続・弓道の極意

私が一生をかけて極めようとしている弓道について、日々の気づきを積み重ねていくブログ

早気は病か 一.

2007年02月10日 | 極意探求
弓道の数ある病の中で、最も深刻とされているのが「早気」(はやけ)である。ご存知の通り、早気とは会に完全に入り切る前に無意識のうちに矢を離してしまうことである。

早気は最も大事な会を失ってしまうことになるので、射としては評価が低くならざるを得ない。また、一度かかってしまうとなかなか直らないため、弓道界では不治の病として恐れられている。

原因は様々言われているが、精神的な問題として扱われるケースがほとんどである。たとえば「気力が充実していない」「中てることに意識がいってしまう」「慣れによって会が短縮される」などである。

しかし、本当にそうであろうか?実は、この永遠の謎「早気」にも、「詰合い」が深く関係しているのだ。

そもそもなぜ「早気」は起こるのか。これは前回書いた弓道の特性に関係がある。すなわち、弓それ自体が力を発揮するという点である。もし弓に反発力が全くなければ、早気など存在しない。これは至極当然のことで、ひもか何かを引っ張ってみればわかる。

つまり、早気は多かれ少なかれ、弓の力に負けることにより発生するのである。実際、早気の人の射を見てみると、矢を放つ瞬間、明らかに弓の力に押し戻されているのがわかる。

では、なぜ弓の力に押し戻されてしまうと、離れが勝手に出てしまうのだろうか?

それは、弓の力に押し戻されるとき(それがたとえ弱い弓であったとしても)圧倒的な力で押し戻されるように感じるからである。これは射手にとっては恐怖とも呼べる感覚である。自分の意志ではどうにもならない圧倒的な力に、そのまま押しつぶされてしまうのではないかという恐怖。これが早気の直接的な原因である。

恐怖は、自分の身に危険を感じるときに生じる感覚である。人の身体は、自分の身に危険を感じると反射的にそれを回避しようとする。つまり、早気の人は、圧倒的な弓の力を制御することができず、自分の身に迫る危険を感じるのだ。そして、それを回避するために反射的に矢を放すという動作を起こすのである。