPにアップされていたけど、動画ではやたらと子どもたちとにこにこ笑っている安倍さんの姿が映っていた。でも、その笑顔の影で、ものごとを隠したりすり替えたり、証拠文書を廃棄したり、隠れたところで身内やお友だちだけが得をするよう仕組みをつくる。社会の仕組みの一番大事なところを司っている人たちが、です。そしてその先には、もっと大きな企業や軍事産業などに関わっている人たちが儲かるような世の中の仕組みにしていこう。そんな悪い野望があると思うんです。そこを見極めていかないとね。

室井 でも、安倍さんはじめ、いまの政府要人たちは尊敬できない。たとえば、このまえ強行成立させたカジノだって人の不幸で成り立つような仕事でしょう?

松尾 カジノというのは、必ず胴元が儲かるようにできているからね。だから参加した人は、おしなべて言うと、必ず損はするけど、それをエンターテインメントととるなら、それはテーマパークに遊びに行くときの入場料を払うのとどこが違うのかと言われる。けれど、一部の人がバカ負けするわけです。そのためか知らないけど、金貸しができる法律が盛り込まれているでしょう。借金しなきゃ博打できないような人に、金を貸すシステムをそこに盛り込むっていうのは、ちょっと江戸時代ですか? っていうかね。これはいいのかと。

室井 しかも、嘘だったじゃないですか。外貨をいっぱい呼び込むって言ってたけど、実際は客の7〜8割が日本人という予測だとわかった。あと、イスラエルと武器共同開発をするって言い出してもいる。武器は人を殺すためのものだから、それでちょっと儲けたからといって、まったく尊敬できないって思っちゃうんです。

松尾 死にそうな子どもたちを助けるための金と、人をたくさん殺す武器の値段が、どう考えても釣り合わないくらいの使われ方をしている戦闘機一つ買うお金と、苦しい、ギリギリのところで生きている人たちに手を差し伸べるってことは、桁が違うんです。その辺りのことを視覚化してほしいなと思いますよね。

室井 その通り! 松尾さんって、ホント、アタシの言いたいことを全部わかりやすく解説してくれる。スッキリする! 

(後編に続く)
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http://lite-ra.com/2018/08/post-4167.html

室井佑月の連載対談アベを倒したい!」第11回ゲスト 松尾貴史(後編)
松尾貴史室井佑月が体験した安倍政権からの圧力と「反日」バッシング!「日本をいちばん貶め壊しているのは安倍さん」
2018.08.04

     (松尾貴史と室井佑月の真剣対談)

 タレントの松尾貴史をゲストに迎えた室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第11回。
 前編では、松尾、室井ともに「安倍政権になってから明らかに増えた」口をそろえ、安倍政権のメディア圧力、いまメディアで政権批判することの難しさが語られた。
 後編ではさらに、ふたりの実体験をもとに、安倍応援団やネトウヨによる「反日バッシング」のメカニズム、安倍政治がもたらした社会の分断にも話が及ぶ。
 なかでも、松尾は国民やメディアをコントロールする安倍政権の巧妙な手法を冷静に分析。
 メディアで仕事をしているふたりだからこそ語れる、リアルで本質的な議論をぜひ最後まで読んでほしい。
(編集部)

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室井 前回、安倍政権のメディア圧力のことを語りましたけど、いま普通のことが普通に言えなくなってきていて、戦争に反対だというだけですぐに「反日だ」とバッシングされます。松尾さんはこの状況について、どう思ってます?

松尾 まず、「安倍政権」=「日本って思っている人が妙に多いよね。安倍政権に異を唱えているだけなのに、「反日」と言われるのはおかしいはずなのに。さらに言えば、僕の中の評価だけど、一番の反日は安倍さんだと思っているほど。日本を一番貶めて壊しているのは安倍さんだし、安倍さんを応援する人たちは反日に手を貸していると。

室井 同感!

松尾 統治機構=国ではないはずです。国の要素は統治機構と、国土と国民であって、他にも様々な要素はあるでしょうけど、この3つは大きい。そもそも国民が幸せに暮らせるなら、統治機構なんてはいらないはずです。それだけでなく国土がなくても国として認識されている集団はあるけれど、でも国民がいないと国とは呼べない。ということは一番必要なもの、大事な要素は国民なんです。それなのに、国民の生活や未来より、国民が統治機構に忠誠を誓わされて我慢を強いられる。今、そんな状況が“よし”とされている。まるで戦前戦中です。だからそんな統治機構のトップの安倍さんが、“国”に対して反旗を翻している行為ではないかとさえ思うんです。

室井 日本国民って、「長いものに巻かれろ」みたいな国民性だから、より一層、強いものや権力になびいちゃうしね。それも周囲のムードや雰囲気で。一種の同調圧力なんだと思う。松尾さんやわたしが安倍ファンのネトウヨから攻撃されるものそういうことでしょ? 強い安倍ちゃんを応援したい。信じたい。それが正義だ!と。

松尾 そうなんです。人間って信ずべきものより、信じたいものを信じようとする。

室井 安倍親衛隊やネトウヨはその最たるものだけど、わたしもネットは自分の読みたいものしか読んでないかも(笑)。実生活でもハッと気づくと、思想が似たような友だちしか残ってない(笑)。

松尾 ツイッターもそう。自分の意見が合う人や、この人の意見をもっと読みたいって人をフォローして、自分のタイムラインに出るのは自分の気に入った人たちしか並ばないようにしているからまさに“快楽情報”です。快楽情報ばかりに浸って、自分の反対意見なんかフォローしない。反対意見やケチ、難癖をつけるため、絡むためにフォローしているアカウントはあるでしょうが。でもほとんどは自分の好きな意見ばかりで、でも室井さんの言うように、人間ってほとんどがそうなんです。ただ、僕の周りには安倍さんを好きな人、一人もいません(笑)。でも世の中には実際に4割くらいいるでしょう。

室井 松尾さんのツイッターもすごいことになってますよね。日の丸模様のアカウントの人たちからすごく絡まれてる。

松尾 僕はどんどんブロックしています。ブロックを恥だと思っていないので。読みたくないなら、読ませません。しかも彼らの手口は手が込んでいるんです。以前に、文科省前事務次官の前川喜平さんを「素晴らしい」と書いたんです。一方で、そのずっと前に、同じく文科省OBで天下り先の厚遇を国会で証言した嶋貫和男さんに対して、嶋貫さんの名前を書かずに「ゲス官僚」と書いたんです。でもその2つを貼り合わせて、まるで前川さんを以前に「ゲス官僚」と非難したということにされた。そして「(松尾は)こういう男だ」「こんなにダブルスタンダードだ」との批判がツイートされて。僕の人格を貶めることを目的に書いているんだけど、ただ僕は痛くも痒くもないんですよ。さきほども言いましたが、こんなことでわざわざコラージュ作ってやるってことは、よっぽど僕のさまざまな批判が安倍ファンの痛いところを突いたと思うから。そこまで僕に絡んで来る人たちは気の毒だとも思うし、そうやって反応があるってことは「相手に効いたんだな。僕は上手に言ったんだな」と、我が意を得たりですよ。

室井 やっぱり大人。わたしだったら死ねと思っちゃう。敵と味方どっちだ、という性格だし。

松尾 (爆笑)。


■松尾貴史と室井佑月が体験した安倍政権のメディア圧力、安倍応援団の実態

室井
 苦しんで死ねとすら思ってるくらい。もちろんわたしは公の場で発言しているし、叩かれることも仕事、ギャラのうちと頭では思っているけど、心ではやっぱりね。でもわたしのことをネットで「バカ」「ブス」「売国奴」「日本人じゃない」って書いている人とばったり会って握手をしたとしたら、その瞬間からわたしのファンになるような人の気がするの。

松尾 さすが、前向きだね(笑)。確かにああいう人たちは、直接会うと何も言えない、目も合わせられないような人たち。だから顔を隠し名前を隠し、サブ垢、裏アカつくって勤しんでやっている。すごく弱い人だと思う。ただ、考え方だけで敵対するなんて今時ナンセンスだし、ナチスの時代じゃないから、「敵と味方」ではないと思う。ただ、世の中が“そっちのほう”に流れればいいなと思っているのが、今の政府や偉い人たちじゃないか。そう思うと、不安ですけどね。たとえばいじめに加担する子たちって、なんとなく「あの子悪者だよ」という大義名分をムードでつくってひとりの子をいじめたりするでしょう。その子が何も悪いことをしていなくてもそういうムードになっちゃう。それが今、日本全体に蔓延していてマスコミもそれに手を貸してさらにムードを醸成しているところがあると思うんです。

室井 マスコミ、とくにテレビって視聴率しか考えてないもん。

松尾 そうなんだよね。視聴率ってすごく大きな問題だよね。でもテレビが商売である以上そこはしょうがないですよ。ただこれから、ネットメディアがどのように、本来に伝えるべきものを伝えていくか。たとえばアジアのどこかの国だと、視聴率とは別に質のいい番組だという評価を独立した組織がして、保証を与えているシステムがあるらしいです。そういう発想が日本はないよね。

室井 しかも権力に弱腰だから、余計圧力をかけられる。でもメディアって権力の監視役でしょ。そこに圧力をかける政権なんて“独裁そのものなんだから、たとえば放送権のことで脅されたら、各局で団結して、抗議番組を作るとか。どうしてそういう発想にならないのか本当に不思議

松尾 目先の利益がほしいですからねえ。

室井 今は国民がメディアの味方をしない。信用されていない。そのことも大きいと思う。

松尾 確かに。それで、室井さんの出演している『ひるおび!』(TBS)はどう? 個人的には八代英輝弁護士が面白いなと思っていて。安倍さんのお友だちなの?


■メディアをコントロールし、国民の無知・無関心をつくる安倍政権の愚民化作戦

室井 聞いたけど、お友だちってじゃないって。ワイドショーに出てる人で、安倍さんや菅義偉さんや麻生太郎さんと隠れて飲みに行ったりして、友だちだと思っている人はたくさん知っているけど、八代さんはただの自衛隊と自民党好きでしょ。でもわたしに「もっと大人になれ」と心配してくる人より、わたしとはまるで考え方が違うけど、八代さんのように「それが絶対の正義」ってはっきり言っている人のほうが、ある意味純粋だと思う。親切な人なだし。でも安倍さんとか国とか防衛の考え方とか、そういうところでいきなり目が三角になって怒り出したりする(笑)。

松尾 あはははは!

室井 八代さんはアメフトの日大の酷さとかは、舌鋒鋭く追及するのに、安倍さんのことは「証拠もないのに、まだ決まってないんだから断定するな」と言うんです。ほんと不思議でしょうがない(笑)。でも、情報番組の司会やコメンテーターも安倍政権になってから、“安倍支持か不支持か”の基軸が鮮明になってきた。

松尾 そうなんです。利害に忠実、欲望に忠実っていう人たちが、安倍政権の閣僚や、閣僚だった人や周辺の人たち、あるいは奥さん、そしてマスコミにこんなに多かったのかって。加計学園にしても関連人物が政権のまわりにいっぱいいる。こんなにあからさまなことがあるのかとびっくりするものね。でもあまりテレビではそれを言わない。それがどういうことなのか。イマジネーションを働かせれば、すぐにわかることです。

室井 じゃあ松尾さんは? こんなにズバズバ発言していて安倍政権からの直接的嫌がらせや圧力は感じたことはありますか?

松尾 直接はないです。間接的にはあるけどね。ものすごく巧みですよ。証拠が残らないようにやってきますので。でも具体的に言うと間に入っている人に迷惑がかかる。この辺が僕もマスコミで毒されているところなんですけどね。でも、マスコミだけでなく、国民も政権からバカにされてますよね。実際に、「民は愚かに保て」というムードが偉い人の中にあると感じます。だから大事なことは伝えないし、情報も隠す。そして考える機会を与えない。無力感・無関心の状況を作っておいて、気がついたらトンデモない事態が進んでいる。そんな取り返しのつかない法律もたくさんできています。その最終形が改憲だと思っています。そこに向かって巨大なPRがお得意な人たちでムードを作ったときに、どうなってしまうんだろう。成立してから「改憲は間違いだった」と国民が思っても取り返しがつかない。


■安倍首相は、嘘も権力の私物化も恥ずかしいとすら思っていない

室井
 今の政権は嘘が平気だから、いくらでもフェイクや嘘の情報を繰り出し作り話して違うことを言いますし、官僚トップがセクハラもしちゃう。

松尾 エリート中のエリート、セクハラ財務官僚にしても、「手縛っていい?」なんて女性記者に言うセンスも問題でしょう。勉強を一生懸命してきたことは尊敬するけど、でもまっとうな甘酸っぱい恋とかしてこなかったんじゃないのかなと思うんです。思いやりとか、「女子にこう言ったら嫌がられるかも」「傷つくんじゃないか」ということを考えるより先に、地位とかランク、ステージばかり考えてきたから、バランス感覚さえなくなってしまった。

室井 思いやりや想像力の欠如ですよね。安倍さんや麻生さんにしても、何を考えてああなっちゃったの? 自分たちのせいで自殺者まで出ても何も思わない。そういえば昭恵夫人がインタビューで話していたことだけど、安倍さんって映画監督になりたかったって言うじゃない。わたし、びっくりしちゃって。いやいや、映画監督や物書きや役者、音楽家は才能がなければダメだから。想像力がないとダメだから。なりたいと言ってもお金で買えない。自己認識が足らなすぎるというか、恥かしくないのかなと思いますね。自分のことなにもわかってない人なんだな。だいたい権力の私物化ってすごく恥ずかしいことじゃないですか。それなのに安倍さんは平気でやってしまう。

松尾 それを恥と思っていないんでしょう。

室井 やっぱり、尊敬できない。1月の参院予算委員会でエンゲル係数の上昇が指摘されたとき、安倍さんってデタラメな言い訳をしてた。そんな人、総理って呼びたくない。

松尾 あの答弁から、ウィキペディアまで書き換えられたんですよね。なんでもかんでも閣議決定しちゃう政権だから当然かもしれないけど(笑)。

室井 「昭恵夫人は公人」だとか「『そもそも』には『基本的』にという意味もある」という閣議決定もあったしね。本当にバカバカしい。

松尾 でも室井さんは頑張りすぎじゃない? そんなに無理して頑張っちゃダメですよ。しんどいときはやめたらいい。自分でハードル高くしちゃうと、ハードルは高くなっても自分の能力は変わらないから、いい結果が出なかったら自己嫌悪が起こるでしょ。そうすると鬱入っちゃいますから。そんなことはやめたほうがいいですよ。ゆるーく、思ったことを言って、やだなあと思ったら距離を置くくらいの感じでやっていかないと。みんなできることをできる範囲内でやればいいだけで。使命感を持って「ここまでやらなきゃ」なんてしてると壊れちゃうから。

