筒井康隆,新潮社(2015/4).
ハードカバーを古書で買ったのだが,2021/5 に新潮文庫入りしていた.
Amazon の紹介*****
デビュー時から天才の名を恣にしてきた筒井康隆。傘寿を超えてその進化が止まらない。
<信頼出来ない語り手>などをはるかに凌駕する <まったく信頼出来ない語り手> による衝撃の超認知症小説「ペニスに命中」。ある染色体の消滅から激変する人類の近未来を哀切に描く名品「不在」。太陽の黒点の異常増加、電子システムのダウン、「お風呂が沸きました」「バックします」等の電子音声の異常、炸裂する異常の連続を描いて捧腹絶倒の表題作。<午後四時半>を討伐に向かった男がやがて、高気圧を操る国家プロジェクトに巻き込まれていく「奔馬菌」。メタフィクションの先にある、世界初のパラフィクションに挑んだ「メタパラの七・五人」。道徳的錯乱なのか文学的進化なのか、もはや人類への挑発というしかない、すさまじい傑作10編。*****
「ペニスに命中」こそ相変わらずだな,と懐かしく読んだが,続くどれも似たり寄ったりで閉口した.81 歳時の刊行だが,著者は本当に認知症なんじゃないの,と思いたくなった.
しかしおまけエッセイ「ウクライナ幻想」はまともな文章だった.
異色は「三字熟語の奇」.18ページにわたって三字熟語が並んでいる.上に最初の7行と最後の7行をコビーした.最初は一,二,三... 以下,常識的な熟語が並ぶが,最後は創作語.順次読んで,読者それぞれが何らかのストーリーを思い浮かべることを期待されている...らしい.しかし僕は最後まで目を通すほどの律儀な読者ではなかった.初出「文学界」2012/4.
装幀が気に入って買った面もある.和田誠 1936-2019 晩年の仕事らしく,どこかとりとめがない.和田の主張に従って,バーコードが入っていないのですっきりしている.