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法内残業に対する残業代支払の要否

2012-01-15 | 日記
Q56 所定労働時間が7時間の事業場において,1日8時間までの時間帯(1時間分)の法内残業について,残業代を支払わない扱いにすることはできますか?

 所定労働時間が7時間の事業場において,1日8時間までの時間帯(1時間分)の法内残業については,強行的直律的効力(労基法13条)を有する労基法37条の規制外ですので,労基法37条に基づく残業代割増賃金)の請求は認められず,法内残業分の残業代を支給する義務が使用者にあるかどうかは,労働契約の解釈の問題となります。
 例えば,1日の所定労働時間が7時間の会社において,最初の1時間残業した部分(法内残業)については労基法37条に基づく残業代割増賃金)の請求は認められず,就業規則や個別合意に基づく残業代請求が認められるかどうかが検討されることになります。
 強行的直律的効力(労基法13条)を有する労基法37条の規制外の問題である以上,理屈では法内残業については残業代を支給しない扱いにすることもできることになります。

 もっとも,「労働契約の合理的解釈としては,労基法上の労働時間に該当すれば,通常は労働契約上の賃金支払の対象となる時間としているものと解するのが相当である」(大星ビル管理事件最高裁第一小法廷平成14年2月28日判決)と考えるのが一般的ですから,法内残業時間の賃金額について何の定めもないからといって,直ちに賃金を支払わなくていいことにはなりません。
 法内残業時間の賃金額に関する明示の合意がない場合は,割増をしない通常の賃金額を支払う旨の黙示の合意があるものと解釈して賃金額を計算すべきことになるのが通常です。
 仮に,法内残業時間の残業代を不支給にするとか,通常の賃金額よりも低い金額にするとかいった場合には,明確にその旨を合意するなどして,労働契約の内容としておくべきでしょう。

弁護士 藤田 進太郎

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