yuuの夢物語

夢の数々をここに語り綴りたい

母の痣・・・1

2007-12-18 22:11:43 | 創作の小部屋
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秋の空 (省三の物語)

 秋の空 (省三の物語)

 母の痣


 秋の彼岸だというのに瀬戸の海に霞がかかり島々はぽっかりぽっかりと浮かんでいるように見えていた。春の彼岸に妻の育子と瀬戸大橋を渡って両親の墓参りをしたときにも霞がたなびいていて島はぜんぜん見えなかったのだ。

 今年は梅雨が短く、夏は猛暑の日が続き九月に入っても残暑はきびしく続いていた。地球温暖化が言われ初めて年月は経つが一向に改善は見られず、地球の各地で異変が続いているという報道が成されていた。日本もその影響を受けて夏から直ぐ冬へ秋を飛ばして季節が変わるのではないかと囁かれていた。
息子達も大きくなり各自が車を買っているので大きな車でなくて良いというので小さな軽四に乗り替えたのだった。足に障害を持つ育子を乗せて走る分には十分であった。省三は地球温暖化を危惧しエコを叫んでいる以上大きな車を一人で乗り回すことに抵抗を感じていたのもその原因だった。乗り心地もそんなに悪くなく満足のいくもので気に入っていた。定年退職をして大きな車に乗り換える人の多い中省三はその逆を行ったのだった。省三は一時期新聞記者をしたがその後はものを書いた時期があり今では劇団を運営し劇作と演出をしてのんびりと暮らしているのだった。
 
 今、省三は思う。
 母の人生は幸せだったといえるのかと・・・。
 母を亡くしたのは省三が三十一歳の時で父を見送った二年後に後を追うように母も逝ったのだった。
 省三も母の逝った年齢に近づいていた。

 兄の久夫婦が参りに来たのか墓は綺麗に掃除されていて花が飾られてあり線香の燃えかすが白く崩れていた。
「お義姉さんに綺麗にして貰って・・・」と言いながら育子は省三がバケツに汲んで来た水にタオルを浸して墓を拭いていた。
「親父、一服しょうか・・・」と省三は言って煙草に火を付けて供えた。
「今年は彼岸花が咲いてないわね」とあたりを見ながら育子が言った。
「コスモスは春から夏、秋まで咲いているよ、その代わりに・・・」
「気候が狂ってきているのね」
「あの頃は良かったと言える年齢になったんだよ」
「今の時代、あなたの年齢はまだまだ年寄りではありませんよ」
「母さんが亡くなった年齢にもうすぐ手が届くよ・・・」
「もう三十六年も前の話、今では寿命も延びて・・・」
「なに言ってんだと、親父は笑っているかも知れない」
「きっと、お義母さんも笑っているわ」
「仲良くしているだろうか」
「お義父さんは得意の英語で煙に巻いているかも知れないわね」
 両親はたわいない息子夫婦のやり取りをどのように聞いているだろうかと省三は思った。元気で円満な姿を見せることが何よりの供養だと、仕合わせな営みを見て貰うことが一番の親孝行なのだと省三は思うのだ。

    

この続きは来春よりアップしていきたいと思っております・・・書ければですが・・・。何が何でも書きますが・・・。
何かがありましたら書かせていただきますが・・・。
皆様のブログは毎日開き読ませていただきます・・・。
皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・

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あいつは加奈子を抱いた。この日から加奈子は自分で作った水槽の中で孤独な魚と化した。

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1982年、まだ美しかった横浜―風変わりなおんぼろ塾で、あたしたちは出会った。ロケット花火で不良どもに戦いを挑み、路地裏を全力疾走で駆け抜ける!それぞれが悩みや秘密を抱えながらも、あの頃、世界は輝いていた。大人へと押しあげられてしまったすべての人へ捧げる、あなたも知っている“あの頃”の物語。

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作者のブログです・・・出版したあとも精力的に書き進めています・・・一度覗いてみてはと・・・。
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