OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ダスコ♪

2006-07-03 18:51:43 | Weblog

最近、いろいろな物欲に押し潰されそうな私ですが、バブル期には欲しくても手に入らなかったブツが沢山あって、それは精神衛生上良くない季節でした。

まあ、今になってその頃へのリベンジという部分が否定できません。

例えば本日の1枚は、今でも怖ろしい値段がつけられていますが、幸いにも現在ではCD復刻されています――

■Dusko Gojkovic Jazz Octet (RTB)

今でこそ、欧州や日本をはじめとする極東のジャズは堂々と聴かれていますが、1970年代中頃まではアメリカこそがジャズの本場! それ以外は……、という強烈な偏見がありました。

もちろん、そういう地域から渡米して活躍している名手達の存在を認めた上での話しです。

しかしそんな状況に一石を投じたのが、ダスコ・ゴイコビッチという旧ユーゴスラビア出身のトランペッターでした。

まず欧州のエンヤ・レーベルがスペイン製作盤を買い取って発売したアルバム「アフター・アワーズ」がジャズ喫茶の人気盤となり、この名手が1960年代にはアメリカで活躍していた事が知れると、今度は当時働いてたウディ・ハーマン・オーケストラでの吹込み盤が密かな人気を呼び、また帰欧してから所属したクラーク・ボーラン・オーケストラでの看板スタアとしての吹込み盤は、日本でも発売されるという人気ぶりでした。

もちろんダスコ・ゴイコビッチは、それまでのキャリアでスモール・コンボによる吹込み盤も残していましたが、なにせ事情は欧州というジャズ的には遠い場所でしたので、ファンはその存在を知ることが出来ても、実際に聴くことはなかなか困難だったのです。

それがバブル期になり、欧州盤ブームが訪れると同時に、ダスコ・ゴイコビッチの幻の吹込み盤が我国の廃盤店に出回るようになり、異常な高値がつけられることになります。

このアルバムは、当にそうした中の1枚で、母国ユーゴスラビアの国営放送によって製作された初リーダー・セッションを収めた10吋盤です。

録音は1961年2月14日、メンバーはダスコ・ゴイコビッチ(tp)、デレク・ハンブル(as)、カール・ドレボ(ts)、Heinz Kretschmar (bcl)、Bubi Aderhold (bs)、フランシー・ボーラン(p,arr)、Jean Warland (b)、ケニー・クラーク(ds) という布陣です――

A-1 La Campimania
 ケニー・クラークが本場の妙技というドラムスをイントロとして、厚みのあるホーン・アンサンブルによってテーマが提示され、まずカール・ドレボのテナーサックスが露払いを務めるハードバップのブルースです。
 そして登場するダスコ・ゴイコビッチは、おぉっ、マイルス・デイビス!? という最高に好ましいものです。しかも本家とは似て非なる暖かい歌心が最高です。あぁ、バグス・グループまで吹いている~♪~♪
 また、その背後を彩るホーン隊のリフが心躍るものですし、不動にスイングし、野太いソロを聴かせてくれる Jean Warland のベース、さらにビバップ魂全開のケニー・クラークまでもが、熱いドラムソロを披露するのでした。

A-2 Suvise Si Lepa / You're Too Beautful
 私が好きで好きでたまらない演奏です。魅惑のスタンダード・メロディをミュートで優しく吹奏するダスコ・ゴイコビッチは、何物にも代え難い素晴らしさです♪
 もちろん背後を彩るフランシー・ボーランのアレンジも絶品ですし、ピアノソロは硬派な歌心を秘めた素敵なものです♪
 あぁ、何度聴いても最高です。何時か必ずやってくる私の葬儀には、これを流して欲しいと遺言したくなる、心底好きな演奏が、これです。

A-3 Uspavanka Lisca / Lullaby Of The Leaves
 有名な哀愁のスタンダード♪ テーマを演じてくれるだけで私は感涙ですが、フランシス・ボーランのアレンジが素晴らしく、次々にアドリブソロを披露するメンバーも気持ち良さそうです。
 もちろんダスコ・ゴイコビッチはクールで暖かい、雰囲気満点の好演です。

B-1 Doo-Doosh
 ラテン色もついた最高にカッコ良いハードバッブ曲は、フランシス・ボーランの作編曲によるものです。
 アドリブ先発はデレク・ハンブルのアルトサックスからカール・ドレボのテナーサックスにリレーされ、いよいよ登場するダスコ・ゴイコビッチは、ラテン・リズムも4ビートも完全に乗り切って、本当に最高♪ 完全に虜になります。
 もちろんバンド全体としてのノリも強烈です。

B-2 Mr. X
 マックス・ローチ(ds) が作った真ハードバップの隠れ名曲です。
 その所為か、ケニー・クラークのドラムスも力感がありますし、ダスコ・ゴイコビッチは何となくケニー・ドーハム(tp) を感じさせる部分があります。しかし、ちゃ~んと自分の個性を表現することを忘れていません。
 クライマックスではケニー・クラークとの対決で荒々しいところも披露しています。

B-3 To Je Sve / That's All
 オーラスはスタンダードの大名曲を強烈なアップテンポにアレンジして、大団円としています。とにかくホーン隊の合奏が大迫力! テーマのサビで炸裂するカール・ドレボとデレク・ハンブルのサックスにも熱くさせられます。
 そしてアドリブの主役は、もちろんダスコ・ゴイコビッチ♪ マイルス・デイビスのフレーズと雰囲気を借用しつつも、実はそこがファンにはたまらないところ♪
 短い演奏時間が本当に勿体無いとしか思えません……。

ということで、これは10吋盤なので、演奏時間が短いのが弱点ではありますが、その密度はどこまでも濃密です。

しかしそれを私が知ったのは数年前の事で、このアルバムがCD復刻されてからでした。つまりオリジナル盤は高嶺の花というか、高値の華でしたから……。とにかく最初に聴いた瞬間、感涙狂喜しましたですねぇ♪

今ではいろいろな形で復刻されていますが、個人的には日本のノーマというレーベルからの紙ジャケット仕様盤をオススメしておきます。

ちなみに、このセッションに参加したメンバーは、本場アメリカでビバップ創成期から活動している偉人ドラマーのケニー・クラークを要に、欧州各国から集められた精鋭で事実上スタートしていたクラーク・ボーラン・オーケストラの雛形であり、この3カ月後にほぼ同じメンツで行ったセッションは、アメリカの名門レーベルであるブルーノートから「ゴールデン・エイト」というタイトルで発売されています。

ただしそこではダスコ・ゴイコビッチの出番が少なく、それゆえにこのアルバムへの愛着が、一層、深まるのでした。

とにかくダスコ・ゴイコビッチのファンならずとも、聴けば虜の名盤だと思います。例によってジャケ写からネタ元へリンクしてありますので、チェックしてみて下さいませ。

コメント (2)
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