室井 使命感ではないんですけどね。ただ、ライフワークになっているって感じかな。だから安倍さんが辞めたら、寝込むと思います。燃え尽き症候群。

松尾 (爆笑)。安倍さん批判が、人生の張り合いになっちゃったんですね(笑)。

室井 ……。 
〈了〉

松尾貴史(まつお・たかし) 1960年兵庫県神戸市出身。大阪芸術大学卒業後デビューし、テレビ、ラジオ、映画、舞台、執筆、イラストなど多彩に活躍。現在各地で巡回公演中の、権力にすり寄る記者クラブを題材にした舞台「ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ」(二兎社)に出演中。毎日新聞毎週日曜日の連載コラム「松尾貴史のちょっと違和感」での知的で鋭い政権批判やメディア批評は毎回大きな注目を集めている、著書に『東京くねくね』(東京新聞出版局)など。

室井佑月(むろい・ゆづき) 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『あさイチ』(NHK)などに出演中。「週刊朝日」「女性自身」「琉球新報」などにコラム連載を持つ。
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コメント (2)
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●大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない《病的な嘘つき》アベ様…全てのアベ様の「政」のデタラメさ

2017年09月28日 00時00分35秒 | Weblog

[※ 報道特集(2017年7月8日)



前編はコチラ:

   『●大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない
       《病的な嘘つき》アベ様…前川喜平氏の人間性と彼我の差


 リテラの対談記事の後編。【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第7回ゲスト 前川喜平(後編)/前川喜平・前文科次官が安倍政権の愛国教育、親学を痛烈批判! 室井佑月に立候補を薦められた前川氏の答えは…】(http://lite-ra.com/2017/09/post-3473.html)。

 《その官邸から受けた圧力が具体的に語られ、安倍政権の推し進める戦前回帰政策親学についても前川氏の鋭い批判的分析が飛び出した。さらに、前川氏が貧困問題に向き合うきっかけになった幼少期の体験や、今後、前川氏がどんな活動をしていくつもりなのか、という話題も》。


 前編を読んで、まず感じたことは、大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない病的な嘘つき》アベ様…事務次官としての自分の責任を明言する前川喜平氏の人間性と彼我の差、ということ。《室井  やっぱり人間の品格が違うんだな》、全く同感。
 その後編では、壊憲し、(非)特定秘密保護法戦争法平成の治安維持法、そして、「森友捜査ツブシ」のための我欲選挙…文部行政・教育破壊に係わる、ここで議論されている《戦前回帰政策親学》などなど、全てのアベ様の「政」のデタラメさであり、危険さ。反アベ様政治派・反自公政権派としては、なぜ自公お維トファが支持されるのか、理解に苦しむ。アベ様の関わる全ての事柄がオゾマシイのだけれど…。

   『●「裸の王様」アベ様大好きなニッポン臣民…
      「戦争やりましょうよ! 死の商人へ!」で内閣支持率アップ…
   『●やるべきは「解散・衆院選挙」ではなく、まずは、
         アベ様の大見得・啖呵「議員辞職」の有言実行だ

   『●「森友捜査ツブシ」: 大阪地検特捜部、いま直ぐに動け!  
                 マスコミも、いま「黙秘」してはいけない!!
   『●《推定ウン千万〜1億円弱も払って出した》「ト」な広告…
                出稿側も「ト」なら、掲載側も「報道」の放棄
   『●メディアの仕事を見失い、「自制心と自浄作用を
       失ったマスコミ権力」=「下足番」・読売、広報紙・産経
   『●本来国会を去るべき、「戦争ゲームに興じる子ども」
        「病的な嘘つき」がアジアやニッポン「国民の脅威」
   『●室井佑月さん、「民進党のせいで負けたってこと、
      民進党の人たちだけがわかってないのか?」

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http://lite-ra.com/2017/09/post-3473.html

室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第7回ゲスト 前川喜平(後編)
前川喜平・前文科次官が安倍政権の愛国教育、親学を痛烈批判! 室井佑月に立候補を薦められた前川氏の答えは…
2017.09.24

     (前川喜平氏と室井佑月)

 前川喜平・前文科事務次官をゲストに迎えた室井佑月の連載対談「アベを倒したい」。前編では、加計問題の経緯、安倍政権のお友だち優遇政治と官僚支配のやり口を改めて振り返った後、「加計問題以外に官邸から圧力を受けて教育行政が歪められたと感じたことがありますか」という室井の質問に、前川氏が「あります」と答えたところで終わった。
 後編では、その官邸から受けた圧力が具体的に語られ、安倍政権の推し進める戦前回帰政策親学についても前川氏の鋭い批判的分析が飛び出した。さらに、前川氏が貧困問題に向き合うきっかけになった幼少期の体験や、今後、前川氏がどんな活動をしていくつもりなのか、という話題も。「政治家かコメンテーターになって!」と迫る室井に、前川氏はどう答えたのか。
 安倍政権の問題点と、前川氏の誠実な人柄が伝わってくるこの対談、ぜひ最後まで読んでほしい。
(編集部)

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室井 加計学園問題以外にも、圧力を受けて行政が歪められたというのは、具体的にどういう件でのことだったんですか。
前川 いくつかあるんですが、ひとつは文化功労者や文化勲章受章者を選ぶ審議会の委員の人選です。委員を選任するには閣議の了解が必要なので、官邸に相談した。すると審議会の委員候補者を2人差し替えられて。その1人はあきらかな理由がありました。それが「安保法制に反対する学者の会議に入っているから外せ」というものでした。しかし、その人の専門知識が必要だから、委員にしようとしただけです。安保など何も関係ない話なのに、反対の人間は入れるな」なんて言われました

室井 政府の審議委員とか第三者委員とかは、思想チェックがあるとは思ってましたが、やっぱりね。政府や政策に批判的だと入れないんだ。怖い。思想や政策とは関係ない、文化系の専門家なんですよね。政治に関してモノが言えなくなるってことですから、本当に怖い。
前川 もうひとつは、2015年に世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」です。世界遺産への推薦案件は通常、文科省の外局である文化庁の文化審議会で審議するのですが、2013年は審議会で「長崎の教会群とキリスト教関連遺産を推薦」という結論となった。これを押しのけて軍艦島などの「明治産業革命遺産」が出てきたんです。しかし、安倍首相の地元・山口県の松下村塾は八幡製鉄所(福岡県)や軍艦島との関連性はないし、軍艦島は保全措置さえ取られていない。ところが、これを加藤康子さんという女性が中心になって、官邸と一体になって強力に進めたんです。

室井 加藤さんって、亡くなった加藤六月議員の娘で安倍さんの幼馴なじみなんでしょ。それで安倍ちゃんが「俺が(世界遺産登録を)やらせてあげる」と約束しちゃったという。


安倍政権の道徳教育は、戦前の国体思想、教育勅語につながるもの

前川
 そのようですね。内閣官房は文化審議会とは別の有識者会議を設けて「明治日本の産業革命遺産を推薦する」と言ってきた。最後は官邸主導の政治決断となり、「長崎教会群」ではなく「明治産業革命遺産」が選ばれたんです。初めから結論は決まってたんですよね。そのときに官邸で中心になって進めた人物が、和泉さん(洋人・首相補佐官)。そして一緒になって進めた内閣官房参与が木曽(功)さん、文科省で私の先輩なんですけどね。これは官邸が強力に推し進め、あらゆる政治力・外交力を駆使して勝ち取った行政が歪められた、かなり怪しい案件です。

室井 それに抵抗した西村さん(幸夫・日本イコモス委員長)が辞めさせられたんでしょ。それも和泉首相補佐官が「外せ」と圧力をかけて。
前川 詳しいですね(笑)。和泉さんの横やりで、西村さんは文化審議会の委員から外されたんです。「産業革命遺産」を推進したのは、当時の内閣官房の地域活性化統合事務局で、その局長が和泉さんです。世界遺産は、ユネスコの諮問機関であるイコモスが審査するんですが、その審査はかなり厳しいことで知られているんです。富士山を指定するときも、難儀したくらい。明治産業革命遺産は普通に考えるとまだ登録できる状態じゃなかった。それでもかなり強引に推し進めた。和泉さんにとっては、日本イコモスはただの邪魔者だったんでしょう。

室井 理由はお友だち優遇ともうひとつ。“明治”をクローズアップさせ、美化、正当化したい安倍さんの趣味もあったのかな。大日本帝国はよかった、みたいな
前川 そう思います。戦前日本の植民地主義的な膨張主義の根っこは松下村塾にあると言ってもいいし、日本の膨張主義政策を支えたのが産業遺産。それで韓国が大反対した。軍艦島は徴用工が強制労働させられた場所で、それを無視して世界遺産登録するなんて、批判があるのは当然でしょう。

室井 「産業遺産」にしても根っこでは全部つながっていると思います。安倍さんの思想と一致するもの。日本会議が「明治の日」をつくろうとしたり、明治をテーマにした映画なんかを支援すると言ったり、福井国体に「明治150年」と付けようとしたり。それと前川さんの専門だと思うんですけど、安倍政権は道徳教育愛国教育教育勅語の問題など、すごい力を入れてきてるじゃないですか。
前川 教育基本法改正道徳の教科化ですね。もうひとつ大きな問題があります。それが家庭教育の重視です。国民はまだはっきりと問題として認知していないと思いますが、家庭での教育こそが大事なんだという考え。

室井家庭教育支援法案」もありましたね。これまた安倍ちゃんが言い出したみたいですけど、親が国を敬うよう教育しろとか、子育ての喜びを実感しろとか家の教育に介入しようとしている
前川 その背景には日本の復古的な家庭教育、そして親学がある。親学というのは、子どもに問題があるのは「親がしっかりしてないからいけない」という考え方です。しかし、いくら「しっかりしたい」「がんばりたい」と思っていても、余裕のない親はたくさんいる。そういう問題を解決しないで「親がいけないんだ」と親の責任にして押し付ける。結局、それでは貧困や母子家庭であえぐ子どもたちを救うことにならない“親がしっかりすればいい”なんて論理は、つまり社会的なケアなど必要ないと言うのと同じです。しかも親学は、「家族が大事なんだ」という考え方でもある。私は個人主義だから個人が社会の単位だと思っていますが、しかし親学は“家族が社会の単位”という考え方です。個人であることよりも家族の一員、一族の一員であることが大事だという。この家族主義的考え方は、じつは、戦前の国体思想でもある。戦前の教育勅語で示されている考え方です。そして、そのベースには家父長制の家制度があった。そこでは親孝行こそ最大の美徳になる。家族なんだからという理屈ですべてを吸収してしまう。そして日本国は、大きな一つの家族だその本家の本家の総本家が天皇家で、辿れば天照大御神。すべての国民は天照大御神の子孫であり、天皇家の分家の分家の分家だ、みたいなね。こうして「孝」と「忠」が一本につながるこういう家族国家観に基づく教育が安倍さんが進めたい道徳教育なんだろうと思います。


現在の日本社会では、新自由主義と国家主義が補完しあっている

室井
 ってか、家庭のなかのことまで国に命令されたくないよね。親孝行しろとか、虐待したり育児放棄する親にどうして孝行しなくちゃいけないの? 想像力がないんじゃない? しかもいま「2分の1成人式」なんてのもあるし。10歳まで育ててくれてありがとう、なんて親に感謝させる作文を読ませるんですよね。そんなこと強制されるなんて、すごい気持ち悪い。しかも全部家庭でなんて、国民に対する政府の義務放棄でしょ。だから民間やボランティアで「子ども食堂」なんかをやる必要が出てくる。前川さんもボランティアで貧困の子どもたちの学習支援をしてるんですよね。でも、それって本来、政治や行政がやらないといけないはずだとも思います。
前川 そうです。子育ては家庭がするもので、社会的なケアは必要ないという考え方は、弱い家庭は崩壊していい、崩壊した家庭から子どもが放り出されるのは仕方がないと言っているのと同じです。弱肉強食の競争で負けたのは自己責任だという新自由主義的な考え方です。さらに新自由主義と国家主義的なものが補完しあってしまっているのが現在の日本社会です。しかし弱肉強食では格差は広がるばかりですし、人権もないがしろにされるそうした国民の権利を守るためにこそ、政府があるはずなのですが。

室井 新自由主義と愛国心。最悪のコンビですね。子どもや弱者のケアを放棄したら国の仕事って何もないじゃない。でも、文科省はやっぱり弱いですよ。文科省は子どもの教育を管轄する省庁でしょ。それなのに、安倍ちゃんの弱者切り捨てや愛国教育や思想を止められていない。それに教育費も世界レベルで考えて下の下でしょ。子どもやその教育にお金を使っていない。前川さん、これも専門でしょ。たとえばフランスでは子どもをいっぱい産むと税金安くなるじゃないですか。日本もそうそればいいじゃないですか? 育児手当とかもいいけど、3人以上子どもを産めば無税とか。そして大企業と金持ちがきちんと適正に税金を払う
前川 本当にそう思います。先進国のなかで比べても、公財政支出教育費という国と地方の教育に対する支出が最低レベルです。特に高等教育。大学や専門学校に行くのに、個人のお金がかかりすぎる。さらに貧困も進み、税金を納める水準に達してない人も多い。いま、子どもの6人に1人はシングル家庭です。とくに母子家庭の半分の家庭は貧困ラインの下だと言われています。

室井 私もシングルで子育てしましたけど、稼げたのはたまたま運に恵まれてラッキーだっただけ。だから、手っ取り早く大企業から税金を取って、困っている人に回してほしい子どもって国の財産じゃないですか。そこにスポットが当たっていないのはおかしい。政府の役割って、弱者のことを考えることだと思うんです。でも安倍政権がやってることは、それと真逆じゃないですか。
前川 私もそう思います。室井さんのように考える人が増えるといいんだけど、やはり強い人、大企業からはお金を取らなきゃいけない。日本は小さな政府になりすぎているんです。政府に役割を果たさせるためにも税金は取らないと。

室井 いまは大企業は税制で優遇されて、ほとんど税金を払っていない。安倍さんのお友達にはバンバン補助金を出す。企業や富裕層、お友だちだけ優遇っておかしいです一方で弱い人からはむしり取ろうとしているし
前川 政治権力も世の中もお金で動いていますから。お金を持ってる人が政治を動かして、自分たちに都合のいい政治する。メディアも同じ。ですからいま一番必要なのは、所得や富の再配分だと思います。この30年間ずっと、新自由主義的な経済政策、財政政策が続いていて。中曽根さん(康弘・元首相)のころからですね、金持ち優遇は。法人税を下げ、所得税も相続税も最高税率を下げてきた。金融資産を運用して得た所得には低い税率しか適用されない。お金持ちや大企業はどんどん儲かるようになっている。さらにいま、金持ち優遇にほかならないと思っているのが「教育資金一括贈与制度」です。祖父母が孫の教育費を贈与するという、一見もっともらしいものですが、孫1人に1500万円をぽんと無税で贈与できるんです。孫4人なら6000千万円。さらに結婚子育て資金の一括贈与制度もある。これも上限1000千万円。この2つの一括贈与制度を使うと、ひとりの子どもや孫に、2500万円まで贈与税も相続税もなしに財産を分けられる。こんなことができるのはお金持ちしかいないわけで、金持ちの相続税節税対策にフル活用されているんです。

