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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「よたばなし」-23-

2019-09-08 16:22:50 | 自作の小説
闇に消える・2

「お前は優しすぎるんだ 呆れるほどのお人よしー だがな・・・無茶はするな  いいな
これでも心配してるんだ 俺の心配なんざ お前にとって何の役にも立つまいが・・・」

ー追想ー

立ち入り禁止区域となり その後で火事となった・・・しかも完焼
早々と整地されたのに まだ立ち入り禁止は解けていない・・・
街には寒々とした場所が増えている

監視の人間が見廻っているから昼間からおおっぴらに潜り込むのも面倒だが 夜に懐中電灯を使う方が目立つーと桂が話す

「同じ大学の学生がな肝試しとかで出かけていってーそれきりだ そいつらが行った場所がここだよ」

まだ火事にはなっておらず建物が残っている・・・・・
例によって高いバリケードで覆われてはいるが
そこは病院だった
以前に鳴海が見た時は そこそこ流行っている・・・・多くの人が出入りしているようであったのに
いつの間に廃院となったのか

桂が荷物から取り出したのは縄梯子
時代劇の泥棒かよーと鳴海は思う

案外 器用に上ると桂は鳴海をせかした

「馴れたもんだな」と鳴海が言えば 縄梯子を巻き取ってリュックに仕舞いながら桂は表情も変えずに言った
「大人の常識だ」


建物は静かだ・・・・・
本来なら自動ドアの入り口にはご丁寧にも鉄の壁が立ててある

まるで中の何かが出て来るのを怖れるように・・・・
窓にも外から鉄の壁が取り付けてある

「しかし貴水(たかみ)らは何処かから入った 入れたはずなんだ」建物の周囲を歩きながら桂が考え込む

「外付けの非常階段はどうだ あの一番上から屋上へよじ登り 中へ入れないか」
鳴海が言えば 桂も頷く
「駄目モトだな」

桂が頼りにするだけあり 鳴海は身が軽い 腕力もある
今度は先に鳴海が屋上へ上り桂を引っ張り上げた

「思った通りだー」と鳴海は言った「外からは囲えたが 中には入れなかったんだ 中には鍵がかけられていない」

屋上から中へ入るドアは風にバタバタ揺れていた

ぶるっと鳴海は武者震いをする「鬼が出るか蛇が出るか」
桂に続いて鳴海も建物の中へ入りかけて振り返る

「どうした鳴海」

「いや 今 誰かに見られているような気がしたんだ」

「俺は何も感じないぞ」

先に階段を降りていた桂の足が急に止まる
ライトをつけて確認
「血の跡がある」

壁に黒ずんだシミがある

降りる階段にも点々と血の散ったあとがあるのだった

「まるでゾンビ映画だな」鳴海が言えば桂も同様に呟く「立派なお化け屋敷だ」

五階建ての病院の階を上から順に回りつつ中の階段を降りていく

あちこちで壁や床に血のシミが見つけられた
この病院で何が起きていたのか

建物の中を調べながら桂は「引き返そう」とは言わなかった

一階まで降りてきて玄関ロビーの近くで桂が立ち止まる
横倒しになった自動販売機があった

「あれなー」と桂が言う
「自動販売機の横のゴミ箱に引っかかっている布の切れ端
貴水が着ていた服と同じ柄だ・・・タータンチェックみたいな格子柄の中に紫陽花の花が描かれてて・・・珍しいなと思ったから覚えている」

「貴水がここに来たのは間違いないってことか」

二人は周囲を警戒を帯びた目つきで眺めまわす
電気は切られていないのか薄暗い夜間用の照明がところどころに点いている

建物内部を見て回り 残るは地下室への階段だけとなった時 桂が言った
「トイレに行っておこう」
何かがあったとして漏らしながらという事態は避けたい 恰好悪すぎると言うのだ

