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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「藍の衣」ー4-

2021-02-26 19:33:03 | 自作の小説

ーやっと見つけた もう逃がさないー上目づかいで下からねめあげるように見る男は高笑いをした

 

 

 

 

ー4-

 

「美女集め?そりゃあ大変な仕事を仰せつかったものね」

かけてきた電話の向こうで あきら子の幼馴染の日向竜子(ひゅうが りゅうこ)は笑い転げていた

「ま・・・いいや そういうことなら面白そうだし会って話そうよ おいで日向軒まで」

日向軒は駅前バス停横にある中華料理屋

中華料理屋なのに一番人気なのがカレーライス

そもそもどうして中華料理屋でカレーライスなのか ここもぶっ飛んだ感性の血筋なのか

駅前商店街の謎の一つだ

あきら子が日向軒に着くと まだ笑ってる竜子が「おじいちゃん あきら子に美味しいの作って」

調理場に声をかけた

 

裏メニュー 小龍包・酢豚・焼売 小丼に雲呑麺・ミニ炒飯の芙蓉杯のせ・・・・あきら子の好きなモノを知っている竜子の祖父が

特別美味しく作ってくれる

竜子の祖父は 何かとあきら子を可愛がってくれた月静のおじいちゃんと友人だった

 

「商店街の盛り上げねえ・・・いっそこんなイケメンがいますーってサイトに出すとか

ほらね性格はともかく見た目がいいのがそこそこいるから」

「見た目だけならね」あきら子は溜息ばっか

 

「貴人流離譚ってあるじゃない 神社かお寺で調べたら どっか偉い人で流されたとか 押し込められたとか

そういうのも一人くらいは見つかるかも

〇〇伝説作れるかもよ」

 

「〇〇伝説って殺人事件ってつけたくなるからイヤだ」

 

「注文のうるさいコね相変わらず 多少はヤマっ気も出さなきゃ」

出来上がった料理を受け取りに階段を降りながら竜子が笑う

すっきり色白 竜子も黙っていれば楚々たる美人

日向軒は勿論美味しいのだけれど 竜子目当ての客も多い

「竜子もミスコン出てくれればいいのに」

「あきら子が出るならね 考えてあげてもいいわ」

あきら子の表情が強張る

「髪を短くして着る服を男っぽく変えてもね あきら子はあきら子なの

負けないで」

 

竜子が励まそうとしてくれていることは 良く分かっている

けれど あきら子はまだ吹っ切れない

恐怖は消えていない

仕事から帰ったら部屋に男がいた

後ろ手で打った110番

男の声を聞いてー気をきかせてくれた電話の向こうの人間が至急パトカーを回してくれた

それで 男がこれまでも部屋に侵入し その画像など男のパソコンにあったとー

 

知らないうちに住所を探り当てられ 

 

ーもう この街に住んではいられないーあの時思った

もう一人暮らしもできないと

 

だから生まれ育ったここへ逃げ帰ってきたのだ

 

「ありがと竜子 感謝してる」

ぼろぼろで戻ってきたあきら子に同居を言いつけ テキパキ物事を進めてくれた竜子

 

竜子は顔の前で手を振る「よしてよ お互いーじゃない」

竜子もその祖父の竜造も あきら子から家賃も受け取らない

「暇な時に手伝ってくれれば いいから お給金出ないけど」と竜子が言い 

「ケチなこと言うんじゃねえ」と竜造

竜造の妻のアキ子はにこにこと笑っていた

 

だから あきら子は日向軒の三階に住んでいる

廊下を隔てて竜子の部屋

三階には 他に使われてない部屋が幾つか

竜造とアキ子夫婦は二階で暮らす

 

そして竜子は男山にこう言った

「おかしな事したら承知しないからね 大切に働いていただくのよ」

「ご安心を この男山にお任せあれ!」

 

「それが安心できないから 念押ししてるんでしょーが!」

年上の男にも強い竜子だった

 

住む場所も働く所もさっさか決めて

「先のことはゆっくり考えればいいの!

人生は長いんだから

この街はほぼみんな顔馴染み

安心でしょう?

