本件は,原告らの子であるFが,被告らの関与していたテレビ番組についての制作業務を請け負ったところ,被告らの安全配慮義務違反により,過重な労働に従事させられた結果,くも膜下出血により死亡するに至ったとして,原告それぞれが,被告らに対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として,連帯して5531万2799円及びこれに対する訴状送達日の翌日(不法行為との関係では不法行為日の後の日)である平成20年1月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。
本判決は,まず,被告らが安全配慮義務を負っていたかについて検討し,「被告らについては,Fを雇用していたとも,実質的に使用従属させていたとも認められないから,Fの業務に対する従事状況を積極的に把握するなどして,これらが過重にならないように配慮すべき義務を負っていたものとは認められない。」として,これを否定しています。
これだけでも結論が出ているわけですが,「念のため」,本件業務とFの死亡との因果関係についても検討し,「Fが,高血圧であったとしても,本件業務が,これを増悪させ,さらには脳の動脈瘤を破裂させ,くも膜下出血を引き起こしてFを死に至らしめるほど,精神的・肉体的に過重なものであったとは認めるに足りないから,その死亡が,本件業務により惹き起こされたとはみとめられない。」として,因果関係を否定しています。
この事案を読んでいると,日本が訴訟社会になりつつあるのが感じられます。今後,司法試験合格者増大と相まって,ますます訴訟が増えていくことでしょう。
弁護士 藤田 進太郎