よく歴史書の中では、当時の戦争への感じ方として伊藤整の言葉が引用されることが見受けられる。この方丈社の本の中では以下の通りである。
伊藤整36歳
「…はじめて日本と日本人の姿の一つ一つの意味が現実感と限りないいとおしさで自分にわかってきた」が主意であろうが。
ところで彼は終戦の日はどういう感想であったのであろうか。
「昨日戦争は終わった。祖国日本は屈服した。戦争は終わった。思いがけなく、早く終わった。」【田中伸尚『ドキュメント昭和天皇(6)』緑風出版ヨリ】
「思いがけなく、早く…」という言葉が残る。開戦に比べて、呆気ない感じ方であると思った。
また、年齢の近い坂口安吾は次のような感想を書いている。
坂口安吾35歳
東條の謹話で涙が流れたというくだりには、正直唖然とした。この30代の感想はこの本でかなりの量を占めているが、それぞれの立場が判別し難い年代であることが察しられた。