室井 お金持ちの祖父母がいれば潤沢な教育費をもらえるけど、貧乏ならダメってことですよね。ますます格差が広がるし、貧困が世代間で連鎖するという典型じゃないですか! 
前川 その通りです。


恵まれた家庭に育ったことで、生まれながらの格差はおかしいと感じるようになった

室井
 前川さんって、出会い系バー通いは貧困の実地調査で、夜間中学支援も貧困の問題でしょ。日本の最大の問題は貧困の格差だっておっしゃってもいます。私も本当にそう思いますが、いつごろからそんな風に考えるようになったんですか?
前川 この30年間ほどです。それは政府が格差拡大の政策を取り続けてきたことにある。教育に関してもそうです。国立大学の授業料はすごい勢いで高額化してきました。私が東京大学に入った1973年の授業料は1年間で1万2千円で初任給1カ月よりも少ないくらい。その2年後には3倍の3万6000円になり、いまや53万5800円です。かつては、お金はないけれど優秀な人は国立大学に行けた。しかしいまでは、貧困家庭は塾にも行けないなどの環境面からも、なかなか学力向上ができない。私立より国立大学に行っている学生の親の方が金持ちだったりする。教育にお金をかけられる親の子どもたちしか国立に行けない。これは地方の高校にも言えることなんです。地方の公立高校はお金があって学力が高い子が行き、落ちた子が私立に行く。そして私立のほうが授業料は高い。私立に行っている子の親のほうが年収は低い。そういう逆転現象が起きているんです。

室井 わかる。私にも高校2年生の息子がいるけど、その友だちを見ていてもそういう傾向はあります。でも、前川さんは官僚トップの事務次官まで登りつめたエリートなのに、なぜそんなに弱者に寄り添う、まっとうな考え方になったんですか?
前川 それは幼少期の体験にあるかもしれない。私の生まれは奈良県のど田舎の秋津村(現・御所市)というところなんですが、そこの地主の家だったんです。よく覚えているエピソードがあって。小学1年生1学期の成績が、体育以外全部5だった。そうしたら、私のばあさんが校長のところにねじ込んでね。「なんで体育が4やねん!」と。すると2学期から、体育が5になっちゃった。秋津村での一強体制です。しかもばあさんは同級生が私を「きへいちゃん」って呼んでいるのを聞いて、その親に「おまえの息子はけしからん。きへいちゃんって馴れ馴れしい。ぼんぼんって言わせろ」と怒ってね。でも子ども心に「これはおかしい」と思いましたよ。ばあさんの行動に対して批判的な目を向けていたんですね。周囲には被差別もたくさんありますから、その人たちが不当に扱われているのも目の当たりにして。そういう社会構造の矛盾みたいなものを、小さいときから感じていました。それって、おかしいなと。子ども同士で喧嘩しているのに、親が謝りにきたりね。生まれたときから小さい世界だけど、カーストの上だった。生まれながらの格差はおかしい。そんな感覚が小さいときからありました。どうもその辺から目覚めていったんでしょうね。

室井 同じような恵まれた環境にいても、安倍さんとは全然発想が違う! 安倍さんはちっちゃいころから自分が特別な人間だと勘違いしてたのに、前川さんは逆に社会構造の矛盾に気がついたわけでしょう。やっぱり人間の品格が違うんだな。その違いって、話しぶりにも出てますよね。安倍さんなんて、自分に都合の悪い質問されたら、すぐ逆ギレするけど、前川さんはどんなに意地悪なことを言われても冷静に毅然と答える。国会で話しているのを見て、こんなにちゃんとした受け答えをする大人がいるんだ、と感心したもの。同じように思った人は多いはずです。露出すればするほど、どんどん好感度が高まってファンが増えてますよ。
前川 それは怖い。イメージと実態は違いますからね(笑)。私はこんなふうに“時の人”と言われるようになるとも思わなかったし、等身大で事実を発言しただけです。英雄のように見られたり、偶像化されるのは困ります。「あの人は立派な人だ」と偶像化されちゃうと、その後に「偽善者だ」とか、「エッチなことをしている」とか、また出てくるかもしれないし(笑)。

室井 前川さんは会った人から嫌われないでしょうね。あったかい感じがするもん。嫌いだって言ってる人って、高橋洋一さん、八幡和郎さん、岸博幸さんとか、安倍応援団か国家戦略特区の利権に関係している人たちばかりですもんね。


室井「前川さん、報ステのコメンテーターやって!」前川「官邸から番組に…」

室井
 それはそうと、前川さんってこれからどうするんですか?
前川 いまは週2回ほど夜間中学でボランティアをやっていて、高校生の学習支援もやってましたが今はお休みしてて、そのくらいです。今後のことはあまり考えてないんです。何しようかな。

室井 政治家になったらどうです? あたし、絶対に応援しますよ。
前川 それだけは無理です。自分の名前を連呼するなんて、そんなバカなこと……。室井さんこそ、やったらいいじゃない。

室井 私、不倫とかなんとも思わない女ですよ。リーダーにも向いてないし。いま日本に必要な政治家って、みんなの前できちんと頭下げて謝って納得させる正直で上品な人だと思う。それ、前川さんでしょ。人徳もあるし。前川さんのためにどれだけ熱い涙を流した男が多かったか。寺脇研(元文部省官僚で前川氏の先輩)さんなんて、テレビで前川問題の解説しながら涙目になってましたよ。
前川 あくびしたんじゃないですか? 前の夜に飲み過ぎたとかで(笑)。とにかくいまは世間が私の“顔”を忘れてほしいし、早く匿名のなかに紛れ込みたい。

室井 じゃあ、コメンテーターがいいんじゃないですか? いま、教育や文科省関連のコメンテーターといえば、寺脇さんしかいないし。前川さんもテレビコメンテーターやればいいのに。落ち着いているし信頼感もあるし、声も素敵です。個人的には『報道ステーション』に出てほしい。
前川 寺脇さんも、いろいろと心配してくれてるんだけど、コメンテーターなんてとてもとても(苦笑)。『報ステ』に出たら、きっと官邸あたりから番組に強い風当たりがあるでしょうし。

室井 2〜3回出て突然いなくなって「圧力か?」なんて大騒ぎになるもの面白いかも。
前川 でも、ラジオはいいですよね。顔が出ないから。じつは室井さんとご一緒させていただいた『大竹まこと ゴールデンラジオ』も、最初はどうしようかと躊躇していたんです。言わなくてもいいことまで言って、舌禍事件を起こすんじゃないかと心配で。でも、寺脇さんもその前に出ていたんでしょ? 「前川さんにも出てくれって言ってるよ」と言われて。この対談をお受けしたのも毒を食らわば皿まで、という感じですかね。あっ、いや、別に室井さんが毒だと言っているんじゃないですよ。

室井 毒でいいんです。毒でもこうやって出てくれたんだから。今度、寺脇さんも誘って作戦、練りましょう!

(編集部)
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●大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない《病的な嘘つき》アベ様…前川喜平氏の人間性と彼我の差

2017年09月27日 00時00分54秒 | Weblog

[※ 報道特集(2017年7月8日)



リテラの対談記事【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第7回ゲスト 前川喜平(前編)/室井佑月が前川喜平・前文科事務次官にあらためて訊く! 解散でフタをされようとしている加計問題の全貌と本質】(http://lite-ra.com/2017/09/post-3471.html)。

 《今月28日に召集される臨時国会の冒頭で安倍首相が衆議院を解散することが決定的となった。これは明らかに臨時国会での森友・加計問題の追及を封じ込めるためのもので、なんの大義もない》。

 国会も開かない。どこが、憲法7条に言う《国民のため》の衆院解散なのか。我欲・私利私欲のみのための、「森友捜査ツブシ」の解散。二重三重に違憲を重ねる《病的な嘘つき》アベ様に、それでも投票するの? 自公お維トファを支持する人達は本気なの?
 大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない病的な嘘つき》アベ様…事務次官としての自分の責任を明言する前川喜平氏の人間性と彼我の差だ。

   『●「裸の王様」アベ様大好きなニッポン臣民…
      「戦争やりましょうよ! 死の商人へ!」で内閣支持率アップ…
   『●やるべきは「解散・衆院選挙」ではなく、まずは、
         アベ様の大見得・啖呵「議員辞職」の有言実行だ

   『●「森友捜査ツブシ」: 大阪地検特捜部、いま直ぐに動け!  
                 マスコミも、いま「黙秘」してはいけない!!
   『●《推定ウン千万〜1億円弱も払って出した》「ト」な広告…
                出稿側も「ト」なら、掲載側も「報道」の放棄
   『●メディアの仕事を見失い、「自制心と自浄作用を
       失ったマスコミ権力」=「下足番」・読売、広報紙・産経
   『●本来国会を去るべき、「戦争ゲームに興じる子ども」
        「病的な嘘つき」がアジアやニッポン「国民の脅威」
   『●室井佑月さん、「民進党のせいで負けたってこと、
      民進党の人たちだけがわかってないのか?」

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http://lite-ra.com/2017/09/post-3471.html

室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第7回ゲスト 前川喜平(前編)
室井佑月が前川喜平・前文科事務次官にあらためて訊く! 解散でフタをされようとしている加計問題の全貌と本質
2017.09.23

     (前川喜平氏と室井佑月の刺激的対談!)

 今月28日に召集される臨時国会の冒頭で安倍首相が衆議院を解散することが決定的となった。これは明らかに臨時国会での森友・加計問題の追及を封じ込めるためのもので、なんの大義もない。
 国政や選挙を自分の権力維持の道具としか考えない独裁者体質丸出しのやり口は許しがたいが、そんな折も折、われらが室井佑月の連載「アベを倒したい」では、文部科学省前事務次官・前川喜平氏を招いての対談記事を前後編の2回にわたってお届けすることになった。
 今回、前川氏にオファーしたのは、室井が「前川さんとぜひ話をしたい、そんで、安倍を追い詰めたことにぜひお礼を言いたい」と言い出したためで、対談が行われたのも解散報道前のことだが、解散強行が決定的になったことで、この記事を配信する意義はいっそう大きくなったといえる。
 それは、安倍首相がまさに解散によってフタをしようとしている加計疑惑の一部始終と安倍政治の本質を前川氏が改めて語ってくれたからだ。官邸からの圧力、出会い系バー通い報道の謀略、インタビュー放送を取りやめたNHKはじめマスコミの対応、安倍政権の官僚支配の実態……。室井の傍若無人なツッコミにも、前川氏はまったく逃げることなく、あの冷静沈着な口調でひとつひとつ誠実に答えてくれた。前編では、口封じのために、前川氏に提示された意外な天下り先の名前も明らかになっている。
 解散によってなかったことにされそうになっている加計疑惑をもう一度検証し、安倍首相の政治私物化をストップするためにも、この対談をぜひじっくりと読んでほしい。
(編集部)


前川「安保法制は違憲だと思っているけど、役所を辞めるまではっきり言えなかった」

室井 前川さんは私のなかで、救世主なんです。それまでは、安倍政権を批判しても批判しても全然、手応えがなくて。ホント絶望感に打ちひしがれていたのが、前川さんが登場して総理のご意向文書」が本物だと証言して、潮目が変わった。安倍政権の支持率低下だって、15%くらいは前川さんのおかげだと思ってます。
前川 いやいや、私はもともと安倍政権を倒そうとか、その体質にメスを入れるとかという気持ちはなかったんです。加計学園の獣医学部設置のプロセスがおかしいから、それを是正しなければと。それしか考えていなかった。

室井 えー、倒しましょうよ。だってこの対談「アベ安倍を倒したい」って連載なんですから。
前川 えっ、それは知らなかった。

室井 ちょっと、タイトルくらいチェックしといてよ〜。って、あたし、なに気軽にツッコミ入れてんだろ(笑)。この対談の前、前川さんとラジオ(『大竹まこと ゴールデンラジオ』文化放送)でご一緒させてもらったとき、(一緒に出演している)金子勝先生から「前川さんはいい人だから失礼がないように」って釘を刺されていたのに。
前川 いや、室井さんの話は聞いていて痛快です。言いたいことを言いたいように言って。あれはいいですよ。僕も役所を辞めて、やっと表現の自由を100%享受できるようになった。これまではやはり立場や公的な制約があり、表現の自由が制限されたなかでずっと生きてきたから。私生活でも気楽に話すことがなかなかできませんでした。たとえば私は安保法制は違憲だと思っているけど、どんな場でもはっきりと言えませんでした。間違ってると思うけど、立場上言えなかった。

室井 じゃあ、この対談でもぜひ表現の自由を発揮してください。というわけで、前川さんに聞きたいことは山ほどあるんですけど、一番最初に聞きたいのはやっぱり、読売の出会い系バー報道のこと。あれ、見たとき、どう思いました? 私は怒りで震えましたよ。政府が前川さんの実名証言を察知し、スキャンダルで脅し、口封じをしようとしたのがモロバレ。しかも、その片棒を読売新聞が担いだ。読売ってまともな報道機関、新聞とは思えない。

前川 もちろん私も怒りを感じましたが、それ以上にびっくりでした。週刊誌には書かれるかなとは思っていたけど、読売新聞があんなこと書くとは思わなかった。そもそも読売新聞の報道が出る前に「週刊文春」から連絡があったんです。「バーの話も取材しているが、むしろ前川さんが知っている加計学園の話が聞きたい」と。ですから「文春」の取材に応じようと思った。そのタイミングでテレビや新聞からの「総理のご意向」文書についての取材依頼があり、それを受けていったんです。そんなタイミングのなかで、読売の記事が出た。

室井 警察か、公安か、内調かわからないけど、官邸の意向で前川さんを尾行させていたんでしょ。それも怖い。しかも事務次官時代に公安のドンの杉田(和博・官房副長官)さんからすでに出会い系バー通いを指摘されていたんですよね。
前川 昨年の9月か10月に、杉田官房副長官に呼ばれて「こういう店に出入りするのは控えたほうがいいよ」と言われて。そのときは「わかりました」と神妙に引き下がったんですけどね。バー通いは女性の貧困の実態に触れてみたいという社会的関心による行動とはいえ、個人的な行動です。私は事務次官という公人だから「行動に気をつけろ」ということかもしれないけど、それをなぜ知っていたのか

