goo blog サービス終了のお知らせ 

敷地にどんな建物が建てられるか

2017-07-07 21:34:34 | 不動産法

【サンプル:「岡崎市わが街ガイド」で用途地域等を調べることができる】

○岡崎警察署(岡崎市明大寺町銭堤4-1)

○岡崎盲学校(岡崎市竜美西1-11-5)

○イオンモール岡崎(岡崎市戸崎町外山38-5)

○岡崎市民病院(岡崎市高隆寺町字五所合3-1)

 

[都市計画区域/区域外]

・都市計画法は、「都市計画区域」と「都市計画区域外」を区分する(都市計画法4条2項)。都市計画区域は各県が指定し(都市計画法5条1項)、都市計画法等の規制を全面的に受ける。現在では、全面積の約4分の1(居住人口だと約92%)が都市計画区域に指定されている。

愛知県ウェブサイト参照;現在の愛知県では、6つの都市計画区域が設けられている。岡崎市の山間部を除いた区域は「西三河都市計画区域」に指定される。警察署等や市民病院はいずれも西三河都市計画区域に含まれている。

 

[区域区分:市街化区域/市街化調整区域/非線引区域]

・都市計画区域において、すでに市街化を形成している区域とおおむ10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域は「市街化区域」とされる(都市計画法7条2項)。市街化区域では、原則として建築や宅地開発が可能となる。警察署付近は、当然に市街化区域とされている。

・これに対し、市街化を抑制すべき区域は「市街化調整区域」とされる(都市計画法7条3項)。市街化区域と異なり、近郊農業や自然環境を守るために建築や宅地開発が原則として禁止されるため、地価水準は大幅に劣る。市民病院付近は市街化調整区域である。→市街化調整区域での開発行為・建築行為

・さらに、都市計画区域内には「市街化区域/市街化調整区域」の線引きがされていない地域も広範囲に存在する。この非線引区域では、市街化区域と同様に用途地域を定めている市街地の部分と、定めていない郊外の部分(非線引白地地域)とがある。

 

[用途地域:住居系7種類/商業系2種類/工業系3種類]

・都市計画区域については、○○地域(地区、街区)といった地域地区を定めることができる(都市計画法8条1項)。主な地域地区として、12種類の用途地域、高度地区(高度利用地区)、防火地域(準防火地域)、景観地区、風致地区、緑化地域、歴史的風土特別保存地区など。

・市街化区域においては、少なくとも用途地域(12種類)が定められる(都市計画法13条1項7号、8条1項1号)。用途地域は当該土地に建築できる建物の用途を細かく決めている。岡崎警察署は「第一種住居地域(1住)」と「近隣商業地域」をまたいでいる。第一種住居地域は、最寄駅に近く建物の密度がやや濃いイメージ。住宅が中心だが、商業的なものも混在する。近隣商業地域は、バス通り沿いや小規模駅周辺というイメージ。住宅のほか、パチンコ、小映画館もOK。

・警察署から少し南東に進んで岡崎盲学校の付近まで行くと「第一種中高層住居専用地域(1中高)」となる。反対に、警察署から南に進んで岡崎イオンまで行くと「工業地域(工業)」となる。

・用途地域にほぼ連動して、当該敷地内に建築可能な建物の規模が制限されている。

 

[形態規制その1:建ぺい率と容積率]

○建ぺい率

・建築面積(≒1階部分面積)を規制する建ぺい率は、空き地確保による延焼防止を目的とする。この目的から、延焼しにくい条件(角地、防火地域内の耐火建築物)があれば建ぺい率は緩和(+10-20%)される。

○容積率

・地価の高い都心部では、土地を最大限に使いたいというニーズがあるから、容積率の高低は極めて重要である(地価は容積率に比例する)。

・さらに、前面道路幅員も超重要となる。住居系用途地域内のある指定容積率が200%だとしても、実際の容積率は前面道路の幅員を測らないと決まらない。すなわち、前面道路幅員が4.5mの場合、係数0.4を用いて「4.5m×0.4=180%」という計算が必要となり、この180%は指定容積率200%を下回ってしまうため、結局、実際の容積率は180%にとどまる。

○具体例

・警察署の所在地のうち、第一種住居地域は建ぺい率60%・容積率200%(60の200)、近隣商業地域は建ぺい率80%・容積率200%(80の200)とされている。

