弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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「職務内容,責任と権限」についての判断要素

2015-06-02 | 日記

平成20年9月9日基発第0909001号『多店舗展開する小売業,飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について』は,「職務内容,責任と権限」についての判断要素に関し,どのように述べていますか。


 平成20年9月9日基発第0909001号『多店舗展開する小売業,飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について』は,「職務内容,責任と権限」についての判断要素に関し,以下のように述べています。
 店舗に所属する労働者に係る採用,解雇 ,人事考課及び労働時間の管理は,店舗における労務管理に関する重要な職務であることから,これらの「職務内容,責任と権限」については,次のように判断されるものであること。
(1) 採用
 店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む。)に関する責任と権限が実質的にない場合には,管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(2) 解雇
 店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず,実質的にもこれに関与しない場合には,管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(3) 人事考課
 人事考課(昇給,昇格,賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力,業務成績等を評価することをいう。以下同じ。)の制度がある企業において,その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず,実質的にもこれに関与しない場合には,管理監督者性を否定する重要な要素となる。
(4) 労働時間の管理
 店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合には,管理監督者性を否定する重要な要素となる。


行政解釈は,店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かをどのように判断するものとしていますか。

2015-06-02 | 日記

行政解釈は,店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かをどのように判断するものとしていますか。


 行政解釈は,「店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かについては,昭和22年9月13日付け発基第17号,昭和63年3月14日付け基発第150号に基づき,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって,労働時間,休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを,職務内容,責任と権限,勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ,総合的に判断することとなる」としています(平成20年9月9日基発第0909001号『多店舗展開する小売業,飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について』)。


行政解釈は管理監督者の範囲と賃金等の待遇面との関係についてどのように考えていますか。

2015-06-02 | 日記

行政解釈は管理監督者の範囲と賃金等の待遇面との関係についてどのように考えていますか。


 行政解釈は「管理監督者であるかの判定に当たっては,上記のほか,賃金等の待遇面についても無視し得ないものであること。この場合,定期給与である基本給,役付手当等において,その地位にふさわしい待遇がなされているか否か,ボーナス等の一時金の支給率,その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。」とした上で,「なお,一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって,実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。」としています。
 最後の「なお,」以下の部分からすれば,行政解釈は,管理職 が,
 ① 職務内容,責任と権限
 ② 勤務態様等
の要素をクリアした場合に初めて,
 ③ 賃金等の待遇面
に関し,役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否かを検討しようとしているものと考えられます。
 ①②を検討して管理監督者に相応しくないと判断されれば,③を判断するまでもなく,管理監督者には当たらないとしているものと考えられます。


行政解釈は資格や職位の名称と管理監督者の範囲についてどのように考えていますか。

2015-06-02 | 日記

行政解釈は資格や職位の名称と管理監督者の範囲についてどのように考えていますか。


 行政解釈は「一般に,企業においては職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と,経験,能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが,管理監督者の範囲を決めるに当たっては,かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく,職務内容,責任と権限,勤務態様等に着目する必要があること。」としています。
 行政解釈は,資格や職位の名称と管理監督者の範囲に直接の関係はなく,
 ① 職務内容,責任と権限
 ② 勤務態様等
に着目して管理監督者の範囲を検討すべきものとしていると考えられます。


管理監督者の労働時間,休憩,休日等に関する規制の適用を除外する趣旨

2015-06-02 | 日記

行政解釈は管理監督者について労基法で定める労働時間,休憩,休日等に関する規制の適用を除外する趣旨をどのように考えていますか。


 行政解釈は,「これらの職制上の役付者のうち,労働時間,休憩,休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない,重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法第41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従って,その範囲はその限りに,限定しなければならないものであること。」しています。
 この部分からは,行政解釈が管理監督者について労基法で定める労働時間,休憩,休日等に関する規制の適用を除外する趣旨として重視しているのは主に,
 ① 重要な職務と責任
 ② 現実の勤務態様
の2点であることを読み取ることができます。
 行政解釈は,別の項目で③待遇についても言及していますが,管理監督者性を判断するに当たり考慮する要素としては,①②を③よりも重視しているものと思われます。