室井 そう考えると、財務省の理財局長だった佐川宣寿さんが、嘘を突き通したのも、官邸の誰かが何か弱みを握って、思い通りにしたんじゃないのかな。


文科省には、安倍政権のひどいやり方に頭に来ている人がたくさんいた

前川 私自身のケースを考えると、スキャンダルで脅すのは権力側の常套手段になっているのかもしれません。その上で、地位や名誉をチラつかせる。佐川さんの場合はどういう理由があるのかわかりませんが、あそこまで知らぬ存ぜぬを通しているのを見ていると、ある意味、気の毒になってきますね。

室井 もちろん出世もあるんでしょうけど。佐川さんは沈黙を守ったことで、国税庁長官に抜擢された安倍政権って恥も外聞もないんだなと。でもかつては政治家じゃなく官僚主導政治が批判されてもいました。官僚が裏で絵を描いて、表で政治家を動かす。そんなイメージがずっと強かったと思うんです。
前川 かつてはたしかにあったと思います。しかしいまは官邸の力が強くなっていて、役人が実質的に主導する場面はだんだん減っていますね。それが政治主導ってことなんでしょうけど。しかし政治主導が官僚主導に比べて国民のために良い判断になっているかというと、現状は必ずしもそうではない。ただ一方で、政治主導という方向性は間違いではないとも思います。政治家は選挙で代えられますが、官僚は代えられない。官僚は人事で代えられるけど、人事を変えるのは政治なんでね。政治主導で官僚人事を把握するというのは必ずしも間違っていないけど、ただ安倍政権下では、その権力が集中しすぎている

室井 安倍さんがつくった内閣人事局ですよね。官僚の人事が官邸に握られちゃって。そもそも加計問題も森友問題も、背景として人事権を握られた官僚の忖度もあったんですよね。人事を握られた役人が自分の出世なんて保身のために動く。「国民のためじゃなく安倍政権のため」。安倍さんって本当にお友だちと、自分の意に沿う“下僕”が大好き。でも少しでも逆らうと、逆ギレする。そんな人に官僚の人事権なんて握らせたのが最大の失敗だったと思うんです。だから私は政治家、役人、マスコミがみんな仲悪くて、丁々発止する三つ巴の状態がいいと思う。
前川 いいと思います。司法、行政、立法の三権分立ならぬ、政治、役所、マスコミの三権分立みたいなね。政治が変なことをしたら今度は役所がマスコミに内部告発するぞ、と。加計問題では、実際に文部科学省内でそういう動きが起こりました。文科省は、政治のひどいやり方にかなり頭にきている人間が多かった。でもさっきも言いましたけど、私自身、安倍政権を倒そうと思って行動したわけじゃないんです。加計学園問題に対しても、現役のときはむちゃくちゃ抵抗したわけじゃなくて、これはまずいなまずいなと思いながらも、「しょうがないな、政治の世界は」という感じだった。いまではそのことを反省していますが……。

室井 またまた。もう官僚じゃないんですからね。でも私、前川さんへのマスコミのネガティブキャンペーンがあってから、メディアでずっと仕事するという考えを改めました。マスコミは権力の監視役だと思って、それを信じてやってきましたけど、完全にぶっ壊れた感じです。一生をかけてやる仕事じゃない。前川さんはボランティアで夜間中学で教えているんですよね。その話を聞いて、私も半径50m以内の、自分ができる範囲のことをやろうかなって。正義について考えたり、語るのがバカらしくなってきて。でも、前川さんはまったくひるまなかった。普通はああいうスキャンダルをちらつかされると、告発を辞めちゃう人も多いのに、きちんと「ご意向」文書について実名告発をした。それはすごいと思いましたね。実名告発しようと思った動機はなんだったんですか?
前川 確たる決意をもってやったというより、私にとっては当たり前のことだったんです。そもそもは、「ご意向」文書が問題になってから早い段階で、朝日新聞やNHKは文科省関係からの複数の告発や取材から“本物だ”という情報を持っていたらしく、私のところとにも取材に来ていました。最初はNHKでした。その過程でやはり真実を国民に、国家戦略特区、加計学園獣医学部設置のおかしなプロセスを国民に知らせなければならない、是正しなければならないと考えるようになって。国家権力を私物化したと言われても仕方がないケースですからね。


安倍政権を忖度するメディアの空気を一変させた、前川氏の実名告発  

室井 でも結局、NHKでは前川さんのインタビューは放映されなかったんですよね。
前川 そうです。これは国民が知っておくべきことなのに、報道されなかった。だからメディアを通して、真実が報道されるためにどうしたらいいのかと考えたんです。NHKにかぎらず、メディアはかなり早い段階で相当な情報をもっていたのに、それを報道しなかった。だから匿名でない証言が必要だとも考えたのです。実際、マスコミがもっていた情報のなかには、私が確認できる文書もたくさんあった。もちろん知らない文書もたくさんあって、「こんなのあったんだ!」と驚いたし、なぜ事務次官の私に上がって来なかったんだろうという疑問もありました。だからこそ、これは国民にきちんと知らせなくてはと。権力が国民のためじゃなくて一部の人のために使われているそれを国民は知るべきですし、是正しなければいけません

室井 やっぱりね。テレビ局のなかでも加計学園問題ではかなり早く、いろんな情報が飛び交っていました。でも、なかなか報道しない。加計学園だけじゃなく、それ以前に森友学園問題が最初に浮上したとき、ワイドショーは全然取り上げなかったんですよ。だから私、週刊誌の連載で毎週毎週、「森友を取り上げろ!」「加計を取り上げろ!」と書いて。知り合いのテレビ関係者にも訴えたんです。でも役人と一緒で、他局の出方の様子見なんです。「他の局がやったらやる」とかなんとか言っちゃって。自分のところだけ突出して取り上げて、クレームがくるのが嫌なんです。だからどこかがやれば、一斉にやる。変ですけど、それがテレビの体質というか現状というか。加計学園についても同じで、その空気を打ち破ったのが前川さんだった。
前川 「おかしいものはおかしい」って言っただけですけどね。「この文書見たことありますか?」と聞かれたから「見たことある」と言っただけで。そしてもうひとつ、私にとって決定的だったと思うのは先ほどもお話した「週刊文春」の存在です。出会い系バー通いについて、おそらく官邸筋から情報を得ていたのではないかと思いますが、「バーのことは書かない代わりに、加計学園問題のことを書かせてほしい」と言われたので、それなら話しましょうと。

室井 「週刊文春」で、バーで知り合った女の子が前川さんとは「手もつないでいない」とか「前川さんに救われた。それは両親も知っている」なんて立派に証言してましたね。買春疑惑を一蹴した。でもね、「週刊文春」なんだから。全面的に信用しちゃだめですよ。何をやるかわからないんだから。
前川 それはいろんな人から言われました(笑)。“文春砲”なんだから、とか、“所詮は週刊誌ですから”って。でもあの女性を探し出したのはすごいと思った。

室井 所詮どころじゃなく、「文春」の取材力は半端ないですよ。でも、この業界に長くいるから思うんですけど、「文春」も最初はバーで売春していた話を追っかけていたはず。でも必死で取材しても、そんな話もなければ、確証やウラも取れない。結局、前川さんの“貧困調査”を裏付ける女性の告白を掲載したんだと思う。私も元旦那と離婚するとき、「文春」が取材にきて、でもちょうど熱があって冷えピタつけて子ども抱っこしながら出ていって。それで元旦那の連帯保証人になってる話をしたら「大変ですね」って帰っていった。記者も人間だもの(笑)。


加計学園獣医学部の設計図を見ると、本気で研究する気があるとは思えない

室井 でも前川さんの実名告発があったのに、国会も終わって、北朝鮮のミサイルや核実験で、加計問題が世間から忘れられちゃうのではと不安です。加計学園問題がこのまま終わるってことはないですよね。加計孝太郎さんは参考人招致で証人喚問に出てこないつもりですか? 和泉(洋人・首相補佐官)さんは1回出てきたけど、下手人は全員揃えて出さないと。
前川 たしかに加計学園獣医学部を認めた理屈はものすごく薄弱なものです。そもそも国家戦略特区

という制度は、国際競争力の強化と国際経済拠点の形成が目的なんです。「そういうすごいものをつくるなら規制を取っ払いましょう」という考え方です。公務員獣医師の不足という議論もありますが、それは仕事がきつくて処遇が悪いから希望者が集まらないだけ。獣医師は全体としては足りている。文科省としては「人数」の増加ではなく「質」の向上が課題であり、獣医学教育を国際水準に引き上げることだったはずです。だから、普通の獣医学部だったらこれ以上要らない。新しい分野の獣医師をつくる獣医学部で、既存の大学にはできないようなことをするのだったら検討の余地あり、というのが例の閣議決定の4条件だったんです。

室井 怖いと思ったのが加計学園の設計図が流出したときです。その設計図を専門家が見ると、病原体の扱いもきちんとできないと指摘されていましたし、鳥インフルエンザの研究もできないって。まるで素人の設計と言われてますね。しかも、最上階にはパーティールームとワインセラーまであったんでしょう。安倍さんと加計さんがお友だち呼んで宴会する施設じゃない。
前川 びっくりしました。極めて危険な病原体を扱うはずのバイオハザードセーフティレベル(BSL)3の研究施設が、多くの教員や学生が行き来するフロアに置かれることになっている。本気で研究する気がないとしか思えません。これでは加計学園の獣医学部が、国際競争力の強化や国際経済拠点の形成に資するものだとは到底思えない。国家戦略特区制度の趣旨からも加計学園の獣医学科はあり得ない話です。

室井 “国際”なんて言ってるけど、質なんて関係なく、単に外国からの留学生を一杯受け入れるってだけでしょ。偏差値も関係ない(笑)。
前川 うまくいった前例があったんです。それが2017年に開設された成田の国際医療福祉大学医学部です。これも加計学園同様、国家戦略特区として認可されたものです。加計学園同様に“国際医療人材の育成”だと言ってね。新設された医学部の定員140人中、留学生が20人。これは日本医師会などから新設する必要はないと批判されていたのが、あっさり認可されるなど、加計学園とも類似点が指摘されているんです。

室井 知ってます! 公募でこの1校しか手が上がらなくて、土地は成田市が無償貸与で、成田市から45億円、千葉県から35億円の補助金まで出ていて加計学園とそっくり
前川 この一匹目のドジョウが上手くいったもんで、二匹目も上手くいくだろうと思ったんでしょう。しかし加計の獣医学部新設は一匹目に比べてもかなり杜撰なものです。


内閣参与から前川氏に提示された意外な“天下り先”とは?

室井
 もうひとつ、ぜひ聞きたかったのが、文科省の天下り問題です。前川さんはこの問題で事務次官を辞任しました。それって加計学園絡みで官邸にはめられたという話を聞いたことがあるんです。
前川 僕はそうは思っていません。天下り問題は文部科学省の自業自得です。

室井 でも、ほかの省庁もやってるんでしょ。早稲田大学に再就職した高等教育局長って、加計学園の獣医学部新設に強硬に反対していたんでしょ。しかも文科省が天下りの調査を受けていたとき、外務省と内閣府の天下りの証拠メールまであって。そうしたら前川さんが官邸の杉田官房副長官から急に呼びつけられて、外務省と内閣府に関わるメールは出すなって言われたんでしょ。
前川 たしかに他の役所もやってるんじゃないかって思いはみんなもってると思います。でもそこは仕方がない。ある意味、文部科学省は稚拙だった。しっかりとした外部のメカニズムをつくっていなくて、特定の個人、具体的に言うと人事課のOBに寄りかかっていたんです。一番問題になった高等教育局長が早稲田大学に再就職したケースは、人事課の職員が直接やっていた。誰が見ても違法で、しかもそれを隠蔽しようとした。だからこれは仕方ない。そのとき私が事務次官だったわけで、組織の責任を取るため辞めるしかないと思いました。

室井 そうなんだ。でも前川さんがその責任をとって自分から辞任したのに、菅官房長官に「地位に恋々」なんてウソこかれて。それを前川さんが国会で明確に否定したのは一番の見どころでした。
前川 自分で引責辞職しかないと思って、自分で決めた。それが事実です。

室井 あっ、もうひとつ。前川さんは、木曽(功・内閣官房参与兼加計学園理事)さんから昨年8月、「獣医学部の件でよろしくと言われた」と証言しましたけど、その時の本題は退官後の進路のことだったんですよね? 木曽さんって加計学園傘下の千葉科学大学学長と、加計学園理事までしている人ですけど、もしかして前川さん、加計学園に誘われたとか?
前川 いや、ユネスコ大使です。ユネスコ大使は、不文律で文部科学省と外務省が順番になっていて、そのときは外務省の人だったので、次は文部科学省の順番でしたからね。もちろん明確なルールが確立しているわけではないのですが。

室井 それ、断ったんですか?
前川 断ってはいないけど、頼んでもいない……。木曽さんはユネスコ大使の経験者ではあるけど、私をそのポストに就ける影響力をもった人とも思えません。その後の流れからしても、まあ、ないですよね。

室井 でも、今回、改めて感じたのが、相変わらず利益誘導とか政治家の利権というのがなくなっていないんだなあってこと。省庁のなかでも利権が少ないイメージの文科省でさえ、今回の加計学園獣医学部、そして成田の国際医療福祉大学医学部と、いろいろ出てきていますし。
前川 加計問題は私が文部科学省にいて、在職中に自分で関係文書を目にした案件ですし、職員からも話を聞いた。和泉さんや木曽さんからも直接働きかけを受けた。だから私にはこの問題がわかったし、行政が歪められたと世の中にお知らせした。しかし、私が知らないところでも、霞が関全体では特定の利権案件はたくさんあるだろうと思いますよ。やはり政治権力、政権というのは長くなればなるほど、腐っていくんだと思います。

室井 加計学園問題以外にも、前川さん自身が安倍政権によって行政を歪められたと思った経験はあるんですか? 
前川 ありますよ。

室井 それはぜひ聞きたい!

