「なんだありゃ。あんなもの今までなかったぞ――」と、ガッチがサトルの肩に駆け上がりながら言いました。「サトルが落ちてきたのと同じドアだ――。どうなっちまってんだ」
「――ぼくにもわからないよ」と、サトルは言いながら、あの不思議なヒゲを生やした子供のことを思い浮かべました。
(きっとあいつに違いない。いや、絶対にあいつだ。必ず見つけてやるぞ)
「おおーい! あんたたちー!」
と、二人の後ろから聞き覚えのある声がしました。
振り返って見ると、二人が泊まった宿屋のおかみさんでした。両脇に子供を抱え、後ろにも男の子らしい子供が二人、ぴったりとおかみさんの後を追いかけるようについて来ていました。
「あんた達よく無事だったね。よかったよかった――」と、おかみさんは二人の所に来ると言いました。「まったくとんでもない事が起きたもんだよ。あたしが外で洗濯物を干してたら、いきなり大嵐みたいな風が吹いてくるんだもの。大あわてったりゃありゃしない。
それで、とりあえずこの子達を助けなきゃって、店ん中まで戻ったんだけど、窓ガラスを割って入ってきた風に、一番下の子をさらわれちまいそうになってね。必死で出入口の柱にしがみつきながら、子供達をかばってたよ。
そしてひと安心したらさ、町のみんなの声があちらこちらで上がって、上がっては近づいてきて、またふっと消えちまう。ほとんど開けられない目で見てたらさ、あたしの店のそばにへんてこなドアがあるじゃないか。あれっ、おかしいなって思ってたら、誰かはわからなかったけど、人が吸いこまれちまってね。ああ、こいつが犯人なんだって、ひらめいたまではよかったんだけど、とにかく必死でさ、なにもできなかったよ。
しばらくして、バタン! て音がしたかと思うと、ピタッと風が止んでさ、ほっとして町の中に出てみると、ほら、ご覧のとおりのありさまさ――」
サトルとガッチは、あらためて町の様子を見渡しました。町は、惨憺たるありさまでした。おかみさんと同様に、ドアに吸いこまれた人を見た人達が、幾人もドアの前に集まり、気持ち悪そうになにやら話しあっていました。その奥のドアの前では、女の人が両手で顔を覆うようにして、泣きじゃくっていました。たくさんあるその他のドアのそばにも、やはり、たくさんの人だかりができていました。
「――ぼくにもわからないよ」と、サトルは言いながら、あの不思議なヒゲを生やした子供のことを思い浮かべました。
(きっとあいつに違いない。いや、絶対にあいつだ。必ず見つけてやるぞ)
「おおーい! あんたたちー!」
と、二人の後ろから聞き覚えのある声がしました。
振り返って見ると、二人が泊まった宿屋のおかみさんでした。両脇に子供を抱え、後ろにも男の子らしい子供が二人、ぴったりとおかみさんの後を追いかけるようについて来ていました。
「あんた達よく無事だったね。よかったよかった――」と、おかみさんは二人の所に来ると言いました。「まったくとんでもない事が起きたもんだよ。あたしが外で洗濯物を干してたら、いきなり大嵐みたいな風が吹いてくるんだもの。大あわてったりゃありゃしない。
それで、とりあえずこの子達を助けなきゃって、店ん中まで戻ったんだけど、窓ガラスを割って入ってきた風に、一番下の子をさらわれちまいそうになってね。必死で出入口の柱にしがみつきながら、子供達をかばってたよ。
そしてひと安心したらさ、町のみんなの声があちらこちらで上がって、上がっては近づいてきて、またふっと消えちまう。ほとんど開けられない目で見てたらさ、あたしの店のそばにへんてこなドアがあるじゃないか。あれっ、おかしいなって思ってたら、誰かはわからなかったけど、人が吸いこまれちまってね。ああ、こいつが犯人なんだって、ひらめいたまではよかったんだけど、とにかく必死でさ、なにもできなかったよ。
しばらくして、バタン! て音がしたかと思うと、ピタッと風が止んでさ、ほっとして町の中に出てみると、ほら、ご覧のとおりのありさまさ――」
サトルとガッチは、あらためて町の様子を見渡しました。町は、惨憺たるありさまでした。おかみさんと同様に、ドアに吸いこまれた人を見た人達が、幾人もドアの前に集まり、気持ち悪そうになにやら話しあっていました。その奥のドアの前では、女の人が両手で顔を覆うようにして、泣きじゃくっていました。たくさんあるその他のドアのそばにも、やはり、たくさんの人だかりができていました。