良寛ゆかりの倉敷で生誕250年を記念しての公演台本を・・・。
一人芝居
蓮の露「はちすのつゆ」は・・・
5
急
閻魔堂
貞心尼一人
貞心 良寛さまのお身体のことは案じておりました。
悲しみが冬の気配をより感じ取らせます。
今、良寛さまとの事を「蓮の露(はちすのつゆ))」として・・・。
書き残すことで、良寛さまを忍びたいという懐いが・・・。
「良寛禅師と聞えしは出雲崎なる橘氏の太郎の主にておはしけるが・・・」
「懐う人があります」と良寛さまがまだ、乙子神社の草庵に居られる時に、仕立ての世話をしてくださるお内儀にせがまれ打ち明けたことが御座いました。
「比丘尼にしておくには勿体ない、いい人でも居られるのでしょうか」との言葉に答えたものでした。
「そのお方は・・・」
「はい。良寛さま」
懐ってもみなかつた素直な懐いが口から飛び出していて、なんと恥ずかしい懐いをしたことか。
それからは、良寛さまの歌や書を貸してくださるようになり、素直に言ってよかつたと・・・。
私が初めて良寛さまにお目もじ致しましたのは・・・。
お礼の文と、歌一首のすぐ後で御座いました。
身仕度をし草鞋を履く前に、塩入り峠に雪でも積もれば、と言う懐いで御座いました。
心は急き草鞋を結ぶ手が思うように動きません。ころばるようにとはこの様なさまかと・・・。
「いつ来られるのかと、良寛さまは楽しみにしておいででしたよ」
能登屋のお内儀が囃します。
「さあさ、一先ず喉を潤をいなさって。良寛さまはどこにも行かれませんから」言っておほほと嗤う。
「少しお痩せになったようですよ」心配の種を播きはやる私を諫めます。
お内儀は良寛さまのことを言うと顔を真っ赤にする私が面白いのか、話の種にして・・・。
「さあ、もう息もあがっておりませんわ。ゆっくりと来たと言う風に・・・」
色々と知恵を授けてくださいまして・・・。まるでご自分がことのように。
私はお内儀に案内されて・・・。
「良寛さまにこんなむさ苦しい処ではと・・・新しく普請をと言ったのですが」
良寛さまなら夜露が凌げればと言うに決まっています・・・
「良寛さま、お客さまですょ」
引き戸を明けて、二人が立つと、
「今日は、まるで盆と正月のようじゃな」と幼げに嗤っていらつしゃる。その眼のなんと澄んでいらっしゃる事か、吸い込まれそうです。
「邪魔者は退散退散」無邪気に気を使う。
なんと言ういい人たちなのでしょうと感心する。
「さあさ、お上がり、囲炉裏の近くへ」
私は初めて良寛さまの声を聞いているのに何度も何度も聞いた声のような気がしている。
「はい」
「この様に美しい比丘尼を見るのは初めてじゃ。ほんに美しいな」、少しはにかまれる。その動作がまたいじらしいと映る。
もっともっと「貞心は美しい」と言ってください。もつと・・・。言われれば言われるほど美しく咲きましょう
。
良寛さまに私の輝きを魅せなくては・・・。
私はじっと良寛さまを見る。夜空に瞬く多くの星の中から一つだけ見付けて目を据えて見るように・・・。
「やっと捕まえた!」と胸の内で言葉を落とし、
「初めてお目にかかります。長岡は福島閻魔堂の貞心でございます」
「ああ、この、わたしは、りょうかん、です」
なんと言う汚れのない面差しか、その剃り落としたような頬に少し赤みが射している。痩せた身体がお労わしい。
皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・
恵 香乙著 「奏でる時に」
あいつは加奈子を抱いた。この日から加奈子は自分で作った水槽の中で孤独な魚と化した。
山口小夜著 「ワンダフル ワールド」文庫本化決定します・・・。
1982年、まだ美しかった横浜―風変わりなおんぼろ塾で、あたしたちは出会った。ロケット花火で不良どもに戦いを挑み、路地裏を全力疾走で駆け抜ける!それぞれが悩みや秘密を抱えながらも、あの頃、世界は輝いていた。大人へと押しあげられてしまったすべての人へ捧げる、あなたも知っている“あの頃”の物語。
山口小夜著「青木学院物語」「ワンダフル ワールド」の文庫本・・・。
作者のブログです・・・出版したあとも精力的に書き進めています・・・一度覗いてみてはと・・・。
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環境問題・環境保護を考えよう~このサイトについて~
別の角度から環境問題を・・・。
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