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書評「暴政」⑤ アメリカの暴政を憂う  文科系

2017年12月12日 06時02分00秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 これは、この10月18~21日の4回に分けて内容紹介、書評を書いた、その5回目に当たるものだ。著者がトランプ誕生、支配のアメリカをどのような内容で憂えているか、これを今回のテーマとする。
 ただし、この本の輪郭をもう一度書いておく。10月18日第一回の記述と重複するが。

 今日から4回に分けて標記の本の内容紹介と書評をする。米イエール大学のティモシー・スナイダー教授の著作で、副題として「20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン」とあった。なおこの著者は1969年生まれの歴史学者で、「中東欧史、ホロコースト史、近代ナショナリズム研究」が専門と紹介されてあった。この著作はこの2月に発行されて以降すでに世界40か国に翻訳されている世界的なベストセラーで、慶應義塾大学出版会発行の訳による。

 書名副題の通り20のレッスンがあるが、20それぞれの表題に添えて初めに、その内容の著者自身による要約がなされている。よって、その要約を原文のまま紹介していくというやり方を取るが、第1回目の今回は「20のレッスン」の題名全部、つまり目次を書き揃えておく。
『 プロローグ 歴史と暴政
1 忖度による服従はするな
2 組織や制度を守れ
3 一党独裁国家に気をつけよ
4 シンボルに責任を持て
5 職業倫理を忘れるな
6 準軍事組織には警戒せよ
7 武器を携行するに際しては思慮深くあれ
8 自分の意志を貫け
9 自分の言葉を大切にしよう
10 真実があるのを信ぜよ
11 自分で調べよ
12 アイコンタクトとちょっとした会話を怠るな 
13 「リアル」な世界で政治を実践しよう 
14 きちんとした私生活を持とう
15 大義名分には寄付せよ
16 他の国の仲間から学べ
17 危険な言葉には耳をそばだてよ
18 想定外のことが起きても平静さを保て
19 愛国者たれ
20 勇気を振りしぼれ
エピローグ 歴史と自由 』

 さて、この著者はトランプ大統領治世をどう描いているか。これが、この本を書く動機となった恐ろしい危機感なのである。それも、以下のように「20世紀の歴史から学んでトランプを見ると・・」というものだ。

『20世紀のヨーロッパ史が私たちに教えてくれるものは何かと言えば、社会が破綻するのも、民主制が崩壊するのも、道義が地に墜ちるのも、普通の男たちが銃を構えて死の穴の縁に立つのも、何もかもありうるのだということです』

『こんにちのアメリカ人は、20世紀に民主主義がファシズム、ナチズム、共産主義に屈するのを眺めていたヨーロッパ人よりも聡明なわけではありません。私たちにとって一つ有利な点を挙げれば、私たちがそうした二〇世紀のヨーロッパ人の経験から学べるだろうということです』
(以上、「プロローグ」より)

真実は四つのやり方で消滅します。そのどれをも、今回のアメリカの大統領選挙で私たちは目撃したばかりなのです
 最初のやり方。実証できる事実に対し公然と敵意を剥き出しにし、作り事と嘘とをあたかも事実であるかの如く提示するという形をとります。現大統領はこれを、並外れた比率とペースとで行っています。2016年の選挙運動中に彼の発言の追跡が行われましたが、彼が事実と主張するものの七八パーセントは虚偽であることがわかりました。・・・・現実の世界を貶めることは、「異世界」を生み出す端緒となるのです』

『二番目のやり方 。シャーマニズム的な「呪文」です。・・・現大統領が「嘘つきテッド」とか「不正直ヒラリー」とかの渾名を几帳面に使うのは現大統領自身に添えるのがさらに適当なはずの人格的特性をどこかに消し去ってしまう効果がありました』

『三番目のやり方。因果関係が正当化できない物事に原因を求める思考方法である「マジカルシンキング」、つまり、矛盾をてらいもなく一緒くたにすることです。現大統領の選挙運動は、誰にとっても減税となり、国の債務を無くし、社会福祉にも国防にもどちらにも支出を増やすと言った公約を盛り込んでいました。こうした公約は互いに矛盾したものです』

