
書評「西洋の自死:ヨーロッパの奇妙な死」 なぜ日本でも?
この本は翻訳本で読んだ。だいたい英語の書籍は翻訳本よりは原書で買った方が安いし、翻訳には誤訳も多いので原則として原書で読むことにしている。ところが、翻訳本は amazon の中古だと原書で買うよりかなり安いのだ。なので、恐縮ながら今回は翻訳書をもとにした書評である。
さて、この「西洋の自死 The Strange Death of Europe」は一言でいうと、日本を含む移民問題について書かれた書物としては、第一級のものと言える。これを読まずして移民・難民問題を語るなかれ、と言えるだろう。
著者の Douglas Murray は英国人だが、この本の前にすでに「Madness of Crowds 大衆の狂気」を書いている。これも必読と思う。著者 Douglas Murray について調べると、彼は自分がゲイであることを隠していない。ザウルス自身は自分がゲイであるようには思えないのだが、自分が影響を受けた思想家や芸術家にはどうもゲイが多い。
ゲイであることを公言し、パートナーと一緒の写真まで公開するって、かなり度胸が据わっている? 彼らは世間の「ストレート」の一般人とは異なる視点で社会や歴史を見ることができるのかもしれない。だからと言って、ゲイは常に正しい、などとはまったく思わないが。
同書からの引用(302ページ)を含むツイート:
同書350ページからの引用を含むツイート:
著者ダグラス・マレイ氏は、この本を書くために様々な文献を調べるだけでなく、実際にヨーロッパの移民・難民問題を抱えるいくつもの都市に赴き、インタビューもしている。そうした足を使って書いた重みがこの本にはあり、それが本書の読み応えとなっている。
ただ、欲を言えば、こうした移民・難民問題が起きる イデオロギー的な説明 が欲しかった。移民・難民の流入を拒めず、彼らの狼藉を放置せざるを得ない根源的な理由が説明されていない。今回の記事のタイトルの最後に「なぜ日本でも?」と入れたのだが、実は日本どころか、ヨーロッパでの回答も得られてはいないのが残念だ。今後に期待したい。
ヨーロッパに始まったこの移民・難民問題は、なぜか白人の欧米社会とは異なるはずの東アジアの日本にも現在波及していて、ヨーロッパの轍を踏みつつある。以下は、本書に触発されたザウルスのツイート。
やはり日本を衰退させるのが目的ですかね…