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配転命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?

2011-05-31 | 日記
Q33  配転命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?

 使用者による配転命令は,①業務上の必要性が存しない場合,②不当な動機・目的をもってなされたものである場合,③労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情のある場合でない限り権利の濫用にならないと考えられています。
 ①業務上の必要性については使用者の裁量が広く認められていますので,②不当な動機・目的の有無,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度のものかどうかを中心に検討することになるケースが多いものと思われます。

 上記東亜ペイント事件最高裁判決は,「そして,使用者は業務上の必要に応じ,その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが,転勤,特に転居を伴う転勤は,一般に,労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから,使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく,これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ,当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても,当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情の存する場合でない限りは,当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである。右の業務上の必要性についても,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示し,使用者の広範な配転命令権限を肯定しています。
 ただし,現在の社会状況は東亜ペイント事件が発生した昭和48年~昭和49年とは大きく異なっており,出産・育児・介護等に対する配慮の必要性が高まっています。
 出産・育児・介護等に対する配慮が不十分な場合は,③労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとして,配転命令が無効と判断されるリスクが高くなってきていますので,注意が必要です。

弁護士 藤田 進太郎
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