Sixteen Tones

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「実在とは何か -- 量子力学に残された究極の問い」

2022-06-24 09:13:25 | 科学
アダム・ベッカー, 吉田 三知世 訳,筑摩書房 (2021/9).

図書館で借用.
読むべきは数式満載の専門書,ポピュラーサイエンス本は時間の無駄と思いこんでいたのが,それでは時代に取り残されると,この十年ほどで宗旨替え.
日本のこの手の本はたいてい新書だが,あちらの本は重厚長大.これも A5 版 470 ベージ.こちらの軽薄短小が科学の衰退の原因かも.

帯不要のカバーデザインだ.

Amazon の本書の紹介*****
量子論は「物質は実在しない」という。ではわれわれは存在するのだろうか? 名だたる科学者と哲学者たちが繰り広げてきた熱い論争の、知られざる展開を追う!

20世紀初頭に発見された量子力学は、世界の見方を根幹から変えた。ではそれはどんな世界なのか? その意味をめぐる議論は、「コペンハーゲン解釈」をもって正統とされる。しかしその解釈にはいくつもの問題がある。最大の謎は、世界を構成する基本物質、原子も電子も素粒子も「実在しない」という主張だ。
アインシュタインはこれに猛然と異を唱え、ボーアと激しい論争を繰り広げた。曖昧な決着のまま、長らくこの問題は問うことすらタブーとされてきた。しかしいま、実在をめぐる論争は、物理学のみならず、哲学者、数学者、天文学者など各界の名だたる頭脳を巻き込んで、熱く燃えている。
大いなる問い「実在とは何か」をめぐる熱い論争の100年をたどる知的エンターテインメント。*****

画像右はジョン・ベルによるアインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン問題の戯画化.物理学者ベルトマンの靴下の,片足がピンクなら,片足は見るまでもなくピンクでないことは分かる...ということ.なぜ分かるのか ?

この疑問に対する回答「コペンハーゲン解釈」を1行で要約すれぱ,「黙って計算しろ!」ということになる.問題を棚上げにしても,量子力学は役に立つのだ.

百年近い歴史はあるが,コペン派は自民党みたいなもので ,この本はそれに対する野党側の苦闘を描いたもの,と言えば当たらずといえども遠からず.アインシュタイン,ボーム,エヴェレット,ベルといった優れた人たちが (少なくともこの問題に関しては) 学界で相手にされなかった.もっと若い人が「量子力学基礎論」をテーマにすると,大学でポジションを得られないという時代が続いた.

この本でも,肝心の基礎論のこの問題はいまいちよくわからない.ベルの不等式を説明するためのルーレットなど,問題をかえって難しくしているのではないだろうか ?
むしろ本書は,物理屋たちのドタバタで読者を引っ張っている感がある.

著者は1984年生まれ.コーネル大学で哲学と物理学を学び,ミシガン大学で宇宙物理学のPh.D.を取得...   このテーマをもっと優等生的な物理屋が書いたらかなり違った本ができそうだが,つまらないだろう.パイロット波,多世界解釈,自発的収縮など,アンチ・コペン派の言うことはとにかく面白い !!
コメント
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