トイレを使う前にも内部をチェック

隣り合った個室に入った桂が言う
「ゾンビなら日の光があっても平気でいるから 地下室に何か居るとすれば吸血鬼かな」
「面白いがあれは小説や映画 ツクリゴトだろ」

「まあ・・・そうだが 言い伝えや伝承には多少の本当にあったことが含まれているかもしれないだろ」
そう桂は薄く笑った

「ここまで来といて何だが桂 お互い気をつけような 幾ら真実の為でも死んだらつまらないぜ 命あっての物種ーだろ」

「ああ 鳴海はいよいよ危ない場面になると肝が据わるんだな 纏う雰囲気が変わる
俺に何か起きたらーそのまま放っておいてくれ 
かなり俺は恐ろしがっている きっとこの先はかなりやばい」


それでも引き返すーという考えは桂には無いのだった
「貴水はただの学友じゃない 高校こそ違ったが幼馴染だ 中高校時代にもよくネタをくれた
好奇心旺盛の野次馬根性・・・軽薄馬鹿と見る奴もいるが
それだけの男じゃない シンも持ってる
貴水がここに入る事を言ってきた時 同行しなかったことを後悔している
だから鳴海を巻き添えにしていいーって理由にはならないが」

ここまで言って桂は 鳴海を横目で見て笑った「お前なら何かやってくれるーそんな期待する気持ちがあるんだ
勝手な話だが どんな時もお前なら生き延びてくれるって」

心の中で鳴海は呟くーあのなァ・・・-全くもってのーあのなァ・・・だと
「知ってるか桂 そんなふうにペラペラ喋る時ってな 映画や小説だと死亡フラグが立った状態なんだぞ
首 持ってかれないように気をつけろ」


鳴海と桂はトイレの壁に立てかけてあったモップ片手に地下への階段を降りて行く
間に合わせの武器としては甚だ心もとないが 無いよりはマシの二人だった

廊下を少し進むと何かの気配が伝わってくる

ネズミの騒ぐ声
病院の地下にネズミ・・・二人は顔を見合わせる

何が起きているのか?!


ネズミが何かから逃げるように走ってくる
しかし捕まったようだ
尻尾を掴まれたネズミはキーキー歯をむき出すもー頭から喰われた
食べているのは人間の形をしたモノ

そのモノは首が傾いている
いや半分首が無いのだ
何かに食べられたように

体に穴が開いている

桂が呟く「貴水・・・」


傾いた首の上の頭には・・・その顔は口からネズミの尻尾がはみ出している
尻尾は まだ動いていた

その口が桂と鳴海の姿を認めて だらしなく笑った
寄ってくる
穴だらけの体なのに動きが早い

桂は貴水だったモノの姿に動けずにいる

大きな口を開けて桂に迫ったモノの頭を鳴海はぶっ叩いた

一度は倒れるが またゆらりと起き上がってくる

「逃げるぞ 桂」
鳴海が叫ぶ

なんとなれば 奥から いずれも体に穴が開いた集団が現れた
「来い!桂」


桂は泣きそうになっている「なんでだよ貴水 なんでだよ」

貴水だったモノの口が桂の足首に近づく


鳴海は飛びだしてきたモノの一つを又ぶっ叩く

そうしながら器用に桂を引っ張った

その鳴海を引っ張った者がいる


桂ごと鳴海を階段の上までひっぱりあげた者は 地下へ下りすぐに戻ってきた

自動ドアを手で押し開け 外の鉄板を押し倒す

桂と鳴海の襟首掴みずるずると外へ引き出し

二人の襟首を掴んだまま 高い塀を軽々と飛び越えた


数分かかったかどうか

「噛まれてしまったか」
桂と鳴海から手を離した者は 桂の足首を見ていた

「君はー朝の人だよね あの良家のお嬢様ふうだった・・・」
確かめるように鳴海が尋ねる
あの清純派と見えた面影は今 目の前に立つ人物にはない
年齢不詳の・・・黒い革の上下に身を包み

