古い話で恐縮だが、平成19年新司法試験短答式の公法系科目第1問は、次のような問題であった(一部抜粋)。
ちなみに〔 〕に入る正解は、「基本的人権」だそうだ。友人達とこの問題を解いた時、私一人が間違えた。出題されたのが平成20年でなくてよかった。
法律学ではあまり「権威主義」という言葉は出てこない(例えば、『法律学小辞典』にもその項目はない)。これは主として政治学の用語である。
例えば、「あるイシューを、国民が議論をして解決策を模索するより、すぐれた政治家に全面的に委任したほうがよいと思うか?」という質問に対して、あなたがイエスと答えれば‘権威主義的’、ノーならば‘民主主義的’と判定される。このような用語法に従うならば、権威主義対民主主義という構図は間違っていない。
問題は、「法の支配」という思想をこの構図の中で語り、民主主義と結びつけることの当否である。 私は、「法の支配とは、あらゆる国家機関が(実定法より)高い次元の『法』に服することをいう。」「デモクラシーとは、国民の多数意見で統治者を決める方法をいう。」と理解している。だから、この問題を初めて見た時、何が言いたいのかさっぱりわからなかった。法の支配は、デモクラシーすらも破るのである。
法の支配にいう「法」とは、実定法を超えた存在である。「正義」と言い換えてもよいかもしれない。残念ながら、「法」「正義」が全貌を現すことはない。それは、ときに自然法として、ときに慣習として、ときに憲法典の一部として、その都度姿を見せる。
第1問を作成した考査委員は、「『法』はデーモスの力で作ることができる。」とでも言いたいのだろうか。
追記:芦部憲法(あるいは予備校本)を読んで満足している方には、『リベラリズム/デモクラシー』の第Ⅱ部、『現代政治理論』の第6章、『憲法と平和を問いなおす』の第Ⅰ部あたりを読むことを勧める。通説のデモクラシー観が特定な見方にすぎないことは知っておいてよい。
追記(27・1・6):文脈からいけば「基本的人権」を選ぶだろうが、阪本昌成一派の筆者は前後を無視して「権力分立」を選んだと思う。