二年前だが、中国人留学生と話す機会があった。彼は「ポピュリズム」を研究していると言った。自国の政治を譬えているのかと思ったら、橋下大坂市政の事だと云うことだっだ。適確な着眼に敬服した。
もうすぐ大阪都構想住民投票が行われる。つい最近関西の三都を見たから言うのではないが、関西は、経済的にも、文化的にも、何よりも元気という面においても、確実に地盤低下している。このままであってはならないという関西人の焦りは感じるが、今度の大阪都構想が賛成多数で成立するならば、大阪市民は将来に向かって致命的な誤選択をしたことになるだろう。
普通に考えて、大阪府の議員数はそのままだとして、大阪市の議員で五つの区議会の議員を賄えるのか、またそれに付随する議会事務局の職員を大阪市議会事務局で賄えるのだろうか?そこで、まず確実な無駄ができる筈だ。そして、何よりも悲しむべきは、大阪府に併合されれば、関西随一の人材集団と言われる大阪市職員は、普通程度の府職員の下風を嫌って、優秀な人材は流失してしまうだろう。この人材の流失損害は、あのポピュリズム政治家の我儘殿様のマスコミ的存在価値と較べられない程の将来にわたっての組織的損失を生じることになる。
関西の凋落を、このまま何もせず見守るより、何かをしなければならないという切迫感は十分に理解するが、大阪府に呑みこまれる大阪都構想ではなく、大阪市が発展して、大阪府を飛び越して、新たな特別自治体になることを選択すべきである。それは横浜の『特別市構想』に似ているが、大阪市こそがその特別の立場にもっとも相応しい都市であると信じている。かつての特別市構想は、神奈川県のGHQへの策動で潰えたと言われている。今こそ、日本第二の都市の存立をかけて『特別市』を大坂で実現すべきであると私は考える。
1、現状維持の暴君 "TYRANNY OF THE STATUS QUO"…1984年にM.フリードマンは、既得権益の維持を背後に隠し、大衆の不安をかこち現状維持を選択させようとするエスタブリッシュメントを強く批判した。大阪都に反対している層の集団は、その時の批判層に完全に重なる。それは、表面的なイデオロギーが違っても、現状維持では一致する今に利益する集団ではないか。
2、大阪維新の会の幹部は、府、市の議会で丁寧な段取りと説明をしている。公開された議会の議事録を読めば、明らかだ。ほんの少しでよい、読んでみて判断したらどうか。
3、大阪市職員の質…大阪市へ出張した政令市の職員の体験談によれば、30年前の大阪市は、よそからの出張者に対しから茶一杯だけの対応で、実は接遇経費は自分たちの内部飲み食いに使っていたことが明らかになっていた。橋下氏が市長になった直後仕事で訪問すると、「お聞きしていますか」と2度も声をかけられた。確かに彼らは変わった。しかし、それは平松市長の時代ではなく橋下市長に変わったのちの変化で、新たな状況に対応する役人の知恵の段階だった。橋下が去れば、旧態に戻ることだろう。もし彼らが本当に優秀ならば、より小規模の自治体でも主体性を発揮できるはずだし、しなければならない。そうでなければ、縦社会は一層現状を規定していくはずだから、だ。
4、誰が主役であるべきか…市役所の公務員ではなく、住民が選択するべきだ。3都で言えば、この3年京都ベースで、京都の仕事と兵庫の仕事をしてきた。京都は人口が志賀に流出しているが、観光は好調だ。神戸は残念ながら元気がない。しかし、大阪は大規模開発が着々と進んでいる。アベノハルカスを始め、橋下氏が大阪府知事になった2008年以降に着工したものが次々に完成している。阪急を中心に鉄道網は着実に更新されている。取り残されているのは市営地下鉄だけだ。
5、賛否…マスメディアの世論調査は「反対」が大きくリードしていると報じている。だからこそ敢えて、いま「賛成」と表明したい。変わる勇気を示せないなら、それが大阪市民の本質であり、選択の結果もまた負うことになる。吉本隆明は「熱狂的な××が醒めたのち、そんな話は聞いていなかったというとき、ただ寂寥の念を抱くのみだった」と語ったことを記憶している。ただこの一点において、私は「橋下徹」を支持する。 2008年から7年間寝食を忘れ取り組んできたことが支持されないかもしれない。私の過去の小規模な反乱もそんな失望の連続だった。17日の結果をどう総括するかが、次なるテーマではないだろうか。