続・弓道の極意

私が一生をかけて極めようとしている弓道について、日々の気づきを積み重ねていくブログ

離れの時期 一.

2010年03月28日 | 積み重ね
射形がすばらしくても、離れの鈍い人をよく見かける。これは離れの時期が合っていないためである。

本来、大三で深く詰め合って、ゆるむことなく会に入ることができれば、あとは離れが出るのを待つだけで、自然に背中を使った離れが出る。

この離れの時期は、自分の意志で何とかなるものではなく、あるタイミングにこちらから合わせる、という類のものである。

したがって、その離れの一番いいタイミングを逃すと、自分の意志で無理やり離すしかなく、離れに濁りがどうしてもでてしまうのである。たとえば「かっぱぎ」や「切り下し」「馬手離れ」などがそれである。

離れの時期を知るためには、二つのことが必要である。

一つは、最深の詰合いを保ったまま会に入ること。もう一つは、会では無理な力を入れず、張り合いを保つ事を意識すること、である。

特に、後者は、弓手が緩み、馬手に力が入っていく傾向にあるので、これを自ら修正し、弓手の張り合い(詰合い)を保ちつつ、馬手は収まっているだけくらいの感覚で、離れの時期をじっと待つことである。

張り合いが保たれていれば、じわじわと肩根が下がり、両腕が背中に向かって開いていく。そして離れの時期に「発動」(発勁)を起こせば離れがでるというわけだ。

次回は、この発動についてもう少し考えたい。

背中で離れを出す稽古

2010年03月18日 | 積み重ね
私は仕事柄、出張に出ることが多く、長いときには一週間くらい弓がもてないことがある。そんな時、必ず行う稽古がある。それはベルトを使った離れの稽古である。

やり方は簡単である。自分の会の尺(しゃく)より多少短めにベルトを両手で持ち(※)、打起し、引分け、会へと徒手練習の要領で行射するだけだ。

当然、ベルトを持っているので、会に完全に入る直前にベルトが伸びきり、力が拮抗する。そこで、しっかりと物見を入れ、顎を引き、縦線を安定させて、肩の力を抜いていってみよう。

前回、書いたように、大三において十分に背中への連動が出来ていれば、会で肩の力を抜くほどに、背中に力の拮抗を感じられるようになるはずだ。

そして、そのまま、腕の重さを背中に掛けるような気持ちで圧を高めていくと、するっとベルトが馬手から抜けて残身となる。

この稽古によって背中で離れを出す感覚をつかむと、実際の弓で引いたときの離れが格段に違ってくるので、ぜひチャレンジして欲しい。


※ベルトのバックル側を弓手で持つこと。

肩入れの感覚

2010年03月08日 | 積み重ね
会の段階で肩があがってしまったり、馬手の肘が落ちてこなかったり、要は会が浅い人におすすめの稽古法がある。

それは「肩入れ」である。

特に特別な方法が必要というわけではなく、単に、矢を番えず、弦を馬手の親指を除く4本指でぐっと持ち、高い大三から両肩を弓の中に割って入れる気持ちで、背中に向かって開ききる。

※竹弓でこれをすると外竹が切れる可能性があるので、グラスやカーボン、あるいは伸寸の弓で壊れないことを確認しながら行うこと。

ポイントはただ一つで、いつもの射の感覚を忘れて、体全体を弓に入れるような気持ちで、最も大きな軌道を描くように背中まで持ってくることである。

これをするには、手先ではなく、体全体をつっかえにして、まさに「体を弓に割って入る感覚」が必要になるから、肩根や背中を使って引く感覚がつかみやすい。

稽古をはじめる前に、肩入れをしてこの感覚を確認してから引くだけでも、会の深さが変わるので、ぜひ試してみてほしい。

静中の動

2010年03月04日 | 積み重ね
武道や能の世界に「静中の動(せいちゅうのどう)」という言葉がある。

たとえば、剣道においては「たとえ動きは止まっていても(静)、次の変化にすぐ対応できる心構え(動)」のことを意味するし、能においては「静かなる動き(静)の中にあって、激しい動きや情動の変化(動)を伝える」ということを意味する。

共通するのは、動きは静(せい)であり、内的な活動は動(どう)であるということだ。

弓道でも同じだろうと思う。外見上の動きは極めてシンプルな八節しかないわけだが、しかし、その内側で働く力の働きや技は、絶えず留まることなく滑らかに働かなくてはならない。

したがって、この内面のハタラキをこそ意識し、稽古を積み、正しいハタラキを見出すことを目標としなければ上達はないのである。

ちなみに、見出すべき内面のハタラキとは、詰合いと伸合いだけである。