yuuの夢物語

夢の数々をここに語り綴りたい

今日は暑い・・・夏日か・・・。

2007-05-21 16:47:05 | Yuuの日記


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長らくほって置いた「砂漠の燈台」を書くことにしました・・・。今まで書いたものをここにアップして続きを書き始めます・・・。3回4回くらい読まれた方はご辛抱を・・・。

砂漠の燈台

                          
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 あの日から、そう、あの時から変わったのです。帰りの新幹線の中でスクリーンのように窓に映し出される風景の流れをじっと眺めながら、

「人生、こうでなくては面白くないではないか?」と思ったの。では、面白いって事はどうなのかって問われれば、あのときは応えられなかったでしょうが、今でははっきりとこうなんだって言えるのです。そんなに歳月が通り過ぎたって事はないのに。女って強いって思う。そして、また哀しいって思うのです。

 もう五年、私も二十四になりました。あなたのことは、綺麗に心のフイルターで濾過されて美しい思い出となって私の記憶の中に棲んでいるのです。躓いたとき、落ち込んだ時、その記憶は蘇り私を叱り励ましてくれました。

「人生、こうでなくては面白くないではないか?」って。

 こうして、五年振りに手紙を出しているのは、あなたのお父様にお会いしたからなのです。たぶん、お父様はあなたに私と会ったと言う事はおっしゃられていないことでしょう。

 私が新宿から地下鉄銀座線に乗って有楽町へ上がって行きますとお父様が有楽町マリオンの方からこちらへゆったりとした足取りで来られている時でした。数寄屋橋公園では相も変わらず婦人会とかライオンズクラブの人達が華やかなユニホームに身を包み、ボランティアのチャリティ募金を誘っておりました。その声は人混みの衣服に吸収され、また、ビルとビルの合間を驅け抜ける風に流されていました。お父様は無碍に通り過ぎることのお出来になる方ではございません。何がしかの寄付をしたのでしょう、赤い風船を空に泳がせながらはにかんでいたのです。私はハッとしてそこに立ち竦んでしまいました。そして、存在を隠すようにうつ向いたのでした。「栞さん!しおりさんでしょう」

 少しかすれた声が頭の上から降ってきました。そのとき、初めて気づいたのですけれど、あなたの声ではないかと耳を疑うほどでした。それ程良く似ていました。いいえ、そっくりだったと言うほうが素直な表現でしょう。五年前よりは細くなっていらっして、グレーのスーツがとても似合っていて、自然に任せたヘアーにはすっかり白い物が多くなっていらっして、瞳からこぼれる光は柔らかい和やかな物でした。
「はい」私は見上げてすぐ視線を足元のタイルに戻して頷いたのでした。
「何か私に言う言葉はありませんか?」少し湿った言葉がヒールの先で砕けました。
「いいえ、何もありませんわ」
「そうですか、言って頂いたほうが・・・楽に・・・。わがままでしたね、それは。お元気そうで・・・垢抜けしていて・・・確り大地を・・・」申し訳なさそうにおっしゃって、それから呟いたのでした。
「はい、おじ様にはこう言うと生意気だ、知った被りをしてと叱られるかも知れませんが、素直に「はい」と言えるのです」
 恨み事の一つも言って上げたほうがお父様は気が楽になるのだってことはわかっていたのですけれど、先程も申しましたようにあなたとの事は濾過されていて純粋な物へと昇華していましたから、汚したくなかったから、恨みつらみは言うと心を汚すことになりますからね。
「有難う。すっかりレディになられているのですね。私は、今日こちらで友人の出版記念パーティがあるのに招待されましてね、時間があればいいのですが。あなたの貌を、溌剌とした姿を見ることが出来ただけで今までの心の塊が溶けていくようです。ここにチェツクインしておりますが、果たして帰れるかどうか・・・」
 連絡先を書いた紙を差し出されたのですが、すぐに何を思ったか引っ込められて、
「そうです、そうです。私としたことが何を・・・何を血迷っているのでしょう。溢れてくる思いに負けて・・・そっとあなたが通り過ぎるのを見送っていれば良いものを・・・あなたの周囲に暖かい風が漂っているのが分かっていながら・・・」
「いいえ、私はこうして逢えて、栞は元気に生きていると分かっていただければ」
「一期一会、お互いに元気ならまたどこかの街角で・・・」
「ええ」
 やはりあの時、あなたのことが心の何処かにまだあったのでしょうか、あなたの事を切り出されたらどうしょうかと躊躇する心がありました。お父様はその事には一切触れられず、まるで御自分の心を責めているようでした。右肩がお歳のせいか落ちているようでした。私はその後ろ姿が消えるまで見送ったのです。
 ここから、代々木公園の緑がとても綺麗に見えます。この街に緑が目立ち始めたのは・・・。

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皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・。

恵 香乙著 「奏でる時に」
あいつは加奈子を抱いた。この日から加奈子は自分で作った水槽の中で孤独な魚と化した。

山口小夜著 「ワンダフル ワールド」
1982年、まだ美しかった横浜―風変わりなおんぼろ塾で、あたしたちは出会った。ロケット花火で不良どもに戦いを挑み、路地裏を全力疾走で駆け抜ける!それぞれが悩みや秘密を抱えながらも、あの頃、世界は輝いていた。大人へと押しあげられてしまったすべての人へ捧げる、あなたも知っている“あの頃”の物語。

作者のブログです・・・出版したあとも精力的に書き進めています・・・一度覗いてみてはと・・・。
恵 香乙さん

山口小夜子さん

環境問題・環境保護を考えよう~このサイトについて~
別の角度から環境問題を・・・。