「ああ 女はね髪形と化粧と服装でいかようにもイメージを変えられるのよ」

そう言いながら桂の足首に手をかざす
「穢れて澱み腐った血が流れ込んでいる」

鳴海を見上げてその者は言った「ちょっと押えていて」

鳴海が桂を押さえると その者は桂の足首に手を当てた

桂が悲鳴をあげる そしてぐったりした


「何をしたんだ」

「地下で見たアレらと同じ生き物にしたくないでしょ」

「一体 君は」

長い髪を後ろで無造作に縛りクールな美貌の女は「騒ぎにならないうちにここを離れましょ お互い人目につきたくないはずよね」
桂を左肩にかけてそう言った



カレーが食べたくなりました

2019-09-08 10:47:28 | テレビ番組
テレビ朝日系 金曜日放送「セミオトコ」第7回より

2019年9月13日 最終回予定

セミオ(山田涼介)本当はセミ 

大川由香(木南晴夏)うつせみ荘の住人 おがわゆかだから愛称「おかゆ」 おかゆって呼ばれることも夢だった

大川ヒロシ(高杉亘)由香の父親

大川サチコ(田中美奈子)由香の母親

ヒロシとサチコはなかなか激しい夫婦喧嘩を展開するが仲が良い

大川健太(三宅健) 由香の兄
かつて由香が知らずに泥棒を通報すると 捕まったのは兄の健太
居づらくなり由香は実家を離れ うつせみ荘で一人暮らしを始めた
兄はヤンキーでバカだが 根はまっすぐ 悪い人間ではない



うつせみ荘の住人たちードラマ開始時は個人個人バラバラであったが 突然出現したセミオと関わり合ううちに 住人は仲良くなり 和気あいあいと一緒の時間を過ごすようになる
まるで大きな一つの家族のように

庄野ねじこ(阿川佐和子)

庄野くぎこ(檀ふみ)

ねじことくぎこは姉妹 些細なことで言い合うが理解しあっており 仲の良さの裏返し


岩本マサ(やついいちろう)

岩本春(山崎静代)


熊田美奈子(今田美桜)蝉としてのセミオの寿命の終わりが近付き・・・もしや由香も命を断とうとしてるのではと気付きー
ある思い付きを提案 懸命に行動


小川邦夫(北村有起哉) 何かといえば「余命が短いんで」と他人との関わりを避けてきたがーいまは人との関わりを愉しんでいるように見える


由香の職場の女性
桜木翔子(佐藤仁美) 無愛想だが根は優しく温かな姐御肌 由香の良さも認めている


地中から出てセミとなり それが人として現れるーしかも空気のように存在感なく地味な由香の好きなスターの容姿で・・・・・
セミオは地中にいた頃から 時々聞こえる由香の優しい響きの声に惹かれていた
会ってみたいと思っていた

セミオと由香は心通じ愛し合うようになるのだけれど その過程において二人は うつせみ荘の他の住人達にも変化を与える
住人達が心に持っていた良いものが外に現れるようになる

設定自体ファンタジー 有り得ない話だから とんでもない方向へ行ってもおかしくないドラマ

薄い笑いのドラマに流れず うつせみ荘はユートピアに変わっていきます
誰しもが「住んでみたい」と思える場所へと


たとえば 死ぬ日が近い 死にかけの人間にーなどと言って どんな事にも参加を拒み 荷物一つ運ぶこともしなかった小川

いつか うつせみ荘の住人達と打ち解けたけれど
今では他の住人たちのことにも一喜一憂するほどに

皮肉や毒舌からもトゲは消えた



由香がセミオが死んだら 自分も死のうとしていると知っているセミオは由香に言います

蝉の命は限りあるけれど
「生きることは素晴らしいって歌うことが僕らの使命なんです


僕はおかゆさんだけの為 うつせみ荘へー」

セミオは言う
自分達は確かに愛し合った
だからこそ
「この一緒だった時間を力にして下さい それが僕の希(ねが)いです」

セミオが死ぬのは嫌だと泣き崩れる由香
うつせみ荘の皆が一緒に過ごす場所

由香が生きていくことこそセミオのねがい・・・・・


うつせみ荘の住人はカレーを作る
そうしてセミオは大好きなメープルシロップを背中に隠し持っている
でも みんなお見通し♪

肉を炒めている小川が出せと言う 隠し味としてならいいだろうと

隠し味と聞き
セミオは鍋の蓋に隠してこっそり入れようとする
住人みんなが見ているのに
セミオは隠し味の言葉の意味を知らないから無理もない

笑いに溢れる中 カレーが出来上がり みんなで食べる
小川はやや微妙な表情だが

セミオは最高のカレーと喜ぶ

(このカレーを食べる住人達がとても楽しそうでカレーが食べたくなりました)