・市街化区域のもっとも外側(郊外)に位置する「第一種低層住居専用地域(1低)」では、例えば建ぺい率30%・容積率50%(30の50)という厳しい制限がある。この規制下では、50坪の土地だと「1階15坪、2階10坪」というサイズの建物しか建てられないため、もっと広い土地でないと使い物にならない。このように、厳しい規模規制は「土地の細分化防止」を狙っている。

 

[形態規制その2:高さ制限]

○絶対高さ制限

・(第一種・第二種)低層住居地域では、建物の高さは原則10m以下(3階程度まで)に規制される。

・高度地区:都市計画では市街化区域の中に高度地区を設け、絶対高の限度(最高限度・最低限度)や斜線制限を定めることがある。岡崎盲学校の付近は「第一種高度地区」とされて最高限度18mまでとされている。

○斜線制限

・道路斜線:「道路建物の各部分の高さ」が「各部分から前面道路反対側境界線までの水平距離×1.25(非住居系1.5)」を超えてはいけない。この規制ゆえ、都心部の道路沿いビル上部は道路に向けて斜めになっている。

・隣地斜線:21m(非住居系31m)を超える建物の場合。高層マンション等で隣地に向けて斜めになっている現象はこれによる。

・北側斜線:住居系のうち「(第一種・第二種)低層住居」「(第一種・第二種)中高層住居」では、北側隣地への日照に配慮して、道路斜線制限と類似の制限を受ける。

○日影規制

 

[防火規制と境界との距離]

・人口の集中する場所は、防火地域や準防火地域に指定されることがある。防火地域内で一定規模の建物(=3階以上or延面積100㎡超)を建築する際は、耐火建築物(鉄筋コンクリートなど)にしなければならない。それ以下の規模であっても最低簡易耐火建築物とする。

・準防火地域内でも類似の規制がある。

・なお、建物を築造する際には、隣地境界と50cm以上の距離を空けるのが民法上の原則である(民法234条1項)。これに対し、防火地域(準防火地域)の建築物で外壁が耐火構造のものは、外壁を隣地境界線に接することが可能となる(建築基準法65条)。

 

[道路の重要性]

○敷地と道路の接道義務

・建築物の敷地は、「道路」と2m以上接面するのが原則である(建築基準法43条1項)。

・これ以外にも、道路は、容積率の算定基準や道路斜線制限の基準等になるから、建築基準法上きわめて重要である。当然、土地の実勢価格にも大きく影響する。

○建築基準法の定める道路

・原則:幅員4mを要する(建築基準法42条1項柱書)。

・42条2項道路(みなし道路):この例外として、都市計画区域の指定を受けた時点で「1.8m以上4m未満の幅員の道路」であっても、敷地をセットバックすれば建物を建築できる余地がある(建築基準法42条2項)。例えば前面道路が3mの幅員の場合、道路中心から敷地境界までは1.5mしかない(これが原則どおりの道路なら2m以上が確保できているはず)。このような敷地ではさらに0.5m後退した位置(=道路中心から2m離れた位置)が道路との境界と擬制されるので、建物建築(再築)にあたっては、敷地を本来の境界から0.5m後退する(=0.5m部分も道路として無償で第三者使用を許す)ことになる。

位置指定道路:新たに宅地を造成して分譲地として売り出す場合には、上記の接道義務を負うため、各敷地に接する道路(私道)を設ける必要がある。新たに設けられた私道を「建築基準法の道路」として取り扱うためには、特定行政庁(市長または県知事)による道路位置指定(=行政処分の一つ)を受ける必要がある(建築基準法42条1項5号)。新しい分譲地内の私道はほぼこの基準にしたがっているため、「幅員がジャスト4m」「角部分には一辺2mの三角状のすみ切り」などという特徴をもつ。

 

吉野伸『物件調査のコツとツボ 写真と図で見る不動産の見方・調べ方!』[2009]

安藤一郎『私道の法律問題〔第6版〕』[2013]

公益社団法人東京都不動産鑑定士協会編『ベーシック不動産実務ガイド』[2013]

☆森田義男『改訂新版はじめての不動産実務入門』[2015]

コメント    この記事についてブログを書く
« デモクラシーと集約ルール | トップ | とうもろこしご飯 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

不動産法」カテゴリの最新記事