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労働組合による街宣活動の違法性

2010-12-16 | 日記
Q30労働組合による街宣活動が違法と評価されるのは,どのような場合ですか?

 労働組合は,団結権,団体交渉権が法的権利として保障されており,その目的とする組合員の労働条件の維持,改善を図るために必要かつ相当な行為は,正当な活動として,不法行為に該当する場合でも,違法性を阻却されることになります。
 労働組合の組合活動としての表現行為,宣伝行動によって使用者の名誉や信用が毀損された場合,当該表現行為,宣伝行動において摘示されたり,その前提とされた事実が真実であると証明された場合はもとより,真実と信じるについて相当の理由がある場合も,それが労働組合の活動として公共性を失わない限り,違法性が阻却されることになりますし,当該表現行為,宣伝行動の必要性,相当性,動機,態様,影響など一切の事情を考慮し,その結果,当該表現行為,宣伝活動が正当な労働組合活動として社会通念上許容された範囲内のものであると判断される場合には,行為の違法性が阻却され,不法行為とならないことになります。
 したがって,会社建物前でなされた街宣活動については,よほど酷いやり方をしない限り違法とはなりにくいものと思われます。
 名誉毀損についても,明らかに虚偽の事実を摘示して使用者の名誉を毀損するようなことをしない限り,違法と評価されることは多くないものと思われます。

 他方,企業経営者の自宅付近で行われる街宣活動は,会社前路上などで行われる通常の街宣活動と比べて,大幅に制約されることになり,企業経営者の住居の平穏や地域社会における名誉・信用という具体的な法益を侵害しないものである限りにおいて,表現の自由の行使として相当性を有し,容認されることがあるにとどまることになります。
 労使関係の場で生じた問題は,労使関係の領域である職場領域で解決すべき問題です。
 企業経営者も,個人として,住居の平穏や地域社会における名誉・信用が保護,尊重されるべきはずです。
 このため,労働組合の諸権利は企業経営者の私生活の領域までは及ばないと考えられるからです。

弁護士 藤田 進太郎
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