OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

グラムでプログレなスイートの楽しさ

2012-08-16 16:03:30 | Rock

Fox On The Run / Sweet (Capitol / 東芝)

世の中、「分かりづらさ」が最も嫌われる事は、今日の社会情勢を鑑みるまでもないと思いますが、それが「分かり易さ」に転じてみれば、これまた何かと批判の対象にされるんですから、難しいもんだと思います。

例えば本日ご紹介のシングル盤A面曲「Fox On The Run」を1975年に大ヒットさせたスイートは、モロに「分かり易さ」を前面に出したであろう方針をデビュー当時から貫きとおすイギリスのバンドなんですが、それゆえに今日でも軽く扱われているのが実情でしょう。

一番に拙いのは、シングルヒットはきっちり出しているのに、アルバムが売れないという、これが如何にも当時のバブルガムポップスと同類項を示しているのが、動かぬ証拠ってもんです。

しかしスイートには、どこかしら一筋縄ではいかない雰囲気が滲んでいるのも確かで、それは1968年頃の結成から、1970年代初頭のロンドンを中心としたグラム&グリッターロックのブームでブレイクするまでに培われた、ある意味での「根性」かもしれません。

掲載したジャケ写からも一目瞭然、ブライアン・コノリイ(vo)、アンディ・スコット(g,key,vo)、スティーヴ・プリースト(b,vo)、ミック・タッカー(ds) の4人組は、アイドルバンドとは絶対に呼べないほどの貫録というか、老成があり、それでいてやってくれる事は、極上のバブルガムポップスをハードロックに焼き直した(?)路線なんですから、これがウケなかったら不思議としか言えません。

実はスイートが売れた要因には、スージー・クアトロやマッドを大スタアに導いたニッキー・チン&マイク・チャップマンという優れたプロデューサー兼ソングライターの存在が大きく、また同時にメンバーの歌と演奏におけるダントツの実力がありました。

ですから、何時までも制作側のあやつり人形ではいられない!

そんな意気地があったんじゃ~ないか!?

と、サイケおやじは思っていますし、イギリスだけでなく、アメリカでも売れまくっていた時期に出した本日ご紹介の「Fox On The Run」が、グループ自らの作詞作曲、そしてプロデュースによって作られたという事実は侮れません。

曲メロはキャッチーであり、要所でサウンドの増幅に使われるシンセ、またギターやベースのコンビネーションからドラムスのリズムの出し方まで、これは過言ではなく、プログレバンドの如き味わいさえあるんですよねぇ~♪

つまりプログレを標榜するバンドの最大の悩み(?)は、シングルヒットが出せないことで、どんなに優れたアルバムを作ってみても、それなりにキャリアが無いバンドでは、速攻で売り上げに繋がらないというところでしょう。

そこで無理やりにシングルヒット狙いの楽曲をやっては、ファンから顰蹙という迷い道をやらかす事例は多々ありますからねぇ。

そのあたりのバランス感覚というか、「分かり易さ」を追求時には、妙な下心は厳禁!?

という事かもしれません。

告白するとサイケおやじは貰ったチケットではありますが、スイートが全盛期だった1976年の来日公演にいきました。そして演奏の半端ではない上手さに仰天させられましたですねぇ~♪

また同時に、明らかな若作りをしているメンバーの佇まいとは裏腹の、なかなかハッスルしたステージ進行にも驚きました。

そのあたりは掲載したジャケ写でも、それなりご推察願えるかとは思いますが、率直に言えば絶妙のダサい雰囲気がスイートの持ち味であり、もしかしたら全てが所謂そろばん尽くだとしたら、ますますスイートは凄いバンドだと思っています。

ということで、「分かり易さ」には様々な要素、光と影がつきまとい、なかなか上手くやる事は難しいというのが、本日の結論です。

しかし、ひとつだけ言えるのは、その点を蔑にしてしまっては、何事も人間社会では受け入れらないという現実です。

サイケおやじは常日頃から、そのあたりのバランスが実に悪く、天の邪鬼と回りくどさを武器(?)にする事が度々ですから、ちょいとスイートのベスト盤CDでもゲットして、反省する必要を模索しているのでした。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (市久田)
2012-08-17 14:39:26
こんにちは、いつも楽しく拝見しております。

