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管理職と残業代

2012-03-26 | 日記
Q93 管理職であれば,残業代を支払わなくてもいいですよね?

 管理職も労基法上の労働者ですから,原則として労基法37条の適用があり,週40時間,1日8時間を超えて労働させた場合,法定休日に労働させた場合,深夜に労働させた場合は,時間外労働時間,休日労働,深夜労働に応じた残業代割増賃金)を支払わなければならないのが原則です。
 したがって,管理職であれば,残業代を支払わなくてもいいということにはなりません。

 確かに,当該管理職が,労基法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)に該当すれば,労働時間,休憩,時間外・休日割増賃金,休日,賃金台帳に関する規定は適用除外となりますので,その結果,労基法上,使用者は時間外・休日割増賃金の支払義務を免れることになりますが,裁判所の考えている管理監督者の要件を充足するのは,本社の幹部社員など,ごく一部と考えられますので,通常は,管理監督者扱いとすることで残業代の支払義務を免れることができると考えるべきではありません。
 後になってから労基法37条に基づく時間外・休日割増賃金の請求を受けるリスクを負いたくない場合は,管理職であっても,最初から管理監督者としては取り扱わずに残業代を満額支給し,基本給や賞与等の金額を抑えることで,総賃金額を調整したほうが無難かもしれません。

 なお,管理監督者であっても,深夜労働に関する規定は適用されますので,管理職が管理監督者であるかどうかにかかわらず,深夜割増賃金(労基法37条3項)を支払う必要があることに変わりはありません(ことぶき事件最高裁第二小法廷平成21年12月18日判決)。
 また,労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効となり,無効となった部分については労基法で定める基準が適用されますので(労基法13条),就業規則等で管理職には残業代を支給しない旨規定したり,個別労働契約で管理職であることを理由として残業代を支給しない旨規定し労働者に署名押印させるなどしてその同意を得ていたとしても,深夜割増賃金の支払義務は免れませんし,当該管理職が労基法上の管理監督者に該当しない限りは,深夜割増賃金以外の残業代(時間外・休日割増賃金)についても,支払義務を免れないことになります。

弁護士 藤田 進太郎
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