魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

無法松の一生(東宝)★★★★☆

2008年03月18日 | Weblog

【概要】
小倉の人力車夫・松五郎(三船敏郎)は喧嘩っぱやいが人情に厚い名物男。そんな彼が陸軍大尉の家族と知り合いになり、大尉の戦死後、未亡人よし子(高峰秀子)とその子どもに愛情を持って奉仕し続けていくが…。
Amazon.co.jpより抜粋

【感想】
東宝時代劇の巨匠稲垣浩監督の1943年度作品をカラー・シネスコサイズ・ノーカット版でリメイクした作品。
題名は聞いていたものの、なかなか見る機会がありませんでした。
そもそも稲垣監督の作品はどうも私好みではないようで、避けていたのかもしれません。「大坂城物語」や「大龍巻」や「風林火山」など、壮大なテーマの作品を見る限り、どうも消化不良の感じがして、つまらなくは無いんだけど、面白くも無い残念な作品という印象だったんでしょう。
ところがこの「無法松の一生」は凄く良かったです。

この映画の質を高めている要素のひとつとして團伊玖磨の音楽があります。
なんとも言えない物悲しい旋律。特撮では「白夫人の妖恋」や「世界大戦争」や「キスカ」などを作曲していて、いずれも作品にぴったりな完成度の高い曲でした。

三船敏郎は松五郎役で、一見するとそれまでの役柄と大差ない豪快な役どころのように思えますが、死んだ吉岡小太郎大尉(芥川比呂志)に対する敬意と良子(高峰秀子)への愛情とで苦悩する繊細な一面を見せ、今までに無い姿を演じていました。上手いんだよなやっぱり。

この映画では重要なことが一つあります。それは、松五郎が吉岡専属(?)の車引きになるきっかけを作った吉岡小太郎大尉の人を見抜く力です。
結局残酷な結果になったことは事実ですが、それは松五郎の人間性を理解したからでしょう。
さすがに良子夫人に愛情を持つことは予想できなかったのですが・・・
当人は全く悪意が無かったにせよ、表面的に見れば良子夫人が松五郎を利用したという結果になってしまうと言う、美しさとは裏腹の残酷さがこの映画にはあります。(ラストシーンは皮肉的でもありますね。)

★好きな場面★

駄菓子屋の駄菓子やメンコがちらばった映像に現れるタイトルクレジット。懐かしい画と共に美しい音楽が流れて、明らかにその他の稲垣作品とは趣を異にしています。

時が徐々に移り変わるシーン。いくつかあるのですが、敏雄(吉岡のボンボン)の勉強机がだんだん変容していく過程、色とりどりの照明に照らされた人力車の車が回る場面などが印象的でした。

松五郎が力一杯太鼓を叩く場面。迫力のある画面ですが、それがかえってなんだか哀しくなってきますね。

雪の中、松五郎が今までの楽しくて幸せだった良子夫人とボンボンとの時間を回想しながら絶命する場面。これまた團伊玖磨の音楽が切なすぎるんだ。


監督 稲垣浩
脚色 伊丹万作、稲垣浩
原作 「富島松五郎伝」 岩下俊作
音楽 團伊玖磨 富島松五郎 

富島松五郎 三船敏郎
吉岡小太郎 芥川比呂志
吉岡良子  高峰秀子
吉岡敏雄  笠原健司
少年敏雄  松本薫
結城重蔵  笠智衆
おとら    飯田蝶子
俥夫熊吉  田中春男
ぼんさん   大村千吉
高校の先生 土屋嘉男
居酒屋の亭主  左卜全
薬屋     有島一郎

1958年度東宝作品ベネチア映画祭グランプリ(カラー・シネスコ)


テレビ朝日・東映系の刑事ドラマ「相棒season6」も遂に明日は最終回。
題名は「黙示録」。社会派サスペンスの傑作乱れうちの櫻井武晴さんの脚本です。彼の詳細は未だよくわからないのですが、兎に角凄い脚本家です。


「相棒-劇場版-」

履歴です↓
悪い奴ほどよく眠る
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
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殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
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大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
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☆はじめに☆

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