小川はセミオに声をかけ 二人は外へ

夜景がきれい
夜の街を電車が走る 
絵本のようでもある


「聞いてくれるか」と小川

セミオ「はい・・・」


小川「わからないなら 聞いてくれるだけでいい 



人の命を助けたくて医者になった
・・・で 自分なりに精一杯やった

多くの人の命を救った
でもー 自分は救えなかった

自分の体は重い病気で長く生きられない
治すこともできないってわかったんだ

で 医者をやめた

いつ体が動かなくなるかわからない

だからやめるべきだと思った

そしてすべての人間関係を捨てた


沢山 見てきたからな
愛する人や家族が亡くなって 悲しむ姿を

ー誰もそういうふうにさせたくないと思ったんだ



・・・猫 知ってるだろう 猫
本当かどうか知らんが 猫は死ぬ時が近付くと姿が見えなくなってしまうんだ
誰かの目の前で死ぬことを良しとしないらしい


そんなふうに死にたいと思ったんだ

本当なんだよ 余命が短いって
ギャグみたいに言っているけど
あれ 本当なんだ


誰も好きにならず 自分を好きになられずに死のうとしたのにー
人を好きになる一方だ」


セミオの前で本音を吐いた小川
その言葉を涙で受け止めるセミオ

小川もセミオも涙

このセミオの泣く姿が涙の演技が美しかったです

セミオと小川がみんなが居る共有スペースに戻ると セミオと小川のデザートが無い!

半泣き顔になるセミオ からかうように「あるよ」と笑顔でお皿を出す由香


同じく自分のデザート無く椅子に崩れる小川
こちらも美奈子がお皿を出してくれる

幸せそうに食べるセミオと小川

美味しそうに食べているセミオの姿が半ば透けてくる
気付く由香を始めとするうつせみ荘の住人達

その時(セミオの死)は近いのだ



ドラマの途中で由香の両親と兄が会いにくる場面もあります

かみさんのクジが当たって 

両親と兄は くるくる回って踊るセミオと由香の姿を見て 
由香が幸せそうなので こっそり帰ろうとしますが 
由香 両親を発見

どうして来たの
かみさんのおかげで


由香はかみさんを神様のことかと思いますが
くじをしていた方が紙さん

こんなふうにギャグもちりばめてあります
とぼけた笑いもいっぱい

家族との会話で由香は 自分のことを母親がしっかり見ていてくれたこと
家族にとって自分は居ても居なくてもどうでもいい存在じゃなかったことに気付くのです

母のサチコ「くるくる回るの好きだったよね」

小さな由香に回るのが好きならフイギュアスケートでもやるかいーそう言ってくれていた母
自分には無理と首を振ってしまった由香

破天荒で滅茶苦茶な母だけれど 由香の夢をかなえてあげたいとは思っていた
その気持ちが由香には通じず「つまんない」って言葉になってしまっていたこと

放送時間は遅いし設定もセミが人間の姿にーと「おいおい」と思うようなものでしたが
どうしてどうして中身はあったかく 家族揃って観てもいいのではないかという作品に出来上がってました

登場人物もそれぞれ面白くて

仲良くて丁々発止のやり取りを本にもされている阿川佐和子さんと檀ふみさんの関係を生かしたような役柄に


この時間枠
次のドラマは「時効警察はじめました」
12年前の「時効警察」が装いも新たに帰ってくるのだそう
オダギリジョーさん演じる霧山修一朗 勝手に昔の未解決事件を解明しようとする男
麻生久美子さん演じる三日月しずかも以前の「時効警察」と同じ配役です

彩雲真空役は吉岡里帆さんが演じます




北村有起哉さん出演ドラマBSプレミアム「菜々の剣」(葉室麟著「蛍草」より)は先日最終回を迎えました

このドラマで北村有起哉さが演じていたのはヒロイン菜々の仇の轟(とどろき)
大殿様と結託して不正する大商人(本田博太郎)に育てられ この大商人にのみ忠実に生きるよう「裏切るな」と教え込まれて