後編につづく
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(続きは、『●大見得・啖呵「議員辞職」を有言実行しない《病的な嘘つき》アベ様…全てのアベ様の「政」のデタラメさ』)

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●青木理さん「供述が立証の柱…もっと物証が欲しい。「通信傍受を縦横無尽に使いたい。司法取引も」と…」

2017年05月31日 00時00分34秒 | Weblog


アサヒコムのインタビュー記事【際限ない捜査、警察は求める 「共謀罪」青木理氏に聞く】(http://www.asahi.com/articles/ASK514JHNK51UTIL01W.html?iref=comtop_list_pol_n01)。

 《《政治や社会の矛盾に声を上げる人が疑われる社会は健全か。》…犯罪が起きる前だから、供述が立証の柱になる。それだけに頼っては冤罪(えんざい)だらけになる。もっと物証が欲しい。「通信傍受を縦横無尽に使いたい。司法取引も」と考えるだろう》。


 斎藤貴男さん曰く…:

 「斎藤 法務大臣も答弁で認めてからね。同意どころか、LINEだったら既読スルーしただけでも逮捕される可能性がある。それと、共謀罪の処罰対象を「組織的犯罪集団」に限定するなんて言ってるけど、それを決めるのも捜査機関でしょう。解釈次第でどうにでもなる。事実、法務省は2人以上で団体とみなされると言ってるし、最近、国会では処罰対象について、「普通の団体」が“性質を変えた場合”「組織的犯罪集団になりうる」という政府統一見解を示した。これって、市民団体や労組なども捜査機関が“性質を変えた”と言えば、いつでも「組織的犯罪集団」として共謀罪が適用されるということ。実際、彼らの立場ならそれはそうでしょ。テロを起こす前から、わざわざ「我々はショッカーです」とか、「黒い(ブラック)幽霊団」ですとかの看板を掲げる奴は珍しいわけで。で、「デモはテロ」と考える人たちなんだから、沖縄の基地反対運動や安保法制デモに参加した人が逮捕されない方がおかしいことになる」…。

 (リテラの対談記事【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第3回ゲスト 斎藤貴男/室井佑月が斎藤貴男と「共謀罪」を徹底批判!「安倍政権に逆らう人が片っ端から逮捕される」】(http://lite-ra.com/2017/03/post-2963.html))
 (『●「平成の治安維持法」で、室井佑月さんや斎藤貴男さん「なんて、最初から一般人扱いされないだろうしな」』)


 このリテラの記事の中でも斎藤貴男さんや室井佑月さんが、以下のような、既に監視社会が深く進行している恐ろしい現実を指摘。

   『●教員について密告させ、労組を監視する=
        自公支持者の皆さんの大好きな「超・監視管理社会」
    「東京新聞の記事【隠し撮り問題、被害届提出 大分県警「適正に捜査」】
     (…)によると、《大分県警別府署員が野党支援団体の入る建物の敷地に
     無断で隠しカメラを設置していた問題で、…。県警刑事企画課は
     「法と証拠に基づいて適正に捜査する」としている。建物には
     社民党支援団体の別府地区平和運動センターや、
     連合大分東部地域協議会が入っており、参院選公示後の6月24日まで
     1週間近くカメラが設置された》そうだ。
     …でも、「泥縄」「ドロナワ」させても無理なのではないでしょうか、
     「盗撮」「監視」の真相解明なんて?」

 さて、《真面目な警察官であれば何を考えるか》? デンデン王国「裸の王様」アベ様の御好きな超管理社会・監視社会・密告社会です。自公お維の議員の皆さん、支持者の皆さん、無関心派「眠り猫」の皆さん、本当にそんな社会を目指しているのですか? あまりに悍ましいと思うのですが…。《政治や社会の矛盾に声を上げる人が疑われる社会は健全か》? 「平成の治安維持法」があるような社会は健全ですか? 青木さんは《社会に異議申し立てする人が片端から捜査対象になる社会は、断じていい社会ではない》と。

   『●「「共謀罪」の必要性強調 首相「東京五輪開けない」」…
              ならば、共謀罪も不要だし、五輪開催権も返上を
   『●「裸の王様」が支配する、ダークな五輪のために
       「大切な人権を蔑ろに?」出来る不思議王国・デンデン王国
   『●「平成の治安維持法」で、室井佑月さんや斎藤貴男さん
          「なんて、最初から一般人扱いされないだろうしな」
   『●「平成の治安維持法」で、室井佑月さんや
       斎藤貴男さん「なんて、最初から一般人扱いされないだろうしな」
   『●「政治的修文」ではなく、法案の目的や「その他」に
        『平成の治安維持法』「内心処罰」という文言追加を
   『●当局の解釈次第で恣意的に内心を罰し、
     お互いを監視・密告しあう社会…「平成の治安維持法」の完成
   『●金平茂紀さん「僕らの国の司法にはかつて
      「予防拘禁」という仕組みが合法的制度として存在していた」
   『●森達也さん「人は誘惑に負けることもあるが反省もする。
              …それをも許さない」「平成の治安維持法」
   『●「恣意的な廃棄は無い」!、って一体どの口が…
       「特定秘密」「公文書が、秘密指定期間中でも廃棄」可能
   『●「沖縄の大衆運動そのものを取り締まっていく
       国策捜査だと思う」…山城博治さん「予防拘禁、プレ共謀罪」
   『●沖縄でのプレ「平成の治安維持法」実験…
      《実験の結果、今の国民の無関心は国に自信を与えてしまった》

   『●「誰が見ても安倍政権による政治的弾圧」…
      山城博治さん「沖縄の大衆運動を潰す政府の方策」
   『●「基地の偏在を沖縄が訴えても「裁判所はほとんど答えない」」…
                「政治判断」しかできない司法の悲劇
   『●「平成の治安維持法」…「一般人がこの国からいなくなり
          嫌な世の中になるのは時間の問題」(政界地獄耳)
   『●「平成の治安維持法」=「テロ対策には全く役に立たない 
              共謀罪を、誰が何のために作ろうとしている」?
   『●「官憲が内心に踏み込んで処罰して、人権を著しく
         侵害した戦前、戦中の治安維持法」が亡霊のように…

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http://www.asahi.com/articles/ASK514JHNK51UTIL01W.html?iref=comtop_list_pol_n01

際限ない捜査、警察は求める 「共謀罪」青木理氏に聞く
聞き手・後藤遼太 2017年5月15日07時06分

     (青木理さん)

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案が国会で議論されている。政府は「テロ対策に必要」との立場だが、捜査当局による乱用や「表現の自由」などの侵害を危惧する声もある。

 長く公安警察を取材してきたジャーナリストの青木理さんは、あえて捜査する側の視点に立って、法案の問題点を指摘する。


 《政治や社会の矛盾に声を上げる人が疑われる社会は健全か。

 公安警察を長く取材してきた。警察官の立場から「共謀罪」を見てみよう。

 「共謀罪ができればテロを防止できる」と政府が言う。真面目な警察官であれば何を考えるか。犯罪が起きる前だから、供述が立証の柱になる。それだけに頼っては冤罪(えんざい)だらけになる。もっと物証が欲しい

 「通信傍受を縦横無尽に使いたい。司法取引」と考えるだろう。テロリストが重要な話し合いをメールや電話だけで済ませるとは思えない。アジトなどの室内を盗聴する「密室盗聴」もさせてほしいとなる。真面目に捜査しようと思えば思うほど、「もっと武器をくださいとなる

 日常的に捜査当局が「こいつは罪を犯す可能性がある」と見なす個人や団体を監視しなければならなくなる。事前に取り締まろうとすれば、そうせざるを得ないからだ。

 本来は「一般市民が対象になるから危険だ」という議論はしたくない「普通の人」だろうが、そうでない人だろうが罪を犯してもいない段階で取り締まるということ自体が異常だからだ。お上にまったく盾突かない、政権に無害無臭な人は対象にならないかもしれない。しかし、社会に異議申し立てする人が片端から捜査対象になる社会は、断じていい社会ではない

 2010年に、警視庁公安部の内部資料と見られる情報がインターネット上に流出した。国内に住むイスラム教徒が捜査対象になっていたイスラム教徒というだけであらゆる情報が吸い上げられていた

 警察がモスク前で24時間態勢で監視し、出入りする人を片端から尾行。電話番号や銀行口座記録から接触した人や家族の交友関係まで調査していた。そのような手法を、ある公安警察幹部は「点が線になり、線が面になる」と説明してくれた。

 治安組織とは古今東西、社会体制の左右問わずそういうものだ。アメリカの国家安全保障局(NSA)はわずか10年で世界中の電話や通信を盗聴するような化け物に育ってしまった

 警察は全国津々浦々に30万人の人員を配置し最強の情報力を持った強大な実力組織だ。仮に秘密法や共謀罪のような武器を与えるなら、何かあったときに暴走しない仕組みをきちんと作るのが政治の役目だ。警察という実力装置の怖さに政治が無自覚であるということは政治の劣化だ。

 共謀罪を導入しても、テロが起きる可能性はある。そのときが怖い。社会がファナチック(狂信的)になり、メディアや社会も一緒になって「もっと捕まえろ」「もっと取り締まれ」と暴走するのではないか。オウム事件を取材していた時を思い出す。警察はあらゆる法令を駆使して信者を根こそぎ捕まえた。当時、幹部が「非常時だから、国民の皆様も納得してくれる」と話していた。

 公安警察的な捜査対象が際限なく広がる。誰だって安心して暮らしたいが、日本人1億数千万人を24時間徹底的に監視すればいいのか。安全安心を究極的に追い求めれば自由やプライバシーは死滅する。果たしてそれでいいのだろうか。(聞き手・後藤遼太)

     ◇

 〈あおき・おさむ〉 共同通信記者を経てフリーに。公安警察の取材が長く、著書に「日本の公安警察」「ルポ 国家権力」など。
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●立憲主義も理解できず…「行政の長である総理大臣が具体的な改憲日程を口にするのは完全に憲法違反」

2017年05月28日 00時00分26秒 | Weblog


東京新聞の社説【日本の平和主義 憲法主権者ここにあり】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051902000138.html)。

 《とりわけ九条には、この条文をよすがに戦後日本の平和主義が七十年も、脈々と守り継がれてきた重さがある。それを改めるということは、例えば九条の空文化で、まだ見ぬ将来世代の人々を戦地へ送ることになるかもしれない。そういう先も見据えての、歴史的な選択の重さである》。

 デンデン王国「裸の王様」アベ様やその取り巻き連中は立憲主義も理解できず、そして、《行政の長である総理大臣が具体的な改憲日程を口にするのは完全に憲法違反》。
 加えて、以下のリテラ対談記事にある通り、予想をはるかに超えるスピードで壊されゆくニッポン。森達也さんの予想通りではないか…。

 室井佑月さんの連続対談、「裸の王様」の天敵・小池晃さんとの対談【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第5回ゲスト 小池晃(前編)/安倍首相はどういうときにキレるのか? 室井佑月と共産党・小池晃が安倍のデタラメ国会答弁を徹底分析】(http://lite-ra.com/2017/05/post-3172.html)。《いま一番たよりになるのはやっぱ共産党でしょ」「とくに安倍さんをしょっちゅうキレさせてる小池さんに陳情したい》、《小池 それと、安倍首相は2020年に新憲法施行するという宣言をしたでしょう。改憲は国会が発議するもので行政の長である総理大臣が具体的な改憲日程を口にするのは完全に憲法違反。そんなことまでわからなくなってるのか、と思いました》、《室井 しかも「俺の考えが知りたかったら読売新聞のインタビューを読め」とか答弁したんでしょう。小池さんも先日の国会で追及されてましたけど》、《小池 国会よりも自分の応援団メディを読め、って。国会軽視、ひいては国民軽視ですよ。それと、安倍首相は自民党総裁の立場で発言したと言っていますが、読売新聞では安倍首相インタビューになっている。二枚舌もいいところです》。

   『●森達也さん、「僕はもうあきらめた」
      「これから4年間でこの国がどう変わるのか、とてもとても楽しみだ」
    《つまり法案はさくさくとすべて通る。ねじれ解消良かったね。
     ならば二院制の意味は何だろうと思うけれど、もう言わない。
     だって将棋でいえば詰み。チェスならチェックメイト。臨界は超えた。
     もう制御はできない》」

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051902000138.html

【社説】
日本の平和主義 憲法主権者ここにあり
2017年5月19日

 憲法を改正するに当たっては、主権者たる私たち自身が、将来に負うべき責任の重さをしっかりと自覚しておくことが、まず肝要ではなかろうか。

 とりわけ九条には、この条文をよすがに戦後日本の平和主義が七十年も、脈々と守り継がれてきた重さがある。それを改めるということは、例えば九条の空文化で、まだ見ぬ将来世代の人々を戦地へ送ることになるかもしれない。そういう先も見据えての、歴史的な選択の重さである。

 これほどの重大事だからこそ、改憲の選択を国民に求める手続きも、よほど厳重でなければなるまい。そもそも改憲は、憲法の主権者の責任において国民が主体的に判断することだ。手続きの基点には何世代にもわたる議論の末に、国民の過半が改憲を望むような世論の醸成がなければならない。

 この本筋に立てば、安倍晋三首相が唱えた九条改憲の道筋がいかに無理筋か、見えてくる。

 二つの側面から指摘したい。

 一つは、立憲主義の本旨に照らして、だ。憲法に縛られる側の権力者が、恐らく縛りを緩める方向で改憲の議論を率いる。しかも自らの政権運営に都合よく議論の期限を切るというのでは、国民主権の本筋に真っ向から逆行する。

 もう一つは、国民投票への国会発議に関して、憲法上「全国民を代表する」国会議員の本分を、はき違えていることだ。

 首相には、改憲派議員が発議要件の「三分の二」を超す今のうちに、発議を急がせたいとの思惑があるのだろう。だが国会は無論、一権力者の意向を代表するだけの多数決機関ではない。国民の代表者である議員は、まず改憲を望む世論の広がりを受けてこそ、その民意を代表して発議にも動く。それが本来の手順ではないか。

 今ある「三分の二」超も、改憲をあえて“争点隠し”にした選挙の結果であって、改憲を望む民意の反映とは到底言い難い。その国会が発議を先行させ、短時間の議論で国民に重い選択を迫ることになれば、国民は責任ある判断を尽くせず、歴史に取り返しの付かない禍根を残す危険性も高まる。ここが問題なのである。

 国会発議に向けては、首相の期限切りにも「縛られることなく」幅広い合意を目指している憲法審査会の議論を、粛々と積み上げるべきだ。開かれた議論がいつか、私たちの責任ある改憲判断の素地にもなればと期待したい。
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●今が「辞任」させる秋であり…市民に「忖度」する政治家や政党はどちらか?、いま、理解するべき

2017年04月23日 00時00分31秒 | Weblog

[※日刊ゲンダイ(2017年3月4日)↑]



リテラの室井佑月さんの連載対談記事の後編【室井佑月連載対談「アベを倒したい!」 第4回ゲスト 山本太郎(後編)/室井佑月が「太郎ちゃん、安倍さんを倒して」と陳情! 山本太郎が本気で語った安倍政治を乗り越える政策論とは?】(http://lite-ra.com/2017/04/post-3095.html)。

 前編は、【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第4回ゲスト 山本太郎(前編)/室井佑月が山本太郎に迫る! アッキード事件の闇、安倍首相の素顔、そして原発とマスコミ…】(http://lite-ra.com/2017/04/post-3067.html)。