男山氏には仕事中あきら子が一人にならないようにしてくれるように言いつけておいたから」

 

「竜子 強い・・・・」

 

「ふふふ・・・ 下手なことしたら日向軒のカレーライス食べられなくなる

ーそう脅しつけたの

男山氏 ここのカレーライスが大好物なの」

 

そうして・・・・・ちょっと落ち着いてから あきら子は月静のおじいちゃんに会いに行ったのだった

だけどおじちゃんは居なくてー

あの人がいたのだ

 

月静秋夜(つきしず しゅうや)

おじいちゃんの孫

東京の大学から大学院に進み何かの研究をしていた人

 

「そうか 君が祖父を気にかけてくれていた あの女の子か

すれ違いだったな 少し前に祖父は死んだ

君のことを自慢していたよ

よくやっていると褒めてた」

 

学校に通いながら少しモデルの仕事をしていると 月静のおじいちゃんには話してた

月静秋夜は まるでドラマで観る大正時代の書生のような和服の中にシャツ そして袴と ひどく古風な恰好をしていた

あきら子はかなり無遠慮に眺めていたかもしれない

秋夜の方から「この恰好は・・・ちょっとした趣味だ」と言った

秋夜とあきら子が会うのは随分と久しぶり

 

秋夜がこの山荘を離れた時 あきら子は中学生だった

大人になってみれば4歳の年の差は たいした違いはないけれど

子供の頃は とても頭が良いと評判の秋夜は自分とはかけ離れた存在に思えた

 

「大学で研究してるって聞いてました」

「ああ・・あれはやめてね 祖父の病気もあって出戻りさ

山の隠居で 山歩きをしているよ」

 

それ以上 深くは訊けなかった

それでも時々 月静のおじいちゃんの墓参りに行ったついでに寄ったりする

不自由していることはないかと尋ねに

 

でもそれは口実で 亡くなったおじいちゃんの話をしたいのだ

あきら子の両親と秋夜の両親は同じ交通事故で死んだ

秋夜の父が運転していてー

峠のカーブ 誰かの車が四人の乗った車にぶつかり落とした

誰かは分からないままだ

 

身寄りが無かったあきら子の親代わりとなってくれたのが 月静のおじいちゃん

あきら子がこの地を離れないでいいように どうやったのか手を打ってくれた

学校がある平日は 月静のおじいちゃんの親友の日向軒の竜造が引き受け

竜子と学校に通う

休みになれば月静のおじいちゃんの山荘で過ごす

 

ミスコンや商店街盛り上げイベントを話のネタに山荘をあきら子が訪ねると 見知らぬ女性が居た

「あ あの月静さんはー」

その女性の美貌に あきら子は少し焦った

美しい人は多く見てきたつもりであったけれど この女性は格が違う

まるで別世界の住人のような不思議な雰囲気がある

「あなた この雑誌の人?」

眺めていた本をぱらぱらめくり あきら子に問いかけてくる

 

それは 確かにあきら子が載っている雑誌

月静のおじいちゃんは買ってもくれていたのだろうか

「はい ええ 以前ちょっと仕事してて」

 

「では もうやめてしまったのね」

「はい もう出来ません」

 

そんな会話をしているところに秋夜が帰ってきた

「ああ 会ったのか あきら子ちゃん こちらは銀 季夜(しろがね きよ)さん

遠縁でね 静養に来てる

季夜さん 死んだ祖父が可愛がっていたあきら子ちゃん

男の一人暮らしを案じてくれている

必要な買い物があれば頼むといい」

 

「そうか 着替えを頼めるかな 

ここにあった着物を使わせてもらっているのだが 動きやすいいま風の

そうこの本にあるような

そんなものも着てみたいと思っている」

 

「ここは片田舎だから そうそう洒落たものはありませんが

どういうのが良いか その本から選んでくれませんか」

 

あきら子が言えば 季夜は長椅子に一緒に座って 自分にも似合いそうなものをみてくれと言った

 

買う品が大体決まったあたりで あきら子は寂れた商店街に人を呼ぶイベント話し合いについて二人に教える

 

季夜さんが出れば優勝間違いなしだけれど 他の参加者から恨まれそう

美しい 恐ろしいほどに

 

なのに気さくなー

 

不思議な女性(ひと)

そう あきら子は思ったものだ

 

 

 

 

 

 

 

 


「ノア 約束の舟」 (2014年 アメリカ映画)

2021-02-26 15:09:30 | 映画

BSテレ東にて放送されたのを観ました

解説が米田匡男氏

最初に映画紹介があります

この映画に関するちょっとしたお話が嬉しくて

 

 

旧約聖書からのスペクタル映画の系譜を受け継ぐ迫力のある映像

 

ま・・・ノアの箱舟は 神様が人間に罰を与える為に起こした洪水で悪いー存在する価値のない人間は滅び ノアの言葉を信じて箱舟に乗った者だけが救われた

なんて話なのですが

 

誘惑に負けて禁断の果実(リンゴに例えられること多し)を食べてエデンの園を追われたアダムとイブはカイン・アベル・セトと3人の息子を得るも

カインはアベルを殺して逃亡し

見張りの天使と呼ばれる堕天使たちに命を救われた

カインの子孫は文明を築いたが 同時に悪も撒き散らした

三男のセトの子孫のみが 神が創造されたものを大切に思い守り続けた

セトの末裔たるノアが成年に達しようとし 父親から受け継ごうとしていた

父からの言葉「常に正しい心を忘れず神と歩めるように」

ノアが受け取るべくシルシは 略奪に現れたカインの末裔の王トバル(レイ・ウェストン)に奪われ ノアの父は死にました

それから一気に歳月が流れ ノアはイケメン少年からくたびれたオッサン(ラッセル・クロウ)になるのです

(過ぎる歳月は残酷です)

妻ナーマ(ジェニファー・コネリー)と子供達と幸せな暮らし

ですがノアは夢を見るのです

全て水没した世界

「地上を滅ぼす」神の言葉

神の言葉を信じ 目的地へ向かうノア一家は略奪され人々の死体転がる場所も通ります

 

傷ついた少女に気付き手当始めるナーマですが 略奪する危険な一団が出現

逃げようとする前方は危ない場所

そこに現れた動く巨石の塊のような見張りの天使たち

彼らは人を守り助けたゆえに 神に背いたと姿を変えられてしまった もとは光輝く天使でした

姿を変えられてしまった見張りの天使たちの為に戦ったのはノアの祖父にあたるメトシェラ(アンソニー・ホプキンス)のみ

ノアはメトシェラに会おうとしていました

多くの見張りの天使たちは人間に絶望しているのか ノアの言葉を信じませんでしたが 一体の見張りの天使は信じてくれて ノアを祖父のメトシェラに会わせてくれます

 

ノアにアダムと同じ輝きを感じ 手を差し伸べずにいられないーと

 

年老いたメトシェラ登場

ノアの長男のセトに話しかけます

セトは答えます「この世で一番好きなのは野イチゴ」

メトシェラは野イチゴの味も忘れてしまったが食べたくなった」

そうしてセトを眠らせておいてノアとの話

「人が行いを改めなければ神はこの世を滅ぼすだろう」

ノア「洪水だ 洪水で滅びる

何かはまだわからないがすべきことがある」

 

洪水に備えて巨大な箱舟を作り始めたノア

「この人間に力を貸してやろう」と見張りの天使たち

 

果物や穀物の種 様々な動物たちも舟に積み込みます

神様のお力で動物たちは災厄が過ぎるまで眠っているようです

 

行き過ぎた信仰心は人の心を壊す 狂わせる

(なんて働き者の見張りの天使さんたち ずうっと箱舟の為に働き続けてくれています 実に健気です)

 

引き換えて人間達は

 

どうして共存共栄に考えがいたらないのか

ノアの父親も殺した連中が押し寄せてきます

箱舟を奪おうと

ここでもノアに味方して見張りの天使たちが戦ってくれるのです

いったんは引き揚げたカインの末裔ら一味

 

長男のセト(ダグラス・ブース)には かつてナーマが助けた少女イラ(エマ・ワトソン)が妻となり

次男のハムにもノアが妻となる娘を見つけてくるはずでした

しかしノアは人間達の余りの荒廃ぶりに 誰も連れてきません

このままでは大人の男になれないと嘆くハム(ローガン・ラーマン)

 

ナーマは息子達三人はそれぞれに良いところがあるのだと ノアに訴えますが

ノアはそれを罪となる欲としてみています

 

自分が神の代弁者と思い上がった人間ほど手に負えない者はない

自分達だけが選ばれた者として命永らえるならば 多くの人間を死なせても心がいたまないのだろうか

ノアは聞えたはずの神の言葉も聞こえなくなりヴィジョンも見えなくなります

 

ハムは自分で妻となるべく娘を捜しにいきナマル(マディソン・ダヴェンポート)と知り合い家族のもとへ向かいますが

ナマルは足を取られ そこに箱舟を襲おうとする一団が駆けてきて

ハムを見つけ走ってきたノアは ナマルを救うことを諦めハムだけを抱えて戻ります

 

救いを求めながらナマルは大勢の人々に踏み潰されてー

 

見張りの天使たちは斃されてー

斃された天使たちは光となり天に戻っていきます

押し寄せる波

大量の凄まじい水

 

どさくさにカインの末裔の王は箱舟に隠れ

かつて腹部にひどい負傷をし 子供は望めないと思われていたイラは ノアの祖父メトシェラの自分の命と引きかえたような祝福で産める体になっておりました

 

メトシェラは洪水が来ると知りつつ セトの言葉に食べたいと思っていた野イチゴを見つけ 満足そうに口に入れて水に呑みこまれていきました

 

ハムはカインの末裔の王が乗っていることを知ります

カインの末裔の王の言葉に そちらへ行ってしまったかと思われましたが

 

ノアはイラが妊娠したと知り 怒ります

生まれた子供が 人を増やす女性であれば刺し殺すと

 

セトは自分の子供なのだぞと

ノアの妻ナーマも説得を頑張りますが

既に狂ってるようにも見えるノア

 

いっそ脱出しようと小舟を作ったセトですが ノアが燃やしてしまいます

そうしてイラは産気づき

生まれたのは女の双子

 

自分の孫さえ殺そうとするノアを放っておいていいのか 殺すべきだとハムを唆すカインの末裔

ハムはノアを誘い出すまではやりました

カインの末裔とノアの戦い

自分達の子供を守ろうとするセト

 

戦いでノアが不利になった時 ハムは父親のノアを守る為にカインの末裔を刺しました

カインの末裔が持っていた ノアがうけつぐべき品 それがハムの手に

 

ノアの前に立ちふさがるナーマ

その言葉にも聞く耳持たないノア

 

イラを捜します

 

泣いている赤ちゃんを抱えているイラは せめて泣き止んで眠るまで 殺すのは待ってほしいと言います

 

ただのDVオヤジになってしまったかノア

すやすやと眠る赤ちゃんを見るノアの表情が変わっていきます

刃物は振り上げておりますが

そうしてノアは赤ちゃんたちに接吻をしました

(殺すことは)「わたしにはできない」

 

洪水はひいていき空を鳥が飛びます

 

ノアについてー途中から人格崩壊したか とっつあんー

 

大地に果実は実り 静かな浜辺

ノアは一人で暮らしています

 

子供がいて仲睦まじいセトとイラ

 

ハムは兄たち一家を羨ましそうに眺めています

かつてノアの父からカインの末裔の王が奪い 今度はハムの手に渡った品をハムは置いて この地を出ていこうとしています

ハム「居場所がない 義姉さんから また命が始まって良かったよ 

(生まれてきた子供たちは イラから)きっと優しさを学べる」

見送るイラ

 

ノアにイラは問いかけます「ハムは戻ってくる」

ノア「直せない綻びもある」

イラ「何故あの娘たち(自分が産んだ子供)を許してくれたの(殺さないで)」

 

ノア「あの子たちの顔を見た時 愛情しか感じなかった」

 

イラ「(家族と暮らさずに)何故 一人でいるの」

 

ノア「神を裏切った」

 

イラ「神はあなたを選ばれたの そしてあなたは慈悲を選んだ

愛を選んだ よりよい人間として生き直す機会を」

 

ノアは一人土を耕す妻ナーマのもとへ行きます

 

(もう ねえ よう奥さん別れんと辛抱しなはった

こういう時は謝るもんやで おっさん

ずうっと奥さんにどえらい苦労をかけはったんやさかいにな

無茶苦茶な関西弁で感想が浮かびます・笑)

 

「神は御自分をかたどったアダムに万物を託された

父に私に息子たちに

そして受け継がれていく 子孫たちに

 

お前達に託される

責任を持ってつとめよ

産めよ 増やせよ 地に充ちよ」

 

 

戦って最後は光(天使のもとの姿)となって天に戻りはったけど 見張りの天使の方々

ただただ有難いです

苦労ばっかでねえ

 

ハムは不憫だし


「藍の衣」ー3-

2021-02-26 09:56:14 | 自作の小説

 

其処にいるのは魔性の者

異界の住人 此の世ならざる者

普通の人にはかなわぬ魅力持つ

あたしは無様に繰り返す

ー連れていかないで あの人を連れていかないでー

 

けれど その魔はあの人と余りにも似合いの好一対

あたしは勝てない 勝てない

[あきら子)

 

ー3-

シャッターを下ろす店が増えさびれる一方の商店街がある

1時間に1本しか停まる電車ない駅ではあったけれど 一応駅前商店街

賑わった時代もあったのだ

常盤森(ときわのもり)商店街

まっすぐ歩いていけばーときわ神社

ときわ駅近くの駅前商店街

ときわ神社はかつては他の名前だったが 当時の神主が余程ミーハーな性格であったのか 常盤御前のファンで神社の名前を変えてしまった

オタクの元祖のような人間だったーと感慨深くその子孫の当代の神主は語る

近隣の者は「血は争えぬ」と当代の神主について言う

その神主の息子は名を都々崎義経(つつざき よしつね) 身長176cm 血液型A型 細面で少し神経質そうなイケメンだ

 

この義経の同級生で便利屋を営むのが 男山一郎(おとこやま いちろう) 身長187cm 血液型O型

口癖が「この男山にお任せあれ」

友人たちからの評価「いつも任せて 安心でない」

 

この二人の学友で下着・小物を扱う柳原商店の息子でデパートの出店にいることが多いのが柳原錬(やなぎはら れん)

身長185cm 血液型B型

父親の二郎が作家の柴田錬三郎のファンで一字とって「錬」と名付けたそうだ

母親の名前は良子(よしこ)

 

ときわ駅にはデパートはない

デパートはときわ駅への支線が出ている少し大きな駅の傍にある

 

このさびれる一方の商店街の将来を案じた人々が どうにかすんべ

いややらなきゃなんべえーと集まって 話題を呼び俺達の力でどうにかするんだ!と気勢をあげたが

そうそう良い案も涌くでなし

 

取り敢えずミスコン ミス・コンテストはどうだろうとーーーーーー

当世 出場者がいないと話にならないと 出場者集めから始めることになる

 

ド田舎のささやかな商店街のミスコン

出たがる人間はそうそういない

 

話し合いは ひど~~~くのどかに進んだ

「出場者が せめて10人はおらんと話にならんやろ」

「水着審査などは いかんぞ」

「アイデアもない能無しに限って どんな案にも反対したがる」

「なんならイケメンコンテストにしてもいいが 盛り上がるとは思えん」

「男子校なら女装コンテストやってるが」

 

「とんでもないのが出てきたら お客様に目の迷惑だろうが」

 

住人達も自由だ

ゆる~~~く生きている

どうにかしなきゃーという思いは皆持ってるのだが

 

集まりのお茶出しをしていた百合野あきら子 愛称あきらはーやってられないーと思った

身長170cm 彼女は便利屋「男山」の従業員

理由あって かっては長かった髪をばっさり切って短くしパーマをかけた

 

あきら子の同級生で化粧品店の娘の木原圭子(きはら けいこ)は身長もあきらと同じ

母親からミスコンに出て優勝するように厳命されている

 

彼女達より2学年下で喫茶店の看板娘の香平(かひら)さやか身長165cmもミスコンに出場予定

こちらは常連客からの推薦だ

「やっぱ さやかちゃん出なきゃダメっしょ」

 

パン屋の娘 身長162cm 玉矢緑(たまや みどり)

 

市長の娘 身長165cmの安南(あんなん)みちる

華やか美女だが性格に難あり

「こんなド田舎のミスコンなんて出るだけ恥だわ 優勝以外だったら承知しないから」

 

このみちるとは犬猿の仲の西岡勝美(にしおか かつみ)

身長163cmでお好み焼屋の娘

「化粧ばけ女に負けやしないわ」

 

酒屋の娘で多鶴摩千子(たづる まちこ) 身長168cmで 大人しいが芯はしっかりしている

 

半ば駆り集めのように強引に出場を決められてしまった娘達だが

まだまだ数が足りない

あきら子は雇主の男山一郎から 便利屋の仕事で顔も広いはずだから ときわ駅近隣の住人だけでなく その孫やらひ孫とかまでも そこそこ美人を見つけてこいと指示された

 

ーそもそも そこそこ美人ってなんなんだ

評価基準がわからない

 

草むしり 電球替え 病院までの送り迎え 買物代行・・・・・

そこそこに仕事はある

そのうえミスコンの出場者探しですかー

 

あきら子は溜息をつく

 

生まれ育った常盤森商店街

のどかな田んぼひろがる景色

春にはれんげ草やらしろつめ草で覆われ おたまじゃくしを追い

秋には山の麓で柿の実が色づく

電車の窓をあければ藁の匂い

 

あきら子はこの街が嫌いではなかった

だから戻ってきたのだ

この街に育てられたと思っているから

その故郷の役に立つのなら何かしたいとは思っている

だが しかし

ーミスコンだけじゃあ どうにもならないよねえ・・・・・ー