続・弓道の極意

私が一生をかけて極めようとしている弓道について、日々の気づきを積み重ねていくブログ

どの方向に伸び合えばよいか?②

2009年05月13日 | Q&A
前回「背中との連動」の重要性について書いた。今回は、それに引き続き、「胸を開くこと」という伸合いの基本動作について説明したい。

ここでの論点は、

①大三から会に至る上下の動き(下ろしてくる動き)から、離れに至る伸合いの横の動きに、どのように移行していけばよいか?

②伸合いではどの方向に伸びあえばよいか?

という2点である。

まず①について。結論から言うと「縦から横の動きに移行するのではなく、大三から残身に向かって最短距離で引き分ける」となる。

つまり、縦の動きと横の動きを分離するのではなく、下ろしてくる動きと同時に腕(胸)を開いていく動きを行うということだ。

もう少し詳しく言うと、大三で肩根、肘、手首(特に弓手)の詰合い(張り)を確認し、そこから肩根を中心に、(弓手は手の内が、馬手は肘が)円周を描くように残身まで下ろし、かつ開いていくのである。

したがって、②の結論も明らかである。つまり「的に向けてまっすぐ伸ばすでもなければ、下ろすでもない。真横に開くのでもなく、ただただ残身(すなわち離れ)に向けて、下ろし、開き続ける」ということになる。

ここで大事なことは、大三から以降はどこかの縮まっていた関節を伸ばすようなことは全くなく、ただただ最大の詰合いを保ちつつ、特に肩根を最大限深く詰めあったまま、これを円周の中心とし、残身に至るまで、下ろし、開いていくだけ、ということだ。

そしてもう一つ。前回説明したように、残身は、両肩根、両腕の上腕下筋(二の腕)、そして弓手手の内、馬手の肘、これら(いわゆる五部の詰め)が、背中を通じて一直線につながった状態である。

会では、矢と顔がぶつかるため(頬づけ)、上記の状態に至ることは物理的にできないわけだから、そこで止めるのではなく、背中に一直線のラインが出現するまで、張り伸ばしていくことが肝要である。

このようにして離れを出すと、中心となっている縦の線は微動だにせず、弓手の拳(こぶし)だけが一拳か二拳だけ動き、ピタッととまる。また、馬手も肘がやや後ろ斜め下に開き、拳が両肩の延長線上に飛んでピタッと止まる。

その姿はまさに縦横十文字の規矩(きく:形の意)そのものである。

どの方向に伸び合えばよいか?①

2009年04月27日 | Q&A
以前、「伸合いの感覚」の中で、以下のようなことを書いた。

「・・・伸合いは手先を伸ばすことではなく、引き分ける(下ろしてくる)力を背中に連動させ、縦線を効かせつつ胸を開いていくこと・・・」

今回は、上記について少し詳しく説明したい。

ここで最も重要なことは、2点である。それは「背中と連動させる」ということと「胸を開いていく」ということだ。

まず「背中との連動」について説明していこう。

言葉で説明するより、実際に経験してもらった方が早いと思うので、以下のことをやってみてほしい。

立っても座ってもよいので、腕をだらんと下げた状態で肩だけを後ろに回してみよう。いわゆる準備体操で行われる「肩回し(後ろ)」である。

そして、肩が後ろに回って、一番下がったところで止めよう。つまり、二巡目の回しに移行する直前で止める(要は、一番肩が後ろであり、下がったところで止める)。

このとき、胸を張らずあくまで自然体で、背筋、首筋を伸ばし、顎(あご)を引く。ちょうど、肩の下がりを背筋、首筋の縦線で支えるようなイメージがよい。

どうだろう?背中の肩甲骨の辺りにある筋肉が張られている感覚があるだろうか。もし、背中の張りが感じられるようであれば、そのまま力を入れずに(入っていればリラックスして)、両腕をゆっくり上げ、徒手で会の形をとってみよう。

おそらく、初めて経験する方は、えらく腕が下の方から伸びている感じがするだろう。しかし、これこそが正しい会の形である。

この形で会に入るためには、大三で既に背中と連動していなければならない。打起しから徐々に弓を身体に近づけるとともに、弓手を詰合い、両肩根を落とす。

このとき、肩回しの感覚を思い出しながら、背中の筋肉を意識し、その張りを確認するのである。

大三で背中と連動できれば、そこからの引分けは背中を意識しながら、下ろしてくることができるはずである。徐々に会に入るにつれて、背中、両腕下筋(二の腕の下部)、手首、手の内が一本になっていくのをぜひ体験してもらいたい。

注意)
背中の筋肉は普段あまり使われていない、いわゆる深層筋である。したがって、稽古をする場合は、細心の注意を払いながら行うことはもちろん、決して強い弓では稽古をしないようにお願いしたい。私は過去二度も無理な稽古で背中の筋を痛め、半年以上の休止を強いられている。(最初にやったときは1年半以上、まともに弓を引けなかった)