 斎藤貴男さんとの対談は、…:

   『●「平成の治安維持法」で、室井佑月さんや斎藤貴男さん
          「なんて、最初から一般人扱いされないだろうしな」


 前編も含めて、是非、読んでみてください。《経済政策…。…そのベースにある国民の生活への真摯な思い…。安倍政権の弱者切り捨て政策原発政策対米追従姿勢に話が発展していく》重要な対談。特に、福島で起こっていること、「子供達の『X年後』の現実」…改めて、怒りが湧きます。

   『●「津田敏秀教授が「甲状腺がん多発は
      原発被曝と関係ない」派に反論」…ヒトデナシな核発電「麻薬」中毒者

 「忖度」まみれ、オトモダチ「好優遇」まみれなデンデン王国「裸の王様」アベ様ら。議事録からは抹消・「廃棄」されているのかも知れないが、次のように、大見得・啖呵を切りました:

   『●「日本を守ってくれる人」って、アベ様は 
      「破壊している人」なんですが! 一体何を「記念」した小学校?
    「《私もも一切この認可にも、あるいは、この国有地の払い下げにも
     関係ない」「私やが関係していたということになれば、間違いなく
     総理大臣も国会議員も辞めるということははっきりと申し上げて
     おきたい》と大見得を切りました

   『●詐称『悪魔の証明』が証明…室井佑月さん
     「さあ、どうする安倍首相。辻元さんは疑惑を払拭できたぞ」!
   『●アベ様の「森友」質問ブチ切れに「忖度」して強行採決
         …「質問権の侵害…言論封殺…国会の自殺行為」
   『●制御不能な「確実にバレる瞬間まで嘘を通そうとする、
           気合の入った嘘つき」な取巻き達と「裸の王様」

 この間、次々に悪法の審議が進んでいる…:

   『●「森友劇場に現を抜かす間にも…天下の悪法
      と言っても過言ではない様々な法律の審議が着々と進んでいる」

 今、倒せずして…、今、「辞任」させずして、いつやるのか? 今が、その秋だ。

   『●アベ様、「総理大臣も国会議員も辞める」という
        大見得・たんかを実行すべき秋、その責任を果たすべき秋


 山本太郎氏をもっと引っ張り出して、室井さんが《「それ、燃えない」》という話もマスコミで喋ってもらわないと。マスコミは一体何やってんだ? 権力の監視、批判…矜持ある報道機関は無いのか?

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http://lite-ra.com/2017/04/post-3095.html

室井佑月連載対談「アベを倒したい!」 第4回ゲスト 山本太郎(後編)
室井佑月が「太郎ちゃん、安倍さんを倒して」と陳情! 山本太郎が本気で語った安倍政治を乗り越える政策論とは?

2017.04.21

     (山本太郎と室井佑月が安倍政権について語る)

 山本太郎議員をゲストに招いてお届けしている室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」。前編では、森友問題に対する室井の怒りが炸裂、ヒートアップしたが、後編では一転、山本太郎議員が安倍政権に「正攻法で対峙したい」と経済政策を語り始める。この意外な展開に、「なんか燃えない」と不満を漏らす室井。しかし、そのベースにある国民の生活への真摯な思いを聞いて、再び議論は白熱。安倍政権の弱者切り捨て政策や原発政策、対米追従姿勢に話が発展していく。
 メディアで報じられているトリックスター的な印象とはまったく違う、2人の本気の思いを対談を通じてぜひ感じ取ってもらいたい。(編集部)

……………………………………………………………………………

山本太郎が正攻法で闘う宣言、国民生活を守る経済政策を主張

室井 さっき(前編)は安倍さんがいかに狡猾で強いかという話になっちゃったけど、そういう意味でも、森友学園問題って安倍さんを倒す千載一遇のチャンスじゃないかと思うんです。これだけでたらめな政治の私物化の材料が次々出てきて……。これで倒せないようなら、野党を嫌いになるかもしれない。
山本 たしかに、森友問題はまだまだ疑惑が解明されていませんから、これからの追及では、政権に決定打を浴びせることができる展開もありえます。他にも、さっき言った加計学園問題など、安倍政権は身内に利権をばらまく体質がある。それは継続して追及していかなくちゃいけないと思っています。ただ、僕はそういうスキャンダル追及とは別に、安倍政権とは正攻法できちんと政策を批判したいという思いもあるんですよ。

室井 太郎ちゃんから「正攻法」という言葉を聞くのは意外だけど、具体的にはどういうものなんですか?
山本 生活に密着した問題をきちんと訴えていくということです。先ほどもお話しましたが、共謀罪や原発、TPP、憲法改正、安保……そんなことを言われても、国民の皆さんには遠い問題に感じて伝わりにくい。しかも、うちは小さいグループですから、質問時間もかなり短く、くわしく説明できる時間がない。ですから僕らがするべきことは身近なことをどれだけわかりやすく、この国に生きる人々に簡素に伝えることができるか、です。いちばん距離が近く感じられる問題は、生活に関係することだと思います。
 たとえばアベノミクスの「第一の矢、第二の矢」がありましたよね。第一の矢は金融緩和、そして第二の矢は財政出動ですが、安倍政権では本当に必要な部分に第二の矢がしっかりと実行されていません。金を刷りまくったのなら(実際には口座の数字を増やすだけですが)、その金を使って、保育や教育、福祉など今までコストとみなして切り捨てられていた部分にどんどん充てていかないといけなかった。逆にいえば、そういう部分がいちばん伸びしろがある分野ですから、成長産業になりえる、って話なんです。国の本気が見えれば企業の内部留保も設備投資などで使われると思います。これは我々が強く訴えるべきです。


室井が山本の持論展開に「それ、燃えない」とクレーム

室井 え〜、でも、それって、アベノミクスの国の借金をどんどん増やした部分は認めるということじゃないの?
山本 1000兆円を超える借金に加えて、また借金か!と、ツッコみたい方もいらっしゃるでしょう。そういった「借金がヤバい」、という擦り込みは、増税を進めたい財務省の煽りとマスコミのお手伝いが功を奏しています。国が持つ借金を、人間の人生の80年くらいに当てはめて、とにかく早く返さなきゃと誘導されています。国は何百年、何千年も続く訳ですから、返済に関して、長いスパンで健全化を達成すればいい。しかも、借金している先は、国内。日本には、ギリシャと違って中央銀行もある訳ですから、おカネをつくって借金をなくすこともできます。ギリシャのようにはなりようがない。
 もちろん、「無限に」ではありません。でも、いまは、景気をよくするために、大胆にやるべきです。
 安倍首相のやろうとしていたことは、本来、リベラル派がやらなければならなかったこと。それを極右に先を越された。無からおカネを大胆につくって大胆な財政出動をセットにして、きちんと国民が生きることができるインフラを整える。それこそが景気を回復させ、雇用の拡大に繋がります。そのためには、従来の公共事業とは違うかたちで、大胆にやる決意と行動を解りやすく世界に示すことが重要だと思います。

室井 たしかに、経済政策でリベラルは安倍政権にお株をとられちゃったという話はよく聞きますよね。本当は、リベラルが財政出動を肯定して、それを社会福祉や富の再配分に使うことを主張しなくてはいけないのに、民進党は財務省のいいなりで増税と緊縮政策に走って、国民にそっぽを向かれてしまった、と。
山本 そうなんです。ですから、これからのリベラルの合い言葉は、「反緊縮」。金融緩和と財政出動をセットで、大胆に、本当に意味のある公的事業に使うことを主張していかなきゃいけない。
 安倍政権は大企業優遇や箱モノの建設など従来型を継承しています。例えば、リニアに3兆円とか。そこから豊かになるのは、一部の人々です。もっと大胆に、人々の生活に密着した問題に光を当てる必要があると思います。

室井 わかるけど、でもそういう話って、なんか燃えないんだよなあ(笑)。
山本 私の説明が下手なうえに、長過ぎたからですね(笑)。こういうことをもっとわかりやすく短く、リアルに話せるようになりたいんですよね。例えばいま、社会問題になっている奨学金。これはリニアと同じ財政投融資から6兆円引っ張ってきているんです。
 財政投融資の原資は国債ですから、国が銀行から借りているんです。その6兆円を、日本学生支援機構が、多くは有利子で学生に貸し出す。学生から利息を取って、利息を財投に戻す。事実上、金融機関などへの返済を学生にさせることになる。元々、奨学金の原資、金を引っぱってくるところが間違っている、って話しなんです。学生が返済に苦しむ一方で、利息や延滞金で金儲けをしている人がいる。そうした説明をもっと簡単に伝えることができたらいいと思っています。
 加えて、私が総理なら、学生支援機構の6兆円を日本銀行に買い取らせて、チャラにします。
 対象者は20代前半から後期高齢者までの約270万人。もちろん学生だけでなく、保育所も、医療も、介護も、自己負担が多すぎる部分への施策が、少子化対策にも、個人消費の押し上げにも、雇用の増加にも繋がります。それくらい大胆なことをやらないと、国の将来はありません。

室井 いや、だからわかるんだけど、燃えないんだって(笑)。いくらリアルに話しても、地味だからねえ。いまの太郎ちゃんの話聞いて、国民が食いつくのかなあ。“魅せる”って難しい。
山本 ご清聴ありがとうございました。説明も長くなりますし。いまの説明に加えてあと5分欲しいところです(笑)。でも、与えられた時間でコツコツ主張していくしかない。僕はこの道に進んで4年目ですが、世の中は変わっていない。自分の変えたい部分も変えられていない。国会議員は約700人。僕はそのうちのひとりです。そう簡単にいかないのは当然ですけど、続ける以外に、方法はないと思っています。ちょっとずつ交渉しながら、一歩でも数ミリでも進めていくしかないんです。そのためには、みんなの生活が豊かになるような政策を提示しないと、支持は得られない。支持を得られなければ、実現もできない。


住民同士を対立させる安倍政権の原発被災者切り捨て政策

室井 でも、私としてはやっぱり、太郎ちゃんの原発や憲法への思いも聞きたいんですよ。
山本 その思いは変わっていないですよ。原発事故が起こった頃は民主党政権でしたが、政治全体への不信感が募り、我慢できなくなったところが僕の出発点です。事故から6年が経ち、議員生活も3年は過ぎました。でも議員になったからといって何か物事が動いたかといえば、何も動かせていないのが現実です。いまも原子力非常事態宣言のまっただ中ですしね。何も終わっていないし、終わり方もわからない状況のなかで、いちばん隠されている部分である事故の影響が、必ず何かのかたちで現れているはずなんです。そのひとつが、福島の子どもの甲状腺がんの多発です

室井 がんやその疑いのある人数が185人になりましたね。
山本 本来、100万人に1人の割合だと言われていたのに、この数はおかしい。福島県の検討委員会は一貫して被曝の影響は考えにくいとしていますが、これが原発の影響じゃなかったら、じゃあ福島特有の風土病なんですか、と。そこを解明するためには同様の調査を西日本でもする必要があります。何度も総理にも求めていますが、逃げの一手です。それを明らかにすると原発自体も進められなくなる。最大の急所なんです。それと平行して、住民たちは選択することも許されていない。選択する権利とその補償が与えられていない。一方的に「安全です」、これで終わり。故郷に残った、戻った人にも、一生涯の医療支援、保養など補償が必要です。移住する人にも医療支援や住居の支援は当然なされるべきなんです。加害者は、東電と国です。勝手に線引きして、「いつまで甘えるつもりだ」と言う態度が、加害者に許されるなら、無政府状態です。

室井 今春には避難区域も解除されて、自主避難の人への支援もどんどんなくなっていく。しかも避難区域には放射線量がすごく高いところもあるのに、そこに住民を強引に帰還させようとしているわけでしょ。しかも子どもも当然含まれるんですよ。原発事故直後に「子どもたちがいるから“安全”」なんて言ってた人がいたけど、今度もまた子どもたちが安全神話に使われる。
山本 年間20ミリシーベルト以下で帰還、は犯罪です。年間5ミリで放射線管理区域ですから。
 しかも帰還の要件は、空間線量。空間線量で問題なくても、土壌汚染を測ると放射線管理区域ってざらにありますから。事故を起こしておきながら、それでも帰れ、住め、って国、世界では日本が初めてです。新しいチャレンジだ、って官僚も平気で言いますから。「国民の生命財産を守る」と言うなら、予防原則に立つのが、常識です。少なくとも、事故前の基準を緩和するなら、年間20ミリ以下でも安全と言う科学的根拠が必要です。本当に重大な問題です。安倍政権は“すべてをゼロ”にしようとしている。将来を諦めているからこそ、いまのうちに全部やっちまえ、というスタンスになるんでしょう。専門家でさえ、近い将来、大地震が必ずくると宣言しています。そのなかで、原発の再稼動は、一か八かでしかありません。事故っても、次はもっと上手く隠せる自信があるんでしょう。すでに基準も日本オリジナルですし。再稼動や、原発輸出を止めるのは、いまの国会のパワーバランスでは、難しい。野党が弱すぎる。安倍政権の思いのまま、つまりはその支援者である、大企業の金儲けが優先されます。

室井 安倍政権による“新しい安全神話”ですね。
山本 間違いないです。数日前も、僕のところにいわき市と中通りからお母さんたちが来ていました。事故後、避難されなかった方々です。そうしたなかで自分たちで計測し、汚染地図をつくって行政と交渉しながら、除染する地域を拡げるよう活動されています。お母さんたちの心配は、今年の春で除染がほぼ終わること。今後は、自治体がガラスバッジ(個人線量計)の情報を集約して、その結果から高い汚染がありそうだ、となれば除染する“フォローアップ除染”に移行する。
 ではガラスバッジの情報を集約する期間、その間隔は? と聞いても、それぞれに任せている、と。結局、そんなマメな作業を自治体がコンスタントに出来るはずがない。やる自治体、やらない自治体で当然、格差が生まれます。
 国は、何かあっても自治体の怠慢だった、と逃げられる、「丸投げ方式」を採用した訳です。
 もともと追加被曝は年間1ミリシーベルト以下に抑えないといけないものなのに、福島では年間20ミリシーベルト以下。「安全」なんてほとんど根拠がない話で、もはや洗脳ですね。いちばん、科学的でないアプローチを続けているのが、国です。