行政解釈は管理職と管理監督者の関係をどのように考えていますか。

2015-06-02 | 日記

行政解釈は管理職と管理監督者の関係をどのように考えていますか。


 行政解釈は,「法に規定する労働時間,休憩,休日等の労働条件は,最低基準を定めたものであるから,この規制の枠を超えて労働させる場合には,法所定の割増賃金を支払うべきことは,すべての労働者に共通する基本原則」であるとした上で,「企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。」としています。
 管理職 の管理監督者性を判断する際の基本的発想として,労基法の規制の枠を超えて労働させる場合に割増賃金を支払うことが「すべての労働者に共通する基本原則」であるとしていますので,その例外である管理監督者性は,限定的に考えているものと思われます。


行政解釈は管理監督者をどのように考えていますか。

2015-06-02 | 日記

行政解釈は管理監督者をどのように考えていますか。


 行政解釈は,労基法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)を「一般的には,部長,工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とした上で,管理監督者に当たるかどうかは,「名称にとらわれず,実態に即して判断すべきものである。」としています。


管理職に残業代を支払う必要があるかどうかの判断が難しい理由を教えて下さい。

2015-06-02 | 日記

管理職に残業代(時間外・休日割増賃金)を支払う必要があるかどうかの判断が難しい理由を教えて下さい。


 労基法も労基法施行規則も,労基法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)の具体的内容について明確に定めていません。また,管理監督者性の具体的判断基準について判断した最高裁判例も存在しません。このため,現状では,管理監督者に関する行政解釈の内容を理解するとともに,管理監督者性について判断した多数の下級審裁判例を分析して裁判所の判断の傾向を分析するほかないことになります。
 しかし,行政解釈が裁判所を拘束しないことは明らかですし,下級審裁判例も裁判官が判決を書く際に参考にすることはあっても最高裁判例のように裁判官の判断を事実上拘束するほどの強い影響力はありません。また,管理監督者に関する行政解釈や下級審裁判例において示されている管理監督者性の判断基準は,様々な要素(主に3要素)を総合考慮して結論を導くものであるため,事案ごとの判断は必ずしも容易ではなく,同じ判断基準を用いたとしても判断する裁判官によって異なる結論となることも十分に考えられます。
 このため,管理職 が労基法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)該当するかどうかを判断する難易度が高くなる結果,管理職に残業代 (時間外・休日割増賃金)を支払う必要があるかどうかの判断も難しくなります。


管理職にも残業代(割増賃金)を支払う必要がありますか。

2015-06-02 | 日記

管理職にも残業代(割増賃金)を支払う必要がありますか。


 管理職 も労基法上の労働者ですから,原則として労基法37条の適用があり,週40時間,1日8時間を超えて労働させた場合,法定休日に労働させた場合,深夜に労働させた場合は,時間外労働時間,休日労働,深夜労働に応じた残業代 (割増賃金)を支払う必要があります。
管理職が労基法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)に該当する場合には,労働時間,休憩,時間外・休日割増賃金,休日,賃金台帳に関する規定は適用除外となる結果,労基法上,使用者が時間外・休日割増賃金の支払義務を免れることがあるに止まります。
管理監督者であっても,深夜労働に関する規定は適用されますので,深夜割増賃金(労基法37条3項)を支払う必要があることに変わりはありません(ことぶき事件最高裁平成21年12月18日第二小法廷判決)。


企画業務型裁量労働制の対象業務となり得ない業務の例を教えて下さい。

2015-06-02 | 日記

企画業務型裁量労働制の対象業務となり得ない業務の例を教えて下さい。


 企画業務型裁量労働制の対象業務となり得えない業務の例は以下のとおりです(指針)。
 ① 経営に関する会議の庶務等の業務
 ② 人事記録の作成及び保管,給与の計算及び支払,各種保険の加入及び脱退,採用・研修の実施等の業務
 ③ 金銭の出納,財務諸表・会計帳簿の作成及び保管,租税の申告及び納付,予算・決算に係る計算等の業務
 ④ 広報誌の原稿の校正等の業務
 ⑤ 個別の営業活動の業務
 ⑥ 個別の製造等の作業,物品の買い付け等の業務