あなたから一番遠いブログ

自分が生きている世界に違和感を感じている。誰にも言えない本音を、世界の片隅になすりつけるように書きつけよう。

福島と沖縄とフランケンシュタイン

2013年11月18日 23時04分28秒 | Weblog
 昨日の福島市長選で自・公・社推薦の現職が敗れた。福島県の首長選挙では郡山市、富岡町、いわき市と現職が続けて敗れ、自民党内の一部に危機感が生まれているという。「一部」というのは、これは福島だけの特殊な問題で日本全体としては自民党への支持は圧倒的だという見解も依然強いためだ。
 一方、今日は石破茂幹事長が自民党沖縄県連の会長を東京に呼びつけ、辺野古への米軍基地移設を容認するよう強く求めたという。これには前段があって、先週、高村正彦副総裁など複数の党幹部が沖縄県選出の自民党国会議員に対して辺野古移設の党方針に従わなければ離党勧告すると通告しているのである。
 自民党がいま沖縄の自民党議員に圧力をかけているのは、来月以降、沖縄県知事が移設に伴う埋め立て承認申請で可否の判断をすることになっているからだ。自民党県連が移設賛成を明確にして「知事が承認しやすい環境をつく」(石破茂幹事長)ろうというのである。

 依然として安倍内閣への異様と思えるほどの高支持率が続く。自民党は大きな自信を持っている。もちろん、自民党のみならずマスコミも国民もおそらくちょっとやそっとのことでは政権が揺らぐことは無いと思っているだろう。
 しかしこれはそれほど簡単な話では無いのかもしれない。もしかするとこれはアベノミクスという怪物の本当の正体がかすみの向こうから現れ出てくる瞬間なのかもしれない。そしてこの怪物は日本という共同体を修復不能にまで破壊しつくす怪獣かもしれないのだ。

 人々が安倍政権を支持しているのはアベノミクスの成功を信じ期待しているからだ。だが当然アベノミクスは弱者切捨ての政策だから、アベノミクスの恩恵を受けられない人も多数出てくるだろう。ただ今のところ弱者=負け組みは強者=勝ち組とモザイク状態になっているので、アベノミクスでいじめられている人々の姿がぼやけており、よく見えないのである。
 ところが安倍政権の施政が続く中で、この切捨てがしだいに地域の切捨てとなってはっきり人々の目に見えるようになってきたのではないのだろうか。
 モザイクの中の人々はバラバラで非力だが、地域というまとまった形になってきたら、それは簡単に勢力となる。

 福島や沖縄の問題はアベノミクスとは関係ないと言う人もいるだろうが、これらの問題の本当の根っこに何があるのかを見てみれば、それは明らかに地域間の経済格差である。豊かな中央と貧しい地方、吸い上げる一方の中央と吸い尽くされる地方の問題こそが、この問題の根幹にあるのだ。
 その意味ではアベノミクスは単に経済政策であるというだけではなく、ある思想、ある哲学の、経済政策として現れた側面であると言えるかもしれない。それはつまり、強者のために弱者を踏み台にし切り捨てる思想である。

 さて、民主主義国家の中に様々な勢力が誕生するのは必然で、それはよいのだが、強大な勢力が弱小勢力に対して譲歩し、融和をはからなければ、それは深刻な対立になりやがて修復不能の状況を生み出す。
 いろいろな見解はあるだろうが、戦後の日本の中では比較的融和的な風土が作られてきた。しかしそれは20世紀の終わりごろから徐々に変わってきてしまった。その現時点での到達点がアベノミクスだと言える。

 まさかそんなことは起きないと思っている人が多いだろうが、それこそ何かのきっかけで日本の中に分離独立運動が起きる可能性が生まれてきたと思う。皮肉な言い方をすれば、それがまさに現代世界の「普通の国」なのだと言うこともできるだろう。
 もちろん、安倍首相が日本の分裂を目指してアベノミクスを始めたわけではないだろう。しかしフランケンシュタイン博士も殺人鬼にしようとして人造人間を作ったわけではない。目先の利益のためにやり始めたことが、最後には破滅的な結果をもたらすことは、人類史には枚挙に暇がないほど多くあるのである。