Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

京都文学賞「鴨川ランナー」

2022-06-25 08:54:47 | 読書
グレゴリー・ケズナジャット「鴨川ランナー」講談社(2021/10).

「鴨川ランナー」は第2回京都文学賞受賞作,もう一編の「異言(タングズ)」は書き下ろし.
著者は1984年アメリカ合衆国サウスカロライナ州グリーンビル市生まれ.2007年 クレムソン大学を卒業後 外国語指導助手として来日.2017年 同志社大学文学研究科国文学専攻博士後期修了.現在は法政大学グローバル教養学部准教授.

出版社の内容紹介****
「鴨川ランナー」……外国から京都に仕事に来た青年の日常や、周囲の扱い方に対する違和感、その中で生きる不安や葛藤などを、「きみ」という2人称を用いた独特の文章で内省的に描く。京都文学賞受賞作。
「異言」……福井の英会話教室を突如やめる羽目になった主人公は、ある日同僚の紹介で結婚式の牧師役のバイトを紹介されるが…… *****

1人称代名詞 :
 「鴨川...」の主人公は「きみ」という2人称で登場する.
そこに束の間登場する「きみ」の英会話学校の生徒のイマムラさんの発言はたいてい I で始まり.話の中心に I が屹立していて,あちこち行き来してもいつもその中心に戻ってくる.
 「きみ」は 400 字詰原稿用紙を買ってみる.まず書いたのが「僕」という文字だ.

 「異言」では,主人公の英会話教室のマンション (じつは従業員寮) では家主からの通告は一方的なハリガミでその文章の主語はいつも it である.
     It fail at pay rent three months. It go out by end of month.
英会話学校が経営不振で3ヶ月家賃を払っていないから,月末までに出ていけという意味.
 彼は日本人女性と同棲するが,英語でしか会話してもらえない.初めて日本語を使ったとき,英語に切り替えた彼女に「あなたにはボクが似合いませんよ」と言われる.

目につくのは著者の1人称へのこだわり,広くいえば日本語へのこだわりだ.
「わたしが日本に住む理由」というテレビ番組をよく見るが,出演する外人さんたちは (小説が書けるほどではないと思うが) みな日本語がうまい.でも各人各様の日本語との格闘がある / あったのだろう.


結婚式の牧師役のバイトではガイジン・アクセントを強要される.
この本とは関係なく思い出したのが,数十年前の荒川沖協会ラジオのアクセント.
もうひとつ,歌集を出しているカン・ハンナ嬢のアクセントがヘンなのがおもしろい.


「異言」にはタングズ tongues のふりがな.
J 子がじつは洗礼を受けていて,連れられて教会に通った時期がある.そこで「異言」についてお説教されたのを思い出した.コトバンクによれば「キリスト教で,聖霊を受けて宗教恍惚におちいった人が語る,一般の人には理解しがたい言葉」である.この本で,そう言うことかと解った.

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