新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

東博敷地内の銅像

2010-08-29 11:03:32 | 日記・エッセイ・コラム

今、東京国立博物館(東博)では特別展「誕生!中国文明」が開催中(来週日曜日、9月5日まで)です。
私は、「真夏の関西旅行」から帰ってきた翌週末、8月7日(土)に観てきました。
特別展「誕生!中国文明」や、同時に観てきた平常展の感想は後日ということで、今日は表題にあるように、東博の敷地内で見つけた銅像のお話。


特別展と平常展を見終えた私は、東博の入口を入ってすぐ右手にあるベンチに腰掛け、冷たいお茶を飲みながら一服していました(ここは喫煙可)。
カンカン照りの猛暑の中、木陰が心地よい
と、私の視界の片隅に銅像か何かの台座らしきものが…


100829_1_1


はて? 何の像だ? と近寄ってみますと、
100829_1_2_2 妙にかっこつけたポーズの外国人の銅像です。


実はこれ、種痘を発明したジェンナーさんの銅像で、東博のHPでも、


種痘を発明したイギリス人の医師、ジエンナーの像です。明治29年(1896)種痘の発明100年を記念して、大日本私立衛生協会が制作を依頼したもので、高村光雲の弟子、米原雲海の作品です。台座にはめ込まれた碑文には、漢字で「善那」と書かれています。


と、紹介されています。
人類の「持続的発展」に多大な貢献をされたジェンナーさんですから、銅像を建てて顕彰することに何の不思議も不満もありません。
でも、国立科学博物館(科博)ならともかくも、どうして東博の敷地内、それも、こんな地味な場所に建っているのでしょうか?
そこで、まず、時代背景を調べてみました。


1896年当時、現在の科博高等師範学校(現:筑波大学)の附属施設として湯島聖堂内にあって、一方の東博は現在の場所で「帝国博物館」の看板を掲げていたようです。
そして、東博の年表には、


大正14 1925 自然史関係の収蔵品を東京博物館(現在の国立科学博物館)等に引き渡す。


とありますから、この銅像が造られた当時は、科学分野でも帝国博物館(現:東博)が至高の博物館だったということなのでしょう。


さて、銅像の台座にはめ込まれた銘板が強烈です。


100829_1_3


一番上に、右から左へ篆書体で「種痘医祖善那君像」、
そして、左から右へゴシックで「DR.EDWARD JENNER」、
縦書きか横書きか不明本文があって、
最後に、右から左へ「大日本私立衛生会献納」。


この本文は、縦書きのようで(行間を空けて欲しいゾ)、改行位置はそのままに「清書」しますと、こんなです。旧字は新字に改めました。


100829_1_4


一部不明のところがありますが、私なりに意訳してみましょうか。


英国人のジェンナー(善那)医師が痘瘡予防として牛痘種法を発明したのは1798年。以来、50年を経て種痘は全世界に広まり、嘉永2年(1849年)には長崎に伝えられた。
我々大日本私立衛生会がジェンナー医師の像建立を計画したところ、日本中の官民からその賛助を得た。このたび、東京美術学校に委託した像の鋳造も完了したことから、明治37年(1904年)6月、
宮廷の許しを得て帝室博物館の傍らに建立する。人類の幸福に対するジェンナー医師の偉業を後世に伝えるものなり。


最後の一節(「嗚呼」以下)は、原文がほとんど意味不明のため、雰囲気だけの訳です
100829_1_5_2 それから、■の字が読めません。「衣」の上に二つか三つのパーツが三角形に乗っかった文字のようですが、結局判りませんでした。


で、銅像が建てられた当時はともかくも、現在となっては、東博の庭にジェンナーの銅像というのは、やはり不自然な感をぬぐいきれない私です。

東博にお出かけの節は、この銅像を始め、屋外展示物もお忘れなく


おっと、忘れるところでした。
大日本私立衛生会」は、「明治の初期のコレラ流行を契機として、長与専斎らが中心となって公衆衛生事業の推進には、政府が中心となって民間機関が側面的に援助する官民協力を図ることが必要であるとの観点から大日本私立衛生会が明治16年5月設立され」たのだそうで、「財団法人日本衛生会」を経て、1951年1月に現在の財団法人日本公衆衛生協会となった由。

もし、JIN-仁-祝 続編決定)の主人公、南方仁先生が江戸時代に行ったまま明治を迎えていれば、大日本私立衛生会の設立に関わったかもしれませんな。


【追記】「徒然煙草の超意訳」を修正しました。(2010/08/29 11:40)


つづき:2010/08/31 中国 四千年の歴史

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