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残業代請求対策の基本的発想

2012-04-10 | 日記
Q98 残業代請求対策の基本的発想として,何が重要と考えていますか?

 残業代(割増賃金)請求対策の基本的発想としては,とにかく,「支払済み」にしてしまうことが重要と考えています。

 管理監督者として扱い,多額の管理職手当を支給する一方,残業代を支払わないでいたところ,後になってから管理監督者ではないと判断されれば,多額の残業代を支払わなければならなくなるリスクが生じます。
 他方,同じ管理職で,同じ手取り賃金であっても,残業代名目で予め支給しておけば,残業代の追加請求を受けるリスクは低くなります。
 例えば,基本給30万円,管理職手当10万円(合計40万円)の支給を受けている課長を管理監督者として取り扱っていたところ,訴訟で管理監督者ではないと判断された場合,残業代が全く支払われていないという前提で,40万円全額を基礎に残業代が計算され,多額の残業代の支払が命じられるリスクを負うことになります。
 他方,初めから管理監督者としては取り扱わず,基本給26万円,管理職手当4万円,固定残業代10万円(合計40万円)を支給していた場合は,30万円を基礎に残業代を計算することになるので同じ時間働いても発生する残業代は少なくなりますし,毎月10万円の残業代は支払済みとなっていますから,10万円で不足する場合に不足額についてのみ,残業代の支払義務を負うことになります。
 どちらが使用者にとって安全かは,一目瞭然でしょう。

 同様の話は,営業手当のみを支給し,所定労働時間みなしを適用している営業社員についても当てはまります。
 営業社員に対し,事業場外みなしを適用して,所定労働時間労働したものとみなし,基本給30万円,営業手当10万円(合計40万円)を支給している場合と,営業社員がそれなりに残業していることを認めた上で,基本給26万円,営業手当4万円,固定残業代10万円(合計40万円)を支給している場合とでは,残業代の請求を受けた場合に,どちらが防御力が高いかは一目瞭然です。

 注意しなければならないのは,既存の社員に関し,これから賃金の内訳等を変更する場合は,労働条件の不利益変更になるという点です。
 使用者が一方的に賃金の内訳を変更することは難しい(基本的にはできない)と考えるべきでしょう。
 通常,社員から,賃金内訳変更に関する同意書,賃金規定変更に関する同意書を取る作業を行うことになります。
 「賃金内訳の変更について,全社員に説明したところ,誰からも異議が出ず,不平不満も言わずにそのまま働き続けている。」というだけで,賃金内訳変更に社員の同意があったと思い込むようなことがないようにして下さい。

弁護士 藤田 進太郎

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