そうですね、世の中も音楽も「分かりづらさ」が時には良い様な悪い様な・・・難しい問題ですね。

スイートは、グラム・ムーヴメントに便乗したチン&チャップマンによる一連のラック・レコードのアーティト達と違う点に、演奏力の確かさがありましたね(もっとも、他のアーティストは本当に演奏していたかも疑問ですが)。
「ボールルーム・ブリッツ」くらいまでのキャッチーな乗りも好きなのですが、この辺からのスイートは、まさしく意地を見せた感がありましたですね。
切れの良いサウンドとクイーンを思わすコーラス(こちらの方が先輩ですが)は、聴いていて爽快でした。
この時期のオリジナル・アルバムもお勧めですよ。
甘くみられるのか? スイートは (サイケおやじ)
2012-08-17 16:23:16
☆市久田様
コメントありがとうございます。

仰るとおり、スイートの実力は本物だと思うんですが、周囲がシングルヒット専門バンドみたいに売ってしまった事が成功と失敗の二律背反だったように思います。
アルバムも数枚は持っていまして、日本盤なんですが、「ブロックバスター」とタイトルされたLPは今も好きですよ♪ 多分、日本編集のベスト盤かもしれませんね。
他に「スイート・ファニー・アダムス」はヘヴィな音作りが好きですし、アンディ・スコットのギターは、もっと評価されるべきと思うんですが……。
それと掲載シングル曲が入った「甘い誘惑」は、ほとんどクイーンへの対抗意識がモロ! そんな批判も受けましたが、気取ってないところがクイーンよりも好きなんですよ(苦笑)。

何か全キャリアを纏めたボックスが出ても良いはずなんですけどねぇ~。

これからもよろしくお願い致します。
Unknown (TK)
2012-08-18 07:37:30
二回目のワールドロックフェスティバルに出る予定だったのに来ませんでした。
プログラムにも載ってたのに。
甘い立場 (サイケおやじ)
2012-08-18 14:41:20
☆TK様
コメントありがとうございます。

スイートの客層は女の子メインだったと思うですよ、全盛期は。それゆえに飽きられた、それまでよ(苦笑)。
なんか、そのあたりの空気を読んだんじゃ~ないでしょうか?
今は何をやっているか、気になるバンドではありますが。
甘い誘惑には落ちがある (市久田)
2012-08-18 23:10:10
再びお騒がせいたします。

当時の音楽誌「ミュージック・ライフ」などは、女性が編集していたこともあってか、やれどのバンドの何がしがカッコイイやらカワイイやらとミーハー丸出しで何だかなぁ?という感じが否めませんでした。と言っても情報源がそれらからしか入手出来なかったのも事実。
日本に於いては、これらの恩恵で一瞬話題になっても、次にルックスが良いバンドが出てくるとポイッと飽きられてしまうのが悲しい定めでしょうか。
いや、我々男子もカワイイ女子が登場すれば同じことなのでつべこべ言えませんけどね・・・。

その後、ヴォーカルはアル中で一時脱退したりして病死。ドラムも病死してますね。
ギターのアンディ・スコット主体でバンドは続いていたみたいです。
何年か前にリリースされた76年頃のライヴ盤は、なかなか良かったですよ。

ミーハー (サイケおやじ)
2012-08-19 11:42:43
☆市久田様
コメント、大歓迎ですよ♪

なにか私の世代ではスイートを話題になる事も憚られるような雰囲気でしたからねぇ(苦笑)。
仰るとおり、ML誌はアイドル専門主義に傾き、その反動として「バーン」とかもシンコーは出していましたが、最終的には「ロックショウ」を発刊する事で結着させたんじゃ~ないでしょうか。
ミーハー紹介はロックファンの裾野開拓には欠かせないはずで、決して悪いとは思っていません。
しかしそれで実力派が駆逐されてしまうのも、なんだかなぁ……、という感じでしょうか?
ちなみにクイーンが日本でブレイクしたのは、我が国の大手芸能プロの女性取締役がファンだったからで、来日公演も自分の事務所で仕切っていましたからねぇ~。ファンと言うよりも、クイーンの才能を高く評価していたんでしょうね。

さて、ご紹介のスイートのライブ盤、ネットで検索してみたら1976年物はコペンハーゲン、さらに1973年のレインボーシアターのブツまで発見したので、これはゲットする所存です。

最後になりましたが、人気バンドのその後の悲喜こもごもは、ツライ話が多くて……。
現実の厳しさを痛感しております。

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