l'esquisse

アート鑑賞の感想を中心に、日々思ったことをつらつらと。

WOOLWORTHS

2008-12-12 | その他
今日、ネットでイギリスの新聞「The Independent」のオン・ライン・ニュースを見ていたら、Woolworths(愛称Woolies)が街の目抜き通りから消える、つまり倒産するとの記事が出ていた。

Woolworthsは、イギリスに住んだことがおありの方にはお馴染みの、イギリス全国どの街にもあるチェーン店で(815店舗あるそうだ)、生鮮食品以外の種々雑多な生活用品(文房具、台所・バスルーム用品、寝具類、調理器具、電気製品、DIY用品、洋服・服飾品、お菓子、オモチャ、DVDなど)が並ぶお店。デパートや広大な売り場面積を持つスーパー・マーケットのような規模ではなく、私の知る限りハイ・ストリートに面したそれほど広くない1フロアーに、適度な量の商品が分野ごとにこじんまりと置かれ、レジも一箇所という感じだ。

私がその昔、1年ちょっと住んでいたロンドン北部のMuswell HillにもWoolworthsはやはり街の中心部にあり、スーパーの帰りなどに立ち寄ったりしていた。実際買ったのはグリーティング・カードくらいだったが、このお店の中はどことなくホッとする庶民的な雰囲気があり、またグリーティング・カードなども高級すぎず、安っぽすぎず、ちょうどいい感じのものが手に入った。記事を読むと、衣類など他の商品に関してもほどよい商品の選択の幅と、リーズナブルな価格が魅力という消費者の意見が目についた。

私も今回初めて知ったが、創業99年だそうだ。特に年配以降の、若い頃から長年このお店を愛用してきたイギリスの人たちには、あの赤いWOOLWORTHSの文字がハイ・ストリートから消えるのは寂しいに違いない。

記事では倒産を惜しむお客さんのコメントがいろいろ載っていて、その中の、”I buy bits and pieces”(あれやこれや買っていたのに)という表現はとてもよくわかる。しかし、この” bits and pieces”というのが問題の一つである、と記事は伝える。高級文具店とか、ベルギー・チョコレート専門店とか、一つの商品を専門的に売る店が流行る今のご時世、こういう焦点の定まらない”よろずや”的な商売は成り立たない、と。

ここで私は、もう何年も前にロンドン在住のイギリス人の友人ディヴィッドが東京に来たときに交わした会話を思い出した。

D:「日本は物が豊富でいいよ。例えば東急ハンズに行ったら、ボールペンだけで100種類もある」

YC:「ボールペンはボールペン。1種類ありゃ十分だと思うけど」

D:「そりゃイギリス的な考え方だな。イギリスはボールペンくれ、って言ったらどれ?なんて聞かれないもん。選択の余地なし」

そのイギリスも、もはや1種類のボールペンじゃ飽き足らない消費文化に浸かっているということなのだろう。