安倍首相は「植民地政府の代表」にすぎない

室井 それで住民同士を対立、喧嘩させるんですよね。「子どもたちの健康を考えたい」という人と、「安全だ」と信じる人を対立させるんです。「風評被害だ」と言って消費者と生産者を喧嘩させるような構図と同じ。でもすべては国がつくり出した対立じゃないですか。そういう一連の構図を、新聞やテレビはほとんど報じない。
山本 生活保護バッシングも同じですね。生活保護受給者をバッシングしているのは、本当は生活保護の受給資格があるくらいの収入層が多いと聞きます。俺はギリギリで頑張っているのに、なんだあいつら甘えやがって、って話ですかね。生活保護を受けるべき人がどれくらい受けているかを見るのが、「補足率」ですが、2割から3割程度しか受けていない。政治家であるなら、建前でも補捉率は100%を目指す、と言わなければならない。たった1つのセーフティーネットですから、当然です。ようは、社会保障費の削減を、対立構造をつくって、達成しようとする非人道的なやり方が行なわれているんです。選挙のマニュフェストに書き込むくらいの連中ですから。不正受給を無くして、生保をもっとスリムにするという趣旨を。

室井 実際は日本の生活保護の不正受給って、すごく少ないんでしょ。完全にスケープゴートだよね。
山本 ご存知の通り、生活保護の不正受給は1.8%。もちろん、不正は正されるべきですが、98%は適正に受給されています。身近なターゲットをつくって、弱い立場同士、叩かせる。権力者は上手にコントロールしますね。実際に叩かれなければならない存在から目をそらせるために。そうすることによって、大企業が儲けた分に見合った、充分な税金を払わないで済むシステムがドンドン大企業側に有利に改良されることには目が向かなくなる。第二次安倍政権、最初のお仕事が生活保護費の引き下げです。

室井 でも金持ち優遇は全然問題にならない。それどころか選挙でもアベノミクスを連呼しているし。確かに安倍さんはキャッチーな言葉を流すのが上手いんですが、マスコミも尻馬に乗って、その宣伝を盛んにするのって、間違ってますよ。
山本 昨年の夏の選挙のとき、安倍さんが地方凱旋している様子をテレビで見たんですが、「アベノミクスというエンジンをくるくるくるくる回して、アクセルを吹かして!」みたいなことを言っていて。いやいや、何も言ってないやん! と思わずテレビにツッコんでしまいました。でも、雰囲気は伝わるし、キャッチフレーズや、印象だけの演説って反論するのに時間がかかる。1つひとつ嘘をめくる必要がありますから。ツッコミどころしかないので、絞るのが大変です。これで政権とってるって、すごい話ですよね。考えてみたら、安倍首相は植民地政府の代表ですからね。

室井 2015年の安保法のときの太郎ちゃん、すごかったですよね。「第3次アーミテージレポート」を突きつけて。
山本 アメリカの言いなりじゃないかよって話です。

室井 でも、テレビは日本がアメリカの奴隷状態になっているというような本質的なことを一切言わない。この前、トランプさんの娘のイヴァンカさんがトランプさんに、「安倍はすごい賢いから、信用しなよと言った」という報道がありましたよね。あれって、海外の記事には、「クレーバーボーイ」って書いてあったの。要は、犬や子どもに対する言い方でしょ。
山本 「グッドボーイ」のいち段階上のレベルですよね。「パパ、あいつ、使えるよ! あいつだったら何でも言うこと聞くよ」というニュアンスなのに。

室井 でも日本のワイドショーは一斉に、「イヴァンカさんが後押しした!」と報じていました。
山本 いままでもそうですが、アメリカ側に都合のいい法改正の数々を見ていると、「全部さしあげます」という気概を感じますね。米国にとって、植民地として唯一成功した国なんだなあ、日本は、と実感しますね。


政界と芸能界、どっちが怖い? の質問に、山本太郎は…

室井 最後に、すごくくだらない質問だけど、芸能界と政治の世界、どっちが怖い世界だと思ってます?
山本 僕は、ハラスメントの頂点は芸能界だと思っていましたが……。でも、ここ(政界)が総本山でした。社会問題のすべてが、政界に凝縮しているという印象さえある。政治に進んでからは、あの芸能界からも避けられてる感じですからね。昔、ドラマで共演したメンバーが毎年、忘年会をやるんですけど、あるときから呼ばれない。去年は情報聞きつけて「うぇーい」って、いきなり行ったらビックリしてましたけど(笑)。一緒に飲んでる写真がネットに出た時点で、マズいレベルなんでしょうね。直接企業名を上げて国会でモノ言ってますから、当然でしょうけど。
 室井さんは、本当に勇気がありますよね。

室井 テレビに都合よく使われているんだと思います。安倍さんが創りだした“反論や疑問が言えない空気感”に対し、息抜きというか アリバイづくりのように使われているのかなとも思うこともあります。みんな守りに入って、自分のことで必死だけど、わたしが守るのは息子のことだけだから。
山本 なるほど。マスコミは決定的なダメージを安倍政権に与えるわけにいかないと自粛し忖度していますからね。でも、マスコミの意向がどうであれ、室井さんはそんな思惑を跳ね除けるくらいの爆弾を落とし続けているじゃないですか。

室井 この連載でも、何度も言ってますが、本当はもう、こんな闘いやめたいんですよ。
山本 じゃあ、うちから選挙に出ませんか?(笑)

室井 それじゃ、真逆ですやん。ずいぶん前に、同じようなことをあなたのところの、親分にも言われました。でも、あたしはそういう女じゃないし、そんなことよりガールフレンドの一人にしてくれと言い返しました。豪快に笑われちゃいましたけど(笑)。


※この対談は3月に収録されたものです。

山本太郎 政治家、俳優。1974年兵庫県生まれ。高校1年で芸能界入りし、以降、人気俳優として数々の映画、ドラマで活躍。 2011年3月の東日本大震災、福島第一原発事故を契機に、反原発活動を開始。2013年7月の参議院議員選挙に東京選挙区から出馬し当選。以降、原発問題、被曝問題、子どもと放射能、TPP問題、労働問題、社会保障制度改革、表現の自由に関わる問題等に特に深く関わり活動中。現在、自由党共同代表。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『あさイチ』(NHK)などに出演中。

(編集部)
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●「平成の治安維持法」で、室井佑月さんや斎藤貴男さん「なんて、最初から一般人扱いされないだろうしな」

2017年03月08日 00時00分31秒 | Weblog


リテラの対談記事【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第3回ゲスト 斎藤貴男/室井佑月が斎藤貴男と「共謀罪」を徹底批判!「安倍政権に逆らう人が片っ端から逮捕される」】(http://lite-ra.com/2017/03/post-2963.html)。

 《●共謀罪が成立したら、室井佑月も摘発対象になる?》。

 まず、この対談シリーズの第1回目と第2回目は、以下の通り。

   【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第1回ゲスト 金子勝(前編)
    室井佑月が経済学者・金子勝に訊く! このまま安倍政権が続いたら
    何が起きるのか、その恐怖のシナリオとは?】
     (http://lite-ra.com/2017/01/post-2849.html

   【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第1回ゲスト 金子勝(後編)
    右傾化するテレビで孤立、室井佑月が金子勝に弱音!
    「どんどん仲間がいなくなる」「右のやつらが羨ましい」】
     (http://lite-ra.com/2017/01/post-2850.html

   【室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第2回ゲスト 山口二郎
    室井佑月が野党共闘を支える政治学者・山口二郎に
    「ワイドショーが野党を取り上げたくなる過激作戦」を提案】
     (http://lite-ra.com/2017/02/post-2907.html

 「平成の治安維持法」なんて要らいない。「テロ等準備罪 必要46%」というような法案なのか?」…という異常な状況。(室井佑月さん)「なんで2週間余りの祭りのために、大切な人権を蔑ろにされなきゃならないの?」、それに尽きる。
 《私と斎藤さんが異常なわけじゃないんですね》!? 当たり前です。アッチが「異常」。

   『●室井佑月さん、「なんで2週間余りの祭りのために、
           大切な人権を蔑ろにされなきゃならないの?」
   『●ダークな五輪のために「大切な人権を蔑ろに」!? 
       …なぜならニッポンは人治主義国家、アベ様王国だから
   『●「「共謀罪」の必要性強調 首相「東京五輪開けない」」…
              ならば、共謀罪も不要だし、五輪開催権も返上を
   『●「閣僚の適格性に関わる重要問題」連発…
      そもそも「テロ等準備罪 必要46%」というような法案なのか?
   『●「瑞穂の國記念参院予算委員会」は酷かった…
       「平成の治安維持法」を目指す「裸の王様」の取り巻きの醜さ

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http://lite-ra.com/2017/03/post-2963.html

室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第3回ゲスト 斎藤貴男
室井佑月が斎藤貴男と「共謀罪」を徹底批判!「安倍政権に逆らう人が片っ端から逮捕される」
2017.03.04

 東京新聞の「大波小波」でも取り上げられるなど、各方面で大きな反響を呼んでいるこの連載対談。ところが、そのことを当の室井佑月に報告しようと電話したらいきなりこんな苛立った声が返ってきた。

   「反響があったとか喜んでる場合じゃないって! そんなことより
    共謀罪やばいよ、なんとか止めなきゃ!」「次は、共謀罪の恐ろしさを
    みんなにわかりやすく伝える対談やるよ!」

 そう、室井はあいかわらず本気なのである。ということで、今回は、共謀罪が初めて法案提出されたときから、その危険性を訴えてきたジャーナリスト斎藤貴男氏をゲストに迎え、安倍政権が今国会で成立をもくろむ共謀罪の問題点を、一から検証することにした。
 対談では、共謀罪がいかに危険で不要なものであるかはもちろん、その背景にある安倍政権の意図やマスコミの現状に対する鋭い指摘も飛び出した。今回もぜひ刮目して読んでいただきたい! 

(編集部)
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●共謀罪が成立したら、室井佑月も摘発対象になる?

室井 あたし、安倍政権に対しては怒りだらけなんだけど、いまはやっぱり共謀罪のことが一番心配なんですよ。共謀罪はこれまで合計3回も法案が国会に提出され、その度に廃案になっているけど、今回は提出するのが安倍政権でしょ。国民を騙して強引に成立させかねない。政府は法案の名前を「テロ等組織犯罪準備罪」に変えるなどと言ってましたけど、基本は共謀罪と同じなんでしょう。

斎藤 同じというか、共謀罪そのものです。共謀罪は犯罪を犯す以前の、相談や計画、準備段階で処罰可能という法律で、何の犯罪も犯していないどころか、その危険性がなくても適用できる。捜査当局が恣意的に運用すれば、極端な話、誰でも自由に逮捕できるとんでもないシロモノなんです。最近になって、対象の犯罪を原案の676から277に絞り込む方針を打ち出したけど、完全に目くらまし。しかも当初は“テロ”を前面に押し出していたけど、その後明らかになった条文案では“テロ”と表記がなくなっている。本質はまったく変わっていません。国民をバカにするのにも程があります。

室井 『東京新聞』がすっぱ抜いた条文案ですね。それによれば、テロの文言がまったくないどころか、テロ以外の犯罪が6割もあるってことも分かった。結局、安倍さんはテロという言葉を最大限に利用しただけだし、普通の市民や企業も対象になる可能性はますます高まってきましたよね。斎藤さんの本『「共謀罪なんていらない?!」──これってホントにテロ対策?』(共著/合同出版)に書いてありましたけど、共謀罪って“心の中を取り締まる法律”、憲法の思想・良心の自由をふみにじるものですよね。でも、具体的には、どんなことが起こるんだろう?

斎藤 たとえば、この対談のタイトルって「アベを倒したい」でしょ。極端な話、共謀罪が成立したら、それだけでも“テロリスト”扱いされて室井さんも僕も逮捕される可能性があるということです。権力側が「こいつら、批判ばかりしていて気に食わない」と思ったら、この法律を使えば簡単に犯罪者にできちゃう。なにしろ防衛大臣だった石破茂さんが「デモはテロ」と公言できてしまう政権なんだから。

室井 マジか。まあ、政府は「一般人は対象にならない」と言ってたけど、きっと私や斎藤さんなんて、最初から一般人扱いされないだろうしな(笑)。

斎藤 その「一般人は対象にならない」というのが最大のインチキなんだよね。多くの国民がこれに騙されて、共謀罪に関心を払わなくなっている。だから弁護士さんたちた僕はよくこんなたとえを出して警告しています。「飲み屋で上司の悪口をみんなで言っていて、『ぶっ殺してやろうか』という話になればそれも対象になるかもしれない」と。

室井 え〜、それはいくらなんでもリアリティがないよ。みんな「まさか〜」と笑って終わりになっちゃいますよ。だったら、沖縄高江のヘリパッド反対運動の例とか出したほうがいいんじゃないですか。この運動の中心的な役割を担ってきた山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)は逮捕されて、微罪なのにもう4カ月以上も不当勾留されているでしょ。いまでもそんなことが起きてるのに、もし共謀罪が成立すれば、高江の反対運動にかかわっている人たちは全員、“犯罪集団”“テロ集団”ってことにされて逮捕されてしまう。そういう権力の恐ろしさを伝えたほうが説得力があると思う。

斎藤 そうも思わないでもないけど、逆なんじゃないかな。いまの状況だと、沖縄の基地反対の例をもち出しても、誰も自分事とはとらえてくれない。本土の人間の多くは沖縄の基地問題を“特殊な例”として片付けてしまってるから。悲しいことだけど、でも、これは共謀罪についても同様で、国民の多くは権力に批判的な“特殊な人”だけが対象で、“普通に生活していれば逮捕されない”と思っている。でも、そんなことはないんだよ。さっきも言ったように、共謀罪の対象となる犯罪は絞り込んだいまも300近くあって、そのなかには、薬物とか詐欺とか偽証とか通貨偽造とか、テロとなんの関係もない犯罪が6割もある。最初は限定的に運用されたとしても、一旦成立したら、いくらでも広げていくことができる。誰もが摘発の対象になり得るんです。ハードルは可変的なのだから、それを訴えないと。第一、世の中はこれからもずっと続くんだよ。いまの安倍さんみたいな総理大臣が、独裁的な権力を振るう時代がくるなんて、たとえば30年前に誰が本気で予想した? で、今は確かに安倍さんが戦後最悪ではあるけど、これからもっともっとトンでもないのが出てこない保証はひとつもない。国家権力というのは必要悪だと思うけど、どこまでも暴力装置なのだから、よほど厳しく縛りをかけておかないと。それが立憲主義の精神です。

室井 法律名に「テロ等」って「」がついてるから、拡大解釈する気満々だとは思ってたけど、いろんな犯罪が対象になるんでしょ? そういえば、LINEやメールで同意しただだけでも、共謀罪が適用されるという話も出てましたけど、本当なんですか。たとえば、過激な友人が「こうなったら官邸に突撃しよう」とかいうLINEやメールを送ってきて、つい「いいね」と返事しちゃったら、つかまっちゃうとか。