『四番目の最後のやり方。筋の通らぬ、信仰と言ってもよい信頼です。これには、現大統領が「私だけがそれを解決できる」とか「君らを代弁するのは私だ」と言った場合の自己神格化した主張の類も含まれています。信仰と言っても良い信頼がこんな風に天から地に降りてきてしまったら、私たちの個人的な洞察力や経験というささやかな真実の入る余地もなくなってしまいます』
(以上は、第10レッスン「真実があるのを信ぜよ」より)

 なお、この著作については今後も、折に触れて部分抜粋などしていきたいと考えています。
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マンチェスター・ダービーを観た  文科系

2017年12月12日 04時35分51秒 | スポーツ
 標記のゲームを観た。プレミアリーグ第16節、1、2位の攻防。現在世界の数あるクラブ戦では随一の闘いと言って良いだろう。ちなみに、進行中である18年度までのヨーロッパチャンピオンズリーグ戦は既に決勝トーナメント戦に入っていて、イングランドクラブが4つも残っているのだから、現下の世界最強リーグと言えるはずだ。
 と言ってもこの1、2位は、前節までの勝ち点が43対35、シティーの断然優勢下のゲームなのである。2位ユナイテッドがこの自らのホームグラウンド戦で敗れるようなことがあれば、シティーの優勝が決まるようなもの。ユナイテッドにとっては大変なゲームなのだ。

 まさに、世界1、2位を争う名監督2人らしい闘いが繰り広げられたと言える。前半は、シティーがコンパクト・ゾーン・ハイプレスからくり出す猛烈な繋ぎ攻撃と、これに対するユナイテッドのモウリーニョお得意のブロック守備との攻防で1対1。シティーのプレスと繋ぎが目を奪うばかりで、そのキープ率は実に75%!
 42分シティーがセットプレーからダビッド・シルバの得点に対して、45分ロスタイムにシティーの守備ミスから生まれたとも言えるユナイテッド、ラシュフォードの得点。

 後半も初めは前半と同じ進み方をして、8分、フリーキックからオタメンディの得点でシティの2対1。以降のユナイテッドは、特に後半の後半は攻めた、攻めた! こんなゾーン・プレスも出来るのだと主張して中盤のつぶし合いをシャカリキになって制したから、シュートもどんどん増えていく。その上、31分にはリンガードを下げてイブラヒモビッチの投入である。これで、ルカクとイブラと2人のツインハイタワーが前線に並んだから、これを目指したロングボール攻撃の開始という戦術に入った。が、シティーが繰り広げる、疲れてもなおコンパクトで激しい潰しの前に、ゲーム終了。シュート数とキープ率数字は、ユナイテッド側から観てそれぞれ8対14、35%対65%になっていた。

 まさに、凄まじいと言う以外にない、しかも高度なゲームだった。繋ぎも潰しも、とにかく激しい。シティーはショートパスばかり、ユナイテッドはロングパスも多用という違いはあっても、皆がスペースに走って、速いパスが次々と繋がっていく。両チームともコンパクト・ゾーン守備を巧みに操るが、守備としてはユナイテッドのブロック守備が見事。2列のライン守備が流動していく選手間の距離がよいのだろう。これに対するシティーの守備ではオフサイドトラップが巧みと観えた。肝心な時にユナイテッドのオフサイドが目立ったのである。

 このゲームによって、首位シティーは14連勝、プレミアの連勝新記録を作った。1、2位の勝ち点差も46対35とぶっちぎり返した。グァルディオラ監督、恐るべし。彼以前には、世界のサッカー監督の名声を独り占めにしてきた感がある名監督モウリーニョとの戦跡も、これで10勝4敗6分けとテレビが報じていた。この両監督に対して、リバプール、トットナム、チェルシーの競り合いが、今後も見物である。強豪が多く、その他のクラブもこれらに対して番狂わせを起こしうるという点こそ、他の主要リーグとかけ離れてイングランドが僕にとって特に面白い理由である。今日の2人の名監督に対して、それぞれクロップ、ポテッチーノ、コンテらが、どう巻き返してくるか。
コメント (7)
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