2019-09-16追記;タイトルを改めて文献を追加した。
[マネタリーベース(ベースマネー、ハイパワードマネー)]
・"【マネタリーベースH】=【現金通貨C(日本銀行券発行高+政府発行貨幣流通高)】+【日銀当座預金R(日本銀行が預かっている当座預金)】"と定義される。1981年3月以前は「現金通貨+準備預金」と定義されていたものの、準備預金の適用されない短資会社や証券会社も捕捉すべく、「準備預金」に代えて「日銀当座預金」を用いて定義されることになった。□日本銀行「マネタリーベースの解説」
・その定義から明らかなように、マネタリーベースは、中央銀行が民間銀行部門にネットで供給した貨幣量の大きさをあらわしている。銀行による信用創造を振り返れば、マネタリーベースの供給量が信用創造の大きさ(上限)を決定する。□内田264、池尾62-3
・ユーロエリアでは「ベースマネー」、経済学では「ハイパワードマネー」とも呼ばれる。□日本銀行「マネタリーベース統計のFAQ」
・2013年4月以降、日本銀行は、マネタリーベースを操作目標とした。□内田264
[マネーストック]□福田照山135、池尾64、内田11-2
・"【マネーストック(貨幣量)M】=【現金通貨C】+【預金通貨D】"と定義される。
・決済手段の範囲が技術的基盤等によって決まることを考えれば、どこまでを「預金通貨」に含めるかに唯一の答えはなく、実際にも複数の指標が使われている。従前の日本銀行は「マネーサプライ統計」を公表してきたが、2008年6月からはこれに代わる「マネーストック統計」が公表されている。これは、郵政民営化や金融商品の多様化を踏まえ、通貨保有主体・通貨発行主体・金融商品の範囲を見直している。
・M1=「現金通貨+要求払預金-金融機関保有手形小切手」;
・M2=「現金通貨+国内銀行等に預けられた預金」;定期預金等も含んでいるが、ゆうちょ銀行等を含まない。
・M3=「M1+準通貨+譲渡性預金」;
・広義流動性=「M3+金銭の信託+投資信託+金融債+銀行発行普通社債+金融機関発行CP+国債+外債」;
[両者の関係:貨幣乗数=信用創造乗数]□池尾67-8、演習123-4
・マネタリーベースとマネーストックの各定義から、M/H=(C+D)/(C+R)となる。この右辺の分母と分子をDで割ると、M/H=(C/D+1)/(C/D+R/D)と表現できる。この「マネタリーベースに対するマネーストックの量」の比を「貨幣乗数m」と呼ぶ。
・信用創造の議論で用いた「預金として留まるα、現金として流出する1-α」を用いれば、貨幣乗数の分母分子に登場する「現金通貨C/預金通貨D」は「(1-α)/α」に置き換えられる。また、貨幣乗数の分子に登場する「準備預金R/預金通貨D」は「預金準備率β」そのものである(預金通貨×β=準備預金)。以上を踏まえると、貨幣乗数と信用創造乗数は本質的に同じである。
貨幣乗数m=M/H
=(C/D+1)/(C/D+R/D)
={(1-α)/α+1}/{(1-α)/α+β}
=1/{1-α(1-β)}=信用創造乗数
池尾和人『現代の金融入門〔新版〕』[2010]
福田慎一・照山博司『マクロ経済学・入門〔第4版〕』[2011]
福田慎一・照山博司『演習式マクロ経済学・入門〔補訂版〕』[2013]
内田浩史「金融」[2016]