斎藤 法務大臣も答弁で認めてからね。同意どころか、LINEだったら既読スルーしただけでも逮捕される可能性がある。それと、共謀罪の処罰対象を「組織的犯罪集団」に限定するなんて言ってるけど、それを決めるのも捜査機関でしょう。解釈次第でどうにでもなる。事実、法務省は2人以上で団体とみなされると言ってるし、最近、国会では処罰対象について、「普通の団体」が“性質を変えた場合”「組織的犯罪集団になりうる」という政府統一見解を示した。これって、市民団体や労組なども捜査機関が“性質を変えた”と言えば、いつでも「組織的犯罪集団」として共謀罪が適用されるということ。実際、彼らの立場ならそれはそうでしょ。テロを起こす前から、わざわざ「我々はショッカーです」とか、「黒い(ブラック)幽霊団」ですとかの看板を掲げる奴は珍しいわけで。で、「デモはテロ」と考える人たちなんだから、沖縄の基地反対運動や安保法制デモに参加した人が逮捕されない方がおかしいことになる

室井 しかも、一旦、捜査対象になったら、盗聴もやりたい放題になるんでしょ? 気に入らない人間をとりあえず逮捕して、それ以前に盗聴していた内容を使って微罪でも何でもデッチ上げられる。

斎藤 昨年の刑事訴訟法改正で、警察は盗聴し放題になったからね。あらゆる犯罪で、電話会社の立ち会いがなくても自由に盗聴できるようになった。それと、逮捕されなくても、共謀罪があるというだけで萎縮効果を生むというのが大きい。共謀罪の怖さは、そうした恐怖が空気となって常に漂い、お互いを監視しあい、人間不信に陥らせることです。特高警察が支配した戦前の日本や旧ソ連のKGB、旧東ドイツのシュタージ、いまの北朝鮮のような社会になるってことです。要するに思想や言論を処罰したい。それに尽きる

室井 安倍さんが共謀罪に固執している目的も、最初はテロ対策なんて言っておいて、結局は条文案から削ってしまった。大嘘だった。本当の目的は自分たちにとって都合の悪い集会やデモ、話し合いを一切させないことその対象はテロリストではなく、“政権に逆らう人なんだよね。


●安倍首相の説明は嘘だらけ! 本当の狙いは政権批判封じ

斎藤 もともと、共謀罪の本質は治安維持、つまり権力に従わない国民を片っ端から“犯罪集団”と認定し、権力を批判する人々を排除しようとするものだからね。しかも、共謀罪は安倍首相ととくに相性がいい。安倍首相の究極の願望は“国民が一丸となり同じ方向を向くのは当然という全体主義だから、それを実現するには格好の道具になる。

室井 しかも、安倍さんって、こんな悪法でも手柄だと思っていて、「歴史に名を残したい」とか言ってそうだしな(笑)。

斎藤 安倍さんの御母堂・洋子サマによると“晋三は宿命の子”らしいからね。「文藝春秋」のインタビューで、そう話しているんだけど、いやはや、なんともはや、マンガだね、ありゃ。俺も『巨人の星』が好きで、“宿命のライバル”とかカッコイイとは思うけど、本気でマンガの主人公になりきった気になるほど幼稚じゃない。

室井 だったらうちの息子だって宿命の子ですよ。ていうか、母親にとって自分の子どもは全員が宿命の子です! それを首相の母親が公言するなんて、本当に恥ずかしい。あ、つい熱くなっちゃったけど(笑)、とにかく、怖いのはこんなとんでもない法律が通りそうなこと。安倍さんに「テロを防ぐためには絶対必要」と言われて、信じちゃう人も結構いたもの

斎藤 テロを取り締まる法律なんて、現時点でも事前の段階で取り締まれる各種予備罪のたぐいが合計58もあり、凶器準備集合罪のような独立した罪とあわせたら、いくらでもある。共謀罪なんて、タテマエとしたって必要がない

室井 あと、私が一番呆れたのは、安倍さんが「国際組織犯罪防止条約」という条約締結のためにはこの法律が絶対に必要で、「この条約を締結できなきゃ、東京五輪を開けないと言っても過言ではない」って言ったこと。本当に五輪開催に必要なら、共謀罪をつくるんじゃなくて、オリンピックを返上したほうがいい。ていうか、共謀罪がなくても東京が開催地に選ばれているんだから問題ないはずでしょ? 

斎藤 あれはまったくの嘘です。国際組織犯罪防止条約を結ぶ187の国・地域のうち、締結に際して国内で共謀罪を新設したのはノルウェーとブルガリアのたった2カ国だけ。日本政府はこれまでに、国連のテロ対策関連条約のうち主要な13本を批准し、日本の国内法ではすでに57もの重大犯罪について「未遂」の前段階で処罰できるように整備している。日弁連も共謀罪立法がなくても国連条約締結は可能だと指摘しています。

室井 でも、そういうこと、全部ごまかしているでしょ。金田(勝年)法務大臣の国会でのめちゃくちゃな答弁、あれ何よ! ハイジャック目的の航空券予約は「現行法で対処できない」なんて言ってたのに、民進党の福山哲郎議員の追及で、現行法の予備罪が適用できることがバレたり。

斎藤 あの人には政治家の以前に、そもそも社会人としての資格も能力も著しく欠如しています。

室井 しかも金田大臣があまりにアホで答弁にすら答えられないから、「法案については成案を国会に提出した後、法務委員会で議論を重ねるべき」なんて文書まで出したでしょ。後になって撤回したけど、事実上の野党質問封じ、議論封じ。何やってんだか。でも、こんな調子でも、成立しそうだから怖いよ。

斎藤 安倍首相の辞書には以外の項目が載っていないから。安保法制成立前の2015年4月にアメリカ議会で「一般に海外派兵は認めらない」なんて言ってたけど、これも大嘘だった。TPPも“絶対反対”って言っていたのに強行採決で成立させた。こうした安倍政治に国民はすっかり慣らされてしまって違和感さえももたないことも大きな問題だと思う。こんなことしてると、共謀罪どころかもっとひどいことになると思うよ。電話やネットだけでなく、事務所や団体に忍び込み、盗聴器や監視カメラを取りつけての監視活動さえ行われる危険性もある。これは実際に警察内部の検討会で「会話傍受」という名前で提案されていることなんだ。

室井 もうすでにやっていませんでしたっけ? 昨年8月に、大分県警別府署員が民進党関連建物の敷地内に無断で立ち入って隠しカメラを設置して、問題になったことがありましたよね。

斎藤 建物外に取り付けることはもうやっているけど、それを室内にまで広げようとしている。とにかく、僕たちが考えるよりはるかに異常な世界になっている。

室井 もう、どんどんそうなって来ていますよ。この異常な世界に何か対抗手段はないんですか?

斎藤 まず第一に、とにかくこんなバカげた政権をさっさと退陣させ、共謀罪だけじゃなくて、盗聴法だの“マイナンバー”──ホントは「スティグマ(奴隷の刻印)ナンバー」だけど──だの顔認証機能付の監視カメラ網だのといった、人間を支配するための悪法や仕組みを根絶する。で、そこまで持っていく過程で一番大切なのは「気にしない」ことでしょう。気にしはじめたら、たとえば「政権批判なんて一切やらないほうがいい」となってしまうけど、「やったら捕まるかもしれないけど、それは悪いことではない」という意識をもつこと。空気を忖度しない、これに尽きると思う。逮捕されても、「自分は正しいことをして捕まったんだから、何も問題はない」と思うしかない。少なくともこの場合は、ひとりよがりではないよ。悪法でも法は法、かもしれないが、こんなものは人間の真実なんかじゃない人間にはやっていいことと悪いことがあるんだ

室井 それは斎藤さんがジャーナリストで、権力批判をするという当然の責務をもっているから。でも多くの一般の人は、やっぱり怖いよ。心のなかを覗かれて、会話を盗聴されて、ちょっとでも気に入らないと逮捕されて。それで新聞に実名が載っちゃうんだよ。サラリーマンだったら解雇されちゃうかもしれないし。

斎藤 僕だって積極的に捕まりたいとは思わないよ。でも今のような絶望的な世の中で、無理をして保身に汲々してもひとつもいいことない。何よりも、支配されるだけの生き物に成り下がったら、人間はオシマイじゃないですか。だから開き直るしかないと思っている。

室井 安倍さんに寿司に誘われて喜んで食べているメディアの人たちは、保身しか頭にないみたいだけど(笑)。


●安倍政権下で進むグローバル資本主義ファシズム

斎藤 メディアの体たらくは論外ですね。共謀罪は最近になってようやく反対キャンペーン的な報道も散見されるようになったけど、それだって市民運動の力に押された結果。独自の調査報道なんて、まずやろうとしない。そもそも監視社会のテーマがすごく嫌われるようになった。以前は「週刊文春」でも連載させてくれたけど、いまはメディア状況が激変した。「そんな話題は誰も興味がないから、やめてくれ」と言われてしまう。

室井 マスコミだけじゃなく、フリーのジャーナリストも変わってきてません? だって2002年の住基ネットや、2003年の個人情報保護法にしても、多くのジャーナリストが集まって反対の声を上げたけど、マイナンバー制度や共謀罪については批判の声が少ないと思う。

斎藤 そうなんだ。「斎藤さん、頑張ってください」で終わり。以前は監視社会の恐ろしさや問題点を知っている人たちが現役だったからね。古い世代の人々は戦争を体験していたり、皮膚感覚で権力の暴走の怖さをわかっていた。でも、あれから10年以上経ったいま、当時運動をしていた人たちも高齢化し、いい加減くたびれたんでしょう。そして何も知らない若者が大人になり、ネットなどで番号に慣れちゃって鈍感になっている。さっき、旧ソ連や旧東ドイツ、北朝鮮みたいなファシズムになるといったけど、共産主義ではないので、グローバル資本主義によるファシズム社会が出来上がりつつある、と言った方が正解ですね。世界的に見てもそう。新自由主義やグローバリズムというのは、巨大資本の経済的利益以外のものに一切の価値を認めない。みんなが金持ちになるというならまだしも、いまで言うところの“成長”の意味って下々の金を吸い上げて、大企業が太る=成長”でしかないんだけどね。

室井 なんでみんなそのことに気がつかないんだろう。私はこの現状を、なんとか大きく変えたいんだけど。

斎藤 それは僕もそうだけど、焦ってもしようがない。とにかくいまは自分を見失わないようにと常日頃考えている。監視社会の問題点を取材し続けてきたけど、最近は「もしかして自分のほうが狂っているのか?」と思うときさえあるからね(笑)

室井 その気持ちよ〜くわかります。世論調査で安倍さんの高い支持率が出ると、「ひょっとして私が間違っているの?と思うことがあるもの。でも潮目が変わるときはきっとくる。それにマスコミにもやっぱり期待したいんです。私は1970年代生まれですけど、その世代の文系の最高峰って、朝日新聞社の記者になるというイメージが強い。頭が良くて正義感もあって。だから「金儲けがすべてじゃない。金儲けばかりを唱えている人間は恥ずかしいという社会正義の観点があった。それを取り戻して欲しい。

斎藤 確かに僕と同世代か上の人で、記者になったような人たちは、「戦争のない世の中をつくりたい。平等な世界をつくりたい」という動機が主流だった。僕なんかはその中では、最も志の低い記者でした。

室井 私の本業は、物書きじゃないですか。物書きってみんな、戦争反対とか、権力を疑うという共通の意識があると思ってた。新聞記者やテレビに出ているコメンテーターも含め、権力批判するのは当たり前だと思っていました。でもそうではなく権力をヨイショして、平気で戦争に協力しようとする人がどんどん増えて。逆に、誰も「戦争反対」って声を上げなくなってしまって。そんなのって、鼻から牛乳を飲むくらいおかしなことでしょ? こんな状況でヤバイくない? それとも、私がおかしいの? わからなくなっちゃう。

斎藤 でもちょっといい話がある。昨年12月6日に保阪正康さんの『ナショナリズムの昭和』(幻戯書房)の出版記念パーティーがあって、文藝春秋の松井清人社長が発起人代表として挨拶した。そこで松井社長は「“右翼的独善”の象徴みたいな政権に対して、正面からモノを言いにくい。(メディアが)異を唱えようとしない現状はおかしい」と発言したんだ。同じく文藝春秋の元専務だった半藤一利さんも、「昔は“反動”と言われていた私が、今や極左と言われている。世の中、どうなっちゃったの?」だって。あの文藝春秋の社長や元幹部が、だよ。保守の代表メディアでさえも危機感をもつほどヤバい世の中ということだし、そもそも物書きやメディアが権力批判をするのは当たり前。しかもそれが商売だし特権でもあったはずだからね。

室井 そんな特権を捨てちゃういまのマスコミってバカなのかな。

斎藤 バカなんでしょう。なんてもったいない。ほとんどの職業は“お上”がどんなに酷いことをやっても、逆らわず、その枠のなかで儲けることが賢いと考えられていると思うけど、しかしマスコミと物書き、弁護士と大学の先生は、権力批判が生業なんだ。特権というか、それが責務のはずなんだけどね。

室井 でも、実際のメディアは萎縮しきっていますよね。安倍政権についてだけじゃなく、視聴者や読者のクレームやネットでの批判にも過剰に反応する。だから、萎縮させない努力しているんです。いいことを書いた記者には「よく戦った」と名前を出して褒めるようにしています

斎藤 僕も講演会で「私たち市民はどうすればいいですか?」と聞かれたら、「いいと思うメディアがあったら、ぜひ直接電話して褒めてください」と言うようにしています。マスコミはこのところ、文句ばかり言われているからね。良い報道は褒めてもらわなくちゃ

室井 『ニュース女子』(TOKYO MX)問題で、安田浩一さんや津田大介さんがMXへの出演を拒否していたのも、それはひとつの見識だと思うけど、私はテレビ局との意見が違っても、サンドバックのように批判されても、追い出されるまでテレビに出続けます。自分から「もう出演しません」と言ったら負けだと思うから。それでもし追い出されたら「追い出された! 追い出された!と言いまくる。それも作戦だと思ってる。

斎藤 それもまた見識だと思います。多様性を否定し、権力に隷属させようとするのが共謀罪の本質です。だからこそ室井さんのような存在は貴重だし、必要なんだ。

室井 じゃあ、最後にもう一度確認しますけど、私と斎藤さんが異常なわけじゃないんですね

斎藤 もちろん(笑)。でも、異常と言われても最後まで頑張って共謀罪を阻止しましょう

……………………………………………………………………………

斎藤貴男 ジャーナリスト、1958年生まれ。日本工業新聞、「週刊文春」記者などを経てフリーに。著書に『「非国民」のすすめ』、『ジャーナリストという仕事』『「マイナンバー」が日本を壊す』、「『戦争のできる国へ──安倍政権の正体』など多数。

室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『あさイチ』(NHK)などに出演中。
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