命じられるままどんな卑劣なことも人を陥れ殺すこともやってきた
けれどひたむきな菜々の心の在り方と言葉に心が揺らぐ

やがて必死な菜々により大商人と大殿の悪事露見

轟は切腹となります

菜々の父を死においやったのも 菜々が働くようになった風早様を陥れたのも大商人の意を汲む轟がしたこと

その切腹の場面で来し方を振り返っていた轟はいっそ爽やかな表情を見せました
「刻限だ」


反対に寂寥滲ませるのは大商人だった男
彼にとって轟は決して役に立たなくなったら自分を裏切れば 切り捨てられるような存在ではなかった
むしろ大切な息子のような存在であったのだと 喪って初めて気づいたのかもしれません




でBSプレミアムのドラマつながりで「ベビーシッター・ギン」
こちらも最終回でしたが

ナニー ナニー最高のナニー♪って曲が耳に残るドラマでした
ギンとして素晴らしい女装姿を見せてくれた大野拓朗さん

ギンが英国へナニーとして渡るところで おしまい


最終回では子役スターが高級寿司店で食べる場面あり
実際に子役スターだった方が当時を振り返る番組を観たことがあり ちょっと重なって
そのエピソードをモデルにしたのかなーと面白かったです

この時間枠では今夜から「盤上の向日葵」(全4回)が始まります

以前(2018年5月21日)に原作(柚月裕子著「盤上の向日葵」)を読んだ時に書いたものです↓



本の帯から
{異端の天才棋士。
本当にお前が殺人犯なのか?




埼玉県天木山中で発見された白骨死体。
遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが捜査を開始した。
それから四カ月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。
向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦の会場だ。
世紀の対局の先に待っていた、壮絶な結末とはー!?}






母の死後 酒浸りとなり勝てもしないギャンブルに狂い雀荘通いをする父親は まだ小学生の子供を新聞配達などさせて働かせ
そのうえ満足に食べさせもせず風呂にも入れず 暴力をふるい

その子供・上条桂介の境遇を知り 元教師の唐沢光一郎は自分に子供がいないこともあり不憫さが増して なんとか桂介を救い出しできれば
養子にしたいとまで思うようにさえなっていたが

それが果たせず 東大に合格した桂介へ贐として大切にしていた初代菊水月の駒を贈る
お金に困ることがあれば役立てるようにと


桂介はそれを大切に仕舞っていたが 将棋が縁で知り合った賭け将棋の鬼のような男に 初代菊水月の駒を所持していることを知られる

詳しい事情も知らぬまま 将棋の対局見たさについていった先で 相手に騙され大切な駒を奪われる


その後 彼は懸命に働いて駒を買い戻したがー



身許不明の死体が持っていた高価な将棋の駒
刑事達は駒からも手がかりを得ようとする

復顔から分かったのは東明重慶・・・将棋の元アマチュア名人


それから上条桂介へとつながっていく



何故 死体は高価な駒を持っていたのか・・・・・


将棋を指して勝つ時 桂介には盤の上に向日葵が見えた
その向日葵は決して明るくはない

亡くなった母の面影
ゴッホの描く向日葵


血の繋がった父親と思っていた男に聞かされた自分の出生の秘密

狂気

近親相姦


IQ140の天才で東大卒業後 就職
起業し成功
その会社を手放し 将棋の世界へ
異例の経歴



その少年時代から現在へ

刑事の捜査の進み具合と交互に描かれる


物語の中で謎が明かされ 警察の手がその身にかかった時 桂介が選んだのは


{-潮時ーそんな言葉が頭に去来する}

{刹那
身を躍らせる
銀色に光る雪が、満開の向日葵に取って代わる。
舞った。
向日葵へ向かってー}



それで終わりの人生ならば 彼は何の為に生きてきたのだろう

本の帯には
{デビュー10年目の集大成。
慟哭のミステリー}

こんな言葉もある