OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジェームス・ブラウン真骨頂のライブ映像

2012-03-05 14:59:40 | Soul

James Brown Live At The Boston Garden April 5, 1968 (Shout = DVD)

ソウルブラザー・ナンバー・ワン!

ファンクの帝王!

等々、数え切れない称号を与えられつつ、決してそれに負けない存在感を示し続けたジェームス・ブラウンは、しかし、それゆえに残した音源やレコードがどっさりありますから、果たして何から聴いていいのやら……。

そのあたりの戸惑いは後追いになるほど強いはずですし、実際、サイケおやじにしても、運良く昭和40年代にラジオで「パパのニュー・バッグ / Papa's Got A Brand New Bag」や「It's A Man's Man's World」といった代表的ヒット曲にシビれる事は出来ましたが、さて、それでも本格的にジェームス・ブラウンを聴くには、何から入っていいのか、相当に迷いましたですねぇ。

そこで結局、おそらくは人気曲ばっかりが演じられているはずと見当をつけて、最初に買ったLPがアポロ劇場で1967年に録られたライプアルバムだったんですが、これが最高に大正解!

今となっては歴史的な名盤でありますし、ちょうど正統派R&Bからファンク期に移行しつつあった意欲満々のジェームス・ブラウンがリアルで記録されている真実は絶対的だったのです。

で、いよいよこれからジェームス・ブラウンという濃厚なソウルの世界へ歩まれんとする皆様には、ぜひともライプアルバムからっ!

と、声を大にするサイケおやじではありますが、それ以上なのが実際のステージギグである事は言うまでもなく、その生ライプの壮絶にして狂熱の世界は唯一無二ですから、それが収められている映像作品がレコードやCDを上回るという印象も強烈です。

そして本日ご紹介のDVDは、まさにジェームス・ブラウンの真骨頂が感性直撃の決定版で、それが演じられた1968年4月5日といえば、黒人公民権運動の指導者としてアメリカの黒人達から絶大な尊敬を集めていたキング牧師が暗殺された翌日!

つまり全米各所で黒人暴動が起こっていた、とてつもなくアブナイ時期であったことは歴史に記録されているとおりであり、ちょうどその日にボストンで野外ライブを予定していたジェームス・ブラウンに対しても、当局は暴動の誘発を恐れて興業の中止を勧告するのですが……。

しかし既に黒人大衆音楽の絶対的スタアであり、その影響力も社会的になっていたジェームス・ブラウンはスタッフや現地為政者と協議の末、予定通りにライプを強行! それはもしも予定がキャンセルとなった場合の更なる険悪な事態を憂慮しての決断だったと言われています。

そしてそれを「キング牧師追悼公演」という名目でテレビとラジオで生放送する企画も進行し、地元の放送局WBGHが全面的に協力することにより、ついに実現したのが、ここでも存分に楽しめる魂のコンサートというわけです。

01 Introduction Speech By Mayor Of Boston Kevin White
 まずボストンのケビン・ホワイト市長と同市議(?)のトーマス・アトキンスからの開式の辞が、このパートです。
 ちなみに、このDVDは輸入盤なのでチャプターもジャケットにはテキトーに記載されていますので、ここでは一応正しておきますが、日本語字幕も当然ありませんので話の正確な意図がちょいと掴めません。
 しかしおそらく観客は黒人ばっかりだったでしょうから、ステージという高い場所から白人の為政者が「お願い」をする事そのものが、状況を考慮するほどに凄いとしか言えません。
 皆さん、お互いに見つめ合いましょう。
 偉大なJBの音楽に免じて、偉大なキング牧師を尊敬し、……云々。
 いゃ~、その場にジェームス・ブラウンが居ればこその緊張が、ひしひしと伝わってくる、まさに歴史の一場面だと思います。
 映像が些かコントラストの強い照明によるモノクロというのも、結果オーライかもしれませんねぇ。

02 That's Life
 こうしてスタートするライプの初っ端は、ジェームス・ブラウンが得意とする「思わせぶりなツカミ」であって、ミディアムスローなソウルバラードが個性的な熱血節で歌われる時、そこにはハート&ソウルがジワジワと充満していく瞬間が堪能出来ますよ。
 もちろん客席は既にして興奮のルツボってところでしょう。
 くわっ~~、JBのシャウト! 最高~~~!

03 Kansas City
 そして間髪を入れずに始まるのが、お馴染みの人気R&Bということで、ここではアップテンポで狂乱するジェームス・ブラウンが十八番のダンスアクションも冴えまくり!
 そうです、ファンクの帝王はソウルダンスのナチュラル名人でもあって、そのあたりを楽しめるのも映像作品の大きな魅力♪♪~♪ 観客への煽りも強烈ならば、バックバンドへの的確な指示指令も、その間にあるというわけです。
 ちなみにここで帝王はステージから退場しますが、実は日常的なステージ進行では、この後にバックバンドだけの演奏や座付歌手&ダンサーのパフォーマンスがあって、この日もそれが行われたことは司会者のMCの流れでわかると思います。

04 Medley:It's A Man's Man's World (incomplet)
05 Medley:It's A Man's Man's World / Lost Someone / Bewildered
 で、ここからが再びジェームス・ブラウン登場の所謂「スタアタイム」の始まりなんですが、しかしそのド頭が果たして「It's A Man's Man's World」であったかは定かではありません。
 というのも、ここに収められたトラックはメドレーの最初の部分の映像が欠落しており、音声だけになっているのですから!? しかしチャプターを打ち直したところからは、もう、熱いエモーションに怒涛の黒人ビートが強烈な渦を巻いていきます。なにしろ「It's A Man's Man's World」は説明不要の泣き落としがたまりませんし、結果的に最後までブッ続けで演じられる歌と演奏の流れは圧倒的であって、一瞬たりとも耳目が疎かになるなぁ~んて事はないはずです。

06 Got It Together
07 There Was A Time
08 I Got The Feelin'
09 Try Me
10 Medley:Cold Sweat / Ride The Pony / Cold Sweat
11 Maybe The Last Time
12 I Got You
13 Please, Please, Please
14 I Can't Stand Myself
 という構成のステージ展開の中にあって、極言すればファンクビートのシンコペイトしまくった世界が連続するという、ちょいと「お経」の様に聞こえるのもまた、黒人ファンクの表層のひとつでしょう。
 つまり同じ事の繰り返しが延々と続くのが、JBファンクの特質であって、しかも歌や楽器演奏のテンションが相互作用的に高まっていくのは、如何にもライプの現場であることを映像で確認出来るのですから、もう、何百何千回鑑賞しても、これに飽きるなんて事は無いはずです。
 それは既に述べたとおり、恐怖(?)の連続ともいうべきスリル満点のメドレー形式が演じられればこそ、ジェームス・ブラウンとバックバンドのスタミナと気合は驚嘆の極み! ちなみにそのメンバーの中にはメイシオ・パーカー(ts)、ジミー・ノーラン(g)、クライド・スタブルフィールド(ds) といった名手が揃っていますから、各々のソロパートはもちろんの事、カウンター的に炸裂するホーン&ビートリフの凄さは圧巻! このあたりの快感は、ぜひとも皆様にもお楽しみいただきとうございます。
 そして、この日のライプを完全に歴史にしているのが、いよいよクライマックスに向かう中で突発していく観客とジェームス・ブラウンの繋がりの凄さで、平たく言えばステージに押し寄せるファン、それを制止するスタッフや白人警官、ついにはステージ上でジェームス・ブラウンと一緒に踊り出す者も出てくるんですが、流石にジェームス・ブラウンはお客さんを大切にする姿勢が鮮明です。
 収拾不能となった会場でジェームス・ブラウンに駆け寄る黒人ファンのひとりを白人警官が暴力的に突き飛ばして排除した次の瞬間、爆発寸前の空気を察知したジェームス・ブラウンは演奏を中断させ、会場に冷静さを求めるのですが、その切り札に使われるのが、黒人としての尊厳なんですねぇ~。
 ここはサイケおやじが稚拙な筆を弄するよりも、絶対に観て欲しい場面であって、流石という言葉しか、今は使えませんっ!

ということで、これに接して、何も感じるところが無かったとすれば、それは黒人音楽を理解する因子に欠けているのかもしれませんよ。僭越ながら、サイケおやじはそのように思います。

とにかくジェームス・ブラウンの全盛期が記録されているのは絶対で、あまりにも有名な「Please, Please, Please」におけるマントショウも楽しめますし、バンドメンバーの超絶的な演奏能力は、何かイノセントなジャズファンからはバカにされる一般的な評価なんて、如何に的外れか!? それすらも痛快に確認出来るでしょう。

最後になりましたが、このDVDは輸入盤ながらも公式商品としてリージョンフリーですから、ご安心下さい。当然ながら、これまでブートとして流通していたものよりも画質&音質の向上も保証付き♪♪~♪

また、これは1枚物ですが、他に関係者インタビューや1960年代の他の映像をオマケに入れた3枚組も出ています。ただし繰り返しますが、日本語字幕が無いので、まずはこっちの1枚物をオススメしておきます。

いゃ~、何度観ても、最高ですねぇ~~♪

ジェームス・ブラウンを体験するには、まず、これでっ!

まさに溜飲が下がるってやつです